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尖閣 「日本支持が最大の対中抑止」=米下院軍事委員会 ランディ・フォーブス委員長(共和党)演説

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「日本支持が最大の対中抑止」米下院軍事委員長 沖縄県・尖閣諸島問題
産経新聞2013.2.27 23:49
 【ワシントン=古森義久】米下院軍事委員会のランディ・フォーブス委員長(共和党)は26日に議会内で開かれた中国人民解放軍の実態についての研究会で演説し、沖縄県・尖閣諸島問題について、「米国が同盟国の日本を支持し、その基本をより明確に、かつ強固に表明していくことが中国への最大の抑止となる。米国の目的はこの地域の安定であり、中国のいまの動向はこの目標への挑戦となる」と述べ、オバマ政権への批判をにじませた。
 また、「尖閣を含む地域の安定を保つため、いざという際には、米国が日本を支援するということや、中国側が尖閣に対して何をしているのか、詳細に監視していることを中国側により明確に知らせておくことが重要だ」と語った。
 米軍のあり方の決定などに大きな権限を持つ下院軍事委員会を代表するフォーブス議員は、議会で中国の軍事動向を調査・研究する「中国議員連盟」の会長をも務めている。
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「オバマ政権よ、同盟国の日本をもっと支持せよ」〜米側から批判の声 ワシントン・古森義久 2013-02-27 | 国際/中国/アジア 
 オバマ政権よ、同盟国の日本をもっと支持せよ   
 「ステージ風発」2013/02/25 14:55
 アメリカ側ではオバマ政権の対日、対中の姿勢に対して、以下のような批判の声が出ています。
 【ワシントン=古森義久】 
 米国の有力研究機関「ハドソン研究所」は尖閣諸島をめぐる日本と中国の対立へのオバマ政権の姿勢に対し「敵対的行動で緊張を高めているのは中国なのに中国に遠慮しすぎる政策を取り、かえって危険を増している」と批判する報告を23日、発表した。二期目のオバマ政権の外交・安保布陣がとくに危険だという。
 同報告は「米国は中国の日本威嚇を止めねばならない」と題され、共和党ブッシュ前政権の高官で現在はプリンストン大学教授のアーロン・フリードバーグ氏らにより執筆された。
 同報告はオバマ政権が昨年からアジア旋回(ピボット)と名づけた中国の勢力拡大に対するアジア・太平洋での抑止力増強策も最近、中国の機嫌を損ねないという方向に軟化し、ピボットという政策用語も会計用語のような「リバランス(再均衡)」へと薄められた、とまず述べている。
 そのうえで同報告は安倍首相は尖閣防衛への米国の強い誓約を求めて訪米したが、オバマ政権からは従来の日米安保条約が尖閣諸島に適用されるという自動的な言明以上の支援は得られず、二期目同政権のケリー新国務長官の「アジアの米軍増強の必要に確信を持てない」という証言は中国への後退した姿勢を示したと述べた。
 同報告は尖閣での対立では日本は中国の好戦性の標的であり、中国の言動が緊張を高めてきたとして、一昨年の中国漁船の尖閣領海侵入を機にする反日の強硬言動や日本側の尖閣国有化を理由とする反日破壊活動、日本側の主権や施政権への空と海の侵害、射撃管制用レーダーでの日本側艦艇捕捉などを実例としてあげた。
 しかし同報告はオバマ政権が中国側新指導部との対決を避ける方向へと姿勢を弱め、日中両国を同等に扱うとも思わせる言明をするようになった、としている。
同報告はオバマ政権のこの姿勢は尖閣をめぐる緊張の原因は中国側にあることを直視せず、中国が日米両国間にクサビを打ちこもうとして日米同盟の強さを試している現実をみていない、と批判した。
 同報告はもし米国が日本との間に距離をおく態度をとれば、中国の侵略を激励する効果を招き、軍事行動を助長して、まさに米国が最も避けたいとする事態を生みかねない、と警告した。
