浜岡再稼動 争点に 「御前崎市長選 きょう告示」
中日新聞 朝刊 《核心》 2012/4/8 Sun.
中部電力浜岡原発が立地する静岡県御前崎市の市長選が8日告示される。福島第1原発事故後に迎える市長選は告示直前、巨大地震で想定される津波の高さが最大21?と大幅に上方修正されたことから、原発が争点に急浮上。関西電力大飯原発3、4号機をめぐる再稼働の是非が大詰めを迎えるなか、選挙結果に全国の注目が集まっている。〈社会部・鈴木龍司〉
揺れる「原発城下町」
■特需
御前崎の海岸沿いを走る国道150号。トラックや建設作業員を乗せたマイクロバスが浜岡原発をひっきりなしに往復する。市内のビジネスホテルは、どこも満室状態。中心部の飲み屋街も連日、大勢の酔客でにぎわい、市商工会の担当者は「地元にいろいろな面で金が落ち、経済が活気づく」と話す。
東海地震の震源域に立つ浜岡原発は福島第1原発事故後の昨年5月、当時の菅直人首相の要請で全面停止した。中部電力は昨年11月に津波対策として、敷地内に海抜18?の巨大な防潮堤建設に着手。年内の完成を目指して、一日平均800人近い作業員が働き、堤防の工事が本格化する春以降は1000人に膨らむ見通しだ。
(略)皮肉にも停止が生んだ特需に街は沸く。
■変化
浜岡1号機が運転を開始したのは1976年。以来、旧浜岡町の時代を含め街は原発とともに発展した。
1〜5号機の建設で、市が国と県から受けた原発交付金は計400億円。人口3万6千人のうち、1500人が中部電力や関連会社で働く。典型的な「原発城下町」で、過去の市長選でも原発が目立った争点になることはなかった。
新たな津波高予測 衝撃
ところが、今回は福島事故の後。風向きが変わりつつあるところへ、内閣府の有識者会議が先月31日に公表した「南海トラフ」の巨大地震予測の見通しが追い打ちをかけた。
浜岡周辺の津波想定は従来の高さ7・1?から21?に大きく引き上げられた。最大級の津波なら、中部電力が浜岡再稼働に向けて建設中の防潮堤を乗りこえる。
■関心
選挙戦は今のところ、3選を目指す現職(64)に新人2人が挑む構図だ。新人では、元市議(57)が「任期中の運転再開は認めない」、共産推薦候補(60)が「廃炉にする」と、いずれも浜岡の再稼働に否定的。これに対し、現職は「国の福島事故の検証が終わったら、市民の意見を聞いて検討したい」と慎重姿勢を崩さない。
新人陣営の幹部は「福島事故後『原発は危険』という声なき声が表面化している。有権者の関心は高い」と手応えを口にするが、それがどの程度、票につながるかは懐疑的な見方も根強い。
浜岡が停止して1年近く、市は昨年6月、6号機の建設計画が不透明となり、あてにしていた7億2500万円の交付金を当初予算から外して減額補正するなど原発依存の財政が改めて浮き彫りになった。
防潮堤の特需も長続きはしない。市内の金属加工会社に勤める伊藤伝蔵さんは(62)は「浜岡停止は、市民がこれからを考えるいい機会になった。原発の是非だけでなく、その後の街の将来も示してほしい」と注文する。
投開票は15日。政府が大飯3、4号機の再稼働を判断する時期と重なり、選挙結果はその行方を左右する。
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浜岡原発 地震と津波で福島原発2号機と同様の危険との指摘
2012年4月8日(日)16時0分配信 NEWSポストセブン
内閣府が設けた有識者検討会『南海トラフの巨大地震モデル検討会』は3月31日、東海や東南海、南海エリアで100〜150年おきに繰り返し発生するとされるM8級の巨大地震・南海トラフについて、その被害予測を公表した。海洋で発生するこの地震の被害は揺れだけにとどまらず、大規模な津波が懸念される。
津波被害を考えるうえで忘れてはいけないのが、静岡県御前崎市にある中部電力浜岡原子力発電所の存在だ。
公表された浜岡原発周辺で想定される最大震度は7。津波の高さは21メートルとされている。
