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「河野談話で首相と応酬」 国家意識のない前原誠司氏 外交を理解していないことを暴露してしまった

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安倍首相、「軍による慰安婦の強制を示すものはない」
東亞日報FEBRUARY 08, 2013 08:57
 日本の安倍晋三首相は7日、「(旧日本軍が)人さらいのように人の家に入っていって、慰安婦にしたことを示すものはなかった」と述べた。慰安婦の強制性を示した河野談話についても、「軍による直接関与を示す証拠はない」とし、従来の主張を繰り返した。
 安倍首相は同日、衆議院予算委員会で、民主党の前原誠司議員から河野談話の修正についての質問を受け、このように明らかにした。また、「談話という形が良いのかも含めて、学識経験者からいろいろな話を聞かなければならない。官房長官が(河野談話の修正有無を)検討している」と述べた。さらに、「事実と違った見方によって、政治問題、外交問題化させるべきではない」と付け加えた。
 第1次安倍内閣の2007年3月、日本政府は閣僚会議で、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と閣議決定した。
 安倍首相はA級戦犯が合祀された靖国神社参拝についての質問に、「第1次安倍内閣において参拝できなかったことは痛恨の極みだ。 今の段階で行く、行かないについては差し控えたい」と答えた。安倍首相は、自民党総裁時代の昨年10月、靖国神社の秋季大祭に合わせて靖国神社を参拝した。
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衆院予算委の質疑要旨
 時事通信2013/02/07-22:37
 7日の衆院予算委員会の質疑要旨は次の通り。
 【首相の政治姿勢】
 石破茂氏(自民) 新たな内閣をつくった決意を。
 安倍晋三首相 1年で健康のためとは言え、首相の職を辞することとなり、国民に大きなご迷惑を掛けた。その際、マスコミを通じ日本中から厳しい批判も頂いた。私の自信と誇りは粉々に砕け散った。震災復興が遅々として進まず、領土・領海が極めて厳しい状況の中で、身を挺(てい)してこの危機に当たらなければ政治家としての資格がないという思いで、総裁選に立候補した。
 【靖国参拝】
 前原誠司氏(民主) 靖国神社を参拝するつもりはあるか。
 首相 第1次安倍内閣で参拝できなかったことは痛恨の極みだ。今の段階で行く、行かないについては差し控えたい。国のために命をささげたリーダーに尊崇の念を表するのは当然のことで、各国のリーダーが行っていることだ。
 【河野談話】
 前原氏 「河野官房長官談話」の見直しについて首相自身が答えるべきだ。
 首相 いたずらに外交、政治問題にすべきではない。
 【国家安全保障会議(NSC)】
 石破氏 集まった情報を精査し、どれが有用か判断し、分析し、評価を行う情報サイクルを政府内に確立していかなければならない。
 首相 (発生事案が)武力攻撃事態対処法を超えているか判断する上でも、NSCに集まる情報と分析力が大切なのではないか。
 【外交・安保】
 石破氏 中国艦船によるレーダー照射についてどう考えるか。
 小野寺五典防衛相 国連憲章上の武力の威嚇に当たるのではないか。このような事案が起きないよう海上の安全メカニズムを日中間で協議する窓口も必要だ。
 石井啓一氏(公明) 中国との政治的対話が重要だ。
 首相 (レーダー照射は)極めて遺憾だが、対話の窓口は閉ざさない。中国こそ戦略的互恵関係の原点に立ち戻っていただきたい。
 原口一博氏(民主) (レーダー照射は)どこで起きたのか。
 防衛相 東シナ海の公海上で、日中中間線の日本側だ。
 原口氏 首相としても、防衛省にちゃんと情報を自分に上げるように指示したのか。
 首相 事務方がより慎重になり、私のところに(情報が)上がってくるのが遅くなった。今後は未確認でも私や防衛相に上がるようにする。
 原口氏 沖縄県・尖閣諸島における公務員常駐を選択肢の一つと言い続けるのか。
 首相 どういう状況下で常駐させるかは戦略的観点から考える。
 原口氏 北朝鮮が行おうとしている核実験は日朝平壌宣言違反だ。
 首相 核実験は日朝平壌宣言や6カ国協議共同声明に違反する。核実験が行われれば独自の制裁を含め対応策を考えなければならない。
 【デフレ対策】
 前原氏 (政府・日銀の共同声明と)これまでの発言との整合性は。
