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軽減税率に落とし穴/何を軽減の対象にするかの線引き=業界を所管する官僚の裁量権拡大につながる

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軽減税率に落とし穴!官僚の利権拡大
ZAKZAK 2012.05.24 高橋洋一 連載:「日本」の解き方
 消費税増税の審議に関連して、野田佳彦首相や安住淳財務相から低所得者対策として、軽減税率の導入を検討するという発言が出てきた。
 もともと消費税には、低所得者ほど負担が大きいという逆進性がある。これを緩和するためには、食品などの必需品には低い税率を適用しようというのが軽減税率だ。欧州では既に導入されている。
 しかし、軽減税率には問題点がある。どのような商品を軽減対象にするかの線引きは難しい。こと細かに法律ですべてを仕切るのが難しいので、業界を所管する官僚の裁量に委ねざるをえない。その結果、官僚の利権拡大になる。
 消費税はすべての物品・サービスにかかるから、軽減税率の導入は世の中のモノの数だけ「租税特別措置」をつくるようなものだ。日本では、税率軽減と対象になる業界への天下りはセットだから、霞が関の賛同を得られるし、特定業界に影響力を行使したい政治家にとっても歓迎すべきことになる。
 さらに、新聞業界に対しては、増税プロパガンダへの協力を求める「お礼」にもなる。事実、130社以上が加盟する日本新聞協会は昨年7月、新聞への軽減税率適用を求める要望書を政府に提出している。
 このような問題があるので、軽減税率より低所得者に対して現金給付を行う給付付き税額控除で対応しようというのが、世界の趨勢(すうせい)である。ちなみに、欧州でも軽減税率は好ましくないとされている。実際、必需品にかかる税率を軽減した場合、高額所得者もその恩恵を受けることができるので、低所得者に限って対策を行う方が効率的だ。
 民主党の案でも「給付付き税額控除等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策」を行うとされている。それにも関わらず、ここにきて自民党から軽減税率が浮上しているのは、同じ法案内に書かれている「歳入庁の創設」と関係がある。
 「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること」を検討するとされているが、現在の国税庁に対する人事支配を失いたくない財務省にとって、この条項は削除してしまいたいだろう。
 歳入庁は給付付き税額控除を行う際に必須のものだ。そこで、税額控除を行えば、給付付き税額控除の必要性も薄れて、歳入庁がなくてもかまわないという雰囲気作りがあるようだ。
 もちろん国税庁は財務省とは別組織であるべきだが、国税庁幹部や地方国税局の主要ポストはほとんど財務省出身者によって占められているのは周知の事実だ。このため、必死になって歳入庁つぶしが行われているが、さすがに露骨にやるのはまずいので、知恵を絞って軽減税率を前面に出しているようだ。
 こうした戦略にかけては財務省は凄い。先日もあるテレビ局の人が必死に軽減税率を導入すべきと話していたが、はたしてどこまでわかっているのだろうか、心許なかった。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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「軽減税率」に騙されるな 「小沢無罪」は野田政権にとって痛い話であるが〜勝栄二郎事務次官の・・・ 2012-05-14 | 政治(経済/社会保障/TPP) 
 ドクターZは知っている
 あなたは「常識のウソ」に騙されていませんか。公表されている数字が真実を語っているとは限らない。ドクターZが「数字のウソ」を暴く、「週刊現代」連載の話題コラム。
現代ビジネス2012年05月13日(日)ドクターZ「軽減税率」に騙されるな
 「小沢無罪」という結果は、野田政権にとって痛い話であるが、これでかえって谷垣自民へのすり寄りがやりやすくなった。民主党内の小沢グループが勢いづくのは確実だが、自民党が国会での小沢証人喚問要求などで政権を側面支援するという奇妙な協力関係もできつつある。
 実際、民主党と自民党は財務省の勝栄二郎事務次官の指導の下、増税・解散の2点セットに向けてじわじわと前進している。表向きはファイティングポーズを崩していないように見えるが、実は水面下で最悪のシナリオが進行しているようなのだ。ヴェールをめくってみよう。
 自民党は民主党マニフェストが総崩れになったと主張するために、最低保障年金の創設などの「社会保障政策」を断念させたい。そしてその尻馬に乗る形で財務省が狙っているのが、民主党内反増税グループによって消費税増税法案に盛り込まれた「増税の前提条件」の削除だ。
 なかでも財務省の最大のターゲットは「歳入庁設置」の阻止である。増税関連法案には「税と社会保障料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進める」と書かれており、これを何としても削除したい。国税庁の「マルサ」を抱えていればこそ、政治家やマスコミを黙らせることができるとも言われているように、国税庁は財務省の「飛び道具」。これを歳入庁に改編させられて内閣に取り上げられてはたまらない。だが、この条文を削除するとさすがに目立つので、財務省は知恵を絞っている。ポイントは「軽減税率」だ。
 歳入庁は、税と社会保障料を一体として徴収するので、消費税増税法案が低所得者対策として定めている「簡素な給付措置」を行う上で役に立つ。それに対して、「軽減税率」を導入すれば低所得者対策になるから「簡素な給付措置」は不要になって、歳入庁を創るまでもないという議論が成り立つ。財務省はこれを自民党の修正案に盛り込み、民主党に丸呑みさせようとしているフシがある。
 軽減税率とは食料品などの特定物品に低い税率を導入し、低所得者対策をしようというもの。欧州などでは導入されているから議論も楽だ。また、ここが本音だが、何を軽減の対象にするかの線引きは難しく、それは業界を所管する官僚の裁量権を拡大することにつながる。これが官僚にとってはたまらないのだ。
 消費税はすべての物品・サービスにかかるから、軽減税率の導入は世の中のモノの数だけ「租税特別措置」をつくるようなものだ。当然ながら税率軽減と対象になる業界への天下りはセットだから、オール霞が関の賛同を得られるし、特定業界に影響力を行使したい政治家にとってもオイシイことこの上ない。
 さらに、新聞業界に対しては、増税プロパガンダへの協力を求める「エサ」にもなる。事実、130社以上が加盟する日本新聞協会は昨年7月、新聞への軽減税率適用を求める要望書を政府に提出している。
 国会審議が近づくにつれて、軽減税率の話題がメディアを賑わすようになってきた。だが欧州では、軽減税率で特定業界を利するのではなく「簡素な給付措置」で低所得者対策をするべきだという議論が多くなっていることを報じるメディアはない。
 デフレ下に無駄の削減もせずに消費税増税するのは愚の骨頂だが、その上さらに官僚利権を生む軽減税率を導入し、その結果として歳入庁創設を葬るなど、絶対に許してはならない。
「週刊現代」2012年5月19日号より


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