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中国の権力者に取り入るのは怪我のもと 重慶市「王立軍(薄煕来)事件」から日本企業が学ぶべきこと

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中国の権力者に取り入るのは怪我のもと 重慶市「王立軍事件」から日本企業が学ぶべきこと
JBpress 2012.03.27(火)柯 隆
 最近、中国でハリウッド映画さながらの事件が起きた。
  2月6日、重慶市の副市長、公安局長を務める王立軍が、四川省成都市にある米国総領事館に駆け込んだ。そのタイミングは習近平・国家副主席が訪米する直前だった。なぜ、重慶市の副市長が米国総領事館に駆け込んだのだろうか。
  まず思い浮かぶのは、政治亡命のためではないかということだ。しかし、その後の動きはやや不可解な展開を見せた。
  米国は王の亡命を受け入れず、彼を北京の当局者に引き渡した。民主主義と人権重視を標榜する米国が、なぜこんな乱暴なことをするのだろうか。
  王は、重慶市共産党書記である薄煕来の側近だった。薄は重慶の治安を改善するために遼寧省から王を呼び寄せ、マフィア撲滅キャンペーンを展開した。2人はまさに二人三脚の関係だった。
  だが、実は王が米国総領事館に駆け込んだ原因は、薄に殺されるのを恐れているからではないかと言われている。
  インターネット上には、重慶にある解放軍の病院が発行した王の診断書が暴露されている。それによると、王は深刻な鬱を患っているとのことだ。もしも米国総領事館に逃げ込まなければ、自殺と見せかけて殺されてもおかしくない。
  一体、どんな背景があってこのような事件が起きたのだろうか。
■薄煕来は王立軍を消そうとしたのか?
  王が米国総領事館から北京当局に引き渡されたあと、薄は「人を見る目に問題があった」と自らの任命責任を認めた。その後、薄は共産党から役職を解任された。
  しかし、共産党体制では、副市長は党の組織部門が身辺調査を行ってから任命している。党の書記が任命責任を問われて解任されることは異例なことである。
 ここで仮説を立てて問題を整理することにしよう。二人三脚の関係にあった王と薄は、何らかの出来事をきっかけに激しく対立するようになった。王は薄のことを知り尽くしている。自らの秘密が王によって暴露されてしまうことを恐れ、薄は王を消そうとする。
  王が薄から逃れるには、2つの方法が考えられた。1つは共産党の上層部に薄を告訴すること。しかし、王はこの選択肢を選ばなかった。もう1つは第三国に亡命すること。結局、王はこの方法を選んだようだ。
  王と薄が何を巡って対立するようになったかは明らかではない。ただし、この数年、王と薄が重慶で行ったこと、すなわちマフィア撲滅キャンペーンについて明らかに行き過ぎがあったことは確かだ。正式な法的手続きを踏まず、人を逮捕し、容疑者を拷問したりしたとネット上で暴露されている。
  薄がマフィア撲滅を急いだ目的は、今年の秋に開かれる第18回党大会で自分にとって有利になる材料と成績が欲しかったからと見られている。薄は、共産党中央委員会常務委員に届く距離にいる。しかし、薄はいささか急ぎ過ぎたようだ。
■中国で激しい権力闘争は日常茶飯事
  2012年は、世界の主要国で政権交代が予定されている。中国では秋に共産党代表大会が開催される予定であり、そこでポスト胡錦濤の新政権の顔ぶれがほぼ決まると言われている。
  中国では、民主主義の選挙制度が取り入れられていないため、次期指導部の選出は胡錦濤や江沢民など長老の話し合いによって決められる。だが、そのルールがはっきりしていないため、権力闘争に発展している。
  現状では、2世議員を中心とする「太子党」と、共産主義青年団からなる「団派」との対立が激化している。次期国家主席に就任予定の習近平は、太子党のリーダー役である。一方、現政権を掌握している胡錦濤グループは、いわば団派である。
  今回の事件は、換言すれば、団派が太子党の薄を追い落とすことで巻き返しを図ったものという見方ができる。現在、薄が取り調べを受けているだけでなく、夫人の谷開来も連行されていると言われている。
 ただし、中国の近代政治史において、この程度の戦いは日常茶飯事である。そもそも政治はパワーゲームであり、常に犠牲が伴うものだ。中国でこうした権力闘争が激化する背景には、権力闘争をルール化する仕組みが用意されていないことがある。
  振り返れば、かつて毛沢東が死去した後、?小平は革命第1世代の長老らの助力を得て権力を手にしたが、彼自身は党内の権力闘争を心配して「集団指導体制」の構築を指示した。だが、その集団指導体制の作り方が制度化されることはなかった。
  民主的な選挙が行われない不透明な集団指導体制は、結果的に共産党の指導力を弱体化させることにつながっている。
■日本企業にとっての教訓とは
  今回の重慶事件は日本企業に重要な教訓を与えている。
  中国の現役の政治家の中で、日本で最も人気の高い者の1人が薄であった。薄は大連市長時代から日本重視の姿勢を示し、日本企業の対中投資の誘致に力を入れていた。実際に毎年、何回も来日し、日本の財界と親交が深い。
  日本企業が中国に進出する際、人脈やコネを過度に重視し、権力者に取り入ろうとする傾向がある。しかし、薄は権力闘争に負けてしまった。
  ビジネスを展開するときのキーポイントは、しっかりしたビジネスモデルの形成である。どんなに有力なコネクションがあっても、あやふやなビジネスモデルでは事業は成功しない。
  ビジネスでは沈着冷静にビジネスモデルを練ることが重要であり、有力者とのコネづくりに奔走するのは百害あって一利なしである。特に中国のような、法の統治が確立していない国においては、1人の有力者を頼りに投資を決断した場合、人脈とコネは時としてビジネスリスクに変わってしまう。
  ビジネスのことを優先して考えれば、人脈とコネはチャンスというよりも、むしろコストとリスクと見なした方がいいかもしれない。この点は、今回の重慶事件から見えた中国の政治リスクの一部分と言える。
<筆者プロフィール>
柯 隆 Ka Ryu
 富士通総研 経済研究所主席研究員。中国南京市生まれ。1986年南京金陵科技大学卒業。92年愛知大学法経学部卒業、94年名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て富士通総研経済研究所の主任研究員に。主な著書に『中国の不良債権問題』など。
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