小沢氏、再起期し本格始動 共闘進まずいらだちも
中国新聞 '13/3/24
生活の党の小沢一郎代表が「再起」を期し、夏の参院選に向けて本格的に始動した。地方行脚で健在ぶりをアピールし、昨年の衆院選惨敗からの巻き返しに意欲を示す。だが衆参両院で計15人の小政党だけに、存在感はかすみがち。期待の野党共闘にもめどが立たず、いらだちを隠せない。
小沢氏は24日、長崎県佐世保市で党会合に出席し「この国の時計の針を戻したままではいけない。新たに決意を燃やしている」と安倍政権への対決色を鮮明にした。
3月になって小沢氏は地元の岩手や富山、広島各県も訪れ、25日には新潟県へ入る予定だ。各地で街頭演説もこなし「参院選をステップにもう一度、政権を担える党をつくらなければならない。それが最後の役目だ」と訴えている。
党所属参院議員8人のうち改選は6人。選挙区候補は青森、新潟、広島の3人で、残りは比例代表に立候補予定だ。他に比例候補2人を内定しており、小沢氏が精力的に全国を回る背景には比例票底上げに命運が懸かるとの危機感がある。
一方、選挙区では「反自民」を軸とした共闘を模索。「野党第1党の民主党がしっかりすれば野党みんなで戦える」と周囲に語り、ラブコールを送り続ける。
だが民主党側は冷ややかだ。「小沢氏と復縁すれば離党する」(中堅議員)との反発は根強く、海江田万里代表ら執行部も新潟、広島両選挙区への独自候補擁立を決めるなど、距離を置く姿勢を崩していない。
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小沢氏「参院選で野党結集を」 広島市で街頭演説
生活の党の小沢一郎代表は20日、広島市で街頭演説し、次期衆院選での政権交代を目指して参院選で野党結集を図りたいとの意欲を示した。「参院選を第一のステップに、来るべき衆院選でもう一度、政権を担える政党をつくらなければならない。それが最後の役目だ」と訴えた。
公共事業費増や金融緩和を柱とする安倍政権の経済政策を「かつての自民党と同じ」と指摘した上で「夏の参院選で自民党が圧勝すれば、日本の前途は非常に暗い」と強調した。
街頭演説には、小沢氏と共に日本未来の党で衆院選を戦い、現在はみどりの風に所属する亀井静香元金融担当相も参加。
2013/03/20 17:51【共同通信】
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〈来栖の独白 2013/3/25 Mon. 〉
安倍内閣の経済政策を「かつての自民党と同じ」と批判し、「夏の参院選で自民党が圧勝すれば、日本の前途は非常に暗い」と、「イメージ」で語る小沢氏。イメージ手法は、大手メディアの十八番である(「政治とカネ」、この戦略により小沢氏は政治生命を断たれた)。
昨年12月の衆院選挙で小沢氏は「反消費税増税」と「脱原発」を掲げ、敗れた。私の気になったのは、青森など原発関連施設のある選挙区候補者への配慮・対策、また地元岩手の刺客候補擁立の必然性などだった。加えて、選挙日間近になっての[日本未来の党]合流や選挙直後の同党離脱はお世辞にも上手とは言えず、私の中で小沢離れが進んだ。
憶測だが、小沢氏は先般12月の衆院選を「脱原発」を掲げることで勝てる、と踏んだのではないだろうか。それで、ドイツまで視察にも赴き、官邸前のデモにも参加したのではないか。氏には、原子力発電を過渡的エネルギーと見てきた自民党時代があった。そんな小沢氏の目に、毎週金曜日、官邸周辺で多数を結集して行われる反原発デモは「大勢」(世論)と映ったろう。「国民は多くが脱原発を望んでいる」、そのように映ったのではないか。
官邸周辺のデモは、私に安保条約反対のデモを思い起こさせた。あのときも多くの人が参集した。
渡部昇一氏と百田尚樹氏は対談の中で、「マスメディア」について次のように言う。(『Voice』4月号)
渡部 2012年から現在にかけては、脱原発運動の旗振り役になり、いかにも国民全体が「脱原発」の意見をもっているかのような記事を掲載した。しかし先の総選挙では、「日本未来の党」をはじめとする、脱原発政党は軒並み議席を減らしています。マスコミのいうことと、「サイレントマジョリティ」の意見は違うということが露呈しました。
