陸山会事件など「強制起訴」も相次ぐ無罪…批判噴出 揺らぐ存在意義
産経新聞 12月25日(火)15時2分配信
「司法に国民の声を」と平成21年5月の改正検察審査会法の施行で導入された強制起訴制度で開かれた裁判の判決が今年、初めて言い渡された。だが、沖縄県南城市の会社社長による未公開株投資詐欺事件、続く元民主党代表で日本未来の党の小沢一郎氏(70)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)事件とも結果は無罪に。制度への批判が噴出し、その存在意義が大きく揺れた。
*新証拠なく完敗
それは司法の壁に“市民感覚”が屈した瞬間だったのかもしれない。
東京高裁が小沢氏に無罪を言い渡した1週間後の11月19日。「上告する理由が見つからなかった」。検察官役の指定弁護士を務めた大室俊三弁護士は苦渋に満ちた表情で言葉を絞り出し、上告断念を表明した。
この裁判では、指定弁護士側は5月、無罪を言い渡した1審東京地裁判決について「事実誤認がある」として控訴した。だが、それを覆すだけの「新証拠」は見つからず、9月26日の控訴審初公判では、新たに元秘書2人の供述調書などを証拠請求したが、東京高裁は全てを却下。ほとんど反論できないまま、2審はわずか1時間で結審した。
この時点で“勝負”はほぼ決していた。
*ダブルスタンダード
「(強制起訴の)無罪率100%は尋常ではない」
花火大会の見物客11人が死亡した13年7月の兵庫県明石市の歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪で全国で初めて強制起訴された兵庫県警明石署元副署長、榊和晄(かずあき)被告(65)の弁護側は今年11月の最終弁論で、検察審査会(検審)の2度の「起訴議決」で起訴が決まる制度自体に疑問を投げかけ、「違法」とまで言い切った。
弁護側が問題視したのは、検審が議決書で「市民感覚の視点から、公開の裁判で事実関係および責任の所在を明らかにして、重大事故の再発防止を望む点に基本的立場を置く」と、検察との立場の違いを明示した点だ。
制度導入前まで起訴権を独占していた検察は有罪の「確信」があるケースだけを起訴してきた。「疑わしい」というレベルでは起訴せず、ましてや再発防止など他の事情を優先することはなかった。
元東京地裁部総括判事の山室恵弁護士は「検察と検審でダブルスタンダードになっている起訴基準を厳格化すべきだ」と指摘する。
*織り込み済み
これまでに強制起訴された事件は計7件。来年は歩道橋事故に加え、乗客106人が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故のJR西日本歴代3社長、徳島県石井町の町長暴行事件の公判で判決が予定されている。
法廷に立たされる被告の負担を考慮すれば、全てが無罪となった場合、制度の意義が問われるのは必至だ。
未公開株詐欺事件で強制起訴され、3月に那覇地裁で無罪判決を受けた会社社長は「(起訴で)社会的に抹殺され、生活が破綻した」と怒りをにじませる。
ただ、無罪の多発は「織り込み済み」と考える司法関係者も少なくない。仮に今後無罪が相次いでも、検審の起訴権廃止という拙速な議論に反対する立場だ。
元東京地検公安部長の若狭勝弁護士(56)は「検察が起訴しなかった事件だけに無罪が多いのは当然。強制起訴によって市民の声を反映させている点は評価すべきであり、数年は状況を見守った方が良い」と話している。
最終更新:12月25日(火)22時44分
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〈来栖の独白2012/12/26Wed.〉
本日、衆参両院は本会議で、自民党の安倍晋三総裁を第96代の首相に指名した。衆院会議場には小沢一郎氏の姿も見られた。
検察による2009年の間違った捜査がなければ、また検察審査会による理不尽きわまる強制起訴がなければ、本日のこういった光景は現出していなかったはずだ。
>「(起訴で)社会的に抹殺され、生活が破綻した」と怒りをにじませる。
人は、当局から嫌疑をかけられただけでも、それまで築いてきた信用を忽ちに失う。まして国民の1票1票によって立っている国会議員、代議士小沢一郎にとって「政治とカネ」と流布された事件・裁判は、根底からその政治生命を奪った。抹殺する目的で、事件はでっち上げられた。当時の政権与党民主党の幹部議員には、その方がよかったのだろう。野党にも、そのほうがよかったのだろう。小沢氏は葬られ、今日、弱小野党の一兵卒の席に甘んじている。
小沢一郎氏に、本来の名誉を返してやっていただきたい。相応しい席に着かせてやって戴きたい。そして、この国の別の景色を見てみたい。
