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北朝鮮とイラン 軍事協力のスパイラル/北朝鮮は世界各国にミサイルを売り、濃縮ウランの製造にも協力

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【軍事情勢】北朝鮮とイラン 危険な軍事協力のスパイラル
産経新聞2012.12.16 10:04
 北朝鮮は12日、北西部・東倉里(トンチャンリ)の西海衛星発射場から「人工衛星打ち上げロケット」と称する長距離弾道ミサイルを発射した。実態は、射程1万キロ以上の能力を秘めると分析されるテポドン2号改良型である。小欄(しょうらん)は、宇宙軌道に乗った衛星?(弾頭)の性能はともかく、運搬するミサイルの関連技術は飛躍的に向上したとみる。少し驚きもしたが、背後にイランとの「危険なスパイラル」を確信し、驚きは緊張に変わった。
■不自然な北の急成長
 驚いたのは、寒さで部品が縮んだり凍結したりする極寒の気象条件に加え、より大きな推力を必要とする地球の自転に逆らう南方への発射−という厳しい条件下での成功に対してだけではない。4月のミサイル発射失敗以前より、多くの専門家は、北のミサイル関連技術を「未発達・不具合の宝庫」と、冷ややかにみていたが、それが一転、わずか8カ月で汚名返上。急成長ぶりにも驚いたのだ。
 しかし「未発達・不具合の宝庫」なる汚名は少し前まで、以下の点で間違いではなかった。2段目に使われたとみられる中距離弾道ミサイル・ムスダンは、2010年の朝鮮労働党創建60周年のパレードで初公開されたが、飛翔(ひしょう)実験した形跡が未確認。3段目のミサイルは高い技術が必要な固体燃料を使用するが、過去3回の飛翔は完璧ではなく、いずれも3段目までの完全な切り離しを実現できていない。
 従って、2・3段目の分離も接続部分に未解決な大命題を抱えていた。
 既に実戦配備した準中距離弾道ミサイル・ノドンを4本束ねた1段目のミサイルでさえ、誘導装置か燃焼装置に不安があった。4本の燃焼速度が均一でなければ姿勢制御ができず、バランスを崩してしまうのだ。
 そうした諸点を、西側では1年以上かけてトラブル・シューティング=問題解決する。ところが、北朝鮮は8カ月でクリアした。警戒が必要だ。実際、前回(4月)は前々回(2009年)の発射以来、3年という解決期間をかけ尚(なお)、失敗した。
■1980年代から軍事協力
 そもそも兵器開発は「失敗は成功の基」が原則。「スパイラル・セオリー」と呼ばれ、例えば情勢分析→戦略・作戦・戦術の立案→性能要求→試作→実験とたどり、失敗すれば原因を徹底究明したうえで、再び最初の情勢分析まで戻り、やり直す。スパイラルは1周するだけで、相当の時間がかかり、その間に取り巻く安全保障環境が変わるケースがあるためだ。この試行錯誤が、実験成功まで止(や)むことなくグルグルと回り続ける。究極的目標はあくまで、失敗の許されない実戦投入なのだ。
 この点、ムスダンは飛翔実験が確認されていないし、一連の実験失敗後、落下物を回収してもいない。スパイラル・セオリーの最重要構成要件「反省材料」が少ないということだ。
 それ故(ゆえ)「スパイラルの一翼を担っているのがイラン」との観測が、国際軍事筋の間では浮上している。北朝鮮は1980年代よりイランと軍事協力を進めてきた。以来、北朝鮮とイランは互いの技術とその成果を交換し今に至(いた)る。ただ当初は、北朝鮮がノドンの技術を提供し、これを基にイランは中距離弾道ミサイル・シャハブ3を開発するなど、主に北朝鮮からの技術移転が目立った。
■透けてみえる技術移転
 ところが、イランがシャハブの技術を活用し宇宙ロケット・サフィールを打ち上げた08〜09年を境に立場は逆転する。今回発射の3段目はサフィールの2段目だとの観測もある。06年に打ち上げに失敗した北朝鮮だったが、09年には2段目の分離に成功。4000キロ以上を飛び、1・2段目も予告地点に落下した。イランによるサフィール打ち上げから2カ月後の発射で、イランの協力が透けてみえる。
 北朝鮮はムスダン18基分の部品もイランに密輸したとされ、イラン国内での実験が取り沙汰(ざた)されている。10年の北朝鮮におけるパレードでは、VIP席にイランのミサイル開発を主導する国策会社SHIG社の幹部・技術者が陣取り、目の前をムスダンを1基ずつ載せた大型トレーラー(TEL=輸送・起立・発射機)8両が通り過ぎた。今回の発車にもイランの技術者や軍関係者が立ち会った可能性が高い。
 ムスダンの射程は3200〜5000キロと推定される。グアム以東に届く計算で、駐グアム米軍も標的に50基が配備済み。ムスダンを中核に、北朝鮮とイランが互いに「スパイラル協力」を続け、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実戦投入できる技術を確立すれば、米国は東西から挟撃(きょうげき)される事態となる。
