小沢裁判 指定弁護士の見苦しい「言い訳」と「負け惜しみ」
日刊ゲンダイ2012年11月13日 掲載
だったら強制起訴なんかするな!
<今になって検察の資料不足だと>
小沢裁判の高裁判決は、検察官役を務めた3人の指定弁護士にとって“屈辱的”な中身だった。小沢の無罪だけでなく、1審が認定していた元秘書らの虚偽記載についてまで「不合理」として認めなかった。指定弁護士側にとっては1審より後退する内容で、「完敗」だった。
判決後の会見に3人はバツの悪そうな顔で現れたのだが、中でも顔を真っ赤にして判決を批判したのが村本道夫弁護士。その恨みつらみと負け惜しみは見苦しいのひと言だった。今になって検察の捜査資料の“不備”を敗訴の理由にして、こう言ったのである。
「関係者の事後捜査とか、関係書類が出てくるのが遅かった。西松事件の捜査資料に埋もれていた。私たちが証拠収集できなかった反省もあるが、これが、控訴審で裁判官を納得させられなかった理由だ」
オイオイ、控訴審が始まる前は「新証拠がなくても、1審認定の誤りを指摘すれば足りる」とか大口を叩いていたのはダレだ?
大室俊三弁護士も、自分たちが証拠を出しきれていなかったことを認めながらも、「検察は小沢捜査を早々とあきらめていて、本来、取っておくべき捜査資料がなくなっていた」と指摘。記者からは、「だったら、そもそも強制起訴をしないという判断もあったのではないか」という質問が飛ぶ始末だった。
結局、小沢裁判で指定弁護士は自らの“無能”をさらけ出しただけ。こうなったら、潔く「上告断念」をして、恥の上塗りを避けた方がいい。
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余録:ローマ神話のユースティティアは剣とてんびんを…
毎日新聞 2012年11月13日 01時10分
ローマ神話のユースティティアは剣とてんびんを手にした正義の女神だった。彼女は近代になると目隠しをして描かれるようになる。19世紀ウィーンで出た図像集では剣とてんびんを持ち、目隠しをした上に、その前で法典をささげる天使が描かれた▲いうまでもなく目隠しは、権力や富、予断や偏見に決して惑わされぬ判断の公正の象徴である。ただ一方には、目隠しをしたまま法典が読めるのか、てんびんの傾きは分かるか、そんな突っこみを入れたくなる人もいよう▲さてその動静が常に政局に影響を与える有力政治家への検察審査会の強制起訴だった。それに先立つ検察の捜査から1審無罪判決まで、深刻な政治的波紋を巻き起こしたこの事件だ。目隠ししながらてんびんの傾きを正確に見抜くべき司法の正義も試練にさらされた▲政治資金収支報告の虚偽記載で強制起訴された「国民の生活が第一」の小沢一郎代表の控訴審で無罪判決が下された。事実認定においては1審判決をおおむね踏襲するかたちで小沢代表の無罪を認定したもので、憲法違反などを理由とする上告は難しいと見られている▲「公開の場で黒白をつける」という強制起訴は小沢代表が有力政治家なればこその検審の判断だろう。この無罪判決で「市民感覚」による起訴の見直し論も出よう。ただし検察の特捜捜査の危うさや小沢代表の「秘書まかせ」の釈明を浮上させたのもこの裁判だった▲近代の女神の目隠しは人が人を裁く理性への信頼と、その困難とを同時に象徴しているのだろう。試練に見合った教訓をくみ取って制度を鍛える。それが正義の女神の望むところである。
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陸山会事件:小沢一郎代表、2審も無罪 特捜捜査、迷走のツケ 矛盾つく証拠少なく
毎日新聞 2012年11月13日
元民主党代表で現「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(70)に東京高裁は12日、1審に続いて「無罪」を言い渡した。09年3月の西松建設違法献金事件で元秘書が逮捕され、翌10年には資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反(虚偽記載)事件で自身も容疑者として聴取され不起訴となり、検察審査会による2度の議決で強制起訴された。控訴審判決に至るまで、東京地検特捜部による捜査のずさんさや規正法の不備など、さまざまな課題が浮かんだ。【鈴木一生、和田武士】
◇ゼネコンに傾注
