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中日・東京新聞はかつてなく充実している/「他紙が何を書こうが我々は我々の道を行く」腹をくくったようだ

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東京新聞の挑戦
「魚の目」2012年4月2日 魚住 昭
 私は十年ほど前から東京新聞の「新聞報道のあり方委員会」の委員を務めている。日々の紙面に目を通し、第三者として意見を述べるのが役目である。
 ただ実際に東京新聞幹部らと顔を合わせ、議論する機会は年に二度しかないから、社の内情は知らない。あくまで記事を通して記者たちの心情や取材風景を想像するに止まっている。
 そういう前提で私の話を聞いてもらいたいのだが、最近の東京新聞の報道はかつてなく充実している。紙面全体に躍動感がある。記者たちの言いたいことがはっきり伝わり、彼らの怒りや悲しみが直に心に響いてくる。一読者として、日本の新聞も捨てたものではないなと誇らしげな気持ちになってくる。
 具体例を挙げよう。2月5日の朝刊一面トップに「『主 権在官』打ち破れ」という日隅一雄さん(四九歳)のインタビュー記事が掲載された。日隅さんは末期ガンと闘いながら、3・11後の東電・政府の記者会見を監視してきた弁護士である。
 日隅さんはその中で「官僚は匿名。だから責任を取らない。彼らに有利な情報しか出さず、常にメディアをコントロールしようとする。日本の民主主義は上っ面だけ。『主権在民』ではなく『主権在官』なのです」と発言し、読者の大反響を呼んだ。
 3月20日朝刊の1面トップは「企業向け電気 値上げ断れる」。東電が4月からの値上げを発表した企業向け電気料金は利用者がノーと言えば、契約期間内は現行料金が運用されるという事実を報じ、東電の周知不足を批判した。企業経営者らにとっては貴重なュー スだった。
 翌朝の1面トップは「第一原発事故 福島県が拡散予測消去」。福島県が3・11事故当夜から放射性物質拡散の予測データをメールで入手しながら15日朝までの分をなくしていたという衝撃的な特ダネである。
 もういちいち紹介したら切りがないのでやめるが、官庁や大企業の情報隠しを徹底的に暴く記事が連日のように東京新聞の紙面を飾る。それに共感する読者の声がわき起こり、その声に励まされてより深い調査報道が進んでいくというサイクルができあがった。目を瞠りたくなるような紙面の活性化である。
 そのきっかけは言うまでもない。3・11の大震災とフクシマのメルトダウンである。未曾有の事態に直面して編集局は一時混乱したようだが、まず反権力が売り物の名 物記事「こちら特報部」が反転攻勢に出た。
 見開き2ページのスペースを使って、被災地ルポ、原子力ムラの呆れた実態、原発の危険性を訴え続けてきた京大の小出裕章助教のインタビューなどを次々と半年以上にわたって掲載しつづけた。これに引っ張られるような形で編集局全体に脱原発・官僚による情報統制打破の気運が生まれ、どの新聞より明確な脱原発の社論が形成された。
 それを象徴したのが昨年9月の「脱原発六万人集会」の報道だった。各紙が比較的地味な扱いだったのに、東京新聞は一面トップと社会面トップ、特捜部の見開きページを総動員して集会・デモの模様を伝えた。
 もう政治家にお任せの間接民主主義だけではダメだ。市民が街頭に出て、民意の所在を誇示しなけれ ば日本は再び亡国の淵に追いやられる。そんなせっぱ詰まった気持ちが彼らを六〇年安保以来の大規模デモ報道に踏み切らせたのである。
 こうした危機感は原発以外の社会面ネタの扱い(例えば孤独死問題の追及)や一面下のコラム「筆洗」、論説にも及び、他紙との横並び意識に囚われていた記者たちの意識も変えたらしい。他紙が何を書こうが、我々は我々の道を行く。編集局全体がそう腹をくくったようだ。
 それは私が共同通信の記者だった頃から夢見た新聞のありかただ。東京新聞の試みが成功(実際に新たな読者が急速に増えているという)すれば新聞ジャーナリズムは変わる。それにほんの少しでも手伝いできれば本望だと思う。(了)
