“理不尽”中国とどう向き合うべきか!フィリピン特命大使を直撃
zakzak2012.08.02
フィリピンが国連海洋法条約に基づき主権を宣言している南シナ海・中沙諸島スカボロー礁について、中国も領有権を主張して監視船を派遣するなど、緊張状態が続いている。沖縄・尖閣諸島をめぐる中国の理不尽な対応と似ている。南シナ海や東シナ海での覇権を求める中国と、どのように向き合うべきなのか。フィリピンのマニュエル・M・ロペス駐日特命全権大使が単独インタビューに応じた。
「スカボロー礁は5つの島を有する無人の岩礁で、周辺海域は長期にわたってフィリピンが実効支配し、排他的水域の一部です。美しいサンゴ礁が広がり、豊かな海洋資源に恵まれています」
ロペス大使はこう語る。スカボロー礁はフィリピンの主島ルソンから230キロだが、中国本土からは874キロの海上にある。中国は領有権を主張し、7月末時点でまだ、周辺海域に軍事的圧力をかけている。
「われわれは、この問題について(海洋に関する国際紛争を解決する)国際海洋裁判所に判断を仰ぐべきだと考えています。フィリピンも中国も国連加盟国であり、国連海洋法条約の批准国だからです」
だが、中国が拒否しているため、現在のところ法的解決の見込みはない。さらに中国は最近、同海域に「海南省三沙市」設立を一方的に宣言した。ロペス大使は毅然として、こう強調する。
「この区域には、わが国の海域も含まれており、断じて認めることはできません。外交ルートを通じて、すでに中国に厳重に抗議しました」
実は、中国人民解放軍の強硬派、羅援(ラ・エン)少将は今月初め、香港のテレビ番組で、尖閣諸島に中国の行政区を設立する戦略を明かしている。スカボロー礁と似た思考といえる。
中国が、フィリピンに対して強硬姿勢をとる背景として、「米軍事基地がフィリピンから撤退して脅威が消えたため」という見方がある。ロペス大使はこれに反論する。
「そもそも、基地の存在より、1951年に締結されたUS−フィリピン相互防衛条約が重要です。わが国に攻撃が加えられたら、米国は排除しなければならない義務があります。そして、南シナ海は太平洋地域の一部としてこの条約に含まれています」
一方、フィリピンはASEAN(東南アジア諸国連合)のメンバーとして、中国との共存の方向も探っている。
「7月9日に開かれたASEAN外相会議で、南シナ海での行動原則を作ろうとしました。実現すれば南シナ海に秩序が生まれ、紛争の発生を防止できたのです。フィリピンはスカボロー礁の情勢を共同宣言に盛り込もうとしました。しかし、ASEAN議長国が反対し、通例の共同声明まで出せなくなりました。ASEANの45年の歴史の中で初めてのことです」
外相会議が失敗した一因は、今年の議長国カンボジアが中国に近いためともいわれている。
「われわれはASEANを信頼し続けます。ASEANの国々が団結すれば、中国も無視できないでしょう。われわれはまた、中国の経済的側面を分けて見るべきです。共存共栄の道はきっとあります」 (ジャーナリスト・安積明子)
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◆南沙諸島:中国の基地化進む/ミスチーフ環礁に建造した「軍事拠点」 2012-08-02 | 国際/中国
南沙諸島:中国の基地化進む…フィリピンが写真公開
毎日新聞 2012年08月02日 09時53分(最終更新 08月02日 10時14分)
【バンコク岩佐淳士】海上に浮かぶコンクリート製の構造物。上には3階建ての建物などが見える。7月中旬にフィリピン海軍が撮影したこの写真は、中国が95年、南シナ海・南沙諸島(英語名スプラトリー諸島)のミスチーフ環礁に建造した「軍事拠点」だ。最近新設されたとみられる風力発電装置やヘリポートらしき施設も確認され、中国が実効支配を進めている様子が分かるという。
ミスチーフ環礁は、中国やフィリピンなどが領有権を争う南沙諸島のほぼ中央に位置。フィリピン側は自国の排他的経済水域(EEZ)内だと主張するが、中国はこの「拠点」を建設以降、周辺に艦船を常駐させている。
フィリピン海軍関係者によると、中国は南沙諸島にこのほか数カ所の「軍事拠点」を建設。ミスチーフ環礁のこの建造物は最大で「中国側は基地をどんどん建て増している」という。
南沙諸島では今年に入り、中国のレーダー施設とみられるドーム型の構造物も確認されている。
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