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クリントン発言の本音「日本と中国はこれ以上軍事的緊張を高めないで、有耶無耶でもよいから現状維持して」

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クリントン発言の歪曲報道に要注意 「ともかく平和的に解決してほしい」というのが本音
JBpress2013.02.08(金) 北村 淳
 オバマ政権の2期目がスタートして、銃規制問題と移民法改正問題が財政危機克服以上にアメリカのマスコミの話題となっている。そして、オバマ政権(1期目の)誕生に際しての大統領指名獲得を巡ってはバラク・オバマの最大の政敵であったにもかかわらず、オバマ政権の国務長官として大統領の右腕として手腕を振るったヒラリー・クリントンが国務長官から退き、「次のステップへ向かうのか?」という話題も大きな関心を集めている。
 そのヒラリー・クリントンが国務長官を退任する前に最後に日本と関わったのは、岸田文雄外務大臣が訪米して会談した際の共同記者会見における尖閣問題をはじめとする諸懸案に関するコメントであった。
■尖閣問題に言及したヒラリー・クリントン
 記者会見においてヒラリー・クリントンは、自らが国務長官に就任して初めての公式外国訪問は、それまでの国務長官が伝統的にヨーロッパ諸国を歴訪したのと違い、21世紀におけるアメリカの国益にとり最も重要であるアジア、それも「何の疑いもなく、最初の訪問国には日本を選んだ」という思い出を述べた。
 そして、「最初の訪問の際に東京で述べたように、われわれ(日本とアメリカ合衆国)の同盟関係は、アメリカ合衆国の(東アジア)地域への関与にとっての土台となり続けている」と日米同盟関係の重要性を再確認し、「日米における同盟関係への強調と関与に関して、私は日本の人々ならびに指導者たちにお礼を申し上げたい」という日米関係の重要性を讃えた。
 引き続き、北朝鮮に対する危惧、尖閣諸島問題、普天間基地移設問題それにTPPに関してそれぞれ簡潔な公式声明が述べられた。
 それらのうちで尖閣問題に関してのコメントは、以下のようなものであった。
 「私は、尖閣諸島に関して、アメリカ合衆国が伝統的に維持し続けてきた政策とわれわれの(日米安全保障条約上の)義務に関して繰り返して再度述べさせてもらいました。以前にも私が何度も申し上げたように、アメリカ合衆国はこれらの島々(尖閣諸島)の究極的な主権に関しては立場をはっきりさせないが、それらの島々が日本政府の施政下にあることを認識し、日本の施政権を弱めるためのいかなる一方的な行為にも反対し、全ての関係当事国に偶発的事件を回避し異議申し立て事案を平和的手段によって処理するように強く要請いたします」
 岸田外相の声明に引き続いて報道陣と取り交わされた質疑応答の最後で、クリントン国務長官は尖閣問題に関して再度以下のように言及した。
 「私は、中国の友人たちにも言ったように、日本と中国がこの問題(尖閣諸島問題)を対話を通して平和裏に解決することをわれわれ(米国)が期待しており、安倍政権が早い時期に中国政府と接触し話し合いを始めることをわれわれは歓迎する、ということを岸田外相にも再度述べました。われわれは、日本と中国双方の新しい指導者たちに(東アジア地域の)全地域における安全保障のために、互いに幸先の良いスタートを切ることを期待しています」
 「われわれは、いかなる国によるどのような行動といえども東アジア地域の平和と安全保障と経済発展を弱体化させることは望まない、ということを明確にしました。われわれは、(尖閣問題での)緊張を緩和し、事態の悪化を防ぎ、日本と中国が互いの国益にとって重要なその他の様々な諸懸案に関しても対話を促進することを可能にするように、引き続き日中が協議を行うことを望んでおります」
■アメリカが日本を軍事支援するとは言っていない
 このようなヒラリー・クリントンの尖閣問題に関するコメントについて、日本のマスコミの多くは「(尖閣諸島に対する)日本の施政権を弱めるためのいかなる一方的な行為にも反対」するとの一節を取り上げて、「尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象になる」とのアメリカ政府の立場を再確認したと指摘するとともに、中国による尖閣諸島周辺での挑発的行動を従来より踏み込んで牽制した、といった趣旨の報道をなした。
 例えば「米長官が初明言 『日本脅かす、いかなる行為にも反対』 日米外相会談」といった見出しで、記事は以下のようになる。「平和的解決を訴える米政府が尖閣諸島をめぐり、中国の挑発行為に反対の意思を示したのは初めて。米議会も昨年11月末、国防権限法に尖閣防衛を明記しており、政府と議会が一体となって 中国を強く牽制(けんせい)した格好だ」
 これではいかにも、尖閣諸島問題がきっかけとなり日中間に武力紛争が勃発した場合には、アメリカが日本側に直接的軍事支援を行い中国を追い払う、といったニュアンスを与えかねない報道姿勢である。