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『アメリカの新・中国戦略を知らない日本人』アメリカは尖閣で戦う! 日高義樹 ハドソン研究所首席研究員 PHP研究所2013年2月27日第1版第1刷発行

       

『アメリカの新・中国戦略を知らない日本人』アメリカは尖閣で戦う! 日高義樹 ハドソン研究所首席研究員 PHP研究所2013年2月27日第1版第1刷発行
第1章 オバマ人気の後退で中国寄りの政策が変わる
第1部 オバマ政権は50%政権になった
p15〜
 オバマ大統領は今度の大統領選挙で2008年に比べて500万票、得票数を減らした。大雑把に言えばアメリカ国民の50%、投票率を勘案すればわずか25%の国民に支持されるだけの大統領になってしまった。
 オバマ大統領が50%の大統領に過ぎないという事実を、アメリカのマスコミはほとんど指摘していない。アメリカのマスコミは基本的にはリベラルで、保守的な共和党とロムニー候補を嫌っているからである。
p16〜
 大統領選挙戦が始まったとき、アメリカの保守的な人々はオバマ大統領が再選されれば、社会主義的な経済政策や財政政策を遠慮会釈なく推し進めると心配していたのである。だがドナヒュー会長は、私の質問にこう答えた。
「オバマ大統領に勝手なことはさせない。オバマ大統領とその政権は、50%政権だ。アメリカ国民の半分を代表しているだけだ」
p17〜
 選挙に勝ちさえすれば好き放題ができるという日本の国会と大きく違っているのは、アメリカの政治の仕組みがはっきりと議会と大統領府の2つを区別し、明確な分権の思想が確立しているからだ。(略)
「我々には議会がある。議会の半分である下院はほとんどが共和党だ。我々のもの、と言ってよいだろう。上院のほうは大統領の民主党が多数党だが、それでも五分五分だ」
p23〜
 アメリカでは現在、4600万人もの人々が「フードスタンプ」と呼ばれる政府発給のクーポン券で無料の食糧を購入して食べている。オバマ政権が発足して以来、フードスタンプの発給量が大幅に増えたことから、オバマ大統領は「キング・オブ・フードスタンプ」と呼ばれている。オバマ大統領はまた、失業保険の受給期間をそれまでの1年から2年に延長した。
p24〜
 アメリカの選挙はいまや人種による差別だけでなく、経済の差別、つまり政府から援助を受けている人と受けていない人、という区分けに大きく影響されるようになった。
p25〜
 自立したアメリカ人から見れば、オバマ大統領が貧しい人々に賄賂として生活保護費を払い、再選を勝ち取ったように見えるだろう。
p27〜
第3部 黒人とヒスパニックにホワイトハウスが乗っ取られた
 2012年のアメリカ大統領選挙は、オバマ大統領が黒人とヒスパニック系、それに加えて若い女性と学生たちの連合軍をつくりあげて再選を勝ち取ったと歴史に記されるであろう。
 すでに述べたように、オバマ大統領はあらゆる経済政策、国内政治、外交に失敗し、再選は難しいと思われていた。だがオバマ陣営はもともとほとんどがオバマ支持の黒人に加え、急速に人口を増やしているヒスパニック系の強い支持を取り付けて、その難しい状況を乗り切ったのである。
 アメリカの選挙人における黒人の比率は、13%、ヒスパニック系が12%、アジア系が5%で、合わせて30%である。そのほぼ100%がオバマ陣営に票を投じ、それに若い女性と学生たちが加わった。若い女性の多くは人権を問わず、オバマケアと呼ばれる新しい健康保険法によって、人工中絶を無料でしてもらえるという仕組みを受け入れてオバマ大統領に投票したといわれている。
p28〜
「オバマはただで人工中絶をしてくれる」
 アメリカの若い女性がこう言っているのを聞いたことがあるが、共和党が若い女性に嫌われたのは、熱心なキリスト教徒の多い共和党の主流があくまで人工中絶に反対しているからである。
p49〜
 オバマ大統領の公の権力に最も明確に反抗しているのは、アメリカの力の源泉といわれる石油業界である。ケネディ大統領が暗殺された時、その黒幕はテキサスの石油業界だといわれた。石油業界はケネディ大統領と対立する共和党と強く結びついている。