「この証拠で裁判をやれというのか」。10年11月初旬、検察官役の指定弁護士となった大室俊三弁護士は、東京地検特捜部から引き継いだ証拠の少なさに驚いた。代表の収入や資産に関わる資料に手薄さが目立つ。陸山会の政治資金収支報告書の矛盾をつく証拠の一つとなった「資産報告書」に至っては、特捜部ではなく元秘書らの公判を担当する東京地検公判部が、それも捜査終結後に入手していた。背景にあるとみられるのが、特捜部の「見込み捜査」だ。同部が解明に全力を傾けたのは、東北地方で「天の声」を出せるとささやかれた小沢事務所とゼネコンの関係だった。
「工事受注の見返りに、秘書だった石川知裕衆院議員に04年10月、大久保隆規・公設第1秘書に05年4月、それぞれ5000万円を渡した」。代表のお膝元、岩手県奥州市の胆沢ダム工事を巡り、中堅ゼネコン・水谷建設(三重県)の元幹部からそんな証言を得たのは09年夏。東京都世田谷区の問題の土地購入時期と重なる。「裏献金を資金洗浄するための虚偽記載」。捜査はゼネコンマネーの解明に向かって走り始めた。
だが当時、大阪地検特捜部から応援に入り、後に証拠改ざん事件で実刑が確定した前田恒彦元検事は昨年12月の法廷に証人出廷し、一刀両断した。「(土地購入時に小沢代表が提供した)4億円がゼネコンの献金という筋は夢みたいな話。積極的なのは特捜部長や最高検幹部1人だけ。妄想だ」
結局、新生党や自由党の解党時に資金を移し代表が支配下に置いたとされる政治団体「改革フォーラム21」や「改革国民会議」など、ゼネコン以外に不透明な資金の動きが指摘されていた部分に捜査は及ばなかった。
指定弁護士の一人は「贈収賄の摘発に向けた捜査が中心で、収支報告書の記載の違法性を固める証拠収集はほとんどなされていなかった」と残念がった。
◇「隠し録音」が暴く
特捜部の捜査のずさんさを暴き、指定弁護士の立証にも大きな影響を与えたのが、石川議員の「隠し録音」だ。
石川議員は10年5月、検察審査会が代表を「起訴相当」とした最初の議決後に受けた任意の再聴取を録音した。その際、「収支報告書の内容を代表に報告し、了承を得た」と供述したが、取り調べた田代政弘元検事(45)=辞職=は「代表の関与を認める供述を維持すれば、代表の不起訴も維持される」と何度も働きかけていた。
1審で代表を無罪とした東京地裁の大善(だいぜん)文男裁判長は今年2月、隠し録音を根拠に「検事が懐柔、説得して調書に応じさせた疑いがある」として、再聴取分も含め石川議員らの供述調書の多くを証拠採用しなかった。乏しい物証の中、供述調書頼みだった指定弁護士は立証の柱を失った。
隠し録音が明らかにしたのは取り調べの実態だけではなかった。田代元検事は再聴取後に捜査報告書を作成。石川議員が代表の関与を認めた理由として、「『ヤクザの手下が親分を守るためにうそをつくのと同じようなことをしていたら選挙民を裏切ることになる』という検事の言葉が効いた」などと記した。だが、実際にはないやりとりだったことが隠し録音から判明した。大善裁判長は判決で「事実に反する捜査報告書を作成して送付し、検察審査会の判断を誤らせるようなことは決して許されない」と厳しく批判。検察の内部調査で田代元検事の聴取に違法性はないとされたが、捜査の迷走ぶりを印象づけた。
◇指定弁護士の限界
今年4月の判決に、指定弁護士の山本健一弁護士は納得できない表情を見せた。「石川議員が代表から提供された4億円で土地代金を支払った直後、『支払いには同額の銀行融資を充て、代表からの4億円はその担保にする』などと説明をし、代表は『自分が提供した4億円は収支報告書に記載する必要がない』と考えた」。代表側も主張していなかった「推論」に基づく無罪だった。
指定弁護士は控訴趣意書で、秘書らが代表に重大な案件で虚偽の説明をするはずがないと反論。補充捜査で小沢事務所の慣習として「ささいなことでも代表に報告していた」と立証しようとした。
しかし、調書を作成できたのは、04年当時は無関係だった元秘書2人だけ。代表の妻や石川議員の先輩秘書だった樋高剛衆院議員は聴取に応じなかった。「特捜部と比べ、指定弁護士の要請は軽くみられてしまった可能性はある」と、特捜部OBの弁護士は話す。
一方、代表の弁護団は控訴審の早期終結を図った。1審が認定した元秘書らと代表との「報告・了承」も、答弁書で「証拠から合理的に推認できる範囲を超え、疑問だ」と指摘するにとどめた。
その結果、東京高裁の審理は1回で結審。大室弁護士は「弁護団に我々の立証を見切られた。悔しい」と声を落とした。
指定弁護士は特捜捜査の不手際に足をすくわれながらも「全体をみれば有罪となるべき事件」と位置づけてきた。だが、ある元検察幹部は「指定弁護士は山の8、9合目まではいったが(会計責任者の責任追及を前提とする)政治資金規正法を改正しない限り、頂上には届かない。検察が不起訴にしたのも同じ理由だ」と話した。
◇陸山会事件や公判の経緯と小沢一郎代表の主な発言