菅直人・前首相の要請により、2011年5月14日に原子炉は稼働を停止しているが、再稼働に向け津波対策を着々と行ってきた。しかし、現在建設中の防波壁は18メートルだ。
「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の委員を務めた関西学院大学・室崎益輝教授(都市防災工学)は次のように話す。
「いまの堤防では当然最悪のケースは防げません。津波がはいってこないように、より巨大な堤防を作るなどの対応に迫られることでしょう。それだけこれまでの想定が甘かったということです」
現在、運転停止中の原子炉だが、地震と津波に襲われたときの危険性は稼働中と大きく変わることはない。京都大学大学院・小出裕章助教(原子力工学)は、浜岡が「第2の福島」になる可能性をこう指摘する。
「稼働していなくても、核燃料は絶えず冷やし続けなければなりません。いま燃料は使用済み燃料プールにはいっていると思いますが、低温を維持するための循環装置が地震や津波によって破壊されてしまえば、再び核燃料の温度は上がり、メルトダウンしてしまう危険性がある。福島原発の2号機がまさに同じような状況でした。
しかも、東京と浜岡原発は約188キロメートルしか離れていません。福島原発よりも20キロメートルも東京に近い浜岡原発で同様の事故が起きてしまえば、東京中が放射能汚染の大パニックに見舞われることになりかねません」
福島原発の事故によって、首都圏は水道水、土壌、はたまた母乳からも放射性物質が検出された。東京ではコンビニから飲料水が消え、子供を屋外で遊ばせない家庭も多かった。西風が吹く日本列島では、浜岡原発から発生する死の灰は関東地方に降りそそぐ。福島よりも近い浜岡で同様の事故が起きれば、より大きな騒動になるのは必至だ。
また、首都圏に限らず、名古屋市や大阪市など大都市にも近い距離に存在することも問題だ。東西をつなぐ幹線道路や東海道新幹線も近くを走っているため、日本中がパニックになることも。
※女性セブン2012年4月19日号
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◆東海地震予想震源地の真上に建つ「最も危険」とされる浜岡原発 中部電力は地盤は硬いと言うが 2011-04-08 | 地震/原発
「最も危険」とされる浜岡原発で戦いが再燃
JB PRESS(2011年4月7日付 Financial Times)
塚本千代子さんは先月まで、つまり、黒く焦げて煙を上げる福島第一原子力発電所の原子炉建屋がテレビでお馴染みの映像になるまで、自分は自然の力が日本の原発に与え得る最悪の事態を想像してきたと思っていた。
塚本さんは過去25年間、日本の原子力産業、特に1つの発電所に対して不穏な考えを抱き、反対運動を行ってきた。その発電所とは、福島原発ではなく浜岡原発だ。福島から南へ約400キロ、静岡県内の彼女の自宅から車ですぐのところにある、福島原発と同様の年式と構造の発電所である。
浜岡原発は何年もの間、日本の反原発運動家にとって最大の敵となっていた。浜岡原発が建っている土地は大きな地震断層の中心地の真上にあるため、日本で最も危険な原子力発電所だ、というのが彼らの主張だ。
■東海地震の予想震源地の真上に建つ原発
これらの断層は、100年から150年ごとに大きな地震を引き起こしてきた。前回大地震があったのは1854年で、地震学者たちは今後30年以内にマグニチュード8以上の地震が起きる可能性が80%以上あると考えている。
日本政府の元原子力アドバイザー、石橋克彦氏は、浜岡原発は予想される東海地震の巨大な断層面の上に位置しているため、日本で「最も危険」な発電所だと話している。
「私は、地震で制御棒が抜け落ちて、手に負えない核反応を招くような事態を心配しているんです」。塚本さんはこう言う。