p50〜
 オバマ大統領は第1次政権で環境保全政策にとくに力を入れ、太陽光や風力発電に多額の政府資金を投入した。アメリカ西部、西南部、テキサスなどでオバマ大統領は多くの太陽光や風力発電の業者を援助した。のちに倒産してスキャンダルになったソリンドラをはじめサンパワーといった企業には、500億ドルを超す膨大な資金援助を行った。
 オバマ大統領のクリーンエネルギー推進政策は、中小の石油業者と真っ向から対立してきたが、オバマ大統領が人気を失い政治力が下がるとともに、この政策も人々の支持を得られなくなり、力を失ってきた。
 石油産業界の後ろには軍需産業があり、そしてペンタゴンや陸、海、空のエリートがいる。この存在を意識してオバマ大統領が政治的なペトラウス切りを行った疑いが濃厚だが、いずれにせよオバマ大統領のエネルギー政策の変更は外交政策、とくに対中国政策の変更につながる。
p51〜
 オバマ大統領がこれまでのエネルギー政策を変え、国内で増産が始まっている石油や天然ガスに重点を切り替えることは、アメリカの経済の回復に直接つながってくる。
 石油はドルそのもの、といわれるが、アメリカ国内で石油を増産すれば財政不足から中国の借金に頼らざるを得ないという状況から脱却できる。オバマ大統領の人気の低落、アメリカ国内における黒人と白人の対立、そしてエネルギー政策の転換は、アメリカの中国政策の大転換という重大な問題につながっていくのである。
p53〜
第2章 アメリカは尖閣で戦う
p54〜
第1部 オバマ大統領は石原前都知事に敗れた
 石原前都知事がアメリカの新聞に「尖閣列島を守ろう」という大きな広告を出したとき、彼はこう述べた。
「尖閣列島が中国に占領されれば、船舶の自由航行が阻害される」
p55〜
 これを読んだアメリカ海軍の首脳が私に電話をかけてきて、こう言った。
「石原知事の行動は、戦略的に見て素晴らしいものだ。新聞広告も強い説得力があった」
 アメリカ海軍の首脳は総じて言えば石原前都知事に同情的である。表立っては言わないものの、心の中で拍手している。(略)
 オバマ政権は、基本的には親中国政権である。(略)『ニューヨーク・タイムズ』などのジャーナリストたち、学者たちは、ビジネス一筋の日本をあまり快くは思っていない。しかも歴史的に日本が侵略国家であったという認識を持っているため、侵略された中国や朝鮮に同情的である。
p57〜
 尖閣列島についてもこれまでオバマ政権は基本的に日本を助けるつもりはなく、事態をうやむやに処理しようと日本側に圧力を加えた。だが2012年の選挙の結果、50%政権になってしまったオバマ政権の政治力は低下している。対中国政策も変わらざるを得なくなるだろう。
p58〜
 尖閣列島とは何か。いまや尖閣列島は日本と中国の争いの象徴である。だがこの争いは、ある意味では国際社会における日常茶飯事とも言うべき、兵器なき戦いに過ぎない。この戦いを演出した石原前都知事は、日本とアメリカ、そして中国の3つの国の関係があまりにも欺瞞に満ちており、当然あるべき姿になっていないことを正すために尖閣列島を持ち出したのだと思う。
 日本では民主党政権が登場して以来、日本とアメリカと中国の3つが協力して世界を動かすという、いわゆる3本柱説が盛んに言われるようになった。この愚かしい説がどこから出てきたかの詮索は別として、民主党政権が成立した当初、民主党の小沢一郎元幹事長が中国と話し合ったあとにワシントンを訪問するなどといったことから推察して、国際情勢に疎い民主党政治家が先走りして3本柱説を言い出したとしてもおかしくはない。
p59〜
 だが、この説を主張する人々が理解していないのは、ワシントンには大きく言って中国に対する3つの違った姿勢をもつグループが存在していることである。
 1つは、民主党の左寄りのリベラルなグループや『ニューヨーク・タイムズ』で、いまの中国と協力して国際社会を動かしていこうというグループである。