遅い。取り返しはつかない。一度刻印されたものは、消し去ることは叶わない。裁判所が「無罪」を宣告しても、メディアによる「小沢クロ」の烙印は消し去ることは叶わない。小沢氏を抹殺し、この国を歪めて甚大な被害を蒙らせた。メディアはこの非を一度として認めない。
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◆ 【小沢裁判とは何だったのか】検察官たちの謀略戦 / 裁判がなければ首相になっていた / 政治家の金銭感覚 2012-11-14 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
特集ワイド:座談会・小沢裁判とは何だったのか 摘まれた首相の芽
毎日新聞 2012年11月14日 東京夕刊
資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた「国民の生活が第一」代表、小沢一郎氏(70)の控訴審判決で、東京高裁は1審の無罪判決を支持した。「小沢裁判」とは何だったのか。ジャーナリストの鳥越俊太郎、弁護士の小町谷育子、日本BS放送報道局長の鈴木哲夫の3氏に論じてもらった。【構成・瀬尾忠義】
◇法律論とモラル混在−−日本BS放送報道局長・鈴木哲夫さん
◇「推定有罪報道」検証を−−ジャーナリスト・鳥越俊太郎さん
◇1審無罪は控訴制限を−−弁護士・小町谷育子さん
−−「小沢裁判」は1、2審とも無罪となりました。
鳥越 私は、この裁判は一部検察官たちの謀略戦だったと思っている。民主党が政権を取ると見られていた09年の総選挙直前に西松事件があった。東京地検特捜部は、金に絡む問題があるとみて捜査したがうまくいかず、陸山会事件で続けた。検察審査会を使って裁判に持ち込み、有罪にしようと考えたのではないか。しかし謀略は裁判所で木っ端みじんに砕かれた。
小町谷 検察の謀略説はよく聞くが、はたしてどうか。強制起訴になれば裁判所が検察官役の指定弁護士を選任する。つまり、検察が自らのコントロールが及ばないところに事件を投げ出してしまうことになる。検察が「きっと何か出てくるに違いない」と捜査していたのは間違いないが、強制起訴は意外な展開だったのではないか。
鈴木 小沢問題は法律的な問題と政治的なモラルの二つのテーマが常に入り乱れて進んできた。小沢氏は法律論を説明したが、市民感情としてはモラルの話を求めていた、というズレがあった。どちらかに軸足を置いてしっかりと見れば真実がもっと明らかになったはずだ。
−−メディアは「小沢氏は有罪」という印象を与える「推定有罪」のスタンスで報じてきた、と批判されました。
鳥越 推定有罪は、日本のメディアの持っている大きなマイナスポイントだ。一連の報道は読者らに「小沢氏の無罪はおかしい」というイメージを植え付けた。メディアはその責任をどう取るのか。無罪判決が確定したら報道の検証が必要で、場合によっては謝罪すべきだ。
小町谷 残念ながらメディアがきちんと推定無罪で報道した例を今まで見たことがない。唯一の例外が、郵便不正事件で逮捕、起訴されたが無罪となった厚生労働省の村木厚子氏の判決前の報道だ。
鈴木 政治家の裁判では、新聞社は社会部と政治部が取材するが、「小沢嫌い」で一致していることが多い。無罪判決を報じても「政治責任はこれからだ」という記事がセットになる。そうすると小沢氏は永久に悪者なんですよ。
鳥越 土地購入時に提供した4億円の出所について説明責任を果たしていないと批判されたが、私は「父親の遺産相続」で説明は足りていると思う。ただ、庶民感覚では億単位の金を相続できるのは異常で、ここが疑わしいという発生源になっている。
鈴木 小沢氏は「証人喚問でも何でも出る」と言った時がある。強制起訴前の10年6月だ。国会で説明するラストチャンスだったが、菅直人首相(当時)がチャンスをつぶした。4億円と聞くと驚くが、新人を選挙で当選させるには1人1億円と言われる。小沢氏は新人の面倒をみて、09年衆院選の民主党の大勝につなげた。弁護するわけじゃないが政治には金がかかる。小沢氏のお金の使い方に光が当たらないまま、ここまで来てしまった。
小町谷 説明はそれなりにしたと思う。事件のことを話せば公判に影響するかもしれないという危惧は持っていたはずだ。刑罰が待っているかもしれない被告に、どこまで話せと言えるのかは難しい。発言は政治的に利用される可能性があり、そこまで説明責任が求められる必要はないだろう。
鳥越 小沢氏が「検察が調べても起訴できるだけの材料はなかった。これに勝る説明責任はないだろう。でも分かってもらえない」と言っていたのが印象的だった。
−−政治的な影響は?
