NET IB NEWS「本気の安保論」日本政策研究センター研究員 濱口和久
石原発言と尖閣諸島問題(前)〜日本領土と認識していた中国
2012年4月19日 19:00
<中国の批判は筋違い>
石原慎太郎東京都知事は4月17日、米国・ワシントンで講演し、日本固有の領土である尖閣諸島(沖縄県石垣市)の一部を都が買い取る意向を表明した。すでに島を所有する埼玉県在住の男性の同意を得ており、今年中の取得を目指すとしている。
石原知事が買い取りの検討しているのは、尖閣諸島で最大の魚釣島、そして北小島、南小島の3島だ(最終的には男性の親族が所有する久場島の取得も目指す)。
尖閣諸島は5つの無人島からなっている。大正島は国有地で、それ以外の4島は民有地だが、安定的な維持・管理を図るため、日本政府が借り上げている。
石原知事の発言を受けて、中国政府は「不法で無効だ」などと猛反発している。そもそも尖閣諸島は日本の領土であり、日本国内でだれが所有しようが、中国政府にはまったく関係ない話である。中国政府の姿勢は内政干渉に等しい行為だ。
<いつから中国は、尖閣諸島の領有権を主張し始めたのか>
昭和43年(1968)9月、日本、台湾(中華民国)、韓国の海洋専門家が中心となり国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力を得て、東シナ海一帯にわたって海底の学術調査を行なった結果、東シナ海の大陸棚に、石油資源が埋蔵されていることが正式に確認された。
当時、中国(中華人民共和国)は国際連合に加盟しておらず、文化大革命の影響で国内が混乱していたため、共同調査に加わる余裕すらなかった。
この共同調査が契機となって、台湾が71年4月に、共同調査に参加しなかった中国までもが同年12月に、相次いで尖閣諸島の領有権を主張し始める。
尖閣諸島の領有権問題は、東シナ海の大陸棚に石油資源が埋蔵されていることが確認されたことによって急に注目を集めた問題である。
明・清代の文献のなかにも中国の領土であったという記録を見出すことはできない。戦前・戦後を通じて中国も台湾も尖閣諸島が日本領土であることに異議を唱えたことは一度もなかった。
<尖閣諸島を日本領土と認識していた中国と台湾>
中国政府が尖閣諸島を日本固有の領土であると公式に認めていたことを裏付けるものとして、58年に北京の地図出版社が発行した「世界地図集」がある。そのなかに掲載されている日本図の尖閣諸島には「尖閣群島」という日本の島嶼(とうしょ)名が使用されている。
その後、中国が領有権を主張し始めたのと期を同じくして、「尖閣諸島は『日本領土』」との表示があった中国で発行されていた地図や教科書のほとんどが回収されるなど、それまでの認識を故意に隠蔽している。
53年1月8日付の中国共産党機関紙「人民日報」資料欄では、「尖閣諸島は沖縄の一部」との記述がある。中国政府が尖閣諸島を日本領土と認めていたことを示す決定的な証拠と言えるだろう。
石原発言と尖閣諸島問題(後)〜新聞報道への疑問
2012年4月20日 12:00
<福田赳夫首相の罪は重い>
昭和47年(1972)9月29日、田中角栄首相が中国を訪問し、日中国交正常化を実現する。この時、「尖閣諸島の領有権問題をはっきりさせたい」とする田中首相に対し、中国の周恩来首相は「ここで議論することはやめよう」と提案したため、尖閣諸島問題は結論が出ないまま先送りとなる。
昭和53年10月23日、?小平副首相は日中平和友好条約を締結するために日本を訪問した際、次のように発言している。
「尖閣諸島を中国では釣魚島と呼ぶ。たしかに尖閣諸島の領有問題については中日間双方に食い違いがある。国交正常化の際、両国はこれに触れないと約束した。今回、平和友好条約交渉でも同じように触れないことで一致した。日中間で対立があるこういう問題は一時棚上げしても構わない、次の世代は我々より、もっと知恵があるだろう。皆が受け入れられるいい解決方法を見出せるだろう」
以上が、有名な?小平副首相の尖閣諸島「領有権棚上げ論」である。
この発言に対して、福田赳夫首相が一言も反論しなかったことで、中国に尖閣諸島の領有権を主張する口実を与えてしまう結果となった。