 もう1つは、中国が資本主義化を進めて経済的に豊かになれば、やがて民主主義制度に移行し、平和勢力として優れたアメリカの同盟国になるだろうと考える人々である。このグループは、キッシンジャー・グループと重なるが、すでに述べたように、現在のオバマ政権にはキッシンジャー・グループの人々が大勢いる。
 3つ目のグループは、独裁的な中国の共産主義体制を滅ぼさなければならないと考えているブッシュ前大統領のグループである。その中核は、共産主義を悪魔だと主張してソビエトを滅ぼすことに全力を挙げたレーガン大統領を信奉するグループで、「レーガン・リパブリカン」と呼ばれている。
 以上の3つのグループは中国に対する姿勢がそれぞれ違っているが、現実問題としてはっきりしているのは、中国がアジアにおいて帝国主義的な領土への野心を明確にしていることである。南シナ海や東シナ海だけでなく、中国は各地で領土拡大の動きを見せている。
p60〜
 中国はここ数年、資源があると見られる南シナ海のベトナムやフィリピン、マレーシアなどの島々を奪おうとしてきたが、いまや日本の尖閣列島、さらには沖縄も狙っている。2012年12月、中国は国連の大陸棚限界委員会に対して、「中国の大陸棚は沖縄トラフに及ぶ」という申請を提出した。
 広大な中国は、14にのぼる国と国境を接しているが、国境を越えての侵略を恐れている国は多数ある。なかでもベトナムは1979年、北部ベトナムに対して行われた中国軍による攻撃の記憶が生々しく残っているせいか、私がハノイで会ったベトナム政府の首脳たちは、アメリカよりも中国が怖いと訴えていた。(略)
p61〜
 アジア各国は中国の軍事力増強を警戒し、領土的野心に対抗して動き始めているが、アメリカに国の安全を頼りっぱなしにして半世紀以上を過ごしてきた日本は、自国の安全を守るための体制を積極的にとろうとしてこなかった。こういった情勢に火をつけたのが、石原前都知事の尖閣列島買い入れ発言だったのである。
 東シナ海に浮かぶ小さな島々に過ぎない尖閣列島は、アメリカのオバマ政権が触れたくないと思ってきた問題を白日の下にさらしてしまった。いまオバマ政権の閣僚や官僚たちは、尖閣列島問題がこれ以上拡大したり、さらに悪化して火がついたりすることを恐れ、話し合いで問題を収めてしまおうと全力を挙げている。
 しかし、オバマ政権はもはや、この問題をこれまでのようにうやむやのうちに片づけることはできなくなっている。中国の帝国主義的な侵略という事実は、誰の目にも明らかになっているからだ。しかも50%政権として政治力を失ったオバマ政権は、中国に対して厳しい姿勢を取るグループの存在を無視できなくなっている。
 いまわが国がとるべき道は、「尖閣列島の実効支配を行っているのは日本である」という事実を強化することである。
p62〜
 石原前都知事が主張しているように、漁場をつくったり、台風避難施設をつくったりすることも有効な方法だと思われる。
 日本が積極的に動き出せば、中国側は当然のことに、『人民日報』や北京放送を通じて批判攻撃を強め、金にあかせて世界中に訴えるだろうが、それは北京政府の宣伝であるとして日本政府もアメリカ政府も聞き流さねばならない。
 中国が軍事行動に出た場合には、アメリカはいやおうなく軍事的対応を迫られる。いままでのような、うやむやな姿勢は許されない。日本にとって幸運なことは、親中国政策をとるオバマ大統領が再選されたものの、アメリカの主流である白人グループの信頼を大きく失ったことだ。
 尖閣列島の問題は、石原前都知事が予想した通りの方向に動いている。これは国際社会の現実から見れば当たり前のことだが、日本国民のなかには、そうした国際社会の現実と新しい情勢について理解できない人も多い。
p63〜
第2部 アメリカ国防総省には尖閣防衛の秘密計画がある
 2012年大統領選挙の直前、共和党のロムニー候補が当選した時には国防長官になると見られていた前国防次官のエリック・イーデルマン博士に、ハドソン研究所で会った。
 イーデルマン前国防次官はフィンランド大使やトルコ大使などを歴任したあと、2005年から2009年1月まで、ブッシュ政権のもとで対中国戦略とアジア戦略の政策決定に携わってきた。
