[産経抄]2月8日
産経新聞2013.2.8 03:34
アルジェリア人質事件で犠牲となった日揮の木山聡さん(29)は、よほど自慢の教え子だったのだろう。事件直後、恩師である長岡技術科学大学名誉教授の石崎幸三さん(66)が、手記を小紙に寄せていた。何度読み直しても、胸が熱くなる。▼石崎さんによれば、学生時代の木山さんは、優秀なだけでなく、正義感と行動力にあふれていた。そんな有為な人材を見殺しにしたのは、日本の虚構の「安心・安全」だという。▼海外の邦人の安全確保のために十分な予算がつかないのは、政治が国内の内向きの要求にばかり応えて、大盤振る舞いしてきたからだ、と。一部の政治家が根拠もなく外国政府に頭を下げるのは、かえって日本を危うくする、とも指摘していた。▼中国海軍による、海上自衛隊の護衛艦などへのレーダー照射には、米国も衝撃を受けたようだ。パネッタ米国防長官は強い口調で、中国に自制を求めた。当然だろう。米軍は湾岸戦争後、偵察飛行中の米軍機がイラク軍からレーダー照射されると、すかさず軍事施設を空爆している。▼そんな一触即発の挑発行為にもかかわらず、中国外務省は、知らなかった、とコメントした。中国軍の暴走というのか。それとも、習近平総書記も承知している、尖閣諸島占領を見据えた作戦のひとつなのか。▼いずれにしても、現場の自衛官にとっては、一瞬たりとも気の抜けない日々が続く。国民の「安心・安全」のために、危険な任務に就く人たちに対して、もっと敬意を表すべきだろう。ところがこの期に及んで、自衛隊も緊張を煽(あお)っている、と主張する軍事評論家がいる。中国に頭を下げて、利用され続けた政治家にいたっては、顔も思い出したくない。
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パネッタ発言 同盟強化の契機にしよう
産経新聞2013.2.8 03:43[主張]
同盟国日本の安全を守ろうとする米国の決意表明を歓迎する。政府は重く受け止め、日米同盟強化の契機としていく必要がある。
尖閣諸島周辺で中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したことに関連し、パネッタ米国防長官が「他国の領土を追い求め、争いを起こしてはならない」と中国を批判し、「米日韓は地域の安全のためにあらゆる行動を取る」と語った。
クリントン前国務長官も退任直前の先月、「日本の尖閣諸島の施政権を害そうとするいかなる一方的行為にも反対する」と踏み込んだ発言をした。目に余る中国の行動への強い危機感だろう。
安倍晋三首相はレーダー照射を「不測の事態を招きかねない危険な行為」と批判した。顕在化した重大な危機を、同盟強化の一歩につなげたい。相手から一撃を受けた後にしか対応できない専守防衛の見直しも喫緊の課題だ。
パネッタ氏らの主張をより実効性のあるものにするには、まず、政府が「保有するが行使できない」としてきた集団的自衛権に関する従来の憲法解釈を変更し、日米共同の抑止力を高めなければならない。
第1次安倍内閣で設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)での議論が8日から再開される。
首相は平成20年の報告書で提起された米国向け弾道ミサイル迎撃など4類型以外にも、行使容認の対象を拡大する必要性を訴えている。離れた場所にいる米艦船の防護も対象とするなど、同盟の深化や日米の抑止力を高めることに役立つ政策判断を急ぐべきだ。
日中間の海上安全メカニズムの協議を再開する課題もあるが、中国側は応じていない。海自の護衛艦は現行の自衛隊法では十分な対抗措置を取れない。威嚇に屈せず、不測の事態に即応できる方策の準備も急がねばならない。
今回のレーダー照射について、小野寺五典防衛相は衆院予算委で国連憲章に反するとの認識を示した。2条4項で禁じた「武力の威嚇にあたる」との見解だ。
共産党一党独裁の中国では、党の直轄指導下にある軍は必ずしも政府の意向に左右されない。異形の大国を抑えるには、日米同盟の深化しかない。
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◆ 【レーダー照射】歯切れ悪い米政権 ケリー氏の「中国重視」影響の見方も 2013-02-07 | 国際/中国/アジア