昭和40年に日韓国交正常化が実現した際、竹島問題の解決は日韓の間で先送りとなった。その結果、韓国による竹島の不法占拠の固定化を招いたという悪い先例がありながら、尖閣諸島問題ではまったくその経験が活かされることはなかったのである。
<新聞報道への疑問>
石原知事の尖閣諸島の買い取り発言を受けて、新聞各紙のスタンスが割れている。産経、読売新聞は買い取り発言を評価する社説を掲げた。
一方、朝日は「尖閣買い上げ―石原発言は無責任だ」、毎日は「石原氏の尖閣発言 都が出るのは筋違い」、東京は「『尖閣』石原発言 都税は暮らしのために」、日経は「都が尖閣を買うのは筋が違う」という見出しを付け、批判する社説を掲げている。
批判する社説に共通するのは、中国との新たな摩擦を生むような行為をするべきではないというものである。摩擦を生む原因を作っているのは日本側ではなく、中国側であることは、近年の尖閣諸島および東シナ海での中国の行動を見れば明らかではないのか。
それなのに石原知事の発言を批判する朝日、毎日、東京、日経新聞の態度は、中国を利するだけだ。日本の国益を損なう原因を作っているのは、石原知事ではなく、批判的な社説を掲げているこれらの新聞なのである。
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〈来栖の独白 2012/4/20 Fri. 〉
同感。わけても最下段<新聞報道への疑問>は、わが意を得たりである。中日東京新聞は、〈特報〉など、近年高く評価してきただけに、ひどくがっかりさせられた。予想にたがわず落第点を維持しているのは、「朝日」だ。最低、最悪の紙になりさがった。
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◆尖閣購入/ 対中外交=「事なかれ主義」日本 / 「核心的利益」〜主権・領土問題で外国に妥協しない中国 2012-04-20 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
「日本人が日本の領土を守るため、東京都が尖閣諸島を購入することにした」石原慎太郎・東京都知事
4月16日、米ワシントン市内のシンクタンクでおこなった講演のなかで
日本の論点PLUS 文芸春秋編 「この人の重大発言」更新日: 2011/04/19
米国を訪問中の石原慎太郎・東京都知事は、4月16日午後(日本時間4月17日未明)、ワシントン市内にある保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団」で講演し、都が尖閣諸島のうち、魚釣島、北小島、南小島の3島を購入するため、地権者(埼玉県の民間人)と交渉、基本合意に達したことを明らかにした。
尖閣諸島周辺海域では、2年前の中国漁船と日本の巡視船の衝突事件以来、毎月のように中国の漁業監視船「魚政」や海洋調査・監視船「海監」による侵犯が続いている。海上保安庁の巡視船は、これらの中国船にたびたび警告を発しているものの、「この海は中国領だ。われわれは正当な業務をおこなっている」などと応答するばかりで、いっこうに侵犯を止めようとしない。今年3月には、「海監」の責任者が中国共産党機関誌「人民日報」のインタビューに答えて、「釣魚島(魚釣の中国名)海域での巡視は、日本が40年余り強化してきた実効支配を弱める効果がある(中略)釣魚島を窃取しようとする(日本の)企てを打破する」と、侵入の目的を公言するほどだった(産経新聞4月18日付より)。ちなみに日本政府は、このときとりたてて抗議もせず、今日にいたっている。
尖閣諸島の領有をめぐってエスカレートする中国の動きに危機感を抱いた石原氏の冒頭発言だが、続けて「中国は『日本の実効支配を崩す』と言い始めたがとんでもない話だ。このままでは危ない。(尖閣諸島を)国が買い上げればいいが、買い上げない。東京が尖閣を守る」(日本経済新聞4月18日付)と述べた。
