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首相所信表明で出た対極に位置する「芦田均」の謎 歳川隆雄

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首相所信表明で出た対極に位置する「芦田均」の謎
zakzak2013.02.05.連載:永田町・霞が関インサイド
 1月28日、第183通常国会が召集された。6月26日を会期末とする会期150日間の長丁場である。
 安倍晋三首相が同日の衆参院本会議で行った所信表明演説について、当然ながら野党各党や一部識者から批判が集中した。
 いわく、経済・外交・復興に絞りすぎて「所信」の内容が乏しいものだった。いわく、原発再稼働問題を含めエネルギー政策についての言及がなかった。いわく、「憲法改正」「国防軍」といった表現がなく安倍カラーが封印された−等々。
 だが、筆者が「あれっ」と思ったのは、締めくくりに引用された芦田均元首相の言葉、というよりも「芦田均」の名前そのものだった。
 確かに、終戦直後の焦土と化した日本を前に発した芦田の言葉「他人に問いかけるのではなく、われわれ自身の手によって運命を開拓するほかに道はない」は、ケネディ米大統領の就任演説を彷彿させるものだ。
 しかし、戦後の混乱期に首相を務めた芦田は、戦前の外交官時代を含め、保守政治家としては「リベラル」と見なされている。さらに言えば、現行日本国憲法制定に当たって、「芦田修正」を施したにせよ、憲法9条を容認した人物である。
 それだけではない。芦田内閣は僅か7カ月の短命に終わった。首相在任中の1948年6月に昭和電工疑獄が発覚、退任後の同年12月に贈収賄容疑で逮捕されてもいる。
 イメージ的には、安倍首相が目指すものとほぼ対極に位置するものだ。
 芦田はその後の54年11月、鳩山一郎元首相が当時の「吉田政治」批判から立ち上げた日本民主党に合流している。安倍氏の盟友、麻生太郎副総理兼財務金融相の祖父である吉田茂元首相を否定した人物でもある。
 そうしたこと全てを承知したうえで芦田の言葉を引いたのだろうか。安倍首相が「確信犯」であることは、事実だ。
 第1次安倍内閣時代の2007年5月の官邸メルマガにも芦田の名前が登場しているからだ。当時の安倍氏は「現行憲法の制定に関わった芦田元総理は、日本の将来はどうなるのか、と問う若者たちに、このように答えたそうです」と記し、今回の引用趣旨と異なる。
 安倍氏が芦田の使ったフレーズを気にいっているだけ、と単純に受け止めるべきかもしれない。
 それにしても、支持基盤をリベラル層にまで広げる意図からの引用と勘ぐりたくなるのは、深読みが業の筆者だけなのか。(ジャーナリスト・歳川隆雄)
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