百田 60年安保のときと状況はよく似ています。当時も日本全国が「安保反対」のような気運でしたが、自然成立とほぼ同時に岸内閣が倒れ、その数か月後に行われた総選挙で自民党が圧勝した。メディアの声はあくまでも「大きい声」にすぎず、それが大多数の声を代表しているとは限らないということです。
百田 岸信介はいみじくも、安保デモを前に「私には国民の声なき声が聞こえる」と発言しました。それは正しかったんです。いくら国会を群集が取り囲んでも、私の両親のような大多数の庶民は、そのような問題に何ら関わりはありませんから。サイレントマジョリティの声を聞くというのは、政治家の大きな資質の1つだと思います。
「脱原発」を掲げることで衆院選は勝利できる、そのように小沢氏は読んだのではなかったか。「あなたが出てくれれば百人通る」と滋賀県の嘉田知事([日本未来の党]代表=当時)に言っている。
が、惨敗だった。小沢氏の読み違いだった。小沢氏に「サイレント・マジョリティ」の声が聴こえていただろうか。
小沢氏の手法として「選挙は川上から」とよく云われ、昨年の衆院選でも、氏はまず愛知県の寒村、豊根村から(『国民の生活が第一』の)応援演説を始めている。そのようにしながら氏の裡には、官邸周辺のデモの光景が強く在ったに違いない(嘉田氏との連携に向けた動きが並行してあった)。
「サイレント・マジョリティ」もそうだが、小沢氏にマイノリティの声は聴こえていただろうか。沖縄・辺野古の「地元の地元」の住民が実は基地移設を望みながら「反対」の大きな声に圧されて「賛成」の声を発せないでいるように、原発を抱える地元住民が原発の存続を望んでいる、そのような声が聴こえていただろうか。「川上から」というのは、そういった「地元の地元」の声、発せないでいる声なき声に耳を傾けることではないだろうか。
選挙直前直後の如何にも慌ただしかった[日本未来の党]との顛末(悪手)を思い起こすにつけ、官邸周辺から発せられる「大きな声」のみを小沢氏の耳は受信していたように思えてならない。消費税増税反対も反原発も、選挙のために掲げた看板に過ぎなかったのでは、と思えてくる。これでは支持は得られず、惨敗しても当然だった。
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◆ 小沢氏の口説き文句「あなたが出てくれたら百人通る」〜「だまされた」と言いたいのは有権者の方だろう 2013-01-16 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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◆ 普天間移設「政争の具」本音は移設賛成でも口にするとバッシングを受け、選挙に影響する 2013-03-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◆ 衆議員選挙から1か月 小沢一郎代議士について考える 2013-01-14 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
〈来栖の独白 2013/01/14Mon. 〉
新年が新政権で迎えられたことは、まず喜ばしい。もう2度とノダ、マエハラ、アズミ、カン、センゴクといった面々の画像にお目にかかりたくない。民主党「ガキっこ」による政治ごっこには食傷である。とりわけ外交能力は極めて低く、中国という覇権国家、ならず者国家に対応できる政権ではなかった。
2009年の小沢一郎氏秘書逮捕以降、私は氏のカテゴリーを設けて弊ブログで考えてきた。検察は氏を2度起訴できず、検察審査会に強制起訴を委ねた格好になったが、控訴審「無罪」確定で幕を閉じた。小沢裁判は元々無理筋のでっち上げであったから当然の帰結だった。そこに蠢いたのは、検察・メディア・政治家・・・あらゆる既得権益集団の「我欲」の姿だった。必ずしも小沢氏を有罪に定めるのではなく、容疑をかけ、刑事被告人に縛るだけで事足りた。「小沢一郎の政治生命を絶つ」という目的は達せられるのだった(そして、そのようになった。2012年12月16日の衆議院選挙で、小沢一郎氏は惨敗した)。