 白川方明日銀総裁 経済全体のバランスをしっかり考えていく必要がある。
 前原氏 人口が減る日本の構造的問題を解決しなければデフレは続く。
 首相 私はその考えは取らない。デフレは貨幣(的)現象。金融政策で変えていくことができる。
 【環太平洋連携協定(TPP)】
 石破氏 「例外なき関税撤廃を前提とするTPP交渉参加に反対する」とした公約をいささかも変えてはならない。
 首相 例外なき関税撤廃なのかどうか、交渉する上で確認されなければならない。
 原口氏 参院選を考慮して交渉参加の判断を先送りすることはないか。
 首相 参院選があるから、その前にわれわれは態度を決めないということはない。
 【柔道界での暴力問題】 
 遠藤利明氏(自民) 選手が安心できるシステムが必要だ。
 下村博文文部科学相 日本オリンピック委員会(JOC)が主体となって柔道の暴力問題を調査するようお願いした。国内外に向けて再発防止策を早急に検討するように指示した。
 【原子力政策】
 辻元清美氏(民主) 戦後最大の国策の誤りは原子力政策だ。
 首相 安全神話に陥ってしまった点は深く反省しなければならない。
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前原氏、意趣返しは不発? 河野談話で首相と応酬
産経新聞2013.2.7 23:57
 悪夢のような政権転落から1カ月余り。民主党が安倍晋三首相との直接対決の先鋒に選んだのは前原誠司元外相だった。前原氏は、「河野談話」の見直しなど首相が就任前に繰り返し訴えてきたテーマについて、就任後の発言との“矛盾”を指摘。首相の「言うだけ」ぶりを浮き彫りにしようと試みたが、首相は冷静な答弁でかわした。
 「非常に奇異に感じた」「むちゃくちゃおかしい答弁なんですよ」
 前原氏がまず追及したのは、1月31日の衆院本会議における首相答弁。首相は「河野談話」の見直しに関し「官房長官による対応が適当だ」と答えていたが、前原氏は「(談話見直しは)安倍首相ご自身が自らの政治信念としてやってきた。ご自身が答えるのが当たり前だ」と批判した。
 これに対し、首相は「首相である私が踏み込むと外交、政治問題に発展する。だから、官房長官が歴史家や専門家の話を聞くのが常識的だ」と反論。「私のもとで官房長官が対応し発信するとの仕分けを行った」と説明した。
 前原氏はさらに過去の首相インタビュー記事を紹介。「自民党が政権復帰したら、しがらみを捨てて再スタートできる。河野談話に縛られることもない」とする昨年5月の発言などを取り上げ、「ご自身の発言ですよね」と攻撃した。
 前原氏は与党時代、自身の発言に対する実行力を批判された苦い経験があり、7日の予算委では「意趣返し」を狙ったようだ。
 「自民党は野党時代に好き勝手に勇ましい発言を繰り返した。『やられたらやり返す』ではないが、政権与党になりどう変わるかを質さなければいけない」
 前原氏は首相との質疑を終えた直後、自らのグループ会合でこんな感想を漏らした。
.........
〈来栖の独白2013/2/8 Fri. 〉
 「国家観」の無さを暴露したような前原氏の愚問に、安倍首相は正論で応対した。自信がある故、表情に微塵の揺らぎもない。
 前原氏を評して、私は「国家観の無さ」と言う。「国益」と言ったのでは、この人の根本的な問題性を衝くことができない。氏が与党時代にこの国に与えた損害は、「国益」などという言葉では追いつかない。世界に、この国の恥を晒した。侮られるもとを作った。
 昨日の質問にしても然り。河野談話の見直しは歴史的真実に基づいて、なされねばならない。事実を歪曲してはならない。
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◆ 『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店

       

第3章 中国はアジア覇権確立に大震災を利用する
p87〜
第2部 中国外相が日本の外相を嘲笑した
 「日本の外相が中国外相に会って、核戦力を削減するよう頼んだが、中国外相は嘲笑しただけだった。日本の民主党政権は、中国が日本と同じ考え方をしていないことに大きなショックを受けた」
 これはシュレジンジャー博士が私に話してくれたことである。
p88〜
 この話はアメリカとヨーロッパ各国の関係者の間でまたたくまに広がってしまった。民主党政権はその幼稚な外交戦略を世界に知られることになってしまったのである。
