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なぜ消費税引き上げか/そもそも社会保障の財源に充てるために消費税を引き上げるのが適切なのか

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なぜ消費税引き上げか 週のはじめに考える
中日新聞 社説 2012年4月1日
 野田佳彦内閣が消費税引き上げ法案を閣議決定しました。これから国会審議が始まります。そこで、あらためて増税問題を根本に戻って考えてみたい。
  閣議決定にこぎつくまでに民主党内では連日、深夜未明まで激しい議論の応酬が続きました。最後まで争点になったのは、景気が好転しなければ増税を凍結するかどうかをめぐる景気条項です。
  結論を言えば、条文は玉虫色になりました。増税を目指す政府側は「経済成長に努力すれば増税できる」と条文を解釈し、反対派は「実質2%、名目3%成長が達成できなければ増税できない」と受け止めています。
 増税実現に高ハードル
 条文は玉虫色とはいえ、政府が成長率を数字で示すのに強く抵抗していたのを考えれば、法案がこのまま成立したとしても、実際に増税するには高いハードルが課せられたとみていいでしょう。
  その前に法案が成立するかどうか不透明です。民主党内の増税反対ないし慎重派は小沢一郎元代表を中心とするグループだけでなく、小沢鋭仁元環境相や馬淵澄夫元国土交通相など経済成長を重視する議員たちにも広がりました。
  国民新党は亀井静香代表が反対する一方、自見庄三郎金融相が閣議で法案に賛成し事実上の分裂状態に陥っています。
  自民党はもともと増税賛成の立場ですが、最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止を唱える民主党の議論に反対し、まず衆院解散・総選挙を訴えています。野田首相が「政治生命をかける」と力説しても、法案成立は相当難しいと言わざるをえません。
  増税は社会保障との一体改革がうたい文句でした。ところが、月額七万円の最低保障年金創設だけでなく、年金一元化も具体的な制度設計を示さず、社会保障部分は置き去りにされたままです。
 「所得再配分」の財源は
 民間に比べて有利な公務員の共済年金にある「職域加算」と呼ばれる上乗せ給付の廃止も先送りです。国会議員の定数是正も進みません。これで「身を切る改革」といえるのでしょうか。
  増税に伴う制度設計もずさんさが目立ちます。医療と介護、保育などの自己負担合計額に上限を設ける総合合算制度、共通番号制が始まるまでの低所得者に対する簡素な給付措置、住宅課税や消費税との二重課税が指摘されている自動車取得税・重量税の扱いなど、ざっと法案をみただけでも「検討中」ばかりです。
  「まず増税ありき」の姿勢で結論に到達するのを急いできたから、弱い立場の低所得者や中小零細事業者への目配りも完全に後回しになってしまいました。
  本来なら、もっと根本にさかのぼって議論を深めねばならない問題があります。それは、そもそも社会保障の財源に充てるために消費税を引き上げるのが適切なのか、という論点です。
  消費税を社会保障財源に充てる考え方は、自民党政権時代から財務省が推し進めてきました。社会保障費が政府予算の三割を占め、年に約一兆円増加する現状をみれば、増税分を社会保障に回すのはもっともらしく見えます。
  しかし、社会保障が「政府の所得再配分」機能そのものである点を踏まえれば、その財源も所得再配分にふさわしい税目によって賄われたほうが望ましい。それは所得税や法人税です。
  高所得者により重い負担を求める累進構造を備えた所得税や利益を出した法人に課す法人税を財源に、政府が弱者への安全網を整える。それこそが所得再配分、すなわち社会保障の原理原則であるからです。
  あるいは保険料の引き上げによって財源を賄う考え方もある。個人の納付記録が残る保険料を主財源にすれば、給付と負担の関係が透明になる利点があります。
  これに対して、消費税は地方の基幹財源にしたほうが適切です。消費はどこでも生じるので、都会と比べた地方の偏りが少ない。行政サービスの対価として課税するので納得感も得られやすい。
  たとえば住民が手厚い行政サービスを望むなら、自治体は高い消費税を課せばいいのです。もちろん逆もあります。受益と負担の関係が明確になり、結果として地域の自立意識も高まるでしょう。
 ちゃぶ台返しの論争を
 もしかしたら「私の住む街は消費税が高いから、行政サービスの質がいいんだ」と高い税金に誇りを抱く住民意識すら生まれるかもしれません。「高い税は絶対ダメ」ではなく、納得感がない増税だからダメなのです。
  野田首相はよく「ちゃぶ台返しはダメだ」と言いますが、国会は政府ではありません。国会議員は政府がこしらえた議論の土俵を壊すところから論戦を始めねば。
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官僚に踊らされる野田政権/政権維持のために財界の顔色をうかがう/消費増税 弱者切り捨て 根底に 2012-03-31 | 政治(経済/社会保障/TPP) 
  消費増税 課題置き去り
中日新聞《 特 報 》2012/3/31 Sat.
