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官僚に踊らされる野田政権/政権維持のために財界の顔色をうかがう/消費増税 弱者切り捨て 根底に

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 消費増税 課題置き去り
中日新聞《 特 報 》2012/3/31 Sat.
 「身を切る覚悟」と大見えを切ったのは誰だったか。野田政権は30日に消費税増税法案を閣議決定し国会に提出する。だけど、ちょっと待ってほしい。議員歳費は削減していないし、低所得者対策もまだ。有効な歳出削減策はまったく示せていない。これでは国民を欺く「まやかし」といわれても仕方ない。(佐藤圭、小倉貞俊)
■負担増にも政府無策
 「財務省は、自公政権時代から国会議員をだましてきた」。そう語るのは、消費税増税法案について激論になった民主党の「社会保障と税の一体改革に関する合同会議」で、増税反対の論陣を張った川内博史衆院議員だ。
 会議では、議論の途中で打ち切りになり、前原誠司政調会長ら執行部側に押し切られた形になったが、川内氏は「(経済成長率を努力目標として盛り込んだ)景気条項ばかりでなく、多岐にわたる問題点が浮き彫りになった」と話す。
 合同会議であらわになったのは、官僚に踊らされる野田政権の哀れな姿だった。
 法案は消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる内容。当初は、将来、10%超に引き上げることをにじませる「再増税条項」が付けられていた。2月に閣議決定された大綱では、再増税条項は「今後の改革の検討」とぼかした表現だった。ところが、合同会議に示された法案では「さらなる税制の改革に係る措置」と明記されていたのだ。
 川内氏らが「検討と措置では大きな違いだ。誰の判断か」と迫ると、財務省側は、自公政権時代に成立した改正所得税法の付則104条「11年度までに必要な措置を講ずる」を持ち出した。財務省の担当者は「改正所得税法でも、大綱では『検討』だったが、条文では『措置』にした。今回も事務的にやった」と悪びれずに説明した。
 所得の少ない人ほど消費税の負担感が増す「逆進性」についても、野田政権は今のところ無策だ。財務省がほとんど何も考えていなかったから、ともいわれている。
 大綱では、17年ごろをめどに、納税額が少なく控除しきれない低所得者に給付金を支給する「給付付き税額控除」を導入するとした。それまでの間は、暫定的に現金を支給する「簡素な給付措置」で対応する方針が盛り込まれた。
 しかし、財務省は規模や財源などを固めていなかった。この点を追及され、最大で年額4千億円を給付措置に充てる案を示したものの、制度の詳しい内容を詰められると、十分に答えられず、取り下げざるを得なくなった。
 川内氏は国会審議について「反対のための反対ではない。政権与党として責任を果たす。党内議論では景気条項などで折り合えなかったが、まだまだ条文を修正するチャンスはある」とする。
 政治評論家の森田実氏は「とにかく消費税増税ありき、という野田政権の姿勢は問題だ」と批判する。森田氏は「過去の増税は、景気が上向くことを前提に実施されてきた。今回はいわば『不況下で増税しても構わない』というわけで、国民の理解を得られない」と話す。
 増税強行の背景にあるのは、財務省の強い意向だ。「消費税は景気に左右される法人税などと異なり、安定的な財源だ。財務省はずっと、税収に占める消費税の割合を増やしたかった。与野党のトップが元財務相で増税に前向きな今こそが好機、というわけだ」
■識者「身を切る覚悟 どこへ」「弱者切り捨て 根底に」
 評論家の樋口恵子氏は「増税の前にやるべきことがある。野田佳彦首相が増税への理解を得るためにアピールした『身を切る覚悟』はどうなったのか」と憤る。
 国会議員の定数削減は、与野党の協議が難航。最高裁で違憲状態とされた衆院の「一票の格差」は是正されないままになっている。仮に衆院比例で80削減、小選挙区0増5減が実現すれば、56億円の経費が浮くとされる。
 月々の歳費と年2回の期末手当を合わせた2106万円の議員歳費は、世界でもトップクラス。これに職務手当の「文書通信交通滞在費」が月額100万円支給される。民主党は年間300万円を削減する案を提示しているが、2年間の期限付きだ。
 総額320億円の政党交付金が、共産党を除く各党に配られている。
 「人口が減少していく中で、国会議員の定数も徐々に減らしていくことは必然の流れ。浮く金額は微々たるものでも、政治家が率先して取り組むべき象徴的な課題のはず」と指摘。「自分の身を切るより、国民の身を切る方が楽だという野田政権の感性がよく分かった」と樋口氏は皮肉る。
■「弱者切り捨て 根底に」
 消費税そのものを「致命的な欠陥のある危険な制度」と批判するのは、ジャーナリストの斎藤貴男氏だ。
 斎藤氏は、大企業が税込みの小売価格を抑えようと、下請け業者に圧力を加えることを懸念する。「不況下で消費増税に踏み切ると、納税義務者である事業者にしわ寄せがいく。中小零細企業は増税分を値引きしたり、価格に転嫁できずに自腹を切って安売りしたりせざるを得ない」と指摘。つまり「商売の力関係で弱い方が負担する仕組みだ」という。
