なんと原発50基分!埋蔵電力活用で「脱原発」できる 大マスコミは「電力不足」と煽っているが…
日刊ゲンダイ2011年7月9日
●「火力」と「水力」だけでも十分に賄える
54基すべての原発がストップする――。大マスコミが大騒ぎだ。
13カ月ごとの定期検査を義務付けられている原発は、現在35基が停止し、稼働しているのは19基だけ。経産省は、九州電力の「玄海原発」を突破口に、四国電力の「伊方原発」など定期検査を終える原発を次々に再稼働させる方針だった。
ところが、九州電力が「玄海原発」の再稼働容認を撤回。四国電力も「伊方原発」の運転再開を断念したと発表した。
このままでは稼働中の19基も次々に定期検査に入り、来年春にはすべての原発が止まる。その結果、深刻な「電力不足」に陥ると大手メディアが騒いでいるわけだ。
しかし、原発が止まったら本当に電力は足りなくなるのか。「脱原発」は不可能なのか。
ガ然、注目されているのが「みんなの党」の渡辺喜美代表が国会で指摘した「埋蔵電力」の活用だ。日本中の企業の自家発電設備をフル活用すれば電力不足を補えるという。
「企業の自家発電能力は、約6000万キロワットもあります。東電の供給能力約6000万キロワット、原発40〜50基に匹敵する規模です。そこで自家発電の余剰分である『埋蔵電力』を活用すべきだと国会で提案したのです。ただ、政府は余剰分がどのくらいか把握していないという答えです」(渡辺事務所)
自家発電した電力を、それなりの値段で買ってもらえるとなれば、企業は積極的に売電するはずだ。新規参入する企業も出てくるだろう。
そもそも、原発がストップしても電力不足に陥らないことは専門家の常識だ。東京電力は03年に、原発事故や不祥事で全17基を停止しているが、停電は起きていない。
元慶大助教授の藤田祐幸氏の調査結果によれば、1965年以降、その年の最大電力であっても、「火力」と「水力」の発電能力だけで十分に賄え、発電能力を超えた需要は一度もない。原発を必要としないことが分かっている。
さらに京大原子炉実験所助教の小出裕章氏も4月に行った講演でこんな資料を公開している。
「……発電所の設備の能力で見ると、原子力は全体の18%しかありません。その原子力が発電量では28%になっているのは、原子力発電所の設備利用率だけを上げ、火力発電所のほとんどを停止させているからです。(略)それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備使用率は5割にもなりません」
電力はいくらでも生み出せるのだ。大手メディアはなぜ大騒ぎしているのか。
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◆電力会社の利権を奪えば脱原発できる! ニッポンの自家発電はすでに原発60基分2011-06-13 | 地震/原発
緊急レポート 電力会社の利権を奪えば「脱原発できる!」「ニッポンの自家発電」はすでに原発60基分!
現代ビジネス2011年06月12日(日)フライデー経済の死角
JR東日本、キリンビール、六本木ヒルズ、大阪ガス・・・全国ですでに6000万kWの電気が作られている---が、さらに企業に広まらない裏には、カラクリがあった。
「かき集めても、やっとこのぐらいという感じだ」。5月23日、中部電力(中電)本店で行われた会見で、水野明久社長(57)は厳しい表情でこう漏らした。浜岡原発停止後、7月と8月の電力供給力がピーク時の需要を5%ほど上回るものの、安定供給には到達しないと発表したのだ。恒例の電力会社による「電力が足りなくなる」というアピールである。そこで、中電が打ち出しているのが、自家発電設備を持つ管内の民間企業から余剰電力を買い取るという方針だ。
とはいえ、中電が買い取れるのは余剰電力に過ぎない。管内最大となる60万kWの発電能力を備えた名古屋製鉄所(愛知県東海市)を持つ新日本製鐵の広報センターは次のように説明する。
「製鉄の過程で出る熱やガスを利用するもので、発電量は生産量に左右されます。発電した電気は自社工場内でも使用しますので、そのすべてを余剰電力として売電できるわけではない。そして、これまでも余剰電力を中部電力に売ってきました。ですので、それ以上の?埋蔵電力?があると思われると困るのですが」
あまり知られていないが、発電施設を所有しているのは電力会社だけではない。 '95年の電気事業法の改正によって電力会社による独占が一部緩和され、電力供給を行う新たな企業(事業者)が生まれた。新日鐵のように余剰電力を電力会社に売る企業もある。その一方で、非常用や自社工場での消費を目的とした自家発電もある。環境エネルギー政策研究所主席研究員の松原弘直氏が解説する。
「工場の自家発電施設で最も導入されているのは、重油など化石燃料を使う発電機ですが、油の価格の上昇で、発電するよりも電力会社から買ったほうが安く、ほとんど稼動していなかったはずです」