(<1>〜<5>は4億円の原資と由来を巡る説明の変遷)
【04年】
10月12日 元民主党代表で現「国民の生活が第一」の小沢一郎代表が、資金管理団体「陸山会」事務担当の元秘書、石川知裕衆院議員に土地購入費として4億円を手渡す
29日 陸山会が秘書寮新築用に東京都世田谷区の土地を約3億5200万円で購入。石川議員が4億円を担保に同額の銀行融資を手続き
【05年】
1月 7日 陸山会が土地を本登記
3月31日 陸山会が代表からの4億円や土地代金支出を記載せず、同額の銀行融資のみ記載した04年分政治資金収支報告書を提出
【06年】
3月28日 陸山会が土地代金支出を記載した05年分報告書を提出
4月 7日 民主党代表に就任
【07年】
2月20日 代表が記者会見し、陸山会の05年分報告書に計上された約4億円の高額事務所費について世田谷区の秘書寮新築に充てたと公表。原資は政治献金で「献金してくれた皆様の意思を大事にし有効に使う方法」(<1>)と説明。同会保有の土地建物については「政治団体名義の登記は認められず、代表者個人名で行っている。公私の区別をするため、個人として何の権利もないことを書面(確認書)で確認している」と述べたが、実際には会見直前に確認書を作成したことが後に判明
5月 2日 陸山会が代表に4億円を返却
【08年】
3月31日 陸山会が4億円返却を記載せず07年分報告書を提出
【09年】
3月 3日 西松建設の違法献金事件で、陸山会の会計責任者だった大久保隆規・元公設第1秘書らを東京地検特捜部が逮捕
4日 代表が記者会見し「この種の(政治資金の記載)問題で逮捕した例は全くなかった。検察の従来のやり方を超えた異常な手法。総選挙が取りざたされている時期で政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使だ。普通の民主主義社会においてありえない。(問題の)献金は法にのっとり公開されている」と捜査を批判
5月11日 民主党代表の辞任を表明
8月30日 総選挙で民主党が大勝。政権与党に
10月 報道各社の取材に、世田谷の土地購入原資について「4億円の預金を担保にして金融機関から同額を借り入れ、これを充てた」(<2>)と事務所が回答
【10年】
1月13日 陸山会事件で特捜部が同会などを家宅捜索
15日 特捜部が石川議員と後任の事務担当だった池田光智元秘書を逮捕
16日 大久保元秘書も逮捕。政権獲得後初の民主党大会で「断固として戦っていく」とあいさつ
23日 特捜部から初の事情聴取を受け、聴取後に会見。「不正な金は一切受け取っていない。4億円の原資は85年に自宅を売却し別に新築した際の残金から89年に引き出した2億円と97年に家族名義の口座から引き出した3億円、02年に同じく引き出した6000万円のうち、残った4億数千万円から支出した」(<3>)
31日 2度目の聴取。供述内容に変更があったことを、後に検察官役の指定弁護士が指摘
2月 4日 特捜部が元秘書3人を起訴。代表は不起訴(容疑不十分)となり、党本部で記者団に「検察当局が公平公正な捜査をやった結果だ」。その後、市民団体が東京第5検察審査会に審査申し立て
4月27日 第5検察審が代表について「起訴相当」と議決し公表。記者団に「意外な結果で驚いている。何もやましいことはない」
5月15日 第5検察審の議決を受け特捜部が代表から3度目の聴取。4億円の由来について「いつどこの銀行でいくら出金したかというように、明確にひも付けをできる帳簿等の記録も記憶もない」(<4>)とあいまいになる
17日 第5検察審の議決を受け、田代政弘検事が石川議員から任意の再聴取。この際のやり取りを石川議員が「隠し録音」(後に判明)
21日 特捜部が改めて代表を不起訴に
7月11日 参院選で民主党大敗
9月 1日 民主党代表選に立候補
3日 テレビ朝日の番組に出演し、検察審査会制度について「強制力を持つ捜査当局が不起訴にしたことについて、一般の素人の人がいいとか悪いとか言う仕組みが果たしていいのかという議論は出てくる」と疑問視
14日 代表選で菅直人首相に敗れる。同日、第5検察審が代表を起訴すべきだとする2度目の議決(公表は10月4日)
18日 別の検察審の「不起訴不当」議決を受け4度目の聴取
10月 4日 第5検察審の起訴議決公表を受け、コメントを発表。「議決は誠に残念」
7日 報道陣に対し、第5検察審について「11人ということと平均年齢30歳ということしか分からず、まったく秘密のベールに閉ざされている」と批判
22日 東京地裁が検察官役の指定弁護士に、リクルート事件で弁護人を務め、旧日本債券信用銀行の粉飾決算事件(逆転無罪)も担当した大室俊三弁護士ら3人を指定