「原子力に反対する私のような人間ですら、福島があれほどひどく壊れるとは思っていませんでした。会社側は何度も繰り返し、安全だと言っていたのに」
最上階の展望台から5つのきれいな原子炉建屋とその先の太平洋が見渡せる、浜岡原発の明るい展示館にいると、このような不安は場違いな感じがする。
展示館の1階には、毎回ぴたりと定位置に収まる動く制御棒を備えた、沸騰水型原子炉の実物大の断面模型が置かれている。この発電所のマスコットキャラクター(ピーナツの形をし、青いモジャモジャ眉毛の黄色いマスコット)が30分ごとにモニターに現れて、原子力の原理を説明する。
塚本さんが所属する反原発団体「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」は2002年、浜岡原発の運転差し止めを求めて運営会社である中部電力を訴えた。
地裁は2007年に中部電力に有利な判決を下し、現在は控訴中だ。
静岡ネットワークの弁護士の1人、只野靖氏は、人口3万4000人の地元の街、御前崎市では原発に対する「反対が事実上全く見られなかった」と話す。
■原発によって雇用や税収のほか、一時金を得てきた御前崎市
御前崎市は、浜岡原発が生み出す雇用と税収のほかに、新たな計画が承認を必要とするたびに高額の支払いを受け取る。中部電力は1996年に、5基目の原子炉の建設許可と引き換えに御前崎市に25億円を支払ったと、市の当局者は認めている。
展示館では、50キロ離れた静岡市からやってきたオオムラ・アキヒトさん、キヨコさん夫妻が、福島原発の危機で自分たちも浜岡原発の安全性に初めて疑問を持ったと語ってくれた。「ずっと原発は安全だと信じてきましたが、正直言って心配です」。オオムラさんはこう言って、自分の兄弟は中部電力で40年間働いたと付け加える。
反原発の運動家たちは、福島原発の事故によって、地元の人が浜岡原発は安全だと断言する当局者の言葉に懐疑的になることを期待している。
浜岡の安全性に関する議論は、考えられる震源の深さや「アスペリティ」(構造プレートがぴったりとくっついた状態で特に強く圧迫されて、地震でより大きなエネルギーが解き放たれる可能性が高い領域)の推定が絡んでくるため、複雑だ。
■中部電力は地盤は硬いと言うが・・・
中部電力は、浜岡原発の真下の地盤は硬いと話しており、福島原発を水浸しにし、非常用発電機を使用不能にしたような津波(最大波は高さ14メートルだったと推定されている)から発電所を守るために、高さ12メートルの新たな防波壁を建設する計画を発表している。
一方、反対派は、地震学調査は決定的なものではなく、中部電力は土地について確信を持つことはできないと話す。彼らは、日本の原発設計者による過度に楽観的な想定の歴史を指摘する。
塚本さんは、自分の所属する団体の運動が浜岡原発の最も古い原子炉2基を廃炉にするという2009年の中部電力の決断に貢献したと考えている。一方、中部電力は、廃炉の理由は経済的なものだったと言う。問題の原子炉は古すぎて、安全性を高めるための高額な改修に見合わないというのだ。
福島原発の非常事態が始まってから、中部電力は、浜岡原発の6号機建設の着工時期を2016年まで1年間遅らせると発表した。だが、反対派は、もっと大きな一撃を加えるチャンスだと見ている。
左派の社民党は、浜岡原発を直ちに停止するよう求めてきたし、塚本さんは、今回の原発危機が、静岡ネットワークの控訴審を手掛け、来年判決を下す可能性のある東京高裁に影響を与えると考えている。「福島原発は強力な証拠になるでしょう」と塚本さんは言う。〈By Jonathan Sobl〉
Financial Times
サーモンピンクの紙面で知られる英国の高級紙。1888 年の創刊以来、金融関連の報道に強く、経済、国際、政治問題についても報道の正確さに定評がある。世界発行部数は約44万部。読者総数は推定150万人に上る。
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