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「保守化と言うより従属化」:田中良紹 / 「現実主義者の安倍首相 当分は“低空飛行”」:中央日報

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保守化と言うより従属化
2012年12月27日23:21 田中良紹の「国会探検」
 第2次安倍内閣が発足した。前回の内閣が「お友達内閣」と揶揄されて不人気だったことから、「お友達」でないように見せているが、実態は前回以上の「お友達」である。その「お友達」の部分と、「お友達」でない部分との混在が今後の政権運営に混乱をもたらす可能性がある。
 前回以上に「お友達」なのは、まず安倍氏が全面的に依存する麻生太郎氏を副総理兼財務・金融担当大臣として政権の大黒柱に据えた事である。かつての安倍政権を私は「A(安倍)・A(麻生)連合」と呼んだ事があるが、今回は安倍政権だけでなく麻生政権が復活したかと思えるほど麻生氏の比重は重い。
 そして安倍氏が会長を務める保守派の議員連盟「創生日本」から9人もの「お友達」が入閣した。第1次安倍内閣の閣僚経験者を加えると19人中12人が気心の知れた「お友達」である。
 一方で「お友達」だけではないと見せつけたのが、総裁選挙を戦った石原伸晃氏や林芳正氏、あるいは谷垣禎一前総裁を入閣させたことである。しかしライバルと目される石原氏と林氏は政権の中枢から遠ざけ、原発問題とTPPという難問を担当させて、あわよくば力を削ぐことを狙っている。
 そのほか小泉政権時代に秘書官を務めた飯島勲氏や丹後泰健氏を内閣参与に任命したのも、多彩な人材を起用したと思わせる狙いがあるようだ。しかし公共事業削減など構造改革路線を支えた人脈と、麻生氏が主導する経済再生路線とが噛み合うのか疑問である。
 そもそも「AA連合」は小泉路線から脱却するために作られた。第1次安倍政権で安倍氏は麻生太郎氏を幹事長に起用しようとして森元総理に反対され、中川秀直幹事長を受け入れた。安倍政権がまず取り組んだのは郵政選挙で小泉氏に追放された議員の復党問題である。それが小泉元総理の逆鱗に触れ、小泉支持の中川幹事長と安倍総理の間にはすきま風が吹いた。
 その時に陰で支えてくれたのが麻生氏である。麻生氏は08年の総裁選挙で小泉路線からの脱却を訴え、それに対抗したのが小池百合子氏であった。今回の人事で復党組の1人である野田聖子氏が党三役に起用され、郵政選挙で刺客となった小池氏が処遇されなかった背景にはそうした事情がある。
 にもかかわらず小泉政権で秘書官を務めた人物を官邸に入れたのは、「オール自民」の体制を作らなければ参院選に勝てないと思ったからなのか。重厚で多彩な布陣は一つ間違うと混乱の原因になる。「お友達」からの脱却を見せようとして重厚な布陣を敷き、しかし本質は「お友達」である事が政権運営にどう影響するのか見ものである。
 今回の選挙結果で議席の数ほど自民党は支持されていない。参議院選挙に勝てなければ自民党は再び野党に転落する可能性がある。そのため参院選までは「安全運転」で行くつもりのようだ。政権課題を「経済再生」と「日米同盟強化」の二つに絞り、憲法改正など保守的な政策は参院選後に先送りするのである。
 安倍総理は選挙前には領土問題で民主党の対応を批判し、中国、韓国に強硬な姿勢で臨む事を表明していた。しかし選挙後は一転して柔軟な姿勢に変わる。この変化は何を物語っているか。選挙時には、領土問題に熱くなっている国民にアピールするため強硬発言をし、選挙後は「保守政権誕生」を警戒する中国、韓国に現実的に対応するために変化したのだろうか。
 私はそうは思わない。強硬姿勢をアメリカが認めないからである。日本が竹島問題や従軍慰安婦問題で韓国と対立し、尖閣諸島に公務員を常駐させる事をアメリカは自国の利益にならないと考えている。だから安倍政権は姿勢を変化させたのである。安倍政権の誕生で「保守化」が言われるが、私はむしろ「従属化」が始まると思う。