12月 2日 代表の弁護人に、郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省局長の弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士ら3人が選任され会見
【11年】
1月31日 指定弁護士が代表を東京地裁に強制起訴し会見
2月 7日 元秘書らの初公判で石川議員ら3人が無罪を主張
6月30日 元秘書らの公判で東京地裁が石川議員らの供述調書多数の証拠請求を却下
9月26日 東京地裁が元秘書3人に執行猶予付き禁錮刑の有罪判決(全員控訴)
10月 6日 代表が東京地裁での自身の初公判で起訴内容を否認し無罪を主張。「検察は小沢一郎を標的にし、政治的、社会的に抹殺する目的だった。不当捜査で得られた調書を唯一の根拠にした検察審査会の誤った判断に基づく裁判は直ちに打ち切られるべきだ」と意見陳述。閉廷後の記者会見で、前月の元秘書3人への有罪判決について「裁判官が自分の推測と推断で事実を認定し、それに基づいて判決を下す。司法の自殺に等しい」と批判
14日 法廷で石川議員の「隠し録音」再生
20日 フリーの記者らでつくる「自由報道協会」主催の記者会見で「(司法のチェックのために)国会議員に強制力のある国政調査権を持たせるなど国会機能の強化が早道だ」と発言
28日 石川議員の証人尋問(11月1日も)
11月30日 大久保元秘書の証人尋問(12月1日も)
12月 7日 池田元秘書の証人尋問(8日も)。3人とも代表の関与を否定
15日 田代検事らの証人尋問。石川議員の再聴取時に作成した捜査報告書に、実際にはなかったやりとりが記載されていたことが判明
16日 大久保元秘書の取り調べ検事で、大阪地検特捜部の証拠改ざん・隠蔽(いんぺい)事件で実刑が確定した前田恒彦元検事の証人尋問。「私が裁判官なら無罪を書く」などと証言
【12年】
1月10日 代表の被告人質問。「秘書たちには自主的判断で仕事をしてもらっていた。私の関心は天下国家」「不正な金のやりとりがあったのではないかというバカげた質問が(検察の調べで)続けてあったように記憶している。水谷(建設から)の(裏献金の)話も出たと思うが、そんなことは一切ない。秘書がもらったということも絶対ないと確信している」。収支報告書を提出前に見て確認したことは「今までに一度もない」
11日 2回目の被告人質問で、4億円の由来について「湯島の自宅を売って深沢の自宅を購入し残った2億円と、心臓の病気で入院した時に預金したものを金融危機のあたりで解約した3億円、その後6000万〜7000万円も解約し、足して5億6000万〜7000万円」(<5>)と説明。検察官役の指定弁護士から「(以前に家族名義の口座から引き出したと述べた)3億円についてはその日のうちに妻の口座に2億9000万円の振り込みがある(ので原資になり得ない)。これについて検察に(2度目の聴取で)供述を変えたのでは?」と追及され、「変えていない。具体的にその時点で分かっていなかった」と弁明。石川議員らが土地購入費の計上を翌年に遅らせたことについて裁判長に聞かれ「彼らなりに少しでも(代表に)マイナスにならないよう、良かれと思ってやったことだと思うので、叱るたぐいのことではない」と擁護
2月17日 石川議員らの供述調書多数の証拠請求を東京地裁が却下
3月 9日 指定弁護士が禁錮3年を求刑
19日 弁護側が最終弁論を行い、代表も最終意見陳述。「特捜部は不当・違法な捜査で得た供述調書と、『小沢有罪ありき』の捜査報告書を検察審査会に提供することで『起訴議決』へと強力に誘導した。野党第1党の代表である私を強制捜査することで政権交代を阻止しようとし、政権交代後は与党幹部である私を強制捜査、強制起訴することで新政権を挫折させようとした、その政治性に本質がある」と述べ、改めて無罪を主張し結審
4月26日 東京地裁が代表に無罪判決。「裁判所の良識と公正さを示していただいたことに敬意を表する」とコメント
5月 9日 指定弁護士が控訴。「理解に苦しむ」とコメント
7月 2日 民主党に離党届
11日 新党「国民の生活が第一」を旗揚げ
9月26日 代表の控訴審第1回公判が即日結審。本人出廷するも人定質問以外に発言機会なし
11月12日 東京高裁が指定弁護士の控訴を棄却し「無罪」判決
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小沢裁判 指定弁護士の見苦しい「言い訳」と「負け惜しみ」
日刊ゲンダイ2012年11月13日 掲載
だったら強制起訴なんかするな!
