10月21日
産経ニュース2012.10.21 03:14 [産経抄]
保守合同を仕上げた戦後政界の大物、三木武吉にはOさんという美人の秘書がいた。昭和28年の秋、国会内の廊下で待っていた彼女に対し、悄然(しょうぜん)として会議室を出てきた三木はこう言ったそうだ。「O君、男なんて信用するもんじゃないよ」。▼この年の春、三木は鳩山一郎をかついで自由党内に「分派」をつくり、吉田茂首相への反乱を起こした。内閣不信任案も可決させた。ところが吉田が衆院解散で危機を乗り切ると、鳩山はさっさと自由党本隊に戻ってしまう。「男なんて…」はそのときの言葉だった。▼そんな古い話を持ち出すまでもなく、政界は「だまし」や「裏切り」であふれている。三木にしても「大だぬき」と呼ばれていた。だます方よりだまされる方が悪いとされるような世界でもある。だが今回、野田佳彦首相の「近いうち解散」の空手形だけは許されそうもない。▼何しろ単なる権力争いのための手形ではなかった。消費増税という国民に大きな負担を強いる法案の成立と引き換えに、信を問うことを約束したのである。だから自民党の谷垣禎一前総裁にというより、国民に対して振り出された手形と言っていいのだ。▼約束から2カ月半が過ぎたというのに、実行しようとしない。それどころか、19日の自民、公明との3党首会談では、一票の格差是正など解散の「条件」を防波堤のように積み上げていく。一国の首相に失礼ではあるが、もう「詐欺商法」と言っていい。▼しかも党首会談も、民主党の輿石東幹事長の「首相が新たな提案をする」という「甘言」で開かれたという。これも見事なばかりの「だまし」だ。「首相なんか信用するもんじゃないよ」という言葉だけは聞きたくない。
◆ 落選するから総選挙は避けたいという14人の私利私欲議員のせいで「嘘つき」野田内閣が延命する不条理 2012-10-20 | 政治