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「再稼働ありき」包囲〜国会、地元自治体、世論など「オール日本」で再稼働に慎重論

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「再稼働ありき」包囲
中日新聞《 核 心 》2012/4/4Wed.
 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働をめぐり3日夜行われた野田佳彦首相と関係3閣僚の協議は、判断を先送りして、約1時間で終わった。3月中にも四者協議で安全性を判断し、地元との調整に入る方針だったが、スケジュールは大幅にずれ込むことになった。国会、地元自治体、世論など「オール日本」で再稼働に慎重論が高まる中、「再稼働先にありき」の姿勢の転換を図らざるをえなくなった形だ。
■5月5日
 政府は、大飯原発を再稼働するタイムリミットを「5月5日」としてきた。現在唯一稼働している北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が定期検査入りする日だ。それまでに大飯原発で再稼働しなければ日本は「原発ゼロ」になる。いったん「ゼロ」となれば、再稼働は難しくなる、というのが政府・民主党の理屈だ。民主党の前原誠司政調会長も「5月5日までに再稼働が図られるのではないか」と明言している。
 だが「5月5日」までに再稼働するにはあまりにも日程が窮屈だ。
 安全評価(ストレステスト)の一次評価の審査結果を妥当とする原子力安全委員会の審査結果が出たのは3月23日。
 地元の理解を得たうえで、政府が再稼働を最終決定するスケジュールを考えると、四者協議での安全性の確認は、遅くとも4月初旬までに済まさなければならない。そのためには、安全評価の内容を吟味することなく、形式的に四者協議を開いて「安全」と判断するしかない。
■慎重姿勢
 しかし世論は、このような「再稼働先にありき」の方針を容認する空気ではない。
 大飯原発が立地している福井県だけでなく、隣接する京都府や滋賀県も「地元」に含めるよう政府への圧力を強めている。
 関西電力の筆頭株主である大阪市も再稼働に慎重な姿勢を鮮明にし、関電の定款に脱原発を明記する株主提案を行う方針を打ち出した。大阪維新の会の代表として、次期衆院選に向けて注目される橋下徹大阪市長は「今しかチャンスがない。このまま再稼働では何も変わらない」と発言のトーンを高めている。
 それだけではない。電力の安定供給のために再稼働推進の旗振り役とみなされていた経済界も、中小企業を中心に脱原発を目指すネットワークが発足。
 国会内では脱原発を求める議連が次々に発足しようとしている。
 枝野幸男経済産業相は2日の参院予算委員会で「現時点では私も(再稼働に)反対だ」と明言。枝野氏は3日には「(一次評価の)精査の途中段階での認識を言った。今日は昨日の段階とは違う」と修正したものの、原発を所管する閣僚本人の発言は、判断先送りを決定づけた。
■次の照準
 ただ政府は再稼働をあきらめたわけではない。先送りしただけだ。
 今後、首相と3閣僚の会合を重ねながら、安全性を確認するとともに、地元の反応を見極めながら判断する方針。
 政府の一部には、まだ「5月5日」にこだわる意見も残っているが、次のタイムリミットは電力需要が高まる「夏」に照準を合わせる意見が出ることも予想される。
 3日の四者協議で、首相は「国民の視点」で安全性を判断する考えを強調した。だが、首相から枝野氏に作成を指示した暫定的な安全基準が国民から見て十分でなく、「再稼働先にありき」と映るようなら、政府に対する包囲網は変わらない。
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■大飯原発再稼働問題 嘉田知事「“理解”ではなく“同意”必要」
MBS NEWS 2012年04月04日(水) 12時34分
 福井県の大飯原発の再稼働をめぐって枝野経済産業大臣が3日夜、「滋賀県と京都府の理解は必要だが、同意ではない」と述べたことについて、嘉田知事は「同意が前提」だと反発しています。
 原子力安全委員会が「再稼働」へのお墨付きを与えた関西電力の大飯原発3号機と4号機。
 最終的な判断を委ねられた政府は、福井だけでなく隣接する滋賀県や京都府の意向も踏まえるとしています。
 しかし3日の閣僚会議で枝野大臣が、滋賀と京都への「理解が前提だが同意ではない」と発言、滋賀県の嘉田知事は反発しています。
 「地元として同意は求めていきたい。国会の(福島)事故調査結果を待たずに政治的判断をするのは、国民の理解も得にくい」(滋賀県 嘉田由起子知事)
 京都府の山田知事も再稼動に反対の意向を示しています。(04/04 12:06)