日本はレーダー照射事件利用,戦争警報鳴らす−中国の環球時報
2月7日(ブルームバーグ):
中国共産党系の新聞、環球時報は7日の論説で、日本の海上自衛隊の護衛艦とヘリコプターに中国海軍の艦船が射撃管制用レーダーを照射した事件を日本が利用し、日中両国の国民に戦争への準備をさせていると主張した。
同紙は「日本が中国と日本の国民に、戦いの警報を鳴らしているとわれわれは考えている」とし、この事件に対する日本の見方は一方的であり、「海軍の問題を理解しない普通の人々は両国が戦争に非常に近づいていると信じるだろう」と指摘した。
環球時報は、共産党機関紙、人民日報の傘下にある中国語のタブロイド紙。党宣伝部が環球時報を監督しているものの、中国外務省の洪磊報道官ら当局者は同紙の報道は必ずしも政府の立場を反映していないと説明している。
ワシントンでは6日、パネッタ米国防長官が日中の状況は「最終的に抑えがきかなくなる可能性がある」と指摘、「われわれは日中双方に正しい判断を下し、互いに協力し問題を平和的に解決するよう努めることをもちろん促した」と語った。
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【レーダー照射】歯切れ悪い米政権 ケリー氏の「中国重視」影響の見方も
産経新聞2013.2.7 20:01
【ワシントン=佐々木類】中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用のレーダー照射について、米政府内では、退任間際のパネッタ国防長官が6日、「制御不能の事態」になることへの懸念を示したが、ホワイトハウスは静観したままだ。国務省は新旧長官の交代時期と重なったせいか、この問題への歯切れの悪さは否めない。
5日の国務省での会見では、レーダー照射について米記者が「これは同盟国日本だけではなく、米国も試されているとの認識はないのか」と食い下がったが、ヌランド報道官は「不測の事態への懸念」を表明するのにとどめた。
また、ケリー国務長官は中国の楊潔篪外相と5日に電話で会談したが、ヌランド報道官は、ケリー氏が会談でレーダー照射を取り上げたかどうかをただされても言及しなかった。
歯切れの悪い国務省の反応の背景には、ケリー氏の「中国重視」の姿勢があるとの見方も一部にある。
ケリー氏は、長官就任直前の1月下旬の上院公聴会で「日米同盟」には一切触れなかった半面、米中関係の強化に取り組む意向を示した。特に、東、南シナ海などにおける中国の海洋進出に対し、「(域内での)米国の軍事力増強が不可欠とは考えていない」「中国を敵対者とみなすべきではない。中国は世界の経済大国であり、関係の強化が重要だ」と述べ、中国への軍事的な牽制(けんせい)に消極姿勢さえみせた。
ケリー氏は岸田文雄外相との3日の電話会談でも、日米同盟の重要性に積極的な言及はなかったとされる。「日米同盟は米外交の礎石」と唱え続けてきたクリントン前長官とは対照的にみえる。
一方、米専門家の間では中国の挑発行為への厳しい批判が高まっている。
米海軍大のジェームズ・ホルムズ教授は、「冷戦時代も米国と旧ソ連の艦艇同士のニアミスはたくさんあり、敵の探知能力や対抗手段を探る格好の機会にもなっていた」と指摘する。
しかし、「米ソ間には今の日中間と異なり、瀬戸際政策の中にも危機を回避する柔軟性があった」と強調。中国と日本の間では、より不測の事態が起きやすいと指摘。今回の中国軍の行為を「恐ろしいことだ」と批判した。米紙ワシントン・ポストも6日の論説記事で、日中間には冷戦期に米ソ間に存在した衝突防止システムがなく、「死傷者を出す可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。
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◆ 『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行
p163〜
だからこの階級のミサイルを配備は、いまや中国の独壇場なのである。