 共和党のロムニー候補にきわめて近く、ロムニー陣営の安全保障政策についての重要なアドバイザーを務め、共和党と民主党が協力してつくっているアメリカ議会の「ディフェンス・カウンシル」と呼ばれる重要な防衛政策決定機関の責任者の1人でもある。ディフェンス・カウンシルの最高責任者は共和党がシュレジンジャー元国防長官、民主党がパネッタ前国防長官で、アメリカの防衛政策の最高決定機関である。
 アメリカの防衛政策で最も重要な問題は、いまや「アメリカの国益のために、どこまで戦争を遂行するべきか」である。これまでのような、アメリカの力に任せてどこまでも、といったような無制限な軍事戦略に歯止めをかけようというものである。
p64〜
 シュレジンジャー元国防長官やキッシンジャー博士なども私に、「アメリカの若者の血を流す価値のある戦いであるかを見極め、決定する必要がある」と、くり返し述べている。このため日本では、「尖閣列島という小さな島をめぐるいざこざに、アメリカは介入できないのではないか」という考え方が強くなっている。
 日本の評論家たちのなかには、どのような根拠からか、「アメリカは尖閣列島を守らない」と断言する者までいるが、尖閣列島をめぐる紛争を、東シナ海の自由航行と安全を阻害すると考えれば、アメリカは自国の国益を守るために必ず介入してくる。だが日本もまた、日本の担うべき、つまり、分担すべき軍事的責任があることを認識し、戦いを起こさないための努力が必要になる。
 アメリカは日本のために尖閣列島問題に介入しない、尖閣列島防衛を助けないという考え方は、はっきり言って間違っている。最も重要なのは、中国に侵略的な戦争を起こさせないために努力するとともに、戦端が開かれた場合の日本のとるべき軍事行動について、アメリカ側と十分話し合うことである。
 重ねて強調したいが、アメリカが尖閣列島を守らないというのはきわめて無責任な発言である。その発言の前に、日本がどのような責任をとるかを問わねばならない。
 「日本が果たすべき責任の分担を話し合うことが最も大切だ」
p65〜
 イーデルマン前国防次官はこう述べたうえで、私にこう言った。
 「アメリカ国防総省には、尖閣列島有事の際の緊急計画がすでにある」
 東シナ海の小さな島々、尖閣列島はまざれもなく日本の実効支配が行われている日本の領土である。日本政府が管理監督し、海上保安庁の艦艇が警戒している。そこに中国が領土権を主張して攻めかけてくれば、不法行為であることは明白だ。もっともアメリカは、領土権については問わない姿勢をとっている。
 明治政府は発足後まもなく尖閣列島の存在に気づき、現地調査を行って無人島であること、中国の支配が及んでいないことを確かめたうえ、日清戦争に勝ったあとの1895年、下関条約で正式に日本のものとした。この歴史的事実から見ても、尖閣列島はまぎれもなく日本のものである。
 ところが中国は東シナ海にある資源が注目されるようになると、突如として尖閣列島、中国名の釣魚島は中国のものだと言い始めただけでなく、中世の頃から中国の領土だったと主張するようになった。日本政府が尖閣列島を買い取り、国有地にする方針を打ち出してからは、軍事行動も辞さないという構えを見せている。
 すでに述べたように、日本では「尖閣列島をめぐって紛争が起きてもアメリカは助けてくれない」という説が流布されているが、つい先頃まで同問題の責任者であったイーデルマン前国防次官とのインタビューの模様をお伝えしたい。
p66〜
 2012年10月25日、約束時間の午前11時ちょうどに、イーデルマン前国防次官は、私が首席研究員を務めるハドソン研究所の会議室に姿を現した。イエール大学で外交史の博士号を取得したイーデルマン前国防次官は61歳、地味な風貌の落ち着いた人物だった。
 私はまず、「中国が海軍力を著しく強化しているため、日本にとって大きな脅威になっているだけでなく、尖閣列島を中国が攻撃するのではないかと日本人の多くが考えている」と述べた。そして、中国の軍人たちがこれまでも中央政府に連絡しないまま危険な行動に出たことが何度もあると指摘したうえで、中国が尖閣列島に対して戦闘行動を行った場合、対応するための緊急計画がアメリカにあるかどうかを尋ねた。