小沢氏は周囲に「近いうちに選挙はある」と言い、公約の1つとして「脱原発」を掲げ、ドイツへ視察にも赴いた。自らの地元岩手県を始めとして、要所要所に民主党候補者に対する「刺客」擁立も進めた。岩手ではそれまでともにやってきた階猛(しな たけし)氏、黄川田徹氏に刺客を立て、野田前総理の千葉でも刺客を立てた。
千葉で野田前総理の刺客として立候補した三宅雪子氏は「党が違えば、ましてや政策が違えば、各党が候補者を出すのは当然の話。民主党も離党者のところに出しているし我が党が突出しているわけではありません」と言われるが、岩手の階氏も黄川田氏も小沢氏に付いて離党こそしなかったものの、消費税増税法案採決について階猛氏は反対票、黄川田氏は棄権であった。小沢氏が選挙で掲げた公約の筆頭は旧党名(『国民の生活が第一』)も示すように、反消費税増税であったはずで、ならば、いかほどの政策の違いというのであろうか。衆院選挙惨敗後の「生活の党」森裕子代表の民主党すり寄りなどを見せられれば、刺客擁立も[日本未来の党]分裂も、その論拠を喪うのである。
やや情緒的に偏するかもしれないが、ドイツへ視察に赴く小沢氏の姿を見れば、選挙を「脱原発」で戦う『国民の生活が第一』からの立候補者、例えば青森の立候補者の苦衷を私は思わずにはいられなかった。また、私の郷里は岡山だが、岡山から鞍替えして千葉で衆院選に立候補が決まった姫井由美子さんの苦難をも思わずにはいられなかった。彼女は参議院議員だったから、今年夏までの議員としての寿命を縮めて、何の縁もないところで立ったのである。なんという過酷であることだろう。
「生活の党」森裕子代表は13日のNHKの番組で「私たちは小沢氏の『自立と共生』の理念の下に集まっている」と発言したという。俄かに『自立と共生』という極めて観念的、抽象的な言葉を繰り出している。これでは「生活の党」と名乗ってはいても、政策が掴みにくい。どの党でも、標榜可能だ。意味はどのようにも取れる。
いま一つ、重要な問題がある。小沢氏は昨年、安倍氏や石原慎太郎氏の言動を「まるで大政翼賛会」と評したが、小沢氏の国家観については疑義を禁じ得ない。2009年、民主党幹事長のとき、氏は団を組んで訪中した。中国の現在の覇権主義は、近年に始まったものではない。用意周到に遅くとも1970年代から練られたものだ。氏は日米の関わりについて、必ずといって「同盟国とは“対等な”国同士のことを言う。日米は対等ではない」と言われる。確かに日米は対等ではない。が、日中について、日米以上に「対等」な関係が結べるだろうか。
アメリカは少なくとも民主主義国家である。が、中国はそうではない。すべての国が民主主義国家になるわけではない。中国は戦略を練りに練って尖閣に揺さぶりをかけ、挑発を繰り返して国連憲章の敵国条項を該当させ日米を分断、日本征服を企んでいる。
2009年からすべての既得権益はマスコミを走狗としてイメージ作戦(政治とカネ)で小沢潰しに走ったが、いま小沢氏が「イメージ」で生き残ろうとしているかに見える。「まるで大政翼賛会」と揶揄する手法だ。
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◆ 小沢一郎氏の日米中「正三角形」「三本柱」説 /国際社会の現実と新しい情勢について理解できない人も多い 2013-03-01 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
〈来栖の独白 2013/3/1 Thu. 〉
小沢一郎氏について弊ブログではカテゴリーを設け、考えてきた。秘書逮捕に始まる一連の事件・裁判がきっかけであった。これは唯に小沢氏についてのみではなく、司法・検察・政治家・メディア・・・など、実に広範な問題を私に考えさせた。「小沢潰しの後ろ(元)にはアメリカがいる」「全ての既得権益側(メディアも)による小沢潰しがなかったなら、小沢一郎は総理になっていた」という人もいた。
