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法令違反の疑いも浮上する名門・南山学園の資産運用の闇

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法令違反の疑いも浮上する名門・南山学園の資産運用の闇
Diamond online 2013年2月21日 週刊ダイヤモンド編集部
 名門私立大学、南山大学などを運営する学校法人が、デリバティブ契約直後に、契約した証券会社から不透明な寄付金を受けていたことが、週刊ダイヤモンドの取材でわかった。専門家からは、法令違反の疑いも指摘されている。
 「デリバティブ取引に係る契約を全て解除いたしました」──。
 昨年11月、南山学園はHP上で、すべてのデリバティブ契約を解約し、総損失額が確定したことを明らかにした。
 学校法人の教育や研究に支障がないことを強調する内容だが、このリリースで、明らかにされた損失額は約229億円。デリバティブ取引で損失を被った学校法人の中で断トツとされた慶應義塾大学の225億円を上回る。冒頭の文章で始まるプレスリリースは、しかし、掲載からわずか2週間で南山学園のHP上から削除されてしまう。
 南山学園は、2005年8月末から08年6月までの3年弱の間に、外資系4社を含む証券会社6社と通貨スワップ取引など計36のデリバティブ契約を結んでいた。
 ある南山学園関係者はこのリリースに、「取引の裏で起きていたことを隠蔽している」と憤る。
 本誌編集部が入手した南山学園の内部文書の一つに、南山大学への寄付金がある。
 06年1月、ある寄付金が、日本私立学校振興・共済事業団を経由して南山大学に寄せられた。
 寄付者の名前は、その直前に南山学園とデリバティブ契約を交わした外資系証券会社だ。しかも、寄付は1回にとどまらず、数十万円ずつ複数回にわたる。もちろん、初契約以前に寄付が行われたことはない。
 「寄付が事実だとすれば、極めて由々しき問題だ」
 そう指摘するのは、デリバティブ取引に詳しい本杉明義弁護士だ。「金融商品取引法(旧証券取引法)が禁じる『特別の利益の供与』に触れる疑いが出てくる」(本杉弁護士)からだ。
 大学への寄付は、寄付者が匿名を望めば、いつ、誰が、どこに、いくら寄付したのか、明らかになることはない。そのため、本誌の取材に南山学園は当初、「詳細は一切言えないが、学園の趣旨に賛同して寄付を頂いたと理解している」(法人事務局長)としていた。
 しかし、このたび、文部科学省が寄付について南山学園に事実確認をした途端、「詳細はわからない。不適切な事実があれば対応していく」(財務事務室長)と回答を変えるなど、一貫性にも欠ける。
 また、財務事務室長は「当時、広く寄付金を募るため、証券会社にも案内パンフレットを渡すなどしたかもしれないが、個別の証券会社に寄付を求めたことはない」と、南山学園側からの寄付の要請を否定した。
 だが、証券会社の内部事情に詳しい別の弁護士は「デリバティブ契約を結んだ大学に寄付金を出したなんて話は、今まで聞いたことがない。利益供与が疑われるのであり得ないこと。ましてや、証券会社側から持ちかけることなんて絶対にない」と真っ向から反論。契約をめぐる不透明な寄付金の授受という疑惑は深まる一方だ。
■疑惑は寄付金以外にも 厳格な責任追及が必要
 南山学園の資産運用における疑惑は、これにとどまらない。
 改めて冒頭の一文を思い出してほしい。「デリバティブ取引に係る契約を全て解除」としているが、実際は、デリバティブを組み込んだ金融商品、仕組み債の契約とその含み損が存在しているのだ。
 南山学園が保有する仕組み債は12年3月現在、超長期債を中心に44商品あり、簿価ベースで計54億円以上。含み損は実に8億6600万円に上り、契約の大半がいまだ解約されないままだ。
 南山学園は「仕組み債には、デリバティブを含む商品もあるが、有価証券の一部として、簿内取引の範囲で、適切に処理している」と説明する。だが、文科省高等教育局の担当者は「世間一般の感覚からすれば、プレスリリースの文章は誤解を招く」と眉をひそめる。
 先月25日には、南山学園の評議員会が人選した外部有識者らによる「資産運用問題総括委員会」の報告書が公表されたが、ここにも問題がある。
 報告書は、学園の運用指針に反するデリバティブ取引を主導した前財務担当理事さえ、「民事責任があると断定する結論には至らなかった」とし、南山学園側の法的責任を追及しなかった。
 しかし、5人で構成される委員会は、委員長である南山学園の顧問弁護士をはじめ、南山大学副学長ら学園関係者で過半の3人を占める。となれば、身内に甘い判断を下したとの疑問は免れない。
 本杉弁護士は「報告書の結論は、デリバティブ裁判を手がける弁護士として違和感を持つ。結論ありきの調査ではないかと疑いたくなる。非常識な事実認定も少なくない」と断じる。
 デリバティブ取引で損失を被った駒澤大学や愛知大学などは、証券会社を相手取り損害賠償訴訟を起こし、理事長を背任容疑で告発した。だが、南山学園は「現時点で、証券会社への損害賠償訴訟を起こす方針はない」という。
 損失額約229億円は、昨年度に南山大学と短期大学に投入された税金(補助金)の20年分だ。責任の所在を曖昧にしたままの幕引きは決して許されない。
 (「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)


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