 民主党政権が中国に対して核兵器の削減と軍事力の制限を申し入れたことは、平和主義的で国際主義的な立場からすれば当たり前で、驚くべきことではない。オバマ大統領の「核兵器をなくそう」という政治スローガンと同じだと考えれば、しごく当然の主張ともいえる。
 だが本気で中国に対して「核兵器を制限してほしい」と依頼したのだとしたら、あまりにも幼稚である。中国に対して軍事力を削減しろと求めたり、核兵器を減らせと要求したりするには力が必要であることは、国際政治の常識である。
 もともと日本の民主党の首脳たちの周りには平和主義者や国連中心主義者が多く、平和理想論が世界でまかり通るという間違った考え方を民主党指導部に吹き込み続けている。中国に核兵器の削減を申し入れた「日本の外相」も、そうした間違った考え方にもとづいて行動したのだろう。
p89〜
 だが核兵器保有国にとって核戦略は、国家安全の基礎である。核兵器の削減や破棄について話し合うためにはそれ相応の力が必要である。核戦略を廃棄したり削減したりしなければ、中国の安全に関わると考えさせるだけの力を持たなくてはできないことなのである。それには日本が独自の核戦力を開発し、中国に対して核軍事力競争を挑む決意のあるところを示す必要がある。(略)
 いま中国にとって最も厄介なことが起きるとすれば、極東アジアのライバルである日本が軍事力を強化し、核兵器を持つことである。そうなれば中国の軍事的な優位が相殺されてしまう。
p90〜
 日本の民主党政権が、理想的な平和主義者たちの言うことをしりぞけて、世界の現実を理解するならば、中国に対して交渉する方法がただ一つある。
 「中国が核戦力を削減しない限り、日本も核武装する」
 中国にとってこの日本の主張は安全保障上の大打撃になる。ある意味では、これまでの努力を帳消しにしてしまうものだ。(略)
 このエピソードほど民主党の持っている国際政治音痴の体質をあらわにしたものはない。他国の政策を変えるのは平和主義ではなく、力であるという単純な原則を、民主党政権は理解していない。

第5章 民主党は日米関係の歴史を壊した
p134〜
 私のいるワシントンのハドソン研究所には、アメリカの情報機関で分析官をやっていた人物がいる。彼の話によると、アメリカ政府は小沢一郎はじめ民主党首脳の対中国政策と動きを綿密に監視してきた。
 「中国からの情報もあれば、アメリカ情報調査局や国家安全保障局(NSA)などからの情報もある。あらゆる情報が担当者の手許に集まっている。日本の民主党と小沢元代表が中国に接近していく動きは手にとるように明らかだった」
 民主党の小沢元代表は、中国を取り込んで日中の協力体制を作り、アメリカを牽制して外交的にアメリカに対する強い立場を作ろうとした。こういった小沢元代表はじめ民主党首脳の動きは、私ですら耳にしていたのだから、多くの人々が知っていたに違いない。
 小沢元代表が「沖縄の海兵隊はいらない」と言ってみたり、日米安保条約に反対したりしているのをアメリカが苦々しく思ったのは、単に反米的な姿勢だからというだけでなく、中国と手を組んでアメリカに対抗しようとしたからである。
p135〜
 小沢元代表の師ともいえる田中角栄元首相も、アメリカに対抗するために石油資源を獲得しようとしてアメリカに敗れた。田中元首相は結局、アメリカの石油メジャーと激突してしまい、ニクソン大統領とアメリカのCIAに打ち負かされてしまった。
 小沢元代表と民主党のアメリカに対する反乱は、そういった過去の出来事と比べるとあまりにも矮小である。まず小沢元代表の態度は中国と対等に手を結ぶというよりは、明らかに中国におもねっていた。民主党政権が発足した当時、長年の同盟国であるアメリカのワシントンではなく、まず北京に挨拶に行くべきだと示唆した態度などに、中国に対するあからさまな媚がよく表れている。
p142〜
第2部 民主党の指導者には国家意識がない
 民主党の前原前外相は、在日韓国人から政治献金を受け、責任を追及されるや辞任して姿を消してしまった。日本ではこの問題についてあまり厳しい追及が行われていないが、国際常識から見ると、前原前外相は日本を代表する一員として決してやってはならないことをしてしまった。
 国の外交は、国の利益をまず考えて行われなければならない。外交の先には戦争があると言われるほど、時には国家の命運がかかる。ところが前原前外相は、民主党には外交を理解している者が誰もいないことを暴露してしまった。
 前原前外相は、外国籍の人から献金を受けるというタブーを犯しただけでなく、民間企業のセールスマンをやって、アメリカの人々をあきれさせた。JR東海の代表者と共にフロリダ州マイアミを訪れた折、フロリダ州当局に対して、JR東海の新幹線システムを受け入れてフロリダに新幹線を作るよう働きかけたのだ。