<今になって検察の資料不足だと>
小沢裁判の高裁判決は、検察官役を務めた3人の指定弁護士にとって“屈辱的”な中身だった。小沢の無罪だけでなく、1審が認定していた元秘書らの虚偽記載についてまで「不合理」として認めなかった。指定弁護士側にとっては1審より後退する内容で、「完敗」だった。
判決後の会見に3人はバツの悪そうな顔で現れたのだが、中でも顔を真っ赤にして判決を批判したのが村本道夫弁護士。その恨みつらみと負け惜しみは見苦しいのひと言だった。今になって検察の捜査資料の“不備”を敗訴の理由にして、こう言ったのである。
「関係者の事後捜査とか、関係書類が出てくるのが遅かった。西松事件の捜査資料に埋もれていた。私たちが証拠収集できなかった反省もあるが、これが、控訴審で裁判官を納得させられなかった理由だ」
オイオイ、控訴審が始まる前は「新証拠がなくても、1審認定の誤りを指摘すれば足りる」とか大口を叩いていたのはダレだ?
大室俊三弁護士も、自分たちが証拠を出しきれていなかったことを認めながらも、「検察は小沢捜査を早々とあきらめていて、本来、取っておくべき捜査資料がなくなっていた」と指摘。記者からは、「だったら、そもそも強制起訴をしないという判断もあったのではないか」という質問が飛ぶ始末だった。
結局、小沢裁判で指定弁護士は自らの“無能”をさらけ出しただけ。こうなったら、潔く「上告断念」をして、恥の上塗りを避けた方がいい。
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〈来栖の独白 2012/11/13 Tue.〉
2審小沢無罪判決。国会議員やメディアの反応の基本にあるのは、「無罪を認めたくない」というものだ。「小沢 クロ」を残しておきたいというものだ。そのため、「個別については論評しない」(官房長官)と言ってみたり、「秘書任せにしていたために、罪を逃れることができた」「検察官でない指定弁護士の限界」「証拠にたどり着けなかった」などと言う。いずれも苦し紛れの言い逃れだが、やはり基本として苦しみたくないため、報道記事の数自体が少ない。これが有罪だったなら、日本がひっくり返るほど大騒ぎしただろう。
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◆ なぜ売れた?『検察の罠 小沢一郎抹殺計画の真相』発行部数約5万部のヒット作 “豪腕” 森ゆうこ語る 2012-07-11 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
"豪腕"森ゆうこ語る「処女作ヒット」「小沢一郎バッシング」
Biz-Journal 2012.07.10
小沢一郎・民主党元代表ら小沢グループ議員の大量離党に揺れる永田町。小沢氏らの動きに対しては、政界でも世論でも賛否渦巻いているが、そんな中で、小沢一郎に関するある書籍が、政治関連本としては異例の発行部数約5万部というヒット作になっている。
『検察の罠 小沢一郎抹殺計画の真相』(日本文芸社)という物騒なタイトルの本書を執筆したのは、自由党時代から、今回の離党・新党結成劇に至るまで、常に小沢氏と行動を共にしてきた森ゆうこ参議院議員だ。
森議員は、"小沢グループ随一の女闘士"として、2003年、イラク特措法の委員会での強行採決の際に、これに抵抗し、当時自民党議員だった大仁田厚氏と乱闘を繰り広げる腕っぷしと気の強さを見せたことは、多くの国民の印象に残っているだろう。
そんな豪腕議員が新たに闘いを挑んだのが「検察」であった。小沢氏を強制起訴まで追い込むことになった、一連の西松建設事件、陸山会事件、そして検察審査会問題に鋭いメスを入れ、ネットを中心に検察批判を展開してきた。『検察の罠』は、そうした活動の総括であり、この間に森議員が突き詰めた事実や、対峙した法務官僚とのやり取りなどが生々しく記録されている。そして、そこから見えてきたのが、小沢氏の政治生命を奪おうとする「小沢一郎抹殺計画の真相」だ。
昨今はメディアへの露出も多く、注目度も高い森議員に、著作について、小沢一郎という政治家について聞いた。
――政治関連の本が売れない時代にあって、本書はすでに5万部発行。その要因とはなんでしょうか?
