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不信任案否決 菅氏のお見事な戦略/菅総理の首は締められていく。もがけばもがくほど、きつく絞まる。

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不信任案否決!あと出し「一定のめど」と「通年国会」で年内続投を図った菅首相の“お見事”な戦略
『週刊 上杉 隆』【第177回】2011年6月3日

 内閣不信任案が否決された。一国会一度しか提出できない不信任案が否決されたことで、菅首相の当面の続投が決まった。
 だが、きのう(2日)の午前中までは、永田町はまったく違う情勢下にあった。与党・民主党内からですら、内閣不信任案に賛成する声も聞かれたのだ。
 2日朝までには、小沢グループを中心とした70名を超える議員が、不信任案に同調する意向を示していた。確かに成立は微妙だったかもしれない。だが、それは、菅政権に打撃を与えるには十分な数であった。朝日新聞もこう書いている。
〈自民、公明両党が一両日中にも衆院に提出する方針の菅政権への内閣不信任決議案に対し、民主党の小沢一郎元代表に近い50人超の衆院議員が賛成する意向を固めた。朝日新聞の取材でわかった。小沢氏系議員らは中間派議員にも同調を求める一方、党執行部は締め付けを強めている。菅直人首相も31日夜、鳩山由紀夫前首相と約2時間会談し、不信任案否決に理解を求めた〉
*衆院本会議直前。流れを変えた“あの人”
 ところが、本会議直前の代議士会で流れが変わる。不信任案可決が濃厚になりはじめた昼前、ある人物の力によって一瞬にして空気が変わった。鳩山由紀夫前首相である。
 前夜にも首相と会った鳩山前首相は、2日午前にも菅首相と会談する。そこで運命の「覚書」を交わしたのだった。
1、民主党を壊さないこと
2、自民党政権に逆戻りさせないこと
3、大震災の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと
〈1〉復興基本法案の成立
〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつけること
 これを受けて、菅首相は代議士会で一定のめどがついた段階での退陣を表明し、党内の不信任決議案への賛成の声を消滅させたのだった。
 「意味がわからないんだけど」
 代議士会の最中、国会の廊下ですれ違った鳩山側近議員の一人は明らかに狼狽していた。さらに別の議員もこう嘆いた。
 「ハシゴを外された。意味がわからない。どうしてあの人(鳩山氏)はいつもこうなんだ。もう絶対に信用できない」
 さらに小沢側近議員のひとりも筆者に電話してきて、こう語気を強めた。
 「終わりだ。完全な不信任案つぶしだろ。こんな簡単な戦略にひっかかるなんて。覚書だと。なんであの家は同じ過ちを繰り返すんだ。信じられない」
 この議員の言うとおり、確かに鳩山家には前科がある。
*歴史は繰り返す!? 鳩山家と覚書の“因縁”
 鳩山前首相の祖父、鳩山一郎首相はGHQから公職追放された際、盟友の外交官である吉田茂氏に首相の座を禅譲した。その際、二人の間にはひとつの「約束」が交わされていた。
 鳩山一郎首相が残した覚書によれば、「政界パージが解けたら、すぐに鳩山に政権を譲り渡す」とある。
 だが、吉田氏はそれを否定、首相の座から降りることを拒み続けた。最終的には鳩山首相は誕生するが、権力闘争の厳しさから浮遊したような鳩山首相は、結果、自らの政治生命を縮めることになった。
 話を戻そう。菅首相は2日午後10時過ぎから開かれた記者会見で、繰り返し、早期の辞任を否定した。ニコニコ動画の七尾功記者の一定の目処についての質問についてはこう答えている。
*「一定のめど」はいつなのか
 「まず、工程表で言いますと、ステップ2が完了して放射性物質の放出がほぼなくなり、冷温停止という状態になる。そのことが私はこの原子力事故のまさに一定のめどだとこのように思っております。ただ、期間の問題は必ずしもその時点ですべてが方向性が決まるかどうか、これはいろいろとモニタリングをしたり、 あるいは除染をしたりということも含めてですね、もう少し時間がかかる可能性は十分あると思っています」