(編集者注・これは週刊現代『ジャーナリストの目』の再録です)
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国税局、消費税増税反対の最右翼「中日・東京新聞」を徹底調査/ 輿石東幹事長、メディアに「電波止めるぞ」 2012-03-13 | メディア 
 国税が東京新聞を徹底調査する「理由」
現代ビジネス「永田町ディープスロート」2012年03月13日(火)
 通常国会で消費税増税についての論戦が本格化するなか、永田町と目と鼻の先にある日比谷公園前のビルでは、まったく別の緊張感高まる事態が起きていた。
「昨年夏から半年近くもの長きにわたって、中日新聞グループに名古屋国税局と東京国税局を中心とした大規模な税務調査が入っています。そうした中で東京新聞(中日新聞東京本社)が税務調査に入っている国税官から資料分析のために一部屋要求されたため、一部の社員の間では、東京での?本格調査?が行われるのではと緊張が走ったようです」(同社関係者)
 複数の同社関係者によると、今回の国税当局の徹底調査ぶりは異常で、同社記者らが取材相手との「打ち合わせ」や「取材懇談」に使った飲食費を経費処理した領収書を大量に漁り、社員同士で飲み食いしていた事例がないかなどをしらみつぶしに調べているという。
「実際に取材相手と飲食したのかどうか飲食店まで確認が及び、名古屋ではすでに社員同士で飲み食いしていた事例が見つかったようだ。一方で『これでは取材源の秘匿が危機にさらされる』と一部では問題視されてもいる」(同前)
 ここ数年、大手紙のほか、民放各局、出版社などが相次いで国税の税務調査を受けていることから、「たんに順番が回ってきただけ」と意に介さない向きもあるが、
「中日新聞グループは、野田政権がおし進める消費税増税に対して反対の論陣をはる最右翼。今回の徹底調査の裏には、国税=財務省側の『牽制球』『嫌がらせ』の意図が透けて見える」
 との見方も出ている。
 事実、中日・東京新聞は「野田改造内閣が発足 増税前にやるべきこと」(1月14日)、「出先機関改革 実現なくして増税なし」(1月30日)などの見出しで社説を展開、「予算が足りず、消費税率を引き上げると言われても、死力を尽くした後でなければ、納得がいかない」などと強く主張し、新規の読者も増やしてきた。それが今回の国税側の?徹底攻撃?で、筆を曲げることにならないといいのだが。
『週刊現代』2012年3月17日号より
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「電波止めるぞ!」民主党幹部が目の敵にする表現の自由
現代ビジネス「永田町ディープスロート」2012年03月13日(火)
 「間違った情報ばかり流すなら、電波を止めてしまうぞ!政府は電波を止めることができるんだぞ。電波が止まったら、お前らリストラどころか、給料をもらえず全員クビになるんだ」
 いまどき、こんな暴言を吐く政治家がいたとは驚くほかないが、これは民主党の輿石東幹事長の発言である。
「2月23日の幹事長番記者たちとのオフレコ懇談での発言でした。『野田政権が、税と社会保障の一体改革から社会保障の部分を切り離し、消費増税法案を先行させる見込み』というフジ他各社の報道を問題視し、『間違った情報を流しやがって!裏を取っていない情報を流すな!』と恫喝した」(大手メディア幹部)
 輿石氏は「間違った情報」と言うが、報道の元になったのは、同じ日の前原誠司・政調会長の会見。前原氏が年金一元化など社会保障関連法案の提出を4月以降に先送りすると発言したため、前述のような報道になったのだが・・・・・・。
「民主党幹部の言うことがバラバラなんですよ。原因は党をまとめられない輿石氏の力量不足に他ならないのですが、自分のことは棚に上げ、マスコミに八つ当たりしている」(同)
 それにしても、野田政権幹部のメディアに対する高圧的な姿勢は悪質だ。輿石氏は2月1日にも、朝日新聞の見出しが気に入らないとして、「またやったな!政治部長を呼んで抗議するからな」と吠えている。