ところで、小沢氏は鳥越俊太郎氏のインタビューで、中国にもアメリカにも「ズケズケ言ってるよ」と発言している。これはどうか? 小沢氏に、米中が見えているか? 政治家というものは、現状と、少なくとも数年後、数十年後を見通す目が必要だと私は思うが、3年前、団を組織して訪中し胡錦濤氏に謁見した小沢氏に、中国が見えていただろうか? またその直後の中国の動きが予見できていたか? 疑問である。中国は遅くとも1970年代から日本侵略を仕掛けていた。周到に諜報(インテリジェンス)を敷いてきた。
昨年安倍氏や石原慎太郎氏の言動を「まるで大政翼賛会」と評した小沢氏に、中国という国が読めていたとは、思えない。アメリカは少なくとも民主主義国家であるが、中国はそうではない。すべての国が民主主義国家になるわけではない。中国は日本に対し挑発を繰り返して国連憲章の敵国条項を該当させ日米を分断、日本征服を企んでいる。
小沢氏が総理になっていたら、対中国はどのような状況が現出していただろう。小沢氏は日米中の在るべき姿を「正三角形」「三本柱」と譬えたが、民主主義を斥ける中国に「共存共栄」という思想はない。繰り返すが、「核心的利益」と称する中国の覇権主義は、今に始まったものではない。時間をかけて練りに練られたものだ。
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◆ 「日中“虚構の友好”40周年」 河添恵子 2012-10-04 | 国際/中国/アジア
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◆ 『アメリカの新・中国戦略を知らない日本人』アメリカは尖閣で戦う! 日高義樹 ハドソン研究所首席研究員 PHP研究所2013年2月27日第1版第1刷発行
p54〜
第1部 オバマ大統領は石原前都知事に敗れた
石原前都知事がアメリカの新聞に「尖閣列島を守ろう」という大きな広告を出したとき、彼はこう述べた。
「尖閣列島が中国に占領されれば、船舶の自由航行が阻害される」
p55〜
これを読んだアメリカ海軍の首脳が私に電話をかけてきて、こう言った。
「石原知事の行動は、戦略的に見て素晴らしいものだ。新聞広告も強い説得力があった」
アメリカ海軍の首脳は総じて言えば石原前都知事に同情的である。表立っては言わないものの、心の中で拍手している。(略)
オバマ政権は、基本的には親中国政権である。(略)『ニューヨーク・タイムズ』などのジャーナリストたち、学者たちは、ビジネス一筋の日本をあまり快くは思っていない。しかも歴史的に日本が侵略国家であったという認識を持っているため、侵略された中国や朝鮮に同情的である。
p57〜
尖閣列島についてもこれまでオバマ政権は基本的に日本を助けるつもりはなく、事態をうやむやに処理しようと日本側に圧力を加えた。だが2012年の選挙の結果、50%政権になってしまったオバマ政権の政治力は低下している。対中国政策も変わらざるを得なくなるだろう。
p58〜
尖閣列島とは何か。いまや尖閣列島は日本と中国の争いの象徴である。だがこの争いは、ある意味では国際社会における日常茶飯事とも言うべき、兵器なき戦いに過ぎない。この戦いを演出した石原前都知事は、日本とアメリカ、そして中国の3つの国の関係があまりにも欺瞞に満ちており、当然あるべき姿になっていないことを正すために尖閣列島を持ち出したのだと思う。
日本では民主党政権が登場して以来、日本とアメリカと中国の3つが協力して世界を動かすという、いわゆる3本柱説が盛んに言われるようになった。この愚かしい説がどこから出てきたかの詮索は別として、民主党政権が成立した当初、民主党の小沢一郎元幹事長が中国と話し合ったあとにワシントンを訪問するなどといったことから推察して、国際情勢に疎い民主党政治家が先走りして3本柱説を言い出したとしてもおかしくはない。
p59〜
だが、この説を主張する人々が理解していないのは、ワシントンには大きく言って中国に対する3つの違った姿勢をもつグループが存在していることである。
1つは、民主党の左寄りのリベラルなグループや『ニューヨーク・タイムズ』で、いまの中国と協力して国際社会を動かしていこうというグループである。