 ステップ2完了までは6ヵ月から9ヵ月かかるとされている。だが、東京電力による作業はまったく進んでいない。むしろ、日々、状況は悪化している。
 すなわち、原子炉の冷温措置が完了するまで菅首相は辞めないということである。4つの原子炉を冷温できる時期は神のみしか知らない。つまり、事実上、辞めないということになる。
 「今回のこの大震災という状況の中で、国民の皆さんからやはり国会で必要なことは、いつでも議論できるようにしてほしいと。そういうご意見をいただいています。それに答えるとすれば、事実上の通年国会。12月のある時期までということになろうかと思います」
さらに菅首相は年末までの国会の延長を明言した。冒頭触れたように不信任案は一国会一度しか提出できない。となると、今年、菅首相を辞めさせる術はなくなったということになる。
 まったくもって見事な戦略である。スピンコントロールとしては完璧だ。
 できたら、菅首相は、こうした素晴らしい戦略を、復興や原発事故対策に使ってほしいものだ。
 いずれにしろ、菅政権は当分の間、続くことになった。
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田中良紹の「国会探検」2011年6月3日
菅政権の最期
 内閣不信任案が否決されたことで「解散・総選挙」の選択肢は消え、菅総理には自ら退陣するしか道はなくなった。しかも与野党を問わず周囲を敵に回したから末路は哀れなものになる。それが菅政権最期の姿である。
 何があっても辞めないと言う最高権力者を辞めさせる事は容易でない。辞めさせるためには国会で内閣不信任案を可決するのが常道だが、総理には「解散権」があり、国会議員全員の首を切って国民に信を問う道が残されている。
 しかし大震災からの復旧、復興が急がれている時に「政治空白」は許されない。菅総理の退陣を迫る側には万が一にも「解散・総選挙」をさせない必要があった。そのためまず野党が内閣不信任案を提出し、しかしそれを否決する中で総理が自らの首を絞めるシナリオが描かれた。
 まず野党第一党の自民党が内閣不信任案を提出できるかが問題であった。国難とも言うべき時期に政争をすれば国民の反発を買う事は必至だからである。国難は黙っていても政権側に有利になる。ところが菅政権はそれに安住し「お友達」だけで国難を乗り切ろうとした。それが政治の停滞を招いている。
 全政治勢力を結集すべき時期にそれをしない姿勢は当然ながら野党の反発を呼ぶ。しかし内閣不信任案を可決するには野党勢力の数が余りにも少なすぎる。与党の中から大量の造反が出ない限り無意味なパフォーマンスで終る。国民から非難されるだけの話になる。
 それを現実味のあるものにしたのは、ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューに答えた小沢一郎氏の「倒閣宣言」であった。小沢氏を支持するグループは民主党内最大勢力であるから、それが内閣不信任案に賛成すれば可決される可能性がある。
 そこで初めて内閣不信任案が現実の問題として政治の俎上に上った。これに対して菅総理の側は一方で「解散・総選挙をやる」と脅し、他方では菅総理が国会の会期延長に言及して賛成派の切り崩しを図った。それによって否決に回った議員も多く、賛成するのは小沢グループ以外にどれほどいるかが焦点となった。
 内閣不信任案が提出された夜、結集した小沢グループの数が絶妙だった。議員本人が71名、代理出席が6名と言われた。その時点では82名の造反があれば不信任案は可決されると言われていたから、あとわずかの数字である。可決されるとも読めるし、されないとも読める。そして菅総理にとっては恐怖を抱かせる数字である。
 絶対可決できる数字を集めてしまえば、本当に可決をしなければならなくなる。しかし目的は可決ではなく、菅総理に自発的な退陣を促す事である。従ってそのあたりを配慮した絶妙な数字だと私には思えた。一方、鳩山前総理や原口前総務大臣も不信任案賛成を明言し、5人の副大臣と政務官が辞表を提出したから菅政権は万事休すの状態である。