鈴木 大きい。裁判がなければ、政権交代時の民主党代表だったので多分、首相になっていただろう。「この3年間がなかったらなあ」と漏らしたこともある。一方で小沢バッシングで、地位を高めたり、支持率を高めてきた人たちがいるという構図だ。
鳥越 無罪判決は出たが、勝ったのは検察だ。陸山会事件で、東京地検特捜部の田代政弘検事(当時)が作成した捜査報告書のうそが明るみに出るなど検察も失うものがあった。しかし小沢氏にダメージを与え、首相にさせないという点で成果を上げた。
−−「検察の暴走」が明らかになった裁判でもあった。
小町谷 村木さんの事件で証拠改ざんなどが行われていたので、田代元検事の捜査報告書のうそには驚かなかった。米国は法曹一元なので、裁判官、検察官、弁護士は全て同じ法曹倫理で規律されるが、日本では最近まで検察官に倫理規定がなかったことが問題だ。また、検察審査会が強制起訴した6事件のうち1、2審で3件の無罪判決が出ている。検察が起訴できないとしたものを起訴すると判断した根拠が今後問われる。
鳥越 検察審査会の制度は危ういと感じた。審議は密室だ。地検が起訴できない事件でも、素人に起訴に相当するような材料を見せて起訴を促すように恣意(しい)的に審査会を導いたら、政治生命を奪うことなどは簡単だ。
小町谷 検察内部の審議も密室だ。繰り返すが、検察審査会による強制起訴では、控訴の是非が問われている。これをきっかけに、一般の刑事裁判でも1審で無罪判決が出た時は検察官控訴を制限するような仕組みを検討してもいいのではないか。今回の事件がこの問題を考えるきっかけになればいい。
−−今後の政治行動をどう見ますか。
鈴木 次の総選挙後に第三極の受け皿になろうと考えている。小沢氏は中小政党のトップとサシで会ってきた。政治スケジュールを実は着実にこなしている。
鳥越 小沢氏は自分が表に出てやる時代ではないと感じている。有識者らに呼び掛けて新たな動きを作り、裏方に回る。橋下徹大阪市長、石原慎太郎前東京都知事の連合のようなものではないリベラルな第三極を作り、民主、自民に勝つ戦略を描いているのではないか。
鈴木 その方向で動いているはず。実際に立候補者として財界や有識者の名前が挙がっている。みんなの党の渡辺喜美代表、国民新党を離党した亀井静香衆院議員とも連絡を取り合っているだろう。
小町谷 市民は、政権交代で失望したので政局や権力闘争を冷ややかに見ている。生活を安定させてくれる人は誰なのか、という観点で選挙に臨むと思う。第三極みたいな話が出てきてもおいそれとは乗れないのではないか。
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■人物略歴
◇すずき・てつお
54歳。テレビ西日本記者からフジテレビ政治部に出向、竹下派など担当。07年から現職
◇とりごえ・しゅんたろう
72歳。元毎日新聞記者。報道検証番組「ザ・スクープスペシャル」などで活躍中。
◇こまちや・いくこ
49歳。1996年弁護士登録。2002年米国ニューヨーク州弁護士登録。BPO放送倫理検証委員会委員長代行。
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◆ 『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家は 2011-11-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎 すべてを語る TPP、消費税、政治とカネ、原発… 聞き手;鳥越俊太郎(サンデー毎日2011/11/27号)
(中段のみ抜粋)
*マスコミ報道は日本の悲劇だ
鳥越:マスコミからも批判が出ました。ただ、その中でどうしても引っかかるのは(陸山会による土地購入の原資になった)4億円のカネの出所の説明が二転三転していると思えることです。胆沢ダム(岩手県奥州市)建設をめぐり、建設業者からの裏金が渡って原資の一部になった、それがはっきり言えないので説明が二転三転した―― マスコミを含めて、いろいろな人が指摘しています。僕らには真相が分からないのでお聞きしたい。あの4億円の出所、原資は何ですか。