もう1つは、中国が資本主義化を進めて経済的に豊かになれば、やがて民主主義制度に移行し、平和勢力として優れたアメリカの同盟国になるだろうと考える人々である。このグループは、キッシンジャー・グループと重なるが、すでに述べたように、現在のオバマ政権にはキッシンジャー・グループの人々が大勢いる。
3つ目のグループは、独裁的な中国の共産主義体制を滅ぼさなければならないと考えているブッシュ前大統領のグループである。その中核は、共産主義を悪魔だと主張してソビエトを滅ぼすことに全力を挙げたレーガン大統領を信奉するグループで、「レーガン・リパブリカン」と呼ばれている。
以上の3つのグループは中国に対する姿勢がそれぞれ違っているが、現実問題としてはっきりしているのは、中国がアジアにおいて帝国主義的な領土への野心を明確にしていることである。南シナ海や東シナ海だけでなく、中国は各地で領土拡大の動きを見せている。
p60〜
中国はここ数年、資源があると見られる南シナ海のベトナムやフィリピン、マレーシアなどの島々を奪おうとしてきたが、いまや日本の尖閣列島、さらには沖縄も狙っている。2012年12月、中国は国連の大陸棚限界委員会に対して、「中国の大陸棚は沖縄トラフに及ぶ」という申請を提出した。
広大な中国は、14にのぼる国と国境を接しているが、国境を越えての侵略を恐れている国は多数ある。なかでもベトナムは1979年、北部ベトナムに対して行われた中国軍による攻撃の記憶が生々しく残っているせいか、私がハノイで会ったベトナム政府の首脳たちは、アメリカよりも中国が怖いと訴えていた。(略)
p61〜
アジア各国は中国の軍事力増強を警戒し、領土的野心に対抗して動き始めているが、アメリカに国の安全を頼りっぱなしにして半世紀以上を過ごしてきた日本は、自国の安全を守るための体制を積極的にとろうとしてこなかった。こういった情勢に火をつけたのが、石原前都知事の尖閣列島買い入れ発言だったのである。
東シナ海に浮かぶ小さな島々に過ぎない尖閣列島は、アメリカのオバマ政権が触れたくないと思ってきた問題を白日の下にさらしてしまった。いまオバマ政権の閣僚や官僚たちは、尖閣列島問題がこれ以上拡大したり、さらに悪化して火がついたりすることを恐れ、話し合いで問題を収めてしまおうと全力を挙げている。
しかし、オバマ政権はもはや、この問題をこれまでのようにうやむやのうちに片づけることはできなくなっている。中国の帝国主義的な侵略という事実は、誰の目にも明らかになっているからだ。しかも50%政権として政治力を失ったオバマ政権は、中国に対して厳しい姿勢を取るグループの存在を無視できなくなっている。
いまわが国がとるべき道は、「尖閣列島の実効支配を行っているのは日本である」という事実を強化することである。
p62〜
石原前都知事が主張しているように、漁場をつくったり、台風避難施設をつくったりすることも有効な方法だと思われる。
日本が積極的に動き出せば、中国側は当然のことに、『人民日報』や北京放送を通じて批判攻撃を強め、金にあかせて世界中に訴えるだろうが、それは北京政府の宣伝であるとして日本政府もアメリカ政府も聞き流さねばならない。
中国が軍事行動に出た場合には、アメリカはいやおうなく軍事的対応を迫られる。いままでのような、うやむやな姿勢は許されない。日本にとって幸運なことは、親中国政策をとるオバマ大統領が再選されたものの、アメリカの主流である白人グループの信頼を大きく失ったことだ。
尖閣列島の問題は、石原前都知事が予想した通りの方向に動いている。これは国際社会の現実から見れば当たり前のことだが、日本国民のなかには、そうした国際社会の現実と新しい情勢について理解できない人も多い。
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◆ 『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』中西輝政著 PHP研究所 2010年04月15日発行
p22〜
■これは「対中追随」へ国策を転換する革命だ
あゝ、やっぱりこういうことだったのか。
2009年12月、民主党の小沢一郎幹事長に率いられた総勢600人以上(うち国会議貝は約140名)の訪中団が、大挙して北京を訪れた。日本のTVニュースでは連日、中国の胡錦濤国家主席とのツーショット写真の撮影に列をなして順番待ちし、一瞬のショットに収まる民主党国会議員たちの姿を映し出していた。