森ゆうこ議員(以下、森) 過激なタイトルがよかったんでしょうか?(笑) 西松建設事件や陸山会事件発生後の約3年間、新聞やテレビなどの大手マスメディアでは、「小沢一郎は、政治とカネの問題で真っ黒である」という情報が毎日洪水のように流されてきました。一方、ネット上では一連の小沢先生の問題に関する検察の動きに対して疑問の声が上がっており、私もネットを通して、真実はどこにあるかについて発信してきました。そしてこの4月、小沢先生の裁判は一審で無罪判決を受けました。これらの問題は、本当に複雑でいびつなので、その全体像をわかりやすく知りたいという国民のニーズと本書の内容が合致したのではないでしょうか。私自身、一般にはなじみのない、検察審査会や政治資金規正法の問題を書くにあたって、難しくならないよう気をつけました。それと、まるで推理小説を読むような感じで、「小沢一郎抹殺計画の真相」に近づいていくというスリリングさも出ているのかもしれません。こういうとフィクションのようですが、驚くべきことにノンフィクション。ここに書いていることは、全部事実なのです。
――ネタバレになってしまいますが、「小沢一郎抹殺計画の真相」とは?
森 それはすでに私が各所で発表していることですし、読者だけではなく、すべての国民に知ってもらいたいことです。簡単にいえば、小沢先生は政権交代によって、統治機構も含めた国のさまざまな仕組みを根本から意味で改革しようとしていました。その政権交代を阻止するために、既得権益者を代表する検察、法務省、最高裁などの手によって、一連の小沢事件が意図的に作られた。私は小沢一郎という人は、稀代の政治家であると思っています。こんな政治家は過去20年間いなかったであろうし、これから先もしばらくは出てこないであろうと。それゆえ、既得権益者も脅威に思い、小沢潰しに走ったわけです。私は前々から「小沢一郎抜きでは、政権交代を果たしても、そうした既得権益を守ろうとする人たちに、民主党は赤子の手をひねるようにやられてしまうだろう」と言ってきました。実際に、小沢先生が裁判によって身動きが取れなくなっているうちに、民主党は政権交代前の理念を官僚たちによって骨抜きにされ、国民の信頼も失ったのです。下野するのも時間の問題でしょう。
――検察、法務省、最高裁が具体的にどのように動いたか、推認を交えて、本書の中で詳しく書かれていますが、今の民主党は、それ以外の官僚勢力にもかなりの影響を受けていましたか?
森 消費税関連法案への対応でもわかる通り、特に財務省の影響を受けています。しかし、官僚は悪人ではありません。若い官僚のみなさんとお話しすると、もともと自分自身がこの国を良くしていきたいという志をもって官僚になっています。ただ、組織として、今までの仕組みを変えたくないというのが無意識に働くのだと思います。霞が関の官僚機構は、頭脳は一級ですし、専門的な業務を行い、歴史的蓄積もあります。政治家はコロコロ替わっても、官僚は替わりません。そんな中で、並の政治家では、彼らを動かすどころか、対等に接することも難しいでしょう。気がつけば、官僚のコントロール下に置かれてしまうのです。
――民主党の現執行部は、官僚と闘う力を持ち合わせてはいなかったのでしょうか?