 そこで鳩山前総理が菅総理と会談し自発的退陣を促した。会談は物別れに終ったが菅総理は追い込まれた。不信任案採決当日の朝には国民新党の亀井代表も退陣を促す。再度、鳩山前総理が菅総理と会談して退陣を促し、合意書を取り交わした。この合意書がまた絶妙であった。民主党を壊さない事を真っ先に掲げ、自民党政権に戻さない事を第二に、最後に震災対応として復興基本法案の成立と第二次補正予算案の編成の目途をつけるとなっていた。
 不信任案採決直前の民主党代議士会で菅総理はついに「一定の目途がついた時点での退陣」を表明、鳩山前総理は復興基本法案の成立と第二次補正予算案の編成の目途をつけた時に菅総理は退陣すると発言した。しかしこの合意書が表に出れば自民党は断固として菅政権とは手を組めなくなる。参議院で問責決議案を出す可能性が高まる。そうなれば法案は1本も通らなくなる。総理に参議院を「解散」する権限はないから、政権はそこで立ち往生する。
 また合意書には「辞任」の文字がない事から、菅総理は鳩山前総理とは異なる解釈をしてさらなる延命を図ろうとした。これに鳩山前総理が「うそつき」と応じた。海水注入問題と同様の「言った」、「言わない」が繰り返され、菅総理の体質が国民の目にさらされる事になった。
 菅総理の「退陣表明」を聞いて小沢氏は「撃ち方やめ」を指示し、不信任案は否決され、「解散・総選挙」による「政治空白」は避けられた。今後不信任案が提出される事はないから「解散・総選挙」が行なわれる事はなくなった。しかしこの一連の出来事で菅総理の首は次第に締められていくのである。延命のためにもがけばもがくほどきつく絞まる可能性がある。
 この国では「民主主義」をまともに教えていないから、民主政治について国民の多くはとんでもない勘違いをしている。「政局はけしからん」とか「権力闘争ばかりしてなんだ」と言うが、民主主義政治とは国民を守るために権力闘争をする事を言うのである。国民に主権があると言う事は、自分たちの生活を守ってくれないと思ったら、権力者を「ころころ変える」権利があるという事である。
 しかしそれが国民に理解されていない以上、常道ではない仕掛けをして、誰が与野党一致の政治体制の構築を阻んでいるのかを、国民の目に見えるようにしていかなければならない。それが今回の不信任案の否決で始まったと私は見ている。
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菅内閣不信任案否決「死刑に執行猶予がついただけ」―中国
サーチナ2011/06/03(金) 09:51
 自民党などが国会に提出した菅内閣不信任案は2日、反対多数で否決された。決議直前に代議士総会を開いて党内団結による方案否決を確認した民主党だったが、菅首相の退陣時期を巡って早くも団結にほころびが生じた。中国日報は不信任案の否決について「死刑に執行猶予がついただけ」とする評論記事を掲載した。
 2日正午に行なわれた民主党代議士総会で菅首相が一定期間後の退陣を表明した。その意図について、「震災処理が一段落した後で支持率の低い菅首相に対する圧力がより一層高まるとの認識からでたもの」と論じた。
 民主党が土壇場で団結し、各派が大局を重視したというより「利益好感をした結果とみるのが妥当」分析。しかし、菅首相に近い新世代グループと鳩山・小沢両氏の派閥との関係は不透明であり、「場外取引」が功を奏したかは断定することができないと論じた。今後の補欠選挙などで連敗し、党内の亀裂がさらに深まり、ついには「平成時代に日常茶飯事となった政党の離合」という事態に至れば、菅内閣や民主党政権はこれ以上ない災難となるだろうとした。
 このようなことから、今回の「ギリギリの倒閣逃れ」は「死刑に執行猶予がついたに過ぎない」とまとめた。(編集担当:柳川俊之)


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