右のグラフは、全国の自家発電を発電の種類ごとに分けて、認可出力(注)の合計を示したものである。自家発電施設は3249ヵ所あり、うち2569ヵ所が火力発電だ。
一目瞭然だが、火力の自家発電だけで日本の原発全54基の総認可出力を上回っている。水力などを加えれば原発60基分に相当する。そしてその多くが稼動せず、?眠っている?可能性が高いのだ。
総務省統計局や電気事業連合会が公表した '08 年のデータによれば、日本の火力発電所の最大発電量は約1兆2266億kW/h。
しかし、その稼働率は50%程度に過ぎず、原発で発電していた約2581億kW/hを補って余りある。それに加えて、この?埋蔵?自家発電がある。「厳しい夏になる」(水野社長)などと、電力会社は原発なしには夏を乗り切れないかのような?脅し?を繰り返すが、本誌が何度も指摘してきたとおり、電気が足りないわけではない。
しかし、この自家発電力を有効に生かすのを阻む壁が存在する。電力会社の利権である。この利権は企業の自家発電がさらに広まるのを阻む壁にもなっている。
「そもそも一つの電力会社が、ある地域の発電も送電も小売も独占するというのは、戦後の復興期だから必要だったシステムです。工業生産が伸び、その電気需要に応えるために必要だったわけです。しかし今の時代に、地域独占が必要でしょうか?」(自家発電設備を持つある事業者)
日本の電気事業は、10電力会社による地域独占体制が続いているが、前述した電気事業法の改正で発電と小売の一部が自由化され、独自に発電や電力供給を行う事業者が誕生した。業態によって、「卸供給事業者(IPP)」、「特定電気事業者」、「特定規模電気事業者(PPS)」などに大別される。
IPPは、電力会社に10年以上にわたって1000kW以上を供給する契約などを交わしている事業者のことで、大阪ガスの子会社である「泉北天然ガス発電所」などがそれに当たる。
また、特定電気事業者は限定された区域に対し、自らの発電設備と送配電設備を用いて電力供給を行う。六本木ヒルズに電気を供給する森ビルの子会社「六本木エネルギーサービス」や、首都圏の鉄道に電気を供給するJR東日本が代表的だ。一方、PPSは、工場や病院など一般家庭以外と50kW以上の契約をして電気を供給する。オリックスや昭和シェルなどが参入している。
「このPPSが電気をどんどん作り、市場が活発になれば電気代も安くなるはずですが、電力会社がそれを阻んでいます。PPSは自前の送電設備を持たないため、電力会社の送電網を利用するのですが、その際に『託送料』がかかり、この負担が大きいのです。電力量によって変わりますが、客が支払う電気代の約2割を、託送料として電力会社に支払わなければなりません」(前出の事業者)
さらにこんな障壁もある。
「電力会社は自然エネルギーで作られる電気を送電網に接続することを独自に制限しているんです。『自然エネルギーは安定しない』というのがその理由です。
例えば、東北地方では風力発電の事業者は抽選に当たらないと送電網に繋げません。広範囲で送電網を整備すれば、青森県では風が吹かなくても、秋田県で吹けば穴埋めできるのに」(別のPPS事業者)
政府は6月中には、「エネルギー環境会議」(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)を設置することを決めている。その会議で最も大きな議題となるのが、電力会社の「発送電分離」だ。
前述したような障壁をなくすために電力会社から送電部門を切り離そうという議論だ。が、実現したとしても、すぐに自由化が進むわけではなさそうだ。九州大学大学院電気システム工学部門の合田忠弘教授はこう指摘する。
「発電と送電を分離した場合、あちこちに点在する電源を有効に利用しようとすれば、多くの電気を流せるように送電網を強化する必要があります。しかし、海外の事例を見ると、送電会社はなるべく今の設備を利用して設備投資を控える傾向がある。この投資を誰がどのように行うのかが問題となるでしょう」
また、電気メーターを設置し、各家庭に電気を配電できるのも電力会社に限られているから、欧米のように少々料金が高くても、あえて太陽光発電で作られた電気を買うような選択はできない。自家発電で作られた電気も原発で作られた電気も一緒くたにされ、その内訳もブラックボックスにされた?言い値?の電気料金を私たちは支払わされているのだ。
●送電分離による託送料の廃止
●電気メーター(配電)の自由化
●電気料金の内訳の可視化
これらを実現できれば、電力不足などありえない。脱原発への道も大きく開けることとなる。あるPPS事業者が言う。「発送電分離と配電の自由化によって、『原発の電気は安くても買わない』という選択が可能になる。発送電を分離して初めて、国民が意思表示をできるのです」