森 口ではいくらでも言えますが、それだけの力はありません。松下政経塾出身の野田(佳彦)総理や前原(誠司・政調会長)さん、岡田(克也・副総理)さんなどを代表とする、弁が立ち、政策を作ることもでき、テレビ映りもマスコミ受けも良い人たちがいますが、彼らは残念ながら頭でっかちではないかと思います。彼らでは、物事を本当の意味で変革し、結果を出していくことはできない。官僚機構と対峙し、本当に変革を実現するためには、民主党が政権与党としてがっちり固まっていかなければならない。しかし、今の執行部のやり方というのは「排除の論理」なのです。強引で独裁的、そして仲間内で物事を進めてしまう。勘違いされている方が多いのですが、小沢先生はそのように独善的に物事を進めることはありません。党内の意見に配慮し、説得するよう努力し、無理にゴリ押ししない。実に民主的に物事を進めていきます。私などは、たまにはもっと小沢さんがトップダウンで物事を決めてもいいのではないかと思う時さえあります。今の民主党内で力を持っている人たち、例えば、岡田さん、野田さん、前原さん、仙谷(由人)さんたちは、これまで民主党が選挙に負けてきた時の責任者ですよ。ニセメール事件などの問題も起こしたし、今回もそう。彼らが執行部でうまくいったためしがない。
――小沢裁判は、彼らの「排除の論理」の中では格好の材料だったと。
森 利用したのではないでしょうか。小沢先生は、担当検察官が公判で「検察の妄想」と証言したように、検察のでっちあげた事件によって強制起訴され、党員資格停止処分ということで"座敷牢"に入れられました。党内の規律や倫理感を保つという大義名分はわかりますが、であれば、仙谷さんもすぐに処分すべきなのです。仙谷さんは、週刊誌に「新聞社の女性記者に対して、セクハラ発言をした」と報道されました。それに対し、仙谷さんは損害賠償と謝罪広告を求め、出版社を提訴した。しかし東京地裁では、セクハラ発言があったことが事実認定されてしまいました。私は仙谷さん本人にも直接「処分されてしかるべきではないか」と申し上げました。すると、仙谷さんは「失敬な。黙れ」と(苦笑)。
■小沢一郎は、政治家たちの嫉妬の対象
――一方、小沢氏は一審無罪。ただ、小沢一郎という政治家には悪役としてのイメージが常につきまとい、逆風が吹いている感じがします。身近で見てきて、その要因はなんだと思いますか?
森 新聞やテレビ局といった大手マスメディアも既得権、抵抗勢力の代表です。だから、改革を実行しようとする小沢先生が叩かれるのではないでしょうか。また、小沢先生の存在感が大きいゆえに、叩けば視聴率は上がるし、雑誌も売れるのでしょうね。実際に小沢先生に会えば、とてもチャーミングな政治家ですよ。だからこそ、さまざまなバッシングがあっても付いてくる人が後を絶たないし、一方でそれを気にくわないという人も出てくる。最近は、とうとう「政治とカネ」の問題ではダメだと思ったのか、小沢先生の奥さんの手紙というものまで週刊誌に載りました【編註:「週刊文春」(6月21日号/文藝春秋)が「小沢一郎 妻からの『離縁状』」という見出しで、小沢夫人によるという小沢氏批判の手紙を掲載】。
――有権者から、その記事の件で問い合わせはありましたか?
森 私のところには「あんなデタラメを使ってまで、"小沢降ろし"をするのか」という怒りの声しか来ていません。週刊誌を読んでみましたが、本当に奥さんが書いた手紙かどうか疑ってしまいます。一部、改ざんされているという話も聞きますし、筆跡が違うという話も聞きます。我々が知っている範囲でも、事実関係が全く違います。そもそも、夫婦のことは、どちらか一方が全部悪いということはありません。この問題で小沢先生が何か発言するようなことは、今後もないのではないでしょうか。もともと小沢先生は、誰に何を言われようが、そのことで相手を批判するようなことはしません。よく、小沢先生の元を離れて、自分を正当化するために小沢先生に対して批判的なことを言う人がいますが、小沢先生はそれに反論することはない。永田町の政治家は嫉妬心が強い気がします。これだけ攻撃され、これだけ叩かれているにもかかわらず、小沢先生のもとに人が集まることに対し、妬み、嫉みがあるのではないでしょうか。
――嫉妬の対象になるほどの、小沢一郎の魅力とは何でしょうか?
森 大局観というか、先見性があるところが魅力じゃないですか。
――今後、新党結成の流れの中で、小沢氏が総理大臣になる可能性については?