小沢:僕のお金です。今のお話も全部、多分そうじゃないかという類いの話。マスコミも国会も忘れているのは、僕も後援会も秘書たちも、2年近くにわたって国家権力によって強制捜査されているということ。僕の知らないことや忘れたことまで(東京地検特捜部は)全部分かっています。捜査機関が強制捜査したにもかかわらず、不当・違法な金銭の授受はないことが明らかになったんですから、個人が勝手に説明する以上に確かな説明じゃないだろうか。あとはまったくのプライベートな話。何も悪いことがないのにプライベートを全部、説明しなきゃならないという理屈はおかしい。
鳥越:すると4億円の出所についても検察の事情聴取はあったと?
小沢:ぜ〜んぶ(笑)検察は知っています。預金通帳から何から、銀行の原簿まで持っています。強制捜査ですよ、鳥越さん。
鳥越:一部説明をしていましたが、お父さんからの遺産も……。
小沢:もちろんそれもあります。親からの相続は(4億円の中では)大きかった。僕自身だって稼いでいます。印税だけでも1億何千万円もありますし。
鳥越:あの本(『日本改造計画』)は売れましたから。
小沢:本はそれだけじゃないですから(笑)。
鳥越:そこに建設業者からの裏献金が紛れ込んでいることは?
小沢:絶対ありません。第一義的には、後援会のお金と私有財産は絶対混同しないようにずっと心がけてきていますし、もし違法献金があるなら、これだけ調べたら必ず出てくるでしょう。検察は噂の類いから全部、全員を呼んで調べているんですから。それでも出ないんですから。ないものは出るはずがありません。カネがなくなっちゃうということだから、用立てしたということ。
鳥越:そのお金の流れが、何となく不審を感じたところかもしれない。
小沢:「(土地を)買うと、事務所の運転資金、運営費がなくなっちゃう」と。それでは、僕の手持ちのカネを当面、用立てようと。
鳥越:それを抵当にして、また銀行からお金を借りている。
小沢:事務的な話です。(事務所に)まったく任せていますから。強制捜査した結果として何もないにもかかわらず、どうして「違法なカネに違いない」ということが、マスコミをはじめ無関係の人に分かるのでしょう。
鳥越:では、小沢さんは新聞・テレビの報道をどのようにご覧になっていますか。
小沢:日本社会の悲劇ですね。これが戦前、「一億玉砕」を唱えたこともあり、一度は国を滅ぼした。これから戦争が起きるということではありませんが、このままだと民主主義の否定になります。政治不信は民主主義の否定ですから。一体どういう社会をメディアは望んでいるのか、僕にはまったく分からない。ただ悲劇だと思う以外にないですけれど。
鳥越:明るい材料はないですかねえ……。今日は小沢さんに明るい材料をいただかないと(笑)。
小沢:日本人が豊かな情緒と精神文化を持っているのはいいのですが、国際社会の中で生きているのですから、民主主義をきちんと理解することが大切でしょう。それから、もう少し理性的。論理的な発想で自立しなければダメですね。政治でも、みんなで何となく決めるでしょ?誰が決めたのか分からないうちに決まってくる。
日本の合議制というのは、誰も責任を取らなくていいシステムなんです。うまくいっている時はそれでもいいが、問題が起きた時には「誰も決めない」ということになっちゃう。だから、さらに激変が予測されるような時は、論議を尽くしたうえで、その立場にある人が最終的に自分の責任で決める――「自立と共生」を僕はずっと主張しています。自分で考え、自分で決断し、自分の責任でやる。その要素をもう少し身に着けないといけません。
鳥越:時間がかかりますね。小沢さんと僕とはそんなに年齢が変わらないけれど、われわれが生きている間は無理かも(笑)。
