阪神・金本、必ずグランドに戻ってくる!熱き指導者として
zakzak2012.09.13
これがアニキ流の“円満退団”。阪神・金本知憲外野手(44)が12日、21年の現役生活にピリオドを打ち、現役引退を表明した。連続フルイニング出場など、球史に名を残す数々の記録を打ち立てた一方、ここ数年は右肩の故障などから去就が取り沙汰されてきた。最後は本人の意思に委ねられたが、大ベテランの決断によって救われるものも少なくない。
「ホッとした一面もありますし、悔いもありますし、さみしい気持ちもあります」
これが本音なのだろう。引退を検討しはじめたのは2日の試合前。南信男球団社長(57)に「進退を含めて来季についてしっかり考えたらどうか。どうするかは君に任せる」と通達されたのがきっかけだった。
熟慮すること10日。11日の試合前、南社長と和田豊監督(50)に「今シーズンでユニホームを脱ぎます」と伝えたという。
「いいときのパフォーマンスを出せない自分がいて肩身が狭い。体がしんどいという思いもある」と明かした金本。アンチエイジングの権威で、2006年から金本の肉体を研究し、主治医も務める京都府立医科大の吉川敏一学長(65)はこう話す。
「7月に食事をしたが、そんなそぶりは全くなかった。今季もデータを3回取っているが筋肉、血液、疲労回復のためのホルモン量の数値が全く変わっていない。50歳までできると思っているが、あの肩は手術をしないと治らない。フルスイングしているように見えて、どこかぎこちない」
やはり、自身のことは分かっていたのかもしれない。どうあれ、金本の決断がチームやその周辺に与える影響は少なくない。
再建が不可欠のチームで、金本の扱いは最大の懸案事項。新任の中村勝広GM(63)は「兼任コーチを要請するつもりだった」、和田監督も「代打なら十分いける」としているが、つまり今オフも引退勧告には踏み込めなかったということになる。金本の決断により「悪役」をする必要がなくなったことで、2人は肩の荷がおりた。
実は、球団にとってもありがたいことがある。
すでにクライマックスシリーズ進出はほぼ消滅した消化試合では、甲子園の入場者数も激減。11日のヤクルト戦では2万8141人と初めて3万人を割り込み、12日はさらに2万7754人と減った。当日券も売れ残る苦しい状況だが、金本の引退表明で本拠地での残り9試合は“引退興行”となる。
酒井清史営業部長は「ファンにとっても、金本のプレーを見る機会はカウントダウンに入った。引退セレモニーをどの試合で行うかも含め、たくさんのお客さまに見届けられる形にしたい」と話す。
金本は「優勝に貢献できて、(球界の)最高年俸を4年間もタイガースに払ってもらった。これは冗談だけど、ケガした後の3年間とあわせて、“チャラ”で勘弁してください」と独特の言い回しでわびた。しかし、これでシーズン終了までの試合は球団への最後の奉公になる。
注目されるのは、引退後の進路。本人は「プランはまったくない。考えていない」というが、中村GMは「一般論として、ユニホームを脱いでまずは長年のあかを落として、近い将来、指導者としてグラウンドに戻ってきてくれると熱い期待をもって見守りたい」とエールを送る。
現時点で予想されるのはやはり評論家。ただし金本と関西マスコミとの関係は、必ずしも良好とはいいがたい。
08年に自身の試合後の発言を意図しない形で報道されたとして、試合後の取材を拒否。お立ち台に上らなければ、試合後のコメントがないという事態も当たり前だった。その後も報道陣との距離はなかなか縮まっていないが、ユニホームを脱げば立場は変わる。
メディア側に立った金本がどんな対応をするのか。もちろん経験を生かし、どんな解説をするのかも興味深いところだ。
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真の4番だった金本 落合氏「打たれれば負ける。それだけだった」
2004年から昨季まで中日を指揮し、全盛期の阪神・金本と対戦した野球評論家の落合博満氏(58)は「阪神戦の時は、あいつを抑えるか、打たれるか。抑えればうちが勝つ。打たれれば負ける。それだけだった」と振り返った。
「あいつが打てばチームの雰囲気も変わるからな。だから、4番を張っていたんだよ」と、一時代を築いた強打者を評価した。
▼野村克也氏(野球解説者)私と同じで、もともと大きな期待を受けずにプロ入りし、誰にも負けない努力で、ここまでやってきた。試合後に素振りを欠かさない。努力家タイプの典型である好打者の引退は残念だ。今は後継者不足の時代である。努力と挫折を繰り返した者だからこそ、経験を生かした指導者になれるはずだ。
