【自民党政権 期待と不安】憲法改正へ道筋つけられるか★(3)
zakzak2012.12.21
「戦後レジームからの脱却」というのが安倍晋三総裁のキャッチフレーズである。そこには、第2次世界大戦に対する評価、教育の基本理念、神道への考え方、防衛体制などさまざまな内容を含むのだが、何より重要なのは憲法の改正である。
しかし、それが簡単でないのは、公明党の同意を得がたいからだ。公明党や支持団体の創価学会は、日本国憲法を熱烈に支持してきた。創価学会が、神道の扱いについて宗教団体として神経質であるのは当然である。
そこで、「公明党ではなく、日本維新の会、みんなの党と連立を組んだらいい」という意見も保守派には多い。
それでも衆院では3分の2が確保できるが、参院で公明党、民主党、日本未来の党、社民党、共産党の合計を3分の1以下にするなど、来年夏の選挙でどんな成績を収めても無理。衆院でも次の衆院選がくれば自民党、維新、みんなの3分の2は維持できまい。
つまり、公明党と民主党の両方が反対する憲法改正など、まずもって無理だし、片方が反対しても相当に苦しいのである。
だとすれば、現実的なのは、少なくとも公明党が反対しないような内容での改正を模索することであろう。すでに教育基本法については、その方針で前回の安倍内閣で改正に成功している。保守派にとっても、公明党や民主党にとっても不満足なものだったろうが、このへんで手を打つかという判断になった。
公明党にしても、憲法改正が少数派とはいえない現況であれば、このあたりで許容できる範囲で議論に一応の終止符を打っておくのも選択肢なのではないか。
保守派は新憲法を含む戦後レジームを否定することを望んでいるが、それは公明党やリベラルな人たちにとって受け入れ不能であるし、対アジアだけでなくアメリカとの関係でもよろしくない。
新憲法を制定し、そのなかでアジアで初めての立憲政治を実現した旧憲法の意義も正しく評価し、新憲法の基本精神を引き継ぎ、さらに21世紀における国家目標も加味するということなら誰も文句はないはずだ。
安倍総裁は、まず憲法改正手続要件を定める第96条を緩和する改正をしてはどうかという意見だが、そんな白紙委任状が欲しいといった話に誰も乗るまい。第96条の改正は、両院の選出規定や道州制、違憲立法審査のあり方など、全体的な統治機構の再検討のなかで議論すべき問題だ。
*八幡和郎(やわた・かずお)
1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に「本当はスゴい国? ダメな国? 日本の通信簿」(ソフトバンク新書)など。
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