 私がとくにイーデルマン前国防次官の注意を喚起したのは、選挙戦を見るかぎりアメリカ国民が内向きになっており、外国の領土問題などに関与したくないと思っている点だった。イーデルマン前国防次官は私の質問に対して、こう答えた。
 「西太平洋から東シナ海、日本海にかけての安全を維持し、自由な航行を維持することはアメリカ経済にとって、きわめて重要です。それが妨害されるような事態になれば、アメリカは国益を守るために、同盟国と協力して軍事的に対応する必要がある」
p67〜
 私が尖閣列島有事に備えた緊急計画があるのか教えてほしいと言うと、彼はこう言った。
 「我々はあらゆる事態を想定し、それに備えるための軍事的な緊急計画をつくりあげています。朝鮮半島有事に対する長期計画をはじめ、実際に軍事行動が起こされた場合に同盟国を支援する計画を立てて備えている。だが、計画の内容は公にしたくない。全て軍事機密に属するからです」
 私がさらに念を押すと、彼はこう言った。
 「我々は普通、こういった場所では軍事緊急計画を話さないことにしています」
■エア・シー・バトルが緊急事態に備えた計画を持っている
日高: 確かに朝鮮だけでなく、台湾についても有事の緊急プランがあるはずですね。
イーデルマン: その通り、台湾についての有事計画があります。
日高: 東シナ海や南シナ海で軍事的な緊急事態が起きた場合の対応策について話してもらうわけにはいきませんか。
イーデルマン: 緊急計画については話したくない。私はすでに国防総省を辞めた身で、実際の計画には関わり合っていない。何が起きるかという仮定の質問に答えるわけにはいきません。それに緊急計画の内容をしゃべれば、そのまま敵である相手側に筒抜けになり、我々がどのような軍事行動を準備しているのかを知らせてしまうことになる。実際に戦闘が始まった時に不利になってしまう。
p68〜
日高: しかしながら、緊急事態に備えた軍事対応策はきちんとつくってあるのですね。
イーデルマン: きっちりした緊急計画を持っていますよ。現在、国防総省にはエア・シー・バトル(空と海の闘い)という部局があり、我々が話し合っている戦争を担当している。このエア・シー・バトルの担当者は計画書をつくっているだけでなく、戦闘が起きた時の当事者になります。
 エア・シー・バトルの担当者たちは、中国がいま進めているAAやADといわれるアメリカに対抗するための戦術にどう対処するか、実際の戦い方を検討しています。
 中国はいま、艦艇を攻撃するクルージングミサイルや弾道弾を開発しており、アメリカにとって軍事的脅威になっている。中国の軍事力増強に対処する準備と行動がすでにとられているのです。
日高: 分かりました。緊急事態の内容をしゃべりたくない理由は了解します。しかしながら、尖閣列島で軍事行動が始まった場合、アメリカは日米安保条約に基づいて日本を助けることになるのでしょうね。
p69〜
イーデルマン: これまでも言ってきたように、日米安保条約はアジアの安全保障の基礎になっています。日米安保条約によって我々は日本を守る。日本の人は、この点について疑いを持つ必要は全くありません。アメリカは必要とあらば日本を防衛します。
日高: つまり、日米安保条約第4条、同盟国に対する攻撃は自分の国に対する攻撃と見なして反撃する、という条項を履行するわけですね。
イーデルマン: 当然、そうなります。
日高: 尖閣列島に対する攻撃をアメリカに対する攻撃と見なすのですね。
イーデルマン: その通りです。有事の際、アメリカはあくまで条約を履行し、条約に基づいて日本の安全を守るために戦います。最も重要な問題は、日本とアメリカがどのような軍事協力を行い、中国に対抗してどのような戦闘行動を分担するのかを話し合うことです。東シナ海、南シナ海においても共同責任と分担を決めることがきわめて重要です。
日高: しつこいようですが、この問題について、もう少しお聞きしたい。日本にとっては重大事で、国民の関心が高いのです。