 前原氏も、産経新聞に「言うだけ番長」と揶揄されて激怒し、同紙記者を会見から排除。与野党からの批判で撤回したが、政治家としての器量の小ささを、自ら曝け出した。
 さらにポスト野田の有力候補とされる玄葉光一郎外相も、2月9日の番記者とのオフレコ懇談で、沖縄の米軍基地再編問題に関する報道が気に入らないとして、「とくに共同通信の解説が酷い」などと、くどくどクレームをつけたという。
 かつて小泉進次郎議員から「自由があるのが自民党。自由がないのが民主党」と揶揄された民主党だが、意に添わない報道を目の敵にする姿勢は目に余る。
 この人たちには報道や表現の自由という常識は通じないらしい。
『週刊現代』2012年3月17日号より
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関連:
秘密保全法案 政府の情報隠ぺい体質/国家秘密法案にもなかった警察官僚の影/一般市民も重罰の恐れ2012-02-25 | 政治 
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「重荷を分かち合う。怒りと責任追及に加え、2年目はそのことを読者の皆さんと考えたい」特報部 田原 牧 2012-03-16 | メディア 
 メディア観望 上り坂をゆく覚悟
特別報道部 田原 牧 (中日新聞2012年3月6日 夕刊)
 東日本大震災と東京電力福島原発事故から、間もなく1年がたつ。後者については1年という区切りを感じない。むしろ、事故が2年目に入ると言った方がピンとくる。
 事故発生以来、担当する「こちら特報部」では、今日まで紙面の多くを原発問題に割いてきた。こだわる理由は記者によって異なると思う。個人的には、原発に日本社会の縮図を見たからである。
 原発は放射性廃棄物という未来へのツケと、被ばく労働者という犠牲が不可欠なシステムだ。それを無責任な原子力ムラが増殖させてきた。下地にある差別とムラ構造。それは日本社会のあちこちに顔をのぞかせている。原発はそうした精神風土のあだ花だ。
 東電や政府をはじめ、原子力ムラの虚飾をはぎとろうと奔走してきた。ただ、そうした作業の間も、どこか割り切れない感情を抱えてきた。
■都市生活者の責任
 11日には福島で大きな脱原発集会があり、首都圏からも多数が参加しそうだ。そのことで、福島の友人にこう云われた。「地元には逃げ出したくても、介護や収入に縛られて逃げられない住民たちがいる。都会の人は1日ここに来て、原発は危険だと騒いですぐに帰る。それを不愉快に思う人は少なくない」
 特報部の紙面への批判に聴こえた。そうかもしれない。事故以前にも、原発を批判する記事を書いてきた。だが、私も都会で原発に頼り、安穏と暮らしてきた一人だ。
■避け難い国民負担
 事故で進学を断念した若者の将来。緊急避難で津波に襲われた家族を探せなかった悔恨。荒れる農地。事故の被害はいまも拡大している。
 にもかかわらず、東電も政府も賠償には逃げ腰だ。同社に十分な支払い能力はない。だが、巨額の費用ねん出も理由のひとつに、もっとも稼ぎやすい再稼働へと突き進んでいる。
 東電を徹底的に絞っても、賠償や廃炉のための国民負担は避け難い。その負担軽減に固執すれば、再稼働は必然の流れだ。さらに間もなく、東電の処分や新たなエネルギー計画が固まる。脱原発は上り坂にさしかかっている。
■ただでない脱原発
 もう一度、苛酷事故が起きれば・・・と考えれば、進行中の再稼働の企てに対する答えは明白だ。ただ、それは地方に原発依存を強いてきた構造を正すことでもある。それには賠償問題と同様、都市住民の協力が不可欠だ。原発に頼ってきたツケを払うことに等しい。脱原発はただではない。
 重荷を分かち合う。怒りと責任追及に加え、2年目はそのことを読者の皆さんと考えたい。「福島の痛みを共有する」といった大それたことは言えない。けれども、この事故は「誰かの犠牲」を無言で認めるような社会を変える機会でもある。
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