小沢:無理ですね。日本人の中身まで変わるのは無理ですが、頭の中だけでも……。ただ、こう言うと笑う人がいるけど、僕も本質は情に樟さして流されるタイプの典型的日本人なんですよ。でも、政治家はそれではいけない、理性で考えて結論を出さないといけない、と常に言い聞かせています。「冷たい人間だな」とは言われますが(笑)。
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◆ 【政治家の金銭感覚】 田中良紹の「国会探検」 2012-01-13 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
田中良紹の「国会探検」
政治家の金銭感覚
強制起訴された小沢一郎氏の裁判でヤマ場とされた被告人質問が終った。法廷でのやり取りを報道で知る限り、検察官役の指定弁護士は何を聞き出したいのかが分からないほど同じ質問を繰り返し、検察が作り上げたストーリーを証明する事は出来なかった。
検察が起訴できないと判断したものを、新たな事実もないのに強制起訴したのだから当たり前と言えば当たり前である。もし検察が起訴していれば検察は捜査能力のなさを裁判で露呈する結果になったと私は思う。従って検察審査会の強制起訴は、検察にとって自らが打撃を受ける事なく小沢一郎氏を被告にし、政治的打撃を与える方法であった。
ところがこの裁判で証人となった取調べ検事は、証拠を改竄していた事を認めたため、強制起訴そのものの正当性が問われる事になった。語るに落ちるとはこの事である。いずれにせよこの事件を画策した側は「見込み」が外れた事によって収拾の仕方を考えざるを得なくなった。もはや有罪か無罪かではない。小沢氏の道義的?責任を追及するしかなくなった。
そう思って見ていると、権力の操り人形が思った通りの報道を始めた。小沢氏が法廷で「記憶にない」を繰り返した事を強調し、犯罪者がシラを切り通したという印象を国民に与える一方、有識者に「市民とかけ離れた異様な金銭感覚」などと言わせて小沢氏の「金権ぶり」を批判した。
しかし「記憶にない」ものは「記憶にない」と言うしかない。繰り返したのは検察官役の指定弁護士が同じ質問を何度も繰り返したからである。そして私は政治家の金銭感覚を問題にする「市民感覚」とやらに辟易とした。政治家に対して「庶民と同じ金銭感覚を持て」と要求する国民が世界中にいるだろうか。オバマやプーチンや胡錦濤は国民から庶民的金銭感覚を期待されているのか?
政治家の仕事は、国民が納めた税金を無駄にしないよう官僚を監督指導し、国民生活を上向かせる政策を考え、謀略渦巻く国際社会から国民を守る備えをする事である。そのため政治家は独自の情報網を構築し、絶えず情報を収集分析して対応策を講じなければならない。一人では出来ない。そのためには人と金が要る。金のない政治家は官僚の情報に頼るしかなく情報で官僚にコントロールされる。官僚主導の政治が続く原因の一つは、「政治とカネ」の批判を恐れて集金を自粛する政治家がいる事である。
今月から始まったアメリカ大統領選挙は集金能力の戦いである。多くの金を集めた者が大統領の座を射止める。オバマはヒラリーより金を集めたから大統領になれた。そう言うと「清貧」好きな日本のメディアは「オバマの金は個人献金だ」と大嘘を言う。オバマが集めたのは圧倒的に企業献金で、中でも金融機関からの献金で大統領になれた。オバマは150億円を越す巨額の資金を選挙に投入したが、目的は自分を多くの国民に知ってもらうためである。そうやって国民の心を一つにして未来に向かう。これがアメリカ大統領選挙でありアメリカ民主主義である。政治が市民の金銭感覚とかけ離れて一体何が悪いのか。
スケールは小さいが日本の政治家も20名程度の従業員を抱える企業経営者と同程度の金を動かす必要はある。グループを束ねる実力者ともなれば10億や20億の金を持っていてもおかしくない。それが国民の代表として行政権力や外国の勢力と戦う力になる。その力を削ごうとするのは国民が自分で自分の首を絞める行為だと私は思う。