▼張本勲氏(本紙評論家)一時代を築いた選手だけに惜しいね。今の阪神にあれほどガッツのある選手はいなかったから。私は41歳で引退したけど44歳までよく頑張ったと思う。連続試合出場の記録も含めて立派な成績を残したが、本当に「努力の人」だったね。今は打撃のいい指導者が少ないから、将来は指導者になって「第2の金本」を育ててほしい。
[スポニチ2012年9月13日10:32]
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虎・金本引退、南社長から進退勧告受け決断
サンスポ 012.9.13 05:06
金本、進退勧告受け、引退−。阪神・金本知憲外野手(44)が12日、西宮市内で会見し、今季限りで現役引退することを表明。「こんな成績でも一生懸命励ましてくれて…」を嗚咽を漏らした。南信男球団社長(57)から「進退も含めて考えてみたらどうか」といわれ、10日間、熟考の末に決断。虎に名を刻んだ鉄人が21年のプロ野球人生に幕を閉じる。
無数のフラッシュの中、21年間を凝縮した涙がこぼれ落ちた。慣れ親しんだ背番号「6」に身を包み、プロ野球生活への別れを告げた。10日間、一人悩み抜いての電撃発表。金本が今季限りでの引退を決めた。
「タイガースの歴史の中で一番強くて、お客さんが入って一番人気があるときにプレーさせてもらって、タイガースに来てからは幸せな野球人生だったと思います」
広島から2003年にFAで加入して、2度のリーグ優勝に貢献した。05年には打率・327、40発125打点でリーグMVPも獲得。1492試合連続フルイニング出場という世界記録を樹立する中、弱虎を常勝軍団に変えた。だが、栄光の日々は暗転した。
「この3年間はみじめで自分がみっともなくて、かわいそうというか。自分で言うのもおかしいんですけど、こんなに苦しい人生はあるんかなという3年間でした」
10年に右肩を故障。懸命のリハビリを続け、プレーはできるようになったが、本来の姿にはほど遠かった。バックホームどころか、カットマンまで投げるのが精いっぱい。こだわりを持つ本塁打は今季4本。8月25日の広島戦(マツダ)では左翼守備でランニングホームランを許す屈辱も味わった。
そんな中、“進退勧告”を受けた。9月2日の試合前。南球団社長から「進退も含めて考えてみたらどうかと」と話があった。慰留をされたわけでも、来季のコーチ要請があったわけでもない。来季に向け、若返りを図るチームにあって、進退は自分に委ねられた。功労者の心は揺れ動いた。
2日以降の試合は代打専門に。この間、4打数3安打1打点。「やりたい、やめたい、やっぱりやりたい。その繰り返し。打てなかったら辞めようとなるし、打ったらやりたいと。女との別れ話みたい」。苦悩の連続だったが、球団は今週末に中村GMを含め、拡大編成会議を行う。「いつまでも未練たらしくやるのもなと」。抱える右肩痛と世代交代を見つめ、この日、南球団社長に引退を申し入れた。
「子供にいったら大泣きしてました。母親には一番最初に伝えました。(母は)体のケアをこれからしろと…」。言葉が出ない。涙をこらえきれなかった。
「落ちぶれてからはバッシングとか多かったんですけど…」と嗚咽をもらし、「それでも、こんな成績でも一生懸命、励ましてくれたファンというか、弱っているときに支えてくれた人というのは恩義に思います」。
金本の栄光盛衰と同じように阪神も今季5位に低迷。この日の甲子園も2万7754人と最低観客を更新。九回一死一塁で代打で登場すると、大歓声を受け、右中間へ強い当たりをみせたが、スーパーキャッチされた。この日の敗戦でシーズンの負け越しが決まった。
「何とか1本打ちたい」。今後も1軍に帯同する金本は田淵幸一氏(現楽天ヘッドコーチ)を抜き、歴代単独10位となる475本塁打をファンへの手向けにするつもりだ。功績を考えれば華々しい最後がふさわしい。だが、現実はシーズンの終わりを待つ中での引退表明。肌寒い秋風が身にしみる。虎を強くした鉄人がバットを置く。(高瀬 悟嗣)
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虎・金本引退/真の4番だった金本 落合氏「打たれれば負ける。それだけだった」
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