 アメリカが日本にやってもらいたい第一はTPPへの参加である。宮沢政権以降日本に要求してきた「年次改革要望書」を民主党の鳩山政権は廃止した。アメリカが「異質」と考える日本をアメリカと同じ土俵に乗せる日本改造計画が民主党政権によって頓挫した。それを復活させるのがTPPである。民主党政権で日米に軋みが生まれたのは、普天間問題よりも「年次改革要望書」の廃止だと私は思っている。
 自民党はTPP反対で選挙を戦ったが、安倍政権が日米同盟強化にコミットすればそうはいかなくなる運命にある。また日本の原発政策を主導したのはアメリカで、日本はすべてアメリカの指示通りにやってきた。従って原発は維持する事になり、憲法改正も集団的自衛権行使の容認などアメリカの求める範囲内になる。沖縄の普天間基地移転、オスプレイの自衛隊購入と全国的規模での訓練も実現するだろう。
 保守とは伝統的価値観を守ろうとする立場である。日本の伝統的価値観とアメリカのそれとは当然ながら異なる。ところが戦後アメリカに占領された日本は親米保守が主流となった。それでも冷戦期の自民党は親米的立場を取りながら自立への道を模索した。それが冷戦の終焉を受けて自立より従属へと転じたのである。
 米ソ両国を頂点とするピラミッド構造が崩れた事で、自立を模索する国が出てきたのとは裏腹に、日本はバブル崩壊後に「失われた時代」を迎え、小泉政権が日本をアメリカ型社会に構造転換させようとした。格差社会が生まれ国民が悲鳴を上げ始めた頃に第1次安倍政権は生まれ、小泉政権の後継者ながら小泉路線からの脱却を図ろうとした。
 しかしこれから始まる安倍政権はそうはならない。昔の自民党さながらの公共事業とアメリカ並みの金融緩和と規制緩和がごった煮のように盛り付けられ、小泉政権を倣った対米姿勢が貫かれる。それを「保守化」という言葉で表現すべきだろうか。私には「従属化」と言った方が適切だという気がする。

「現実主義者の安倍首相、当分は“低空飛行”」
2012年12月31日13時11分 [ⓒ 中央SUNDAY/中央日報日本語版]
  「ワシントンが安堵する声がアジアまで聞こえてくるようだ」。ニューヨークタイムズ(NYタイムズ)は、16日の日本総選挙と19日の韓国大統領選挙の結果を伝え、このように表現した。朴槿恵(パク・クネ)次期大統領と安倍晋三首相ともに保守色を帯び、米国との関係を重視するという共通点を取り上げながらだ。
  しかし安堵できる部分はそこまでだ。過去の歴史・領土問題をめぐる韓日関係の複雑な方程式のためだ。同紙も「今後、北東アジア情勢は米国政府が考える以上に複雑に動くだろう」と指摘した。
  問題を複雑にする核心は、韓日関係の雷管である過去の歴史・領土紛争に対する安倍政権の極右性向だ。「日本を取り戻そう」というスローガンを掲げた安倍内閣と自民党は▽慰安婦動員の強制性を認めて謝罪した「河野談話」の修正▽植民地支配と侵略の歴史を謝罪した「村山談話」の修正▽島根県の地域行事「竹島の日」(2月22日)の国家行事格上げ▽尖閣諸島(中国名・釣魚島)の実効支配強化のための公務員常駐推進−−など極右性向の公約を出した。
  しかし実際に政権交代した後、極右公約を覆しながら調整に入っている。戦術的な修正戦略を駆使しているのだ。安倍首相は「竹島の日」行事を中央政府が開催する案に関し、「総合的な外交状況を考慮して考える」と保留する可能性を示唆した。続いて自民党の第2人者である石破茂幹事長も保留の立場を確認した。「日韓関係が悪化する場合、どこが喜ぶかを考える必要がある」と述べながらだ。
  続いて27日には菅義偉官房長官が記者会見で「村山談話を継承する」と公約を覆した。安倍首相の念願だった河野談話の修正に対しても「この問題を政治・外交問題としてはいけない。外部の観点、すなわち専門家の検討が望ましい」とのみ明らかにした。
  こういう流れをどう見るべきか、国内外の専門家に尋ねた。
  ▽尹徳敏(ユン・ドクミン)国立外交院教授=「安倍首相は現実主義者的なところがある。日中関係が良くない状況で、韓国まで敵に回す愚を犯すことはないと考える。特使を急いで送った点からも、韓国との接点を探そうとうい意志が見え、この点を韓国の次期政権がうまく管理する必要がある」。