p146〜
 外務大臣クラスの政治家が、日本のビジネスや、ビジネスプログラムを外国に売るために努力することは、日本経済のためという意味では当たり前である。
 かつてフランスのドゴール大統領に「トランジスタラジオのセールスマン」と揶揄された総理大臣がいた。国民所得倍増計画を標榜した池田勇人である。彼はトランジスタラジオをおみやげに持っていっただけだが、もし売り込もうとしたとすれば、日本のビジネスそのものだったろう。1つの特定商品ではない。
 ところが前原前外相は1企業であるJR東海の新幹線の売り込みに出かけた。この行為は間違っているだけでなく、モラルの点からも許されない。前原前外相はこうしたことをあたかも当然のごとく行い、反省もしていない。
 こうした姿勢は、彼が政治家として国家の代表であることを完全に忘れ去ってしまっていることをよく示している。
p146〜
 前原前外相は若くして民主党政権の代表的な立場についたが、その立場にふさわしい経験がない。とくに外務大臣という仕事にふさわしい教育を受けていない。
 一般的にアメリカでは、政治家がしかるべきポストに就くためにはその立場にふさわしい教育や経験が必要とされる。財務長官や商務長官に任命された人々を見ると、自分で会社を興して成功した人も多い。
「事業に成功した人は、自分の会社を大きくするために全力を挙げるが、同時にほかの会社を思うことも大事であることを知っている」
 全米商工会議所のスタッフの一人がこう言っているが、前原前外相は、政治家としてある程度の訓練を経てきたのであろうが、ビジネスマンとしての教育や経験はない。前原前外相の趣味は鉄道だが、だからといって大臣という立場を利用して、1つの会社を助けることは間違っている。
 これまで自民党の陣笠クラスの政治家が企業を助けたことはままあるが、プライベートな会社を、自民党やその代表が助けたという例はほとんどない。これは、政治家は国家を代表する職務であり、企業は私的なものであるという区別があるのを理解しているからだ。
 こうしたことがわからない前原前外相は結局、国家とは何であるかという認識を持っていない、つまり国家意識が欠如していると言わざるをえない。
p147〜
 国家意識のない政治家は、国際社会では存続することが許されない。世界は国家と国家の関係によって成り立っている。総理大臣といえども、あるいは末端の官僚といえども、あくまでも形の上では国家を代表する一員であり、すべての行動は国家意識に基づいたものでなければならない。
 前原前外相だけではなく、民主党の政治家たちはこういった国際常識に欠けている上、民間企業の責任者としても行動したことがないため、国家との関わりがきわめて薄い。
 アメリカで1企業のために働く人々は、国家公務員や議員ではなく、コンサルタントやロビイストである。私は、ワシントンで大勢のコンサルタントやロビイストと知り合いになったが、軍隊に加わり戦争に参加したことのある人が驚くほど多い。
「国の安全のために働いてきた」そうした愛国的な気持がビジネス活動につながっている。彼等は1企業のビジネス活動を援助して、外国政府と交渉することも多いが、あくまでも民間人として活動している。
 ところが前原前外相は、ひたすら政治活動だけをつづけ、まわりあわせで外務大臣というポストに就いた。彼は国家全体の利益を考えることなく、1企業のセールスマンになってしまったのである。
 前原前外相の行為に象徴される民主党政権のこうした体質を、アメリカ政府の関係者もよく心得ている。
p148〜
 民主党の政治家たちが世界から受け入れられない大きな理由の1つが、彼らの国家意識のなさなのである。
p150〜
 いずれにしても国民の命運を定める重大な仕事をする政権は、その責任の重さゆえに、簡単には手にすることができない。ところが日本の民主党政権は、ある意味では何の努力もしないまま政権を手にした。自民党政権が自壊してしまったからだ。
 自民党政権はあまりにも長い間権力の座にあったためにすっかり腐敗して、国民の信頼を失ってしまった。
p151〜
 自民党の崩壊は突然に起きた。まるでマスコミに煽られるように国民の大多数が自民党政権を見放し、民主党を選んだ。つまり、このどうしようもなく無責任な民主党政権を作ったのは、まぎれもなく日本国民なのである。
 これは日本の民主主義が他者から与えられたもので、自分たちの手で勝ち取ったものではないからである。日本の人々はいまだに民主主義に慣れていない。そのため政治に対する責任感がない。自分の持っている一票の重みが分かっていない。