 もっとも米国は、発射以前に策源地(発射基地)を叩(たた)く攻撃能力を有する。日本にその能力は乏しい。だのに、既に実戦配備を終えている数百基のノドンが、日本列島のほぼ全域を射程に収めている現実に、日本国民の強い憂(うれ)いは感じられない。
 北朝鮮の良識に賭(か)けているのか、度胸が良いのか、それとも軍事に対する価値認識に致命的欠陥があるのか…。(政治部専門委員 野口裕之)
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
p149〜
 日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。
p150〜
   北朝鮮はすでに述べたように、世界各国にノドン、テポドンといったミサイルを売り、核爆弾の材料である濃縮ウランの製造にも協力をしている。北朝鮮は、軍事技術の輸出国として莫大な資金を稼ぎ始めているが、その北朝鮮の仮想敵国はまぎれもなく日本である。北朝鮮は中国の政治的な支援を背景に、日本を攻撃できる能力を着実に高めている。
 中国と北朝鮮だけではない。いったんは崩壊したと見られるロシアが再びプーチン大統領のもとで軍事力を増強し、極東の軍事体制を強化している。
p151〜
 ソビエトは共和国を手放し、ロシアと名を変えたが、冷戦が終わって資源争奪戦の時代に入るや、国内に大量に保有している石油や地下資源を売って経済力を手にし、それによって軍事力を強化し始めている。(略)
 ロシアは現在、石油や地下資源で稼いだ資金をもとに、新しい潜水艦やミサイルの開発に力を入れ、ヨーロッパではNATO軍に対抗する姿勢を取り始めている。2009年と10年には、日本海で新しい潜水艦の試験航海を行ったのをはじめ、偵察機や爆撃機を日本周辺に飛ばしている。
 ロシアもまた、極東における新たな軍事的脅威になりつつある。ロシアの究極の敵は国境をはさんだ中国といわれているが、海軍力では中国に勝るロシアが、日本列島を越えて中国と海軍力で対立を深めていくのは当然のことと思われる。
p152〜
 中国はアメリカに対抗するため、大陸間弾道弾や核兵器の開発に力を入れている。すでに55発から65発の大陸間弾道弾による態勢を確立している。この大陸間弾道弾のなかには、固形燃料で地上での移動が可能な長距離ミサイルや、液体燃料を使う中距離ミサイルなどがある。
 中国は潜水艦から発射するミサイルの開発も終わっている。これは中国の核戦略の対象がアメリカであることを示しているが、日本を攻撃できる射程3,000キロのミサイルの開発にも力を入れている。日本が中国の核ミサイルの照準になっていることに、十分注意する必要がある。
 中国がアメリカに対抗できる核戦略を持ち、アメリカの核抑止力が日本を守るために発動されるかどうか分からなくなっている以上、日本も核兵器を持つ必要がある。「日本が平和主義でいれば核の恫喝を受けない」という考えは、世界の現実を知らない者の世迷い言に過ぎない。
 すでに述べたように、中国は、民主主義や自由主義、国際主義といった西欧の考え方を受け入れることを拒み、独自の論理とアメリカに対抗する軍事力によって世界を相手にしようとしている。第2次大戦以降続いてきた平和主義の構想がいまや役に立たないことは明らかである。日本を取り巻く情勢が世界で最も危険で過酷なものになっているのは、中国が全く新しい論理と軍事力に基づく体制をつくって、世界の秩序を変えようとしているからである。
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行
p158〜
第6章 防衛強化を迫るアメリカ
 2 日本の中距離ミサイル配備案
○中国膨張がアジアを変えた
 「日本は中国を射程におさめる中距離ミサイルの配備を考えるべきだ」---。
 アメリカの元政府高官ら5人によるこんな提言がワシントンで発表された。20011年9月のことである。
 日米安保関係の長い歴史でも、前例のないショッキングな提案だった。日本側の防衛政策をめぐる現状をみれば、とんでもない提案だとも言えよう。憲法上の制約という議論がすぐに出てくるし、そもそも大震災の被害から立ち直っていない日本にとって、新鋭兵器の調達自体が財政面ではまず不可能に近い。
 しかし、この提案をしたアメリカ側の専門家たちは、歴代の政権で日本を含むアジアの安全保障に深くかかわってきた元高官である。日本の防衛の現実を知らないはずがない。
p162〜
