安倍政権と財務省の「距離感」 周囲に経産省出身者配置で牽制
zakzak2013.01.31 連載:「日本」の解き方
時の首相と霞が関は形式的には主従関係である。霞が関官僚が日本政府の社員だとしたら、首相は社長だ。ただし、財務省は時にはその例外になる。
民主党野田政権を見ると、野田佳彦前首相は財務省の言いなりだった。政権交代前に、野田前首相はシロアリ(天下り)を退治しなければ増税しないと言い切っていたが、財務副大臣、財務大臣の間にすっかり、増税推進勢力に転換させられていた。財務省官僚に対抗できるようなスタッフを連れずに財務省に入れば、瞬く間に洗脳されてしまうのは、菅直人元首相をみても明らかだ。
財務省は各人の能力が他の霞が関官庁に比べて高いこともあるが、多くの政治家はその組織力に驚く。財務省の組織力を支えるのは、各省各機関に張り巡らされた人的ネットワークだ。
財務省のキャリア名簿をみれば、実に多くの人間が多種多様な組織に出向しているのがわかる。例えば、官邸だけでも、首相、官房長官、副長官への秘書官を出し、ミニ内閣といわれ各省からの出向者を有する副長官補のポストを持っている。予算官庁なので、霞が関各省への出向者も多い。さらに通貨外交などのために在外公館への出向者もいる。
そのほか、国内の大学のポストも多数持ち、大学教授の肩書で世論形成に大きく寄与している。さらに、国税庁の幹部はほぼ財務省キャリアで占められ、主要国税局の幹部も同様だ。この国税権力を握ることによって、政治へのにらみがきくばかりか、検察・警察のパイプも他省庁に比べて太い。財務省出身の国会議員も多く、財務省を応援することもしばしばだ。
安倍政権の中にも、既に考え方が変わった閣僚もいる。麻生太郎財務相だ。麻生財務相は、就任前の昨年12月20日、月刊誌FACTAのインタビューで日銀総裁の条件を聞かれて、(1)語学力(2)国際金融の理解(3)組織管理能力−を挙げている。(2)国際金融の理解は、具体的には金融の専門家という意味で、例えばみんなの党が主張する(1)英語(2)博士号(3)組織管理能力とほとんど同じなのは興味深い。
ところが、就任直後から、(1)語学力(2)健康(3)組織管理能力と条件を変更した。就任前の3条件では財務相OBが日銀総裁になれないので、国際金融の理解を健康と変更させたわけだ。
もっとも、今のところ安倍晋三首相にその心配はない。経産省出身者が秘書官2人、補佐官1人と、霞が関で財務省のライバルである経産省で固めている。あたかも財務省と経産省のバランスをとって、それぞれを牽制(けんせい)しているかのようだ。
それと1月19日の首相動静をみると、渡辺喜美みんなの党代表、塩崎恭久元官房長官と夕食をとっている。実は筆者もその場にいたが、いずれも霞が関に洗脳されず対抗できる人だ。そうした人との関係を切らない以上、いい意味で、政治家として財務省と絶妙な距離感をとっているだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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◆ 浮かぶ「経産省」と沈む「財務省」 経済政策発表の舞台裏 2013-01-12 | 政治
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安倍政権と財務省の「距離感」 周囲に経産省出身者配置で牽制
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