 確かにヒラリー・クリントンの上記のコメントは、2013年度国防権限法に盛り込まれた尖閣諸島関連条項(ウェッブ修正条項)の内容とオーバーラップするものであり、アメリカ連邦議会の意見表明(なんら直接的法的拘束力があるわけではない)であるウェッブ修正条項を、再度アメリカ政府が国務長官の公式コメントによって確認したものと言うことができる。
 
【参考】2013年度国防権限法ウェッブ修正条項
第1246条:尖閣諸島情勢に対するアメリカ合衆国上院の意見
アメリカ合衆国上院の意見は下記の通り:
(1)東シナ海は、アジア太平洋地域の全ての諸国家に利益をもたらす重要な海上航路帯・通商路を有するアジアの“共有の海”の一部である。
(2)東シナ海における領有権ならびに管轄権に関する紛争の平和的解決は、紛争を複雑にするあるいは増長したり地域を不安定にする様々な行動に関与する全ての当事国の自制に基づいた行動が要求されている。そして相違点は、普遍的に認められている慣習国際法の原則に従った建設的方法で処理されるべきである。
(3)アメリカ合衆国は、尖閣諸島の究極的領有権に関しては立場を明確にはしないが、尖閣諸島が日本の施政下にあることは認めている。
(4)第三国による一方的な行動は、尖閣諸島が日本の施政下にあるというアメリカ合衆国の認識になんらの影響も与えない。
(5)アメリカ合衆国は、航行の自由、平和と安定の維持、国際法の遵守、そして合法的通商の自由に対して国益にかかわる利害関係を持っている。
(6)アメリカ合衆国は、脅迫なしで領有権紛争を解決しようとする当事者間の協調的外交プロセスを支援し、東シナ海における主権や領域を巡っての諸問題を解決するために当事国が脅迫しようとしたり、軍事的恫喝をしたり、軍事力を使用することに反対する。
(7)アメリカ合衆国は「締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動する」という日米安保条約第5条の規定を再確認する。

 しかしながらウェッブ修正条項にもクリントン国務長官のコメントにも、なんら尖閣諸島を巡っての日中軍事衝突に対するアメリカの直接的軍事介入を示唆する言葉は存在しない。
 それだけでなく、首尾一貫して「第三国間の領土問題には介入しない」という米国外交の伝統的鉄則に従って、「アメリカ合衆国は尖閣諸島の究極的な主権すなわち領有権に関しては立場を明確にしない」と繰り返し述べている。
 そして、「日本の施政権は認知する」という表明により、アメリカ政府は現時点では中国よりは日本の肩を持つとのニュアンスを明らかにしているが、現に同盟関係にある日本と、アメリカとは同盟関係にない中国が、アメリカ政府自身には態度を明確にできない領有権問題に関して対立している場合に“アメリカ政府・議会が完全な中立よりは日本寄り”といった立場を表明するのは当然であり、このことをもって「万が一日中軍事衝突が勃発した場合には日米安全保障条約第5条に基づいてアメリカ救援軍が駆けつける」と考えるのは、あまりに自己中心的な思考と言わざるを得ない。
■「挑発的防御策をとるべきではない」と予防線
 日本のマスコミが飛びついた「(尖閣諸島に対する)日本の施政権を弱めるためのいかなる一方的な行為にも反対」するというくだりは、ヒラリー・クリントンのコメント全体から判断すると、「ともかく、平和的に解決する努力を、日中双方は早急にかつ粘り強く展開すべきであり、偶発的な軍事衝突が起きかねないような挑発行為は厳に慎まねばならない」という趣旨である。日本に対しても「中国の挑発に対応して挑発的防御策はとるべきではない」と予防線を張っていると理解しなければならない。
 アメリカはアフガニスタンから戦闘部隊を撤退させるとはいっても、イスラエル周辺諸国やイランを巡っての軍事衝突も予想されるし、アルジェリア事件で日本の人々にも知れわたったように北アフリカでの対テロ戦争も激化の一途をたどっているうえ、北朝鮮をめぐる朝鮮半島問題も深刻化している。
 そうした状況で、尖閣問題が引きがねとなって日中が軍事的緊張状態に突入した場合には、アメリカ政府としては手の施しようがなくなるのは必至である。
 「少なくとも日本と中国にはこれ以上軍事的緊張だけは高めないで、有耶無耶な状況でもよいから、現状を維持していてほしい」というのがアメリカ政府の本音であると考えなければならない。
 <筆者プロフィール>
北村 淳 Jun Kitamura
 戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は戦争&平和社会学・海軍戦略論。米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める。現在サン・ディエゴ在住。著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)等がある。
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【レーダー照射】歯切れ悪い米政権 ケリー氏の「中国重視」影響の見方も 2013-02-07 | 国際/中国/アジア 
 日本はレーダー照射事件利用,戦争警報鳴らす−中国の環球時報
  2月7日(ブルームバーグ):