 民主党政権が生まれたのは劇場型政治の結果であると言った人が大勢いた。国民が劇場の観客や芝居のファンのような気持ちで政府を選んだという意味だが、これは日本人の民主化が間違ったプロセスで行われたからである。
 日本の民主主義は、第2次大戦に日本が負けた後、占領軍であるマッカーサー司令部が日本国民を統治するために便宜的に与えたシステムである。政治家を選ぶ投票権を簡単に手にした日本の人々は本来、投票権というものが、骨身を削る苦労の末に手に入れるものだということをまったく知らない。
p152〜
 アメリカの政治を見ていると、民主主義による選挙とは、それぞれの人のモノの考え方と利益のせめぎあいである。つまり自らの利益を、政治的に確定するために投票を行う。
 アメリカという国は実にさまざまな人々で成り立っている。すでに地位を確立した途方もなく豊かな人々、自分の家を持つというアメリカン・ドリームを実現した人々、アメリカで生まれながら十分な教育も受けられず、その結果、何代にもわたって貧しいままの黒人、外国からやって来て、懸命に働いてようやく帰化が認められ選挙権を得た人々。
 こういった人々が自分の利益を守るために投票し、政府を作るのである。人々の投票によって政治は大きく変わり、オバマ大統領のようにアメリカ生まれかどうか分からないと疑われている政治家が大統領になることもある。
 アメリカ国民は、劇場の観客や俳優のファンではない。選挙というのは、人気投票では決してない。このため、選ばれる政治家は真剣に国のことを考える人々であり、国のために仕事を行う人でなければならない。
p153〜
 民主党の政治家が口にすることが無責任で、前に言ったことを平気で打ち消したり、嘘を言ったりするのは、投票した人々と同様、民主主義を理解していないからだろう。だから罪の意識がないのである。
 こういったやり方が現在の日本の政治で許されているのは、劇場型政治などという言葉を軽々と使う日本のマスコミの無責任さにも罪がある。日本のマスコミは、いまや芸能紙やスポーツ紙のようなつもりで政治を伝えている。
 外国の人々は簡単に前言を翻す民主党の政治家を軽蔑するだけでなく受け入れようとしていない。
 世界で共通しているのは、政治家の言葉はいったん出したら引っ込めることはできないということである。
p160〜
 くり返すが、民主党の政治家たちには国家意識もない。だから外国人に選挙権を与えようと考え、外国人から選挙資金を受け取っている。全米商工会議所のトム・ドナヒュー会長がこう言ったことがある。(略)
「外国人に選挙権を与えれば、日本が外国の利益に動かされる危険がある。民主党の政治家にはそれが分かっていないのか。おかしなことだ」
 このドナヒュー会長の言葉は世界の常識である。外国人から政治献金を受け取ることができないのは、国を守るための当然のしくみなのである。菅首相が外国人から献金を受けながら、返金してそのまま総理大臣の地位にとどまれること自体、世界の常識に反している。
 ちなみにアメリカでは、アメリカに帰化しただけではアメリカの大統領になることはできない。アメリカで生まれたアメリカ人でなければ、大統領に選ばれる資格はないのである。
 キッシンジャー博士もシュワルツネッガー前カリフォルニア州知事もアメリカ人以上にアメリカ的であり、アメリカのために働いている。だが大統領になることは出来ない。この原則は、国家が国家として存続するための最低限の原則である。理由のいかんを問わず外国人は国を動かしてはならないのである。
 民主党が政権をにぎっている現在、我々はこの問題について、じっくり考えてみる必要があるのではないか。この問題は単に外国人排斥とか、在日外国人に対する偏見といった面から考えてはならない。日本が国家として存続するための最低限の条件について考えなければならない。 *強調(太字・着色)は来栖
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人間の“卑小さ”を見た民主政権
年頭にあたり 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司
産経新聞2013.1.3 03:08[正論]
 ■強靱な頭脳と精神こそ国難救う
 思い返せば、3年余の民主党政権下の日本に生きていることは、実に不愉快であった。「戦後民主主義」の日本に生活していることがそもそも不愉快なことであり、だから、「戦後レジームからの脱却」を強く願っている一人なのだが、この3年余の期間はその不愉快さも極まったかの感があった。