一方、そのころ東京では、沖縄の米軍・普天問基地の移設問題の紛糾が連日ニュースで伝えられ、11月の日米首脳会談で合意を見たとされる「年内に結論を出す」という期限が迫っているのに、鳩山政権はなぜこれほど先延ばしを繰り返すのか、といぶかる声が日米双方から、しきりに発せられていた。
そこへ次のような報道が日本に伝わってきた。一足先に韓国経由で帰国した小沢氏と別れ、訪中団の団長を務めていた山岡賢次国会対策委員長は、上海市で開かれたシンポジウムに出席して次のように語ったという。
「日米関係が基地問題で若干ぎくしゃくしているのは事実だ。そのためにもまず、日中関係を強固にし、正三角形が築けるよう米国の問題を解決していくのが現実的プロセスだと思っている」 山岡氏はこう語ったあと、さらに続けて、「(12月10日の)小沢幹事長と胡主席との会談でも確認されたが、日中米は正三角形の関係であるべきだ。それがそれぞれの国と世界の安定につながる」と強調したという(『産経新聞」2009年12月15日付、『日本経済新聞』12月14日および15日付)。また、民主党訪中団の名誉副団長を務めた輿石東参議院議員も、訪中前の12月3日、記者会見で「日米中は等距離の三角形の関係にある」と語っていたと報じられた(上掲『産経新聞』)。
やっぱり、これは「普通の政権交代」ではなかったのだ。少なくとも、12月の民主党の大訪中団の本質は、「正三角形への旅立ち」を中国と世界、とりわけアメリカに対してデモンストレーションする、という点にあったのである。
ワシントンにとって山岡氏の言葉は、普遍的な外交の常識からいって、衝撃的ですらあったろう。というのも、それは「日米関係がぎくしゃくしているいまこそ、日中関係を強固にして日中米の正三角形を実現する現実的チャンスだ」といっているわけで、これは日本にとってたんなる政策の転換ではなく、国策の転換を意味するからである。
とすれば、日本の民意はこれを了としているのか。少なくとも二〇〇九年八月の総選挙ではいっさい問われていない。しかし、そのことは中国の国家主席と日本の「最高実力者」のあいだですでに合意がなされていることも山岡氏は明らかにしており、おまけに山岡氏と並んで民主党内でも小沢幹事長の最側近として脇を固めている輿石氏までが、いまや日本の国家戦略の基本は「正三角形戦略」に置かれていることを口にしているわけである。
やはり、これは「普通の政権交代」ではなく、民主党関係者がこの三カ月ずっと口にしてきた「無血革命」だった、と見るほかないだろう。「革命」ならば、民意を問う必要はいっさいなく、「子ども手当マニフェスト」を掲げて奪取した権力に依拠して、一気呵成に進めても「革命的正統性」はあるのかもしれない。
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◆ 「独裁者」の肖像 小沢一郎「天皇観」の異様 小沢が突き進む「民主集中制」への道 中西 輝政 京都大学教授 文藝春秋2010年2月号
12月14日、小沢幹事長率いる訪中団の団長を務めた山岡賢次国対委員長は、上海で開かれたシンポジウムで、「日米関係が基地問題で若干ぎくしゃくしているのは事実だ。そのためにもまず、日中関係を強固にし、正三角形が築けるよう米国の問題を解決していくのが現実的プロセスだと思っている」(「産経新聞」12月15日付け) この「日中米正三角形論」は「最高実力者」小沢幹事長の持論を代弁したもので、鳩山首相の「友愛」イメージとも相俟って、「日本はアメリカとも中国とも仲良くしていく」というだけのこと、としばしば誤解される。しかし、そんな誤解は日本国内でしか成立しない。
「日中米正三角形論」の正体とは何か。それは、日米同盟から日中同盟へのシフト・チェンジである。言うまでもなく、アメリカは日本の同盟国であり、中国はそうではない。これを「正三角形」、すなわち等距離に置くということは、日米同盟を破棄するか、新たに日中同盟を結ぶことを意味する。普天間移設問題とこの発言とを合わせるならば、「日本は同盟のパートナーをアメリカから中国に乗り替える」というメッセージ以外の何物でもない。