「中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを配備して、脅威を高めているが、日本側ももし中国のミサイルを攻撃を受けた場合、同種のミサイルをで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる」
衝突しうる2国間の軍事対立では力の均衡が戦争を防ぐという原則である。抑止と均衡の原則だともいえる。
実際にアメリカとソ連のかつての対立をみても、中距離ミサイルは双方が均衡に近い状態に達したところで相互に全廃という基本が決められた。一方だけがミサイル保有というのでは、全廃や削減のインセンティブは生まれない。だから、中国の中距離ミサイルを無力化し、抑止するためには日本側も同種のミサイルを保有することが効果的だというのである。
日本がこの提案の方向へと動けば、日米同盟の従来の片務性を減らし、双務的な相互防衛へと近づくことを意味する。アメリカも対日同盟の有効な機能の維持には、もはや日本の積極果敢な協力を不可欠とみなす、というところまできてしまったようなのである。 *強調(太字・着色)、リンクは来栖
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◆『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店
第3章 中国はアジア覇権確立に大震災を利用する
p87〜
第2部 中国外相が日本の外相を嘲笑した
「日本の外相が中国外相に会って、核戦力を削減するよう頼んだが、中国外相は嘲笑しただけだった。日本の民主党政権は、中国が日本と同じ考え方をしていないことに大きなショックを受けた」
これはシュレジンジャー博士が私に話してくれたことである。
p88〜
この話はアメリカとヨーロッパ各国の関係者の間でまたたくまに広がってしまった。民主党政権はその幼稚な外交戦略を世界に知られることになってしまったのである。
民主党政権が中国に対して核兵器の削減と軍事力の制限を申し入れたことは、平和主義的で国際主義的な立場からすれば当たり前で、驚くべきことではない。オバマ大統領の「核兵器をなくそう」という政治スローガンと同じだと考えれば、しごく当然の主張ともいえる。
だが本気で中国に対して「核兵器を制限してほしい」と依頼したのだとしたら、あまりにも幼稚である。中国に対して軍事力を削減しろと求めたり、核兵器を減らせと要求したりするには力が必要であることは、国際政治の常識である。
もともと日本の民主党の首脳たちの周りには平和主義者や国連中心主義者が多く、平和理想論が世界でまかり通るという間違った考え方を民主党指導部に吹き込み続けている。中国に核兵器の削減を申し入れた「日本の外相」も、そうした間違った考え方にもとづいて行動したのだろう。
p89〜
だが核兵器保有国にとって核戦略は、国家安全の基礎である。核兵器の削減や破棄について話し合うためにはそれ相応の力が必要である。核戦略を廃棄したり削減したりしなければ、中国の安全に関わると考えさせるだけの力を持たなくてはできないことなのである。それには日本が独自の核戦力を開発し、中国に対して核軍事力競争を挑む決意のあるところを示す必要がある。(略)
いま中国にとって最も厄介なことが起きるとすれば、極東アジアのライバルである日本が軍事力を強化し、核兵器を持つことである。そうなれば中国の軍事的な優位が相殺されてしまう。
p90〜
日本の民主党政権が、理想的な平和主義者たちの言うことをしりぞけて、世界の現実を理解するならば、中国に対して交渉する方法がただ一つある。
「中国が核戦力を削減しない限り、日本も核武装する」
中国にとってこの日本の主張は安全保障上の大打撃になる。ある意味では、これまでの努力を帳消しにしてしまうものだ。(略)
このエピソードほど民主党の持っている国際政治音痴の体質をあらわにしたものはない。他国の政策を変えるのは平和主義ではなく、力であるという単純な原則を、民主党政権は理解していない。
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日本の虚構の「安心・安全」/ 中国に頭を下げて利用され続けた政治家にいたっては、顔も思い出したくない
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