日本の選挙制度はアメリカと同じで個人を売り込む選挙だから金がかかる。それを悪いと言うから官僚主義が民主主義に優先する。それでも金のかからない選挙が良ければイギリス型の選挙制度を導入すれば良い。本物のマニフェスト選挙をやれば個人を売り込む必要はなく、ポスターも選挙事務所も街宣車も不要になる。「候補者は豚でも良い」と言われる選挙が実現する。いずれそちらに移行するにせよ今の日本はアメリカ型の選挙なのだから金がかかるのをおかしいと言う方がおかしい。
ところで陸山会事件を見ていると1992年の東京佐川急便事件を思い出す。金丸自民党副総裁が東京佐川急便から5億円の裏献金を貰ったとして検察が捜査に乗り出した。捜査の結果、献金は「金丸個人」ではなく「政治団体」へのもので参議院選挙用の陣中見舞いである事が分かった。しかも既に時効になっていた。要するに検察が描いたストーリーは間違っていた。
ところが検察はメディアを使って「金丸悪玉」イメージを流した後で振り上げた拳を下ろせなかった。しかし金丸氏を起訴して裁判になれば大恥をかくのは検察である。検察は窮地に立たされた。そこで検察は取引を要求した。略式起訴の罰金刑を条件に、検察のストーリー通りに献金の宛先を「金丸個人」にし、献金の時期も時効にならないよう変更しろと迫った。「拒否すれば派閥の政治家事務所を次々家宅捜索する」と言って脅した。その時、小沢一郎氏は「裁判で検察と徹底抗戦すべし」と進言した。法務大臣を務めた梶山静六氏は検察との手打ちを薦めた。この対立が自民党分裂のきっかけとなる。
金丸氏が取引に応じた事で検察は救われた。そして金丸氏は略式起訴の罰金刑になった。しかし何も知らない国民はメディアの「金丸悪玉説」を信じ、余りにも軽い処罰に怒った。怒りは金丸氏よりも検察に向かい、建物にペンキが投げつけられ、検察の威信は地に堕ちた。検察は存亡の危機に立たされ、どうしても金丸氏を逮捕せざるを得なくなった。
総力を挙げた捜査の結果、翌年に検察は脱税で金丸氏を逮捕した。この脱税容疑にも謎はあるが金丸氏が死亡したため解明されずに終った。世間は検察が「政界のドン」を追い詰め、摘発したように思っているが、当時の検察首脳は「もし小沢一郎氏の主張を取り入れて金丸氏が検察と争う事になっていたら検察は打撃を受けた」と語った。産経新聞のベテラン司法記者宮本雅史氏の著書「歪んだ正義」(情報センター出版局)にはそう書かれてある。
小沢一郎氏は金丸氏に進言したように自らも裁判で検察と徹底抗戦する道を選んだ。検察は土地取引を巡って小沢氏が用立てた4億円の原資に水谷建設から受け取った違法な裏金が含まれているというストーリーを描き、それを隠すために小沢氏が秘書と共謀して政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとしている。それを証明する証拠はこれまでのところ石川知裕元秘書の供述調書しかないが、本人は検事に誘導された供述だとしている。
その供述調書が証拠採用されるかどうかは2月に決まる。その決定は裁判所が行政権力の側か国民主権の側かのリトマス試験紙になる。そして小沢氏に対する道義的?責任追及も民主主義の側か官主主義の側かを教えてくれるリトマス試験紙になる。
投稿者:田中良紹 日時:2012年1月12日 23:53
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◆小沢一郎元代表の「暗黒人民裁判」は、実は「市民感覚=貧民感覚裁判」だった2012年01月12日
板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
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【強制起訴】相次ぐ無罪に、揺らぐ存在意義 裁判なければ首相になっていた小沢氏/本日 安倍晋三氏 首相に
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