【自民党政権 期待と不安】「首長と国会議員」兼務の是非★(4)
zakzak2012.12.23
「日本未来の党」の嘉田由紀子代表は現職の滋賀県知事である。「日本維新の会」の橋下徹代表代行は大阪市長で、共同代表となる方向で調整中という。さらに、橋下氏は来年夏の参院選までに、地方自治法を変えて国会議員と地方自治体の首長を兼職できるようになれば、立候補してもいいと言い出している。
地方の首長をしていると国の政策が変わらないともどかしくなり、国政に関わりたくなるらしいが、あまりにもずさんな考え方だ。確かに、フランスなどは兼職可能である。議員だけでなく、シラク大統領時代のジュペ首相は、任期中もボルドー市長を兼ねていた。
だが、フランスの場合、地方自治体が議院内閣制のようになっており、県や市議会の議長が首長だ。地方選挙では、各党が議員候補者名簿を提出し、そのなかで1位に掲載された候補者が議長となり、これが知事や市長の仕事をする。
しかも、2位以下の数人とともに議長団を構成するが、議長団の中での職務分担は多様で、議長が国会議員を兼ねるときは、第1副議長が事実上の首長の仕事を代行し、首長は1週間のうち月曜だけ役所に出勤することもある。
また、ここが大事なのだが、フランスでは議会での採決も出席も委任状を出して他の議員に任せることができる。法人の理事会と同じだ。
給与も、兼任する場合は代議士給与の25%増しを上限とするとか、実質的に第1副議長が職務を行うような場合には、そこに給与が加算されるような仕組みもある。
そうした仕組みをトータルとして組み上げないと制度は動かない。きちんとした制度の検討もせずに、いい加減なことを言うのは困ったものだ。そして、そういうことは橋下氏の都合でなく、地方制度全般の見直しの中で議論すべきことだ。
地方が苦しいいま、道州制、300基礎自治体、大阪都、首都機能移転分散問題など、さまざまな議論をきちんとまとめるべき時だ。ただし、「地方分権にしたら地方が栄える」という単純なものではない。
格差社会について、前回の安倍内閣のときに、再チャレンジのチャンスさえあれば良いようなことを打ち出した。だが、生き残れるチャンスが人や地域に与えられるだけでなく、大抵の地域や個人が生き残れる条件は国の責任で、努力による差が出てくることが容認されるだけでなくてはならないと思う。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の問題も、農業がどうなるかでなく、地方が生き残れるかが問題なのだ。自民党は地方の繁栄を総合的に実現できる制度設計を、しっかりできる伝統があるはずだ。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に「本当はスゴい国? ダメな国? 日本の通信簿」(ソフトバンク新書)など。
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