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あれから一年、早くも復活する原発「安全神話」 / 再稼動が他党や経済界との取引材料に 2012-03-16 | 地震/原発
 PRESIDENT Online 2012年3月15日(木) 藤野光太郎
 「3.11福島原発事故」から1年。相変わらず原子炉内部では頻繁に異常が発生し、現場作業も遅々として進んでいない。事故収束にはほど遠い情況だ。
 国内各地の空間線量測定値は事故後、一様に上がっており、陸海空に拡散する放射性物質は今も汚染地域・海域を広げつつある。また、汚染された「食」は、政府が画策した“底上げ規制値”以下という手掛かりだけを頼りに全国で流通している。もはや、汚染地域は福島とその周辺だけではない。日本全国が“事故現場”となってしまったのだ。
 福島県の定時降下物測定値を昨年3月まで遡ると、事故直後に降り注いだ大量の放射性核種は昨秋までにいったん落ち着いていたにも関わらず、今年1月には400ベクレル超、2月も350ベクレルという高い数値が検出されている。いずれも放射性セシウム134と同137が中心だ。日常生活でセシウム被曝が恒常化してしまったということである。
 と同時に、原子炉内部の異常が続いている。2月には2号機圧力容器温度計の値が急上昇。東電は「計器の故障」と説明したが、その後もたびたび異常な温度上昇が続く。3月に入っても圧力容器底部で温度計の1つが異常な数値を示した。これに対して東電は、驚くべきことに「計器故障の可能性があるため監視対象から外した」と発表した。
 危険を監視するために設置した計器が異常温度を報知すれば、まずは状態を確認する。異常な環境だからこそ計器が故障し続けているかもしれず、実は温度が異常で計器は正常である可能性も高いからだ。これを不明にしたまま納得できる説明もせず「監視対象から外す」との発表に、多くの国民が不審を抱いた。
 つまり、事故後1年が経過した今もなお、国民は政府や東電に対して、情報隠蔽やデータ改竄を続けているのではないかとの疑惑を払拭できずにいるということだ。事故責任を問われるべき東電幹部や関係官僚は誰一人として断罪されず、被害者の生活をズタズタにしておきながら補償を渋る東電と金融機関は国庫で救済され、財源には国民の新たな税金が充てられる。危険は広がる一方だ。事態は好転せず、問題は何も解決していない。
■再稼動が他党や経済界との取引材料に
 それどころか、すでに崩壊したはずの「神話」が今、政府と電力会社、原発関連企業、そして、御用学者や御用メディアを通じて再び甦りつつある。「安全は、技術革新と基本設計、制度改革で取り戻せる」「化石燃料の高騰を考えれば、原発のコストはそれほど高くはない」「温暖化防止を考えれば、エネルギーミックスとして原発がやはり必須だ」「原発を止めたら経済が成り立たない」――。
 事故から「1年が過ぎた」のではなく、事故が「2年目に入った」のだ。喉元を過ぎてもいないのに、熱さを忘れたフリをするのか。
 しかし、事故が勃発したら取り返しがつかないのが原発である。日本のような地震列島で完璧な安全対策は不可能だ。復旧や補償に要する途方もない財政出動は、原発に経済合理性がないことを明示している。CO2による地球温暖化説にも根強い異論がある。そもそも、世界のCO2排出量の大半を占める米中両国が温暖化防止にはそっぽを向いており、日本の努力は無駄だと分かっているからこそ、民主党政権も削減ルールから離脱しようとしているのだ。原発を放棄すれば経済が破綻するから再稼働が必要という理屈は、国民に「悲惨な事故のことなど早く忘れてしまえ」と言うに等しい。
 ところが、最近になって急にこうした理屈を背景にした物言いが、政権中枢から出始めている。
 国内54基中、稼働中の原発数基が4月末までに定期検査で停止すれば、日本の原発は瞬間的に「全停止」となる。その後の「再稼働」について、政権の顔ともいえる面々が「やる方向」であることをちらちらと洩らし始めたのだ。
 2月24日、事故直後の官房長官として福島県民をミスリードした枝野幸男経産相が、BS番組で「今の電力需給状況では稼働させていただく必要がある」と述べ、再稼働がなければ電気料金は「5%とか10%とか15%とかいうレベルで上がる」と発言。3月に入って早々、今度は細野豪志環境省兼原発事故担当相も「安全性が確保できたものについて再稼働は必要だと思う」と発言(4日付、産経新聞)。その前日には、野田佳彦首相が「再稼働を政治判断した時には、政府が地元自治体を説得する」との意向を海外メディアに明言した。
 「今、水面下で政界再編の駆け引きが進行中です。再稼働は他党や経済界との取引材料です」(野党議員秘書)。
 事実であれば、とんでもない話だ。
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