 中国は射程約1800キロの準中距離弾道ミサイル(MRBM)の主力DF21Cを90基ほど配備して、非核の通常弾頭を日本全土に打ち込める能力を有している。同じ中距離の射程1500キロ巡航ミサイルDH10も総数400基ほどを備えて、同様に日本を射程におさめている。米国防総省の情報では、中国側のこれら中距離ミサイルは台湾有事には日本の嘉手納、横田、三沢などの米空軍基地を攻撃する任務を与えられているという。
 しかし、アメリカ側は中国のこれほどの大量の中距離ミサイルに対して、同種の中距離ミサイルを地上配備ではまったく保有していない。1章で述べたとおり、アメリカは東西冷戦時代のソ連との軍縮によって中距離ミサイルを全廃してしまったのだ。ロシアも同様である。
p163〜
 だからこの階級のミサイルを配備は、いまや中国の独壇場なのである。
 「中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを配備して、脅威を高めているが、日本側ももし中国のミサイルを攻撃を受けた場合、同種のミサイルをで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる」
 衝突しうる2国間の軍事対立では力の均衡が戦争を防ぐという原則である。抑止と均衡の原則だともいえる。
 実際にアメリカとソ連のかつての対立をみても、中距離ミサイルは双方が均衡に近い状態に達したところで相互に全廃とという基本が決められた。一方だけがミサイル保有というのでは、全廃や削減のインセンティブは生まれない。だから、中国の中距離ミサイルを無力化し、抑止するためには日本側も同種のミサイルを保有することが効果的だというのである。
 日本がこの提案の方向へと動けば、日米同盟の従来の片務性を減らし、双務的な相互防衛へと近づくことを意味する。アメリカも対日同盟の有効な機能の維持には、もはや日本の積極果敢な協力を不可欠とみなす、というところまできてしまったようなのである。
p164〜
 3 アメリカで始まる日本の核武装論議
○中国ミサイルをの脅威
 アメリカ議会の有力議員が日本に核武装を考え、論じることを促した。日本側で大きくは取り上げられはしなかったが、さまざまな意味で衝撃的な発言だった。アメリカ連邦議会の議員がなかば公開の場で、日本も核兵器を開発することを論議すべきだと、正面から提言したことは、それまで前例がなかった。
 この衝撃的な発言を直接に聞いたのは、2011年7月10日からワシントンを訪れた拉致関連の合同代表団だった。
p165〜
 さて、この訪米団は、7月14日までアメリカ側のオバマ政権高官たちや、連邦議会の上下両院議員ら合計14人と面会し、新たな協力や連帯への誓約の言葉を得た。核武装発言はこの対米協議の過程で11日、下院外交委員会の有力メンバー、スティーブ・シャボット議員(共和党)から出たのだった。
p166〜
 続いて、東祥三議員がアメリカが北朝鮮に圧力をかけることを要請し、後に拉致問題担当の国務大臣となる松原議員がオバマ政権が検討している北朝鮮への食糧援助を実行しないように求めた。
 シャボット議員も同調して、北朝鮮には融和の手を差し伸べても、こちらが望む行動はとらず、むしろこちらが強硬措置をとったときに、譲歩してくる、と述べた。
p167〜
○日本の核武装が拉致を解決する
 そのうえでシャボット議員は、次のように発言した。
 「北朝鮮の核兵器開発は韓国、日本、台湾、アメリカのすべてにとって脅威なのだから、北朝鮮に対しては食糧も燃料も与えるべきではありません。圧力をかけることに私も賛成です」
 「私は日本に対し、なにをすべきだと述べる立場にはないが、北朝鮮に最大の圧力をかけられる国は中国であり、中国は日本をライバルとしてみています」
 「だから、もし日本が自国の核兵器プログラムの開発を真剣に考えているとなれば、中国は日本が核武装を止めることを条件に、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるでしょう」
 肝心な部分はこれだけの短い発言ではあったが、その内容の核心はまさに日本への核武装の勧めなのである。北朝鮮の核兵器開発を停止させるために、日本も核兵器開発を真剣に考えるべきだ、というのである。
 そしてその勧めの背後には、北朝鮮が核開発を止めるほどの圧力を受ければ、当然、日本人拉致でも大きな譲歩をしてくるだろう、という示唆が明らかに存在する。
p168〜
 つまりは北朝鮮に核兵器開発と日本人拉致と両方での譲歩を迫るために、日本も独自に核武装を考えよ、と奨励するのである。
 日本の核武装は中国が最も嫌がるから、中国は日本が核武装しそうになれば、北朝鮮に圧力をかけて、北の核武装を止めさせるだろう、という理窟だった。
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