 「身を切る覚悟」と大見えを切ったのは誰だったか。野田政権は30日に消費税増税法案を閣議決定し国会に提出する。だけど、ちょっと待ってほしい。議員歳費は削減していないし、低所得者対策もまだ。有効な歳出削減策はまったく示せていない。これでは国民を欺く「まやかし」といわれても仕方ない。(佐藤圭、小倉貞俊)
■負担増にも政府無策
 「財務省は、自公政権時代から国会議員をだましてきた」。そう語るのは、消費税増税法案について激論になった民主党の「社会保障と税の一体改革に関する合同会議」で、増税反対の論陣を張った川内博史衆院議員だ。
 会議では、議論の途中で打ち切りになり、前原誠司政調会長ら執行部側に押し切られた形になったが、川内氏は「(経済成長率を努力目標として盛り込んだ)景気条項ばかりでなく、多岐にわたる問題点が浮き彫りになった」と話す。
 合同会議であらわになったのは、官僚に踊らされる野田政権の哀れな姿だった。
 法案は消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる内容。当初は、将来、10%超に引き上げることをにじませる「再増税条項」が付けられていた。2月に閣議決定された大綱では、再増税条項は「今後の改革の検討」とぼかした表現だった。ところが、合同会議に示された法案では「さらなる税制の改革に係る措置」と明記されていたのだ。
 川内氏らが「検討と措置では大きな違いだ。誰の判断か」と迫ると、財務省側は、自公政権時代に成立した改正所得税法の付則104条「11年度までに必要な措置を講ずる」を持ち出した。財務省の担当者は「改正所得税法でも、大綱では『検討』だったが、条文では『措置』にした。今回も事務的にやった」と悪びれずに説明した。
 所得の少ない人ほど消費税の負担感が増す「逆進性」についても、野田政権は今のところ無策だ。財務省がほとんど何も考えていなかったから、ともいわれている。
 大綱では、17年ごろをめどに、納税額が少なく控除しきれない低所得者に給付金を支給する「給付付き税額控除」を導入するとした。それまでの間は、暫定的に現金を支給する「簡素な給付措置」で対応する方針が盛り込まれた。
 しかし、財務省は規模や財源などを固めていなかった。この点を追及され、最大で年額4千億円を給付措置に充てる案を示したものの、制度の詳しい内容を詰められると、十分に答えられず、取り下げざるを得なくなった。
 川内氏は国会審議について「反対のための反対ではない。政権与党として責任を果たす。党内議論では景気条項などで折り合えなかったが、まだまだ条文を修正するチャンスはある」とする。
 政治評論家の森田実氏は「とにかく消費税増税ありき、という野田政権の姿勢は問題だ」と批判する。森田氏は「過去の増税は、景気が上向くことを前提に実施されてきた。今回はいわば『不況下で増税しても構わない』というわけで、国民の理解を得られない」と話す。
 増税強行の背景にあるのは、財務省の強い意向だ。「消費税は景気に左右される法人税などと異なり、安定的な財源だ。財務省はずっと、税収に占める消費税の割合を増やしたかった。与野党のトップが元財務相で増税に前向きな今こそが好機、というわけだ」
■識者「身を切る覚悟 どこへ」「弱者切り捨て 根底に」
 評論家の樋口恵子氏は「増税の前にやるべきことがある。野田佳彦首相が増税への理解を得るためにアピールした『身を切る覚悟』はどうなったのか」と憤る。
 国会議員の定数削減は、与野党の協議が難航。最高裁で違憲状態とされた衆院の「一票の格差」は是正されないままになっている。仮に衆院比例で80削減、小選挙区0増5減が実現すれば、56億円の経費が浮くとされる。
 月々の歳費と年2回の期末手当を合わせた2106万円の議員歳費は、世界でもトップクラス。これに職務手当の「文書通信交通滞在費」が月額100万円支給される。民主党は年間300万円を削減する案を提示しているが、2年間の期限付きだ。
 総額320億円の政党交付金が、共産党を除く各党に配られている。
 「人口が減少していく中で、国会議員の定数も徐々に減らしていくことは必然の流れ。浮く金額は微々たるものでも、政治家が率先して取り組むべき象徴的な課題のはず」と指摘。「自分の身を切るより、国民の身を切る方が楽だという野田政権の感性がよく分かった」と樋口氏は皮肉る。
■「弱者切り捨て 根底に」
 消費税そのものを「致命的な欠陥のある危険な制度」と批判するのは、ジャーナリストの斎藤貴男氏だ。
 斎藤氏は、大企業が税込みの小売価格を抑えようと、下請け業者に圧力を加えることを懸念する。「不況下で消費増税に踏み切ると、納税義務者である事業者にしわ寄せがいく。中小零細企業は増税分を値引きしたり、価格に転嫁できずに自腹を切って安売りしたりせざるを得ない」と指摘。つまり「商売の力関係で弱い方が負担する仕組みだ」という。
 消費税増税で、ぎりぎりの段階で耐えている中小零細企業の倒産を誘発し、失業者や自殺者の増加につながる可能性を訴える。「その結果、大資本が仕切る社会が到来する。自営業者やこれから商売をやろうという人の存在を否定することになる」
 では、どうすればよいのか。斎藤氏が提言するのは、不公平税制の是正だ。「金持ち優遇のため下げ続けられてきた所得税の累進税率を、20年前の最高税率50%の水準に戻せば、所得税収は倍近くになる」
 斎藤氏は「法人税も上げる余地があるはずだ。聖域のように扱うのはおかしい」と指摘し、こう警告する。「政権維持のために財界の顔色をうかがう野田内閣の政策の根底にあるのは、『国益イコール大企業の利益』という思想だ。弱者切り捨ての消費税増税法案は、社会の在り方そのものを変えかねない」
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