 ≪日本の「常識」の大道を行く≫
 不愉快さのよって来る原因は、数え上げればきりがないが、「事業仕分け」とか「近いうち」といった茶番劇もさることながら、根本的には人間の卑小さばかりを見せつけられ、人間の偉大さや高貴さを示す事象が実に稀(まれ)であったことである。日本人が日本に生きていることに誇りを感じさせることがなかった。そして、この民主党政権を選択したのが日本人自身であることを思えば、ほとんど国民の現状に絶望しそうになった。
 だが、待ちに待った総選挙で安倍晋三自民党が大勝したことで、何とか絶望しきることがなくてすんだ。これでうんざりすることも減っていくことを期待している。
 安倍政権に望むことは、あれこれ具体的な政策というよりも前に、日本の歴史と伝統に基づく日本人の考え方の「常識」という大道を歩むことである。憲法改正も安全保障も経済政策も教育問題も、すべて日本人の「常識」から発想すればいいのである。逆にいえば、この3年余りの間ずるずると続いた政権が、いかに非常識な考え方を振り回していたことか、ということである。亡国の悪夢を見ていたような気がする。
 近代日本の代表的基督者、内村鑑三は、「武士道と基督教」の中で「我等は人生の大抵の問題は武士道を以て解決する、正直なる事、高潔なる事、寛大なる事、約束を守る事、借金せざる事、逃げる敵を遂わざる事、人の窮境に陥るを見て喜ばざる事、是等の事に就て基督教を煩わすの必要はない、我等は祖先伝来の武士道に依り是等の問題を解決して誤らないのである」と書いた。政治は「人生の大抵の問題」の領域を扱うものである。そして、日本人の「常識」とは、「祖先伝来の武士道」を基盤としたものに他ならない。
 ≪「祖先伝来の武士道」今再び≫
 「正直」「高潔」「寛大」といった徳が今日どのくらい失われてしまっているか、「約束を守る事」ということが「近いうち」という言葉をめぐる騒動でいかに蔑(ないがし)ろにされたか、ということを思えば、「祖先伝来の武士道」に依って生きることも容易ではないのである。「借金せざる事」という禁欲の欠如が国の財政悪化の根本にあるわけだし、「人の窮境に陥るを見て」喜ぶ卑劣な心理が、大方のメディアを成り立たせている。 安倍自民党の公約に「国土強靱(きょうじん)化」というのがあるが、確かに大震災への備えの必要やトンネル崩落事故などに露呈したインフラの老朽化は危機的な問題であり、それを解決していくために「国土」の「強靱化」は不可欠であろう。
 それにしても、「強靱」という表現はいい言葉である。強大や強盛をモットーとする国家と比べて、「強靱」という言葉には引き締まった語感がある。強大や強盛には張りぼて的な虚勢の悲喜劇が感じられるが、「強靱」には自らに厳しい節制がこめられている。
 昨年末の政権交代により、今年の日本は新たな門出のときを迎えるが、その重大な節目にあたって必要なのは、日本人の精神の「強靱化」である。尖閣諸島や竹島、あるいは北方四島といった領土問題や他の外交・安全保障の問題のような、「戦後民主主義」の安逸の中で眼をそらしてきた問題と堂々とぶつかる「強靱」な精神であり、本質的な議論を避けない「強靱」な思考力である。
 ≪小利口さではもはや通用せぬ≫
 昨年5月に桶谷秀昭氏との対談『歴史精神の再建』を上梓(じょうし)したが、その中で氏は新感覚派の横光利一が「今文壇で一番頭の悪いのが中野重治だ」といい、それに対して中野が「俺の頭は悪いかもしれないが、強い頭だ」とある小説に書いたということを語られた。
 「強い頭」、これこそ今後の日本人に必要なものである。教育改革の要諦も、ここにある。戦後の日本の教育は、「いい頭」に価値を置き、「強い頭」を持った人間を育成することを怠ってきた。自分で考えず、ただ回転の速い、整理能力の高い、要領のいい、といった頭を「いい頭」としてきた。
 しかし、こういう頭は、時代の風向きに敏感なだけの小利口な頭に過ぎない。戦後世界の中で小利口に立ちまわってきた日本も、もうそれでは通用しなくなった。いつの時代にもいる「新感覚派」的な小利口な人間たちが、日本をこんなありさまに引きずり落としてしまったのである。
 日本を再生させて内外の国難に取り組んでいけるのは「強い頭」に他ならない。「強い頭」とは、人間と世界の過酷な現実を直視する水平的な勇気を持つにとどまらず、その現実を貫く垂直的な希望を抱いているものだからである。(しんぽ ゆうじ)


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