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「原子力の憲法」基本法変更/「安全保障」の文言

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「原子力の憲法」基本法変更 「安全保障」の文言 真の狙いは
 潜在的核能力?核燃サイクル?  
中日新聞 特報 2012/06/29
技術誇示「抑止力」に
 「わが国の安全保障に資する」。原子力開発の基本原則を定めた原子力基本法に奇妙な文言があえて付け加えられた。原子力利用を平和目的に限定した「原子力の憲法」。それが、なぜ、いとも簡単に書き換えられたのか。「日本の核武装に道を開くのでは」という懸念が広がる中、本当の狙いを探った。(小坂井文彦、小栗康之)
 「原子力基本法には平和利用が明確に規定されている。懸念は当たらない」。細野豪志原発事故担当相は二十六日の閣議後会見で、基本法の改正が、核武装や軍事転用につながるのではという批判を懸命に打ち消した。
 しかし、こうした懸念は内外に広がっている。知識人らでつくる「世界平和アピール七人委員会」事務局長で、慶応大名誉教授の小沼通二(みちじ)氏は「安全保障の文言は解釈があいまい。解釈できないような内容を基本法に載せることは将来、混乱を招く」と批判。韓国のメディアは「核武装の布石と読める」と報道した。
 細野担当相は「政府として積極的に入れようということではなかった」とも話した。原子力政策の歴史に詳しい山崎正勝東京工業大名誉教授(科学史)は「意図がよくわからない。細野担当相の説明通りなら、よく考えずに、うっかり加えたということになる」と首を傾げる。
 原子力基本法とは何か。一九五五年十二月、その前に調印された日米原子力協定を国会で承認する受け皿として制定された。
 「協定と基本法は、日本への原発導入を目的としたものではなかった」と山崎氏は指摘する。当時、米国にも商業用の原発はまだなかった。冷戦下、米国は、旧ソ連を中心とする東側陣営に対抗するため、原子力という最先端技術を通じて西側陣営を結束させようとしていた。平和利用をうたう協定を通じ、各国の反核意識を抑えることが米国の狙いだったという。
 日本でも、水爆実験で被曝した一九五四年三月の第五福竜丸事件をきっかけに、原水爆禁止運動が盛り上がっていた。基本法には「原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限る」と盛り込まれた。基になったのは、日本学術会議が提唱した「公開、民主、自主」の原子力三原則。「基本法は『持たず、つくらず、持ち込ませず』という歴代内閣の非核三原則の法的根拠になった」(山崎氏)という。
 軍事転用については、米国も当初から認めていなかった。日本原子力協定では、米国が日本に研究用の濃縮ウランを貸与し、使用後にプルトニウムを含む核廃棄物を米国に返還する決まりだった。しかし、日本はその後、商業用の原発を導入。核拡散防止条約(NPT)に加盟し、プルトニウムやウラン濃縮技術を核兵器に利用しないことを世界に約束。使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルを進めてきた。
 福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」や青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場(再処理工場)は、そのための施設だ。
逆風下 推進の根拠に
 「わが国の安全保障に資する」の文言は、民主、自民、公明の三党による原子力規制委員会設置法案の修正協議の過程で盛り込まれた。自民党の要求を民主党が受け入れた。
 問題は「安全保障」の意味だ。政府側は「安全保障」について、「核物質の軍事転用を防ぐセーフガード(保障措置)や、核不拡散、(核テロを防止する)核セキュリティーの意味」と説明する。それなら、わざわざ、軍事的な意味が強い「安全保障」という表現を使用しないで、そのまま、「核不拡散、核テロ対策」と表現すれば済む。
 もう一つ疑問がある。政府の主張する核不拡散、核テロ対策などの意味は基本法第二条の「安全の確保を旨として」で十分に言い表されている。あえて「安全保障」という表現を付け加える必然性はないことだ。
 小沼氏は「原子力の安全を確保するという意味であるなら、安全保障の表現はなじまないし、おかしい。どう解釈していいかわからないようにしている」と指摘する。ここに拡大解釈の余地が残されているとみる。
 今回の改正でも「原子力利用は平和の目的に限る」との大原則はそのまま残っている。自民党が将来的な軍事利用の可能性を追求したいのならば、第二条一項の「目的」に「安全保障」と明記する事を主張すればよいのに、そうはしていない。
 なぜか。真の狙いは、「潜在的核能力」のアピールであるとの見方もできる。「いつでも核兵器を製造できる」という姿勢を保つことで、「抑止力」になるという考え方だ。
 自民党の谷垣禎一総裁は最近、「核兵器を開発しなくても、核エネルギーを利用する技術は確立しなければならないという考えが(過去に)なかったとは言えない」と発言。その上で「日本が原発の技術を保持していかないと、核兵器保有国だけが原子力エネルギー技術を持つことになる。安全保障などの面で、そういうことになっていいのか」と述べるなど、潜在的核能力に肯定的な見方を示している。
 核燃料サイクルでは、使用済み核燃料からプルトニウムを生成することができる。既に日本では、海外に依頼して再処理した分を含め、大量のプルトニウムを保有している。プルトニウムは核兵器の原料にすることができる。
 「潜在的核能力」を誇示するためには、原発と核燃料サイクルの維持が前提となる。
 ところが、核燃料サイクルは風前の灯だ。再処理工場は度重なる不具合で未だに完成していない。もんじゅの稼働にいたってはいつになるかわからない。国の原子力委員会の議論でも再処理より地中に埋める直接処理の方がコストが安いという試算が出ている。
 あえて「安全保障」の文言を入れたのは、逆風の中、原発と核燃料サイクルを維持する根拠とするためではないかという見方も成り立つ。
 社民党の服部良一衆院議員も、その点を指摘し、「外国の使用済み核燃料を日本が引きとり再処理することで、核燃料サイクルを維持する根拠ができるという話もある」と言う。「仮にそのような意図が潜り込まされ、都合よく解釈される余地が残されているのであれば、大きな問題だ」と批判を強める。
 政府は、今のところ「脱原発依存」の方針に変更はないと説明している。しかし、この「安全保障」の文言が、将来的な「原発維持」への根拠となる可能性は残る。小沼氏は言う。「基本法自体が原発を推進するものであり、(脱原発に向け)この際、全面的に見直すべきだ」
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◆ 核兵器に転用可能なプルトニウム/原発保有国の多くは本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようで 2012-01-24 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
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原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。 *強調(太字・着色)は来栖
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