 消費税増税で、ぎりぎりの段階で耐えている中小零細企業の倒産を誘発し、失業者や自殺者の増加につながる可能性を訴える。「その結果、大資本が仕切る社会が到来する。自営業者やこれから商売をやろうという人の存在を否定することになる」
 では、どうすればよいのか。斎藤氏が提言するのは、不公平税制の是正だ。「金持ち優遇のため下げ続けられてきた所得税の累進税率を、20年前の最高税率50%の水準に戻せば、所得税収は倍近くになる」
 斎藤氏は「法人税も上げる余地があるはずだ。聖域のように扱うのはおかしい」と指摘し、こう警告する。「政権維持のために財界の顔色をうかがう野田内閣の政策の根底にあるのは、『国益イコール大企業の利益』という思想だ。弱者切り捨ての消費税増税法案は、社会の在り方そのものを変えかねない」 *強調(太字・着色)、リンクは来栖
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国税局、消費税増税反対の最右翼「中日・東京新聞」を徹底調査/ 輿石東幹事長、メディアに「電波止めるぞ」 2012-03-13 | 政治 
 国税が東京新聞を徹底調査する「理由」
現代ビジネス「永田町ディープスロート」2012年03月13日(火)
 通常国会で消費税増税についての論戦が本格化するなか、永田町と目と鼻の先にある日比谷公園前のビルでは、まったく別の緊張感高まる事態が起きていた。
「昨年夏から半年近くもの長きにわたって、中日新聞グループに名古屋国税局と東京国税局を中心とした大規模な税務調査が入っています。そうした中で東京新聞(中日新聞東京本社)が税務調査に入っている国税官から資料分析のために一部屋要求されたため、一部の社員の間では、東京での?本格調査?が行われるのではと緊張が走ったようです」(同社関係者)
 複数の同社関係者によると、今回の国税当局の徹底調査ぶりは異常で、同社記者らが取材相手との「打ち合わせ」や「取材懇談」に使った飲食費を経費処理した領収書を大量に漁り、社員同士で飲み食いしていた事例がないかなどをしらみつぶしに調べているという。
「実際に取材相手と飲食したのかどうか飲食店まで確認が及び、名古屋ではすでに社員同士で飲み食いしていた事例が見つかったようだ。一方で『これでは取材源の秘匿が危機にさらされる』と一部では問題視されてもいる」(同前)
 ここ数年、大手紙のほか、民放各局、出版社などが相次いで国税の税務調査を受けていることから、「たんに順番が回ってきただけ」と意に介さない向きもあるが、
「中日新聞グループは、野田政権がおし進める消費税増税に対して反対の論陣をはる最右翼。今回の徹底調査の裏には、国税=財務省側の『牽制球』『嫌がらせ』の意図が透けて見える」
 との見方も出ている。
 事実、中日・東京新聞は「野田改造内閣が発足 増税前にやるべきこと」(1月14日)、「出先機関改革 実現なくして増税なし」(1月30日)などの見出しで社説を展開、「予算が足りず、消費税率を引き上げると言われても、死力を尽くした後でなければ、納得がいかない」などと強く主張し、新規の読者も増やしてきた。それが今回の国税側の?徹底攻撃?で、筆を曲げることにならないといいのだが。
『週刊現代』2012年3月17日号より
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消費増税案に3つのシナリオ、成立は「話し合い解散」の狭い道か
ロイター 3月30日(金)13時14分配信
 3月30日、消費増税法案が30日閣議決定された。野田首相は「政治生命をかけて今国会中に成立させる」と退路を断って臨むが、法案成立への展望は全くみえてこない。 
 ねじれ国会の下では野党の協力なしの成立は望めず、逆に、法案への反対を明言している小沢一郎民主党元代表グループから52人以上が反対に回れば衆院でも否決される。法案の成立は野党の同意が得られる「話し合い解散」など限られたケースに絞られる。「野田首相、小沢民主党元代表、谷垣禎一自民党総裁の『チキンゲーム』で、視界ゼロ」(政治アナリスト・伊藤惇夫氏)との声があがっている。
<委員会付託が最初の正念場、特別委員会設置ならメンバー構成に注視>
 法案成立までには大きく分けて、1)法案を付託する委員会の決定、2)衆院での採決時、3)参院での採決時──など、3つの節目が考えられる。
 消費税導入を決めた竹下政権では、消費税法案は特別委員会で審議された。今回も社会保障制度と消費税を含む抜本税制改革が一体として議題になるため、早くから「特別委員会」を設置し付託するとみられていた。ただ、民主党の最低保障年金制度に関する法案が2013年の国会に提出される方針が示されたことで、逆に税法の審議が進まない可能性を危惧する声もあがっている。特別委員会が設置されることになれば、委員会の構成メンバー人選が成立を目指す民主党執行部にとって最初の正念場になる。
 審議入りの日程も定まらない。民主党の輿石東幹事長は29日の会見で「定数削減法案、郵政法案、国家公務員給与削減関連4法案などを優先すべきだ。先に国会に出ているものを先行するのがモノ(ごと)の順序だ」と述べ、すでに国会に提出されている重要法案の処理が先行するとの認識を示した。法案の審議入りが遅れれば、6月21日までの会期中に消費増税法案に十分な審議時間を確保できず、大幅な会期延長の問題につながる可能性が出てくる。
