野田は原発再稼動を決めている
日刊ゲンダイ 2012年4月3日 掲載
枝野の反対は芝居
野田首相が急ぐのは、増税法案だけじゃない。関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させる動きが急なのである。2日の国会で枝野経産相が「私は再稼働に反対」と表明したが、今夜、3閣僚で協議。順調にいけば、4月中旬にストレステスト(耐性評価)合格第1号として稼働するというのだ。
「野田と枝野は、役割分担をしているだけ。産業界が再稼働をせっついてるんだから、野田が断れるわけがない。一方の枝野は東電を国有化して、後見人の仙谷に“料理”させたい思惑があるから、再稼働推進の姿勢は見せにくい。ちょっと慎重派を装っていますが、官邸が再稼働を決めれば、折れますよ」(官邸事情通)
野田が再稼働に前のめりなのは、増税法案を後押しする勢力が再稼働推進派であることが一番だが、もう一つの理由があるという。
「野田首相を焦らせているのは原油高。それにつられて物価がどんどん上がりかねない。そうなると、支持率はさらに下がるし、これからの国会で増税審議もやりづらい。原発再稼働で、原油高と電気料金値上げをなんとか食い止めたいのです」(全国紙政治部記者)
アメリカのオバマ大統領が、ガソリン価格の上昇で支持率を急落させたのを見て、さらに焦り始めたらしい。自分を米大統領と比較するあたり、サルマネを通り越して、完全に自信過剰症に侵されている。
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◆あれから一年、早くも復活する原発「安全神話」 / 再稼動が他党や経済界との取引材料に 2012-03-16 | 地震/原発
PRESIDENT Online 2012年3月15日(木) 藤野光太郎
「3.11福島原発事故」から1年。相変わらず原子炉内部では頻繁に異常が発生し、現場作業も遅々として進んでいない。事故収束にはほど遠い情況だ。
国内各地の空間線量測定値は事故後、一様に上がっており、陸海空に拡散する放射性物質は今も汚染地域・海域を広げつつある。また、汚染された「食」は、政府が画策した“底上げ規制値”以下という手掛かりだけを頼りに全国で流通している。もはや、汚染地域は福島とその周辺だけではない。日本全国が“事故現場”となってしまったのだ。
福島県の定時降下物測定値を昨年3月まで遡ると、事故直後に降り注いだ大量の放射性核種は昨秋までにいったん落ち着いていたにも関わらず、今年1月には400ベクレル超、2月も350ベクレルという高い数値が検出されている。いずれも放射性セシウム134と同137が中心だ。日常生活でセシウム被曝が恒常化してしまったということである。
と同時に、原子炉内部の異常が続いている。2月には2号機圧力容器温度計の値が急上昇。東電は「計器の故障」と説明したが、その後もたびたび異常な温度上昇が続く。3月に入っても圧力容器底部で温度計の1つが異常な数値を示した。これに対して東電は、驚くべきことに「計器故障の可能性があるため監視対象から外した」と発表した。
危険を監視するために設置した計器が異常温度を報知すれば、まずは状態を確認する。異常な環境だからこそ計器が故障し続けているかもしれず、実は温度が異常で計器は正常である可能性も高いからだ。これを不明にしたまま納得できる説明もせず「監視対象から外す」との発表に、多くの国民が不審を抱いた。
つまり、事故後1年が経過した今もなお、国民は政府や東電に対して、情報隠蔽やデータ改竄を続けているのではないかとの疑惑を払拭できずにいるということだ。事故責任を問われるべき東電幹部や関係官僚は誰一人として断罪されず、被害者の生活をズタズタにしておきながら補償を渋る東電と金融機関は国庫で救済され、財源には国民の新たな税金が充てられる。危険は広がる一方だ。事態は好転せず、問題は何も解決していない。
■再稼動が他党や経済界との取引材料に
それどころか、すでに崩壊したはずの「神話」が今、政府と電力会社、原発関連企業、そして、御用学者や御用メディアを通じて再び甦りつつある。「安全は、技術革新と基本設計、制度改革で取り戻せる」「化石燃料の高騰を考えれば、原発のコストはそれほど高くはない」「温暖化防止を考えれば、エネルギーミックスとして原発がやはり必須だ」「原発を止めたら経済が成り立たない」――。
事故から「1年が過ぎた」のではなく、事故が「2年目に入った」のだ。喉元を過ぎてもいないのに、熱さを忘れたフリをするのか。
しかし、事故が勃発したら取り返しがつかないのが原発である。日本のような地震列島で完璧な安全対策は不可能だ。復旧や補償に要する途方もない財政出動は、原発に経済合理性がないことを明示している。CO2による地球温暖化説にも根強い異論がある。そもそも、世界のCO2排出量の大半を占める米中両国が温暖化防止にはそっぽを向いており、日本の努力は無駄だと分かっているからこそ、民主党政権も削減ルールから離脱しようとしているのだ。原発を放棄すれば経済が破綻するから再稼働が必要という理屈は、国民に「悲惨な事故のことなど早く忘れてしまえ」と言うに等しい。
ところが、最近になって急にこうした理屈を背景にした物言いが、政権中枢から出始めている。
国内54基中、稼働中の原発数基が4月末までに定期検査で停止すれば、日本の原発は瞬間的に「全停止」となる。その後の「再稼働」について、政権の顔ともいえる面々が「やる方向」であることをちらちらと洩らし始めたのだ。
2月24日、事故直後の官房長官として福島県民をミスリードした枝野幸男経産相が、BS番組で「今の電力需給状況では稼働させていただく必要がある」と述べ、再稼働がなければ電気料金は「5%とか10%とか15%とかいうレベルで上がる」と発言。3月に入って早々、今度は細野豪志環境省兼原発事故担当相も「安全性が確保できたものについて再稼働は必要だと思う」と発言(4日付、産経新聞)。その前日には、野田佳彦首相が「再稼働を政治判断した時には、政府が地元自治体を説得する」との意向を海外メディアに明言した。
「今、水面下で政界再編の駆け引きが進行中です。再稼働は他党や経済界との取引材料です」(野党議員秘書)。
事実であれば、とんでもない話だ。
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