  ▽国民大の李元徳(イ・ウォンドク)国際学部教授(日本学)=「安倍政権に対し、日本国内では“安全運行内閣”という評価が出ている。当分は低空飛行をする姿を見せるだろう」。
  安倍首相と自民党が圧勝したのは右傾化公約のためではなく、有権者が民主党政権の失政に背を向けたためという指摘も出ている。マーティン・ファクラーNYタイムズ東京支局長は「安倍政権が右翼性向であるのは間違いないが、日本国民全体が右傾化していると考えるのは無理がある」と述べた。
  日本を20年以上も取材してきたスティーブン・ハーマンBOA(ボイス・オブ・アメリカ)北東アジア支局長の意見も似ている。「安倍首相は自民党がうまくやって選挙に勝ったのではないことをよく知っている。当分は右翼性向公約を積極的に進めないとみている」。
  2人の意見をまとめると、少なくとも来年7月の参院選までは安倍内閣が低姿勢を維持するという見方が優勢だ。まず景気浮揚に積極的に取り組んで民心をつかみ、参院選で勝利した後、右翼性向公約を実行するという計算があるということだ。
  内閣の人選でも安倍首相の複雑な内心を読み取ることができるというのが、専門家らの指摘だ。右翼性向が明確な内閣だが、安倍首相の反対派または中道性向の人物も起用したという点からだ。安倍首相は06年の執権当時、側近を多数起用し、「お友達内閣」という批判を受けた。しかし今回は自ら手を打ったことが分かる。
  18人の新任閣僚のうち極右派に分類される人物は11人だ。昨年8月に鬱陵島(ウルルンド)訪問を強行した新藤義孝総務相、慰安婦問題をめぐり「親が娘を売った」という妄言を吐いた下村博文文部科学相が代表的な人物だ。“安倍ファミリー”の核心人物で、「独島(ドクト、日本名・竹島)は日本領土」と繰り返し主張してきた山本一太氏は沖縄・北方担当相に抜てきされた。安倍首相は自分と自民党総裁職をめぐって葛藤した谷垣禎一前総裁を法務相に、林芳正氏を農林水産相に起用した。
  これに関し朴?熙(パク・チョルヒ)ソウル大国際大学院教授兼日本研究所長はこう分析した。「安倍首相なりの不偏人事。考えが異なる人たちも入閣させてバランスを取ろうとしたもので、7月の参院選までは無難に行こうという意図が見える。谷垣法務相と林農林水産相は比較的中道保守性向であり、右翼的争点で偏向的な発言をしない人たちだ」。
  国民大の李元徳教授も「韓国と対決構図に向かうべきという人たちは現在、日本国内でも少数」とし「安倍政権だからといって無条件に私たちと衝突すると予断するのは賢明でない」と指摘した。
  緊急なのは経済だ。安倍政権は最優先課題を経済回生としている。谷口智彦慶応大教授は「安倍内閣の優先順位は一に経済、二に経済。景気浮揚に成功するまで安倍政権は下手な動きを見せないだろう」と予想した。
  ◇安倍政権最優先目標は経済回復
  安倍政権は▽円安に導いてデフレ打開▽物価上昇率の2%上方修正▽10兆円規模の追加予算で景気浮揚▽道路・港湾など土木事業に10年間200兆円−−という政策を提示した。
  量的緩和のために、日本銀行(日銀)に物価上昇率目標値を1ー2%に修正しなければ法改正で中央銀行の独立性を制限すると圧力を加えた。そのためか、円安は急速に進んでいる。円・ドル為替レートは9月初め1ドル=78円30銭だったが、27日には1ドル=85円55銭となった。それだけ日本円が値下がりしたということだ。
  世界主要国通貨のうち、円の値下がり率が最も大きかった。これは日本と競争する韓国企業の輸出競争力低下と直結する問題だ。高麗大のオ・ジョングン教授(経済学)は「95−97年にウォン高円安が23%進み、経常収支赤字幅が膨らんだのが、97年通貨危機の主要原因になった」とし「韓国政策当局も対策の準備が求められる」と警告した。
  観光産業も打撃を受ける可能性が高い。韓国金融研究院のパク・ソンウク研究委員は「日本人観光客は費用に非常に敏感。円安が進めば韓国観光需要が減り、旅行収支もマイナスに転じるだろう」と懸念を示した。 (中央SUNDAY第303号)
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