<審議入り後の3つのシナリオ>
 審議入り後は、1)法案が採決されないまま継続審議となるケース、2)法案採決で、小沢グループの造反で否決されるケース、3)法案の成立を引き換えに野田首相が解散に打って出るケース──が考えられる。
 シナリオ1:上智大学の中野晃一助教授は「法案を提出して採決をしない」ケースが落としどころになるとみる。法案が否決されれば、野田首相は「退陣するか、解散の道しかなくなる。政治的な自殺行為だ」とみるためだ。
 しかし、これは今国会での成立を公言している野田首相としては取れない戦略との指摘もある。内閣不信任案や首相問責決議案提出のきっかけになりかねない。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「継続審議には首相が乗らない。法案が提出されれば、少なくとも衆院での採決は行う。5月末から6月にかけて衆院採決にもっていく」とみる。
 シナリオ2:衆院の過半数は、欠員が1名あることから、240議席。民主党は291議席で、他党からの賛成がなければ、民主党から52人以上が反対すれば法案は否決される。政権の命運をかける法案が否決されれば、退陣か衆院解散の道しかないとみられる。
 小沢元代表は15日のロイターのインタビューで「衆院で法案(の提出・採決)を強行してくれば賛成できない」と反対を明言。消費増税をめぐっての話し合い解散や、今通常国会での衆院解散・総選挙を否定。自身が離党する理由は全くないとし「国民との約束を忘れた人たちの方が党を出なければならない」と野田首相をけん制した。インタビューから浮かび上がるのは「解散回避」(野党筋)で党内覇権争いの構図だという。
 党内最大グループの小沢派は100人を超えるとみられるが、伊藤氏は「造反は52人に達しない」と見通す。伊藤氏は「法案が成立しなければ、野田政権が倒れる可能性は極めて高い。野田首相にとっての最悪のシナリオは、法案は提出したが野党が乗ってこず、党内の造反で否決されるケース。解散に打って出られない状況が最悪だ」とし、他方で「小沢氏の狙いは野田内閣を総辞職に追い込むこと。野田首相は逆に、(法案が通らないことが明確になれば)造反する議員を除名して、解散に打って出る」と予想する。
 党内の増税反対派は、前原誠司政調会長が28日未明に事前審査を一方的に打ち切ったことに反発を強めている。政調役員会でも3人が反対を表明した。党内分裂の回避を大命題とする輿石幹事長は29日の会見で、法案の採決には「当然、党議拘束はかかる」と造反行動を早くもけん制したが、消費増税をめぐる溝は深い。
 シナリオ3:衆参で多数派が異なるねじれ国会で法案を成立させるには野党の一部の同意を得るしかない。伊藤氏は「話し合いという言い方が妥当かはわからないが、自民と民主の妥協の余地は残っている」とみる。
 ただ、現時点では、自民党は消費増税法案に厳しい見方をしている。「党内基盤が確立していないので社会保障関係費を膨張させ合意点を見出す。このような社会保障膨張法案には付き合えない。できることなら話し合って民意を問う道を迫ったほうが良いが、難しい環境なら、追い込んでしまうしかない」(自民幹部)という。谷垣禎一総裁も29日の定例会見で「総理が不退転の決意で臨むというのなら、反対派と決別し、解散権を行使して、消費税を公約に掲げて堂々と国民に信を問うべきだ」と対決姿勢をあらわにしている。
<消費増税法案の行方「視界ゼロ」>
 市場もまだシナリオを描ききれていない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ債券ストラテジストの石井純氏は「衆参ねじれ状態が続く今国会では、可決成立は不可能。廃案だけは回避し、継続審議となる。つまり、5月に衆院で造反議員を押さえ込んで可決しても、参院では通過させることはできない。衆院解散・総選挙の実施を約束して参院通過の協力を取り付ける『話し合い解散』も成立しない。来夏の衆参同日選でねじれが解消し、正常化した14年の通常国会で可決成立にこぎつける」と見通すが、市場がどのような結末を織り込んでいるのかははっきりしないとした。
 消費増税の閣議決定をめぐっては連立与党を組む国民新党の亀井静香代表が増税反対を唱え、連立離脱を表明。国民新党は連立を離脱しないとしているが、亀井氏の動きが政界再編に発展するか、波乱要因となりそうだ。
 法案が成立しなければ、退陣か解散の選択肢しかない野田首相。衆院解散になれば、力の源泉の「数」を失うとみられる小沢元代表。「衆院解散・総選挙」を勝ち取らなければ、9月総裁選での芽が摘まれる谷垣自民党総裁。3者の「チキンゲーム」のなかで、消費税政局がひたひたと近づいている。4月26日に政治資金規正法違反事件で小沢氏に対する東京地裁判決が下された後、5月以降に訪れる衆院採決が最初のヤマ場となりそうだ。(ロイターニュース 吉川裕子:編集 石田仁志)
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