 中国共産党系の新聞、環球時報は7日の論説で、日本の海上自衛隊の護衛艦とヘリコプターに中国海軍の艦船が射撃管制用レーダーを照射した事件を日本が利用し、日中両国の国民に戦争への準備をさせていると主張した。
 同紙は「日本が中国と日本の国民に、戦いの警報を鳴らしているとわれわれは考えている」とし、この事件に対する日本の見方は一方的であり、「海軍の問題を理解しない普通の人々は両国が戦争に非常に近づいていると信じるだろう」と指摘した。
 環球時報は、共産党機関紙、人民日報の傘下にある中国語のタブロイド紙。党宣伝部が環球時報を監督しているものの、中国外務省の洪磊報道官ら当局者は同紙の報道は必ずしも政府の立場を反映していないと説明している。
 ワシントンでは6日、パネッタ米国防長官が日中の状況は「最終的に抑えがきかなくなる可能性がある」と指摘、「われわれは日中双方に正しい判断を下し、互いに協力し問題を平和的に解決するよう努めることをもちろん促した」と語った。
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【レーダー照射】歯切れ悪い米政権 ケリー氏の「中国重視」影響の見方も
産経新聞2013.2.7 20:01
 【ワシントン=佐々木類】中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用のレーダー照射について、米政府内では、退任間際のパネッタ国防長官が6日、「制御不能の事態」になることへの懸念を示したが、ホワイトハウスは静観したままだ。国務省は新旧長官の交代時期と重なったせいか、この問題への歯切れの悪さは否めない。
 5日の国務省での会見では、レーダー照射について米記者が「これは同盟国日本だけではなく、米国も試されているとの認識はないのか」と食い下がったが、ヌランド報道官は「不測の事態への懸念」を表明するのにとどめた。
 また、ケリー国務長官は中国の楊潔篪外相と5日に電話で会談したが、ヌランド報道官は、ケリー氏が会談でレーダー照射を取り上げたかどうかをただされても言及しなかった。
 歯切れの悪い国務省の反応の背景には、ケリー氏の「中国重視」の姿勢があるとの見方も一部にある。
 ケリー氏は、長官就任直前の1月下旬の上院公聴会で「日米同盟」には一切触れなかった半面、米中関係の強化に取り組む意向を示した。特に、東、南シナ海などにおける中国の海洋進出に対し、「(域内での)米国の軍事力増強が不可欠とは考えていない」「中国を敵対者とみなすべきではない。中国は世界の経済大国であり、関係の強化が重要だ」と述べ、中国への軍事的な牽制(けんせい)に消極姿勢さえみせた。
 ケリー氏は岸田文雄外相との3日の電話会談でも、日米同盟の重要性に積極的な言及はなかったとされる。「日米同盟は米外交の礎石」と唱え続けてきたクリントン前長官とは対照的にみえる。
 一方、米専門家の間では中国の挑発行為への厳しい批判が高まっている。
 米海軍大のジェームズ・ホルムズ教授は、「冷戦時代も米国と旧ソ連の艦艇同士のニアミスはたくさんあり、敵の探知能力や対抗手段を探る格好の機会にもなっていた」と指摘する。
 しかし、「米ソ間には今の日中間と異なり、瀬戸際政策の中にも危機を回避する柔軟性があった」と強調。中国と日本の間では、より不測の事態が起きやすいと指摘。今回の中国軍の行為を「恐ろしいことだ」と批判した。米紙ワシントン・ポストも6日の論説記事で、日中間には冷戦期に米ソ間に存在した衝突防止システムがなく、「死傷者を出す可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行
p163〜
 だからこの階級のミサイルを配備は、いまや中国の独壇場なのである。
 「中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを配備して、脅威を高めているが、日本側ももし中国のミサイルを攻撃を受けた場合、同種のミサイルをで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる」
 衝突しうる2国間の軍事対立では力の均衡が戦争を防ぐという原則である。抑止と均衡の原則だともいえる。
 実際にアメリカとソ連のかつての対立をみても、中距離ミサイルは双方が均衡に近い状態に達したところで相互に全廃という基本が決められた。一方だけがミサイル保有というのでは、全廃や削減のインセンティブは生まれない。だから、中国の中距離ミサイルを無力化し、抑止するためには日本側も同種のミサイルを保有することが効果的だというのである。
 日本がこの提案の方向へと動けば、日米同盟の従来の片務性を減らし、双務的な相互防衛へと近づくことを意味する。アメリカも対日同盟の有効な機能の維持には、もはや日本の積極果敢な協力を不可欠とみなす、というところまできてしまったようなのである。 *強調(太字・着色)、リンクは来栖
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『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店


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