尖閣諸島が、歴史的に日本固有の領土であることは論をまたない。1884年(明治17年)に福岡県出身の実業家・古賀辰四郎が尖閣諸島を探検し、報告を受けた明治政府は、そこが無主・無人の島であることを確認して95年(明治28年)に日本領土に編入した。翌96年、政府は、尖閣諸島(全部で5島)のうち国有として残された大正島をのぞく魚釣島、久場島、南・北小島の4島を古賀に30年の期限で無償貸与した。古賀は、この地でカツオ節製造などの事業を開始し、最盛期にはこの島に約250人が暮らしたという。古賀の死後は親族が事業を継承し、1932年(昭和7年)に、古賀の子息が4島の有償払い下げを受けた。
しかし、40年(昭和15年)、事業は閉鎖され、4島はふたたび無人島になり、45年の沖縄戦以降は、米軍の占領下に置かれた。この間、中国が尖閣諸島を自国領と主張したことは一度もなかった。じっさい1950年頃、中国で出版された公的地図にも、尖閣諸島を日本領と明記したものが残されている。
ところが、1970年代になって周辺海域の海底に石油や天然ガスなど大量の地下資源が埋蔵されている可能性が高いことが確認されると、中国や台湾が一転して領有権を主張し始めた。中国が領海法を定め、「釣魚島」を中国の領土と明記したのは1992年のことである。中国の調査船・漁船が尖閣諸島水域に堂々と侵入したり、中国や台湾・香港の活動家が魚釣島に上陸を試みるなど、トラブルがあいつぐのは、それ以降のことだ。
いっぽう、魚釣島など4島の払い下げを受けた古賀家は、戦後、これを埼玉県の知人(栗原家)に譲渡した。4島のうち、戦後、米軍射爆場として使用された久場島は、72年(昭和47年)の沖縄返還とともに防衛庁が借り上げ、現在は米軍が使用している。残り3島(魚釣島、南・北小島)は、長い間、民有地として維持された。ちなみに、尖閣諸島で現在、国が所有しているのは、大正島だけである。
しかし、多発する日中間のトラブルを憂慮した日本政府は、2002年(平成14年)、「尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持のため」にと、残り3島も栗原家から借り上げ、以後、毎年2000万円以上を支払ってきた。また、「所有者の意向」という理由で、政府の許可なく尖閣諸島に上陸することを禁止してきた。
今回、石原知事が栗原家と水面下で進めた交渉とは、この3島の買い取りについてである。詳細はまだ不明だが、買い取り価格は15億円程度になるといわれる。東京都には「2億円以上を支出する場合は都議会の承認が必要」というルールがあり、民主党が多数を占める都議会で承認されるかどうかは不透明だ。これについて、東京都の猪瀬直樹副知事は、「国民全体の寄付が集まれば、都が計上する予算は減る」(朝日新聞4月18日付)と述べ、全国的な寄付があれば東京都の負担は軽減できるとの考えを示した。
石原発言に対する、中国、台湾の反発は大きかった。中国政府は、17日、外務省の劉為民報道局参事官が、「釣魚島は古くから中国の固有の領土であり、中国が争う余地のない主権を持っている。日本によるいかなる措置も不法であり無効だ」(日本経済新聞4月18日付)という談話を発表。ネット上には、「中国政府が先に買ってしまえ」とか「中国の弱腰が日本に増長を許した」などという書き込みが躍った。同じ17日、台湾外交部(外務省)の章計平報道官も、「日本の政治家による釣魚台(尖閣諸島の台湾名)に関する発言はいっさい受け入れられない」(朝日新聞4月18日付)と強硬に抗議した。
突然の事態に政府も戸惑いを隠せず、17日の記者会見で、藤村修官房長官が事実関係を承知していないと論評を避け、「必要があれば国有地化を進める」と示唆するにとどめた。領土問題や海洋資源問題の専門家である山田吉彦東海大学教授は、「石原氏の行動には、政府の動きを求める意図を感じる」(産経新聞4月18日付)と推測する。今回の爆弾発言、対中外交を事なかれ主義で進めてきた政府に、「尖閣諸島国有地化」という選択肢があることを突きつけただけでも、大きな意義があるとの見方が大勢だ。
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【主張】