さらに、山岡氏は同じ演説で、この正三角形論は、「小沢幹事長と胡錦濤国家主席との会談でも確認された」と述べている。これは驚くべき発言である。首相でも、外務大臣でもない与党幹部が、中国の最高責任者との間で、日本の根本的な外交方針について「確認」を行っているのだ。
同盟関係の見直し、これは単なる「政策転換」ではない。日本国の運命にかかわる致命的な「国策転換」である。
これほど重大な「国策転換」が、国民に対する説明もなく、民意の汲み上げもなく、易々と行われる。これが、今の民主党政権の危うさである。この軽さと危うさが重大な国難を招く可能性は高い、と言わざるを得ない。 今、国民が気づきつつあるのは、こうした「国策転換」の要に、外交に関する権限など何も有していない小沢氏が位置していることの不気味さであり、しかも、小沢氏自身が自らの「越権行為」をごく当然のこととして振舞い、誰も異議を唱えないことの奇怪さだ。
そして、自らの権限を無制限に広げていくかのような小沢氏の危うさが国民の目にはっきりと露呈したのが、冒頭で触れた天皇陛下まで動かした特例会見問題だった。
なぜ中国は天皇との会見にこだわったのか
山岡国対委員長が小沢幹事長を代弁する形で、「日中米正三角形論」をぶち上げた翌日、鳩山首相が普天間移設問題を無期限先送りし、日米同盟から日中同盟へのシフト・チェンジを宣言した。その12月15日に、天皇陛下と習中国国家副主席との“特例会見”が行われている。この符号は偶然ではない。
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◆ 小沢一郎民主党幹事長 胡錦濤国家主席と会談「野戦軍の総司令官として解放戦が終わるまで徹したい」 2009-12-10 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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◆ 『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店
第5章 民主党は日米関係の歴史を壊した
p134〜
私のいるワシントンのハドソン研究所には、アメリカの情報機関で分析官をやっていた人物がいる。彼の話によると、アメリカ政府は小沢一郎はじめ民主党首脳の対中国政策と動きを綿密に監視してきた。
「中国からの情報もあれば、アメリカ情報調査局や国家安全保障局(NSA)などからの情報もある。あらゆる情報が担当者の手許に集まっている。日本の民主党と小沢元代表が中国に接近していく動きは手にとるように明らかだった」
民主党の小沢元代表は、中国を取り込んで日中の協力体制を作り、アメリカを牽制して外交的にアメリカに対する強い立場を作ろうとした。こういった小沢元代表はじめ民主党首脳の動きは、私ですら耳にしていたのだから、多くの人々が知っていたに違いない。
小沢元代表が「沖縄の海兵隊はいらない」と言ってみたり、日米安保条約に反対したりしているのをアメリカが苦々しく思ったのは、単に反米的な姿勢だからというだけでなく、中国と手を組んでアメリカに対抗しようとしたからである。
p135〜
小沢元代表の師ともいえる田中角栄元首相も、アメリカに対抗するために石油資源を獲得しようとしてアメリカに敗れた。田中元首相は結局、アメリカの石油メジャーと激突してしまい、ニクソン大統領とアメリカのCIAに打ち負かされてしまった。
小沢元代表と民主党のアメリカに対する反乱は、そういった過去の出来事と比べるとあまりにも矮小である。まず小沢元代表の態度は中国と対等に手を結ぶというよりは、明らかに中国におもねっていた。民主党政権が発足した当時、長年の同盟国であるアメリカのワシントンではなく、まず北京に挨拶に行くべきだと示唆した態度などに、中国に対するあからさまな媚がよく表れている。
p142〜
第2部 民主党の指導者には国家意識がない
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