電力利益の69%は家庭から 企業より割高料金
中日新聞2012年5月23日 13時34分
全国の電力10社の収益構造を経済産業省が調べたところ、家庭向け販売電力量の割合が全体の38%しかないのに、利益の69%を上げていた。販売量の62%を占める企業向けの利益は31%にとどまった。特に東京電力は、利益の91%を家庭向けから稼いでいた。家庭向け料金が企業向けより、大幅に割高になっている実態が初めて明らかになった。
東電が申請した家庭向け電気料金値上げの妥当性を検証する経産省の審議会「電気料金審査専門委員会」が23日に開いた会合で、経産省がまとめた2006〜10年度のデータが公表された。
東電管内では年度平均で、企業向けの販売量が1801億キロワット時で全体の62%を占め、残り38%の1095億キロワット時が家庭向けだった。一方、利益は家庭向けが1394億円と91%を占め、企業向けは143億円とわずか9%だった。
中部電力では、販売量は企業向けが67%、家庭向けは33%。利益は企業向け41%で、家庭向け59%だった。
この日の審議会で、東電の高津浩明常務は企業向けの利益が少ない理由について「新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の全号機停止や燃料価格の歴史的な高騰によって、(家庭向けに比べ)燃料費の比率が相対的に高い(企業向けの)自由化部門の収支が悪化したため」と釈明した。
企業向けの電気料金は自由化されており、電力会社は自由に価格を設定できる。小売りの新規参入者の特定規模電気事業者(PPS=新電力)などとの競争で、販売価格を下げたため、利益幅も少なくなっている。
一方、家庭向けは電力会社が各営業区域で販売を独占。電気料金も発電にかかる費用に利益を上乗せできる「総括原価方式」で、安定的な利益が得られる構造になっている。企業向けの競争が、家庭にしわ寄せされている形だ。
一般家庭が電気の購入先を選べないことに批判がある。これを受け、政府は14年度にも電気事業法を改正して、家庭向けの電気料金も自由化し、総括原価方式も廃止することを検討している。
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電力利益の69%は家庭から 企業より割高料金
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