イーデルマン: よく分かりますよ。どうぞ続けてください。できるだけのことをお話ししましょう。いつも私が主張しているのですが、同盟体制というのはどこの国とも同じです。
p70〜
 日高さん、あなたは日米安保条約第4条に言及しましたが、同じ条項がNATO条約の第5条にもあります。それによると、どのNATO加盟国に対する攻撃もNATO全体に対する攻撃と見なすことになっています。
 ここ何年間もアメリカは、ヨーロッパの同盟国が攻撃された場合、あらゆる手段で対抗する準備を進めていると言い続けてきました。そして、それが条約を履行することを意味しているのだということを強調してきました。アメリカのこういった条約上の義務は、ヨーロッパ、アジアを問わず、同じです。
日高: それでは最後の質問をさせていただきます。あなたが言及したエア・シー・バトルの中身は、いったい何でしょうか。説明してくれますか。現在のアジアにおけるアメリカの戦闘計画とは全く違っているのですか。
イーデルマン: エア・シー・バトルの構想は、基本的にはヨーロッパにおける戦いと一緒です。しかしヨーロッパでは戦場が大陸であるため、空と陸、つまりエア・ランド・オペレーションでした。太平洋では、その地面が海と変わるのです。
 問題は、どのような強力で有効な軍事的な対応と打撃を相手側に与えるかです。ソビエトの場合は強力なタンク軍団を有しており、その強力なタンク軍団を打ち負かすために、空軍と地上部隊が協力することが必要でした。ソビエト帝国はこれに対して軍事力を増強して立ち向かってきましたが、アメリカと西側の有力な軍事力によって敗れ、ソビエト帝国は崩壊しました。そして危機はなくなったのでした。
p71〜
 エア・シー・バトルというのはソビエトとの戦争とよく似ているものですが、全く同じというわけではありません。中国はいま、中国にアメリカ軍を近づけない、中国を攻撃する能力を与えない、という戦略目標を立て、艦船攻撃用のクルージングミサイルを開発強化していますが、これにどう対抗するか、アメリカと同盟国が共同してソビエトのタンク軍団を打ち負かしたような軍事力と技術力を開発し、中国の海軍力を打ち負かさねばなりません。このエア・シー・バトルというのは計画ではなく、実際の戦闘態勢です。つまり、緊急有事の対応策と言っていいでしょう。
 <筆者プロフィール>
日高義樹(ひだか・よしき)
ハドソン研究所首席研究員
1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。1959年、NHKに入局。ワシントン特派員をかわきりに、ニューヨーク支局長、ワシントン支局長を歴任。その後NHKエンタープライズ・アメリカ代表を経て、理事待遇アメリカ総局長。審議委員を最後に、1992年退職。その後、ハーバード大学タウブマン・センター諮問委員、ハドソン研究所首席研究員として、日米関係の将来に関する調査・研究の責任者を務める。「ワシントンの日高義樹です」(テレビ東京系)でも活躍中。
主な著書に、『世界の変化を知らない日本人』『アメリカの歴史的危機で円・ドルはどうなる』(以上、徳間書店)『私の第七艦隊』(集英社インターナショナル)『資源世界大戦が始まった』(ダイヤモンド社)『いまアメリカで起きている本当のこと』『帝国の終焉』『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか」(以上、PHP研究所)など。
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『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店
『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著《ハドソン研究所首席研究員》 2012年07月25日1刷発行 PHP研究所
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