森 一度、総理大臣をやっていただきたいと思います。それこそ小沢先生がかねてから言っている内閣法制局の答弁禁止も小沢総理なら実現できる。首相や閣僚は、官僚依存を脱し、安全保障についての憲法解釈や自衛隊法の解釈をどう考えるのかということに始まり、細かいことはさておき、政治家としての考え方をあらゆる政策について答えなければならない。小沢先生はそれができる。そして、強いリーダーシップを発揮していただき、まさしく私たちが政権交代で約束したこと――日本の仕組みを変えて、「国民生活が第一」の政治を実現しなければなりません。そのためには、まず「小沢は真っ黒」というイメージを払拭する必要がある。小沢先生も完璧な人間ではありません。良い面も悪い面もあります。ただ、現状は正しい評価がされていないし、マスコミの良識に頼っていても無駄だと、この3年間で痛感しました。ならば自らツイッターやブログで情報を発信していこうと思い、積極的に活用してきましたが、ネットの情報にアクセスできない人もいます。そこで今回『検察の罠』を書きました。小沢総理を実現するために、そして何より日本の民主主義を守るために、この本を書きました。これからの闘いは厳しいとおもいますが、全然悲観はしていません。物事は思わぬところで大きく変わることがある。私の中には小沢総理実現に向けて、大きなビジョンがあります。もちろん、小沢先生に頼っているだけでなく、私たち自身が政治家として、もっといろいろな力をつけないといけないと思います。
(構成=本多カツヒロ)
●森ゆうこ(もり・ゆうこ)
本名・森裕子。1956年、新潟県生まれ。一男二女の子育ての傍ら、99年、同県横越町町議選に初当選。01年、参議院選挙(新潟県選挙区)に自由党公認で立候補し、初当選。03年、民主党に合流。07年、再選。12年、消費増税関連法案に反対の立場を示し、民主党に離党届を提出。
公式ブログ http://www.mori-yuko.com/
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森ゆうこ著『検察の罠』
p245〜
森:ひどいですよね。何でマスコミはあそこまで小沢先生を叩くんでしょう?
p246〜
小沢:結局、官僚支配なんだよ。その点は同じなんです、官僚と。たぶん官僚以上に既得権や利権を持っているんだよな。電波とか再販とか。
だから官僚支配が一番いいんだよ、マスコミは。新聞は再販で保護されて、テレビは一度取った免許は4年から5年に1度必ず見直されるはずなんだけども、実際は一度取ればずっとやれるからね。僕が目の敵にされるのはそういうことを含め、不必要な規則はなくしたほうが良いという意味のことを言うからですよ。
電波を競争入札している国もあるけど、そんなことをされたら大変だと思っている。小沢の野郎ならやりかねないって(笑)。
森:そういう意味では、やっぱり先生には試練が降りかかるわけですけれども。
小沢:今は上方の方で「維新」という言葉が流行っているけれど、維新というのは革命なんですね。革命というのはやっぱりそう簡単にはできないんだよ。世の中を変えることだから。明治維新だってどれだけ有為な人が死んでいったか。犠牲の上に初めてできることだからね。しょうがないんだな(笑)。
p247〜
この世界で本質を突き詰め変わらずにいるのは難しいこと---森
森:私は先生に初めてお会いしたのが2001年の参議院選挙、投票日が7月29日でしたけれども、その半年前の3月29日に新潟でやった総決起集会においでくださって、そのとき初めてお会いした。だから10年ちょっとたつわけですけれども。
小沢:早いなあ。
森:永田町の世界にはいろんなことがありますよね。誘惑もあるし。だから他の人たちはいろいろ言ったりやったりすることは変わるんですけど、先生は全然その頃と変わらない。
小沢:そうかな。
森:この世界の中で本質をずうっと突き詰め変わらずにいるということは、やっぱり難しいことで。
小沢:そうね。僕が自分の主張を通してこられたのはやっぱり国民、選挙民のおかげです。選挙民が支持してくれてるから筋道を、自分の思うことを通せるんであって。だからそれは非常に幸運だと思うし、感謝しているんですよ。政党だって自民党から何回名前が変わったか。しかも後援会に一度も相談しないで僕はやっているからね。
それでもちゃんと支持してくれてるっていうことを、僕は非常に感謝しているし、そうである以上、これは貫き通さないかんと思っているだけどね。
森:その一方で2006年の代表選挙では、「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」とおっしゃっています。
小沢:日本が、そして日本人が生き残るためには、旧体制を変えなくちゃいけないと。アンシャン・レジームを変える。変わらずに残るために。「古い上着よ、さようなら」というやつだよ。「青い山脈」だよ。
森:難しいですね。民主党はもはや政権交代したときの民主党ではないというか、正反対だと私は思うんですが。
小沢:いやあ、驚いたね。結局、選挙のときはほとんどの人がほぼマニフェストに沿ったことを言ったんだと思うんだよね。だけど結局何も中身はわかっていないというか、自分はそう思っていないのにしゃべってきたっていう話になっちゃうんだよな、今の現実は。その意味ではほんとにがっかりだね。
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◆ 『アメリカに潰された政治家たち』孫崎亨著(小学館刊)2012年9月29日初版第1刷発行
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