拘置所内で死刑囚撮影し掲載…フライデー
12日発売の写真週刊誌「フライデー」(発行元・講談社)が、1994年に岐阜県などで4人が殺害された連続リンチ殺人事件で死刑が確定した大倉(旧姓・小森)淳死刑囚(35)を、判決確定前の3月11日に、名古屋拘置所内で撮影したとする写真を掲載していることが分かった。
法務省によると、拘置所の接見室内での写真撮影を禁じる法律はないが、拘置所長の権限で認めていない。
問題の写真は、ジャーナリストの青木理(おさむ)氏が、大倉死刑囚に面会した際に行ったインタビュー記事とともに掲載されている。最高裁が大倉死刑囚の上告を棄却した翌日、青木氏が面会した際に撮影されたといい、同死刑囚が涙を拭う様子がとらえられている。
大倉死刑囚は犯行時19歳で、3月30日に、当時18〜19歳の共犯者2人とともに死刑が確定した。
フライデー編集部は、「編集部独自の判断で撮影・掲載したもので、(死刑囚本人の同意の有無や撮影手段については)コメントしない。報道することに意義があると考えている」としている。(2011年5月12日08時45分 読売新聞)
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〈来栖の独白〉
人の心には崇高な面と卑劣な面とが混在し、踏み絵を迫られたとき、どちらか一方が顔を出す。
光市事件でも、某ジャーナリストが被告元少年の実名をタイトルにして彼やその周辺に取材した本を出版した。
本件でフライデー編集部は、「報道することに意義がある」としているが、どうだろう。どんな意義だろう。教えてほしい。
木曽川長良川事件では、3被告全員が最高裁で死刑確定した。死刑確定よって「更生可能性がなくなった」として、多くのメディアが元少年被告全員の実名報道に踏み切った。私は烈しい違和感を覚えた。
ただ、本件フライデーの死刑囚写真掲載とメディアによる実名報道とに、どれほどの開き、差異があるだろう。読者の卑俗な興味に応えようとする意図に変わりはないように思える。光市事件の被告実名をタイトルにした意図も同様で、暴露によって売り上げを追求したものに違いない。
インターネット上で、名の知れた事件の加害者の実名や家族について知りたい(教えて)、などという書き込みを見かけたこともある。
犯罪は悲しみの心を私に催させるが、その周辺で、人びとの示す劣った興味、それに応えて利益追求する姿は、おぞましさを抱かせてやまない。いずれも、唾棄すべき群像だ。
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◆木曽川長良川事件
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◆木曽川・長良川リンチ殺人事件「少年法が求める配慮の必要性から、中日新聞は3被告を匿名で報道します」2011-03-11 | 死刑/重刑/生命犯 問題
〈来栖の独白〉?
今回、強く、中日新聞を購読していることを嬉しく思った。中日新聞は「更生になお配慮必要」として、3被告を匿名で報道した〈日経新聞も読んでいるが、こちらは実名報道〉。匿名報道の理由も、合理性を満たしたものだ。次のように述べている。書き写させて戴く。
なぜ匿名報道か「更生になお配慮必要」2011/03/11中日新聞朝刊1面
本紙は連続リンチ殺人事件で、事件当時18、19歳だった3被告の逮捕段階から、本人を特定できるような記事や写真の掲載を禁じた少年法61条の趣旨を尊重し、匿名で報じてきました。
61条は、少年の更生や社会復帰の妨げにならないよう社会に配慮を求めた規定です。表現の自由との関係で罰則はなく、社会の自主的な規制に委ねているとされます。
報道は実名を原則とし、重大事件の加害者の氏名は社会の正当な関心事です。人命を奪う究極の国家権力の行使が、誰に対してなされるのかも曖昧にはできません。
3被告の死刑が確定すれば、更生する可能性が事実上なくなったとみなせます。
死刑判決が覆る可能性もほとんどないことから、実名への切り替えも議論しました。
しかし、この段階で更生に配慮する必要はないと言い切れるか、との疑問はぬぐえません。
3被告との面会や書簡のやりとりから内心の変化もうかがえます。死刑執行時まで罪に向き合う日々が残されています。
本紙は、実名報道の目的、意義を踏まえても、現時点では、少年法が求める配慮の必要性はなお消えていないと判断し、これまで通り3被告を匿名で報道します。(東京本社社会部長・大場司)
〈来栖の独白〉?
中日新聞1面の「解説」も、行き届いた正論である。書き写させて戴く。↓
「解説」 刑罰と少年法理念
元少年3人を死刑とした10日の最高裁判決が、被告が少年である点に言及したのはわずか1箇所、「くむべき事情」の一つとして「いずれも少年だった」と触れただけだった。成人被告に対する判決と、ほとんど変わるところのない判決は、年齢は特段重視すべき事情ではないとの考え方をあらためて示したとも言える。
死刑判決された少年事件で、最高裁の判断の分岐点となったのは、1、2審の無期懲役判決を疑問視し、審理を差し戻した山口県光市母子殺害事件の上告審(2006年)だ。
この判決は被告が18歳になったばかりだったことについて「罪の重大性などと比べ総合判断する上での1事情にとどまる」と指摘。今回もこの枠組みを踏まえ、犯行自体の悪質さを重視し、極刑以外の選択肢はないと判断した。
今回の判決は、09年に裁判員裁判が始まって以来、重大な少年事件で最高裁が初めて判断を示す場でもあった。にもかかわらず、更生の可能性をどう検討したのか、まったく触れなかった点には疑問が残る。
凶悪事件を起こした少年にも更生を重んじる少年法の理念は生かされなければならない。死刑という究極の刑罰を選択したのだからこそ、犯罪の重大さとこの理念をどう判断したのか明示してほしかった。(東京本社社会部・小嶋友美)
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◆「光市母子殺害事件」元少年被告の実名表記した単行本2009-09-28 | 光市母子殺害事件
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◆「木曽川長良川連続リンチ殺人事件」実名報道・・・各紙の対応2011-05-09 | 死刑/重刑/生命犯 問題
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「木曽川・長良川事件」死刑囚の写真
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