尖閣「購入」 石原構想で統治強化を 対中危機意識を共有したい
産経ニュース2012.4.19 03:09 [尖閣諸島問題]
東京都の石原慎太郎知事が米国で講演し、「東京都が尖閣諸島を購入する」との構想を明らかにした。すでに魚釣島、北小島、南小島を所有している地権者との交渉も進んでいるという。
日本固有の領土である尖閣諸島を守り、実効統治を強化していくための有効な提案だ。国を挙げて支持したい。
石原氏の発言は「中国が(尖閣を狙って)過激な行動に走り出した」「本当は国が買い上げたらいいが、外務省がびくびくしている」「日本人が日本の国土を守るために(都が)島を取得する」という趣旨の内容だ。
≪政府は国有化をめざせ≫
この発言には、尖閣周辺で領海侵犯などを繰り返す中国に対する危機意識と、日本政府の腰の引けた対中姿勢への憤りといらだちがうかがえる。米国で講演することにより、尖閣諸島の日本領有を世界に発信し、国際社会に訴える狙いもあったとみられる。
石原発言を受け、藤村修官房長官は「必要ならそういう(国有化)発想で前に進めることもある」との認識を示した。野田佳彦首相も18日の衆院予算委員会で「所有者の真意を改めてよく確認する中で、あらゆる検討をしたい」と述べ、国有化も選択肢とする考えを示唆した。
石原氏に刺激されたとはいえ、野田政権も前向きな対応を示したのは当然だ。
尖閣諸島は現在、魚釣島など4島を民間人が所有し、国が賃借料を払って借りている。民主党政権は尖閣周辺を含む39の離島に名前を付け、うち23を国有財産化するなどの措置を取ってきた。
しかし、尖閣周辺の離島を国有財産化の対象から除外するなど、いまだ十分とはいえない。これを機に、野田政権は尖閣諸島の国有化を真剣に検討すべきだ。
また、尖閣諸島を行政区域として管轄する沖縄県石垣市の中山義隆市長は石原発言を「好意的に受け止めている」と歓迎し、仲井真弘多沖縄県知事も「何となく安定する感じ」と語った。中山市長は「市との共同所有が望ましい」とも言っている。
東京都が石垣市などと共有するのも有効な方策である。国であれ、自治体であれ、尖閣諸島が公有化されることは、そこに日本の主権が及んでいることをより明確にする重要な意義がある。
石原氏が指摘するように、最近の中国船の尖閣諸島周辺での横暴な行動は座視できない深刻な事態だ。一昨年9月の中国漁船衝突事件後、中国の海洋調査・監視船などの日本領海侵入は相次いでいる。中国共産党機関紙「人民日報」も譲れない国家利益と位置付けており、中国が尖閣奪取を狙っていることは明白である。
野田政権や沖縄県など関係自治体は石原氏と対中危機意識を共有し、速やかに行動すべきだ。
≪漁業中継基地の設置を≫
尖閣諸島の実効統治をより確かなものにするためには、公有化に加え、有人化も急がれる。
尖閣周辺は漁業資源が豊富で、付近の海底にも石油や鉱物資源が眠っている可能性が大きい。漁業中継基地の設置や海底資源を調査する研究所設立などの知恵を絞ってほしい。公有化により、自衛隊の常駐も可能だ。
かつて、日本も尖閣の実効統治を強めようとした時期がある。中国漁船が大挙して尖閣近海の領海を侵犯した事件から1年後の昭和54年5月、当時の大平正芳内閣は魚釣島に仮ヘリポートを造り、動植物、地質、水質などを調べる調査団を派遣した。
しかし、中国がこれに強く抗議してきたため、調査団を予定より早く引き揚げさせた。その後、本格的なヘリポートや灯台、避難港などの建設計画が一部で浮上したが、中国への配慮から先送りされた。現在は、日本の政治団体が昭和63年に建てた灯台を海上保安庁が管理しているだけだ。
53年8月の日中平和友好条約調印の際も、問題の解決を次世代に委ねたいとする当時の中国の最高実力者、トウ小平副首相の意向もあって、日本の領有権は明確にされなかった。
中国との事なかれ主義外交を続けてきた歴代自民党政権の責任も大きい。日本の領土を国が守るために最善の策を講じることは、主権国家として当たり前のことだ。与野党とも、政治家はこのことを肝に銘じるべきだ。
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