秘密保全法 重大な漏洩には厳罰化を
産経新聞2013.4.21 03:06 [主張]
安倍晋三首相が予算委員会で、外交、安全保障情報の漏洩(ろうえい)を防ぐための「特定秘密保全法」を早期に制定する意向を示した。日本の安全と国益を守るために必要な法律だ。安倍政権の取り組みに期待したい。
秘密保全法は、国家安全保障会議(日本版NSC)創設と並行して検討課題に浮上した。外務、防衛両省から「NSC側に秘密漏洩の罰則がなければ、安心して機密情報を提供できない」との意見が出された。当然の指摘だ。
日本の現行法の秘密漏洩に対する罰則は、総じて軽い。
国家公務員法は守秘義務違反の罰則を「1年以下の懲役か50万円以下の罰金」としている。自衛隊法の防衛機密漏洩に対する罰則は「5年以下の懲役」だ。
これに対し、日米相互防衛援助協定(MDA)に伴う秘密保護法などは、在日米軍にかかわる機密漏洩に「10年以下の懲役」を科している。
これではバランスに欠ける。一律に国内法の罰則を重くする必要はないが、外交、防衛機密など特に重大な情報を漏らした場合は、厳罰化が必要である。
秘密保全法は、民主党前政権でも検討された。平成22年9月の中国漁船衝突事件で、元海上保安官によってビデオ映像が流出したことがきっかけだ。しかし、この映像は本来、当時の菅直人政権が国民に公開すべき情報だった。
前政権で検討された内容は、白紙に戻す必要がある。
安倍首相は「国民の知る権利や取材の自由を尊重しつつ、さまざまな論点を検討している」とも述べた。これも当たり前である。
民主党政権は、元経済産業相の原発をめぐる問題発言が報じられたことで、情報統制を行うなど、言論・報道の自由への理解に乏しい面もあった。安倍政権は、過度の秘密主義を避けてほしい。
国家機密を不当に入手した外国人らにも、日本の法律は甘い。
昨年、警視庁の出頭要請を拒否して帰国した在日中国大使館の元1等書記官に、農林水産省から福島原発事故後のコメの需給見通しなどの最高機密が漏れていた。同じころ、兵庫県から融資金を詐取した疑いで逮捕された会社社長は、北朝鮮の指示で工作活動を行った疑いが持たれている。
中国や北朝鮮のスパイ活動を取り締まる法整備も急務だ。
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自衛隊員の配偶者に中国人600人、うち10人が機密性の高い職務
サーチナ 2013/04/14(日) 13:11
外国人と結婚する自衛隊員が近年、増加傾向にある。最新の統計データによると、14万人の陸上自衛隊員のうち500人、4万2000人の海上自衛隊員のうち200人、4万3000人の航空自衛隊員のうち100人の計800人の自衛隊員の配偶者が外国人であり、うち7割弱が中国人で、ほかはフィリピン人や韓国人が多いという。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
日中防衛問題に詳しい専門家は、「中国人女性と結婚した海上自衛隊員のうち、10人が機密性の高い職務を担当している」と指摘した。
自衛隊基地は一般的に農村もしくは郊外に位置し、隊員の出会いの場は限られており、仲介業者を通じて外国人女性と結婚することを迫られている。特に海上自衛隊員は、長期的な航海により日本を離れる時間が長いため、一般的な日本人女性と交際することは困難でもある。(編集担当:米原裕子)
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◆ 【新帝国時代】第2部 インテリジェンス(諜報)なき国(2)李春光書記官 諜報疑惑「捜査は見送ったんだ」 2013-02-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
【新帝国時代】第2部 インテリジェンスなき国(2) 李春光・中国元書記官スパイ疑惑「捜査は見送ったんだ」
産経新聞2013.2.4 07:04
日本警察から中国に「追放」された中国人元外交官は落ち込んでいた、という。「日本との交流の仕事をずっとやってきた。私にはこれしかできない。すぐには難しいかもしれないが、いつかまた日本に行って中日交流に関する仕事をしたい…」。スパイ疑惑が浮上し、警視庁公安部の出頭要請から逃れるように昨年5月に帰国した李春光・元在日中国大使館1等書記官。中国政府最大のシンクタンク、中国社会科学院に戻った今、周囲にそう漏らしているという。
■投資話で金稼ぎ
物腰柔らかい話しぶりや振る舞い、私生活もホームページでさらけ出し、とてもスパイに見えない。平成11年に特別塾生として半年間過ごした松下政経塾では日本の市民オンブズマン制度を熱心に研究する一方、同塾が自衛隊将官らを招いた安全保障分野の講座は一切、興味を示さなかった。
その代わりに見せた別の関心事。それはもうけ話だった。「中国でポリ袋を生産し、日本のシェアを取る」「再生資源が多い日本のゴミを中国に輸出すればカネになる」。怪しい話を携えた人物が出入りした。
警視庁の捜査でも、李元書記官は中国への投資話で日本企業から多額の金を集めたことが判明。「スパイというより、不良外交官の金もうけ」。事件はこんな印象で終わった感がある。しかし、民主党が政権を退いて日がたつにつれ、捜査側から「本音」がぽつりぽつりと漏れてきている。
■政権直撃の恐れ
「政権を直撃する事件になる可能性があったので、農林水産省ルートの捜査は事実上見送ったんだ」
警察関係者はこう打ち明ける。中国人民解放軍総参謀部の諜報機関「第2部」に所属していたとされる李元書記官は、松下政経塾時代に後の民主党国会議員らと知り合うなど政界人脈を開拓。1等書記官として19年夏に着任すると、水面下で政界工作を展開していた。
「第2部」は、中国の情報機関の中でも予算が豊富な最強の組織。「中国軍の頭脳」といわれるほか、暗殺や誘拐などの特権もあるとされる。
警視庁公安部は、李元書記官の着任直後から動向監視を続けており、政界工作を把握。そんな中、農水省の政務三役に食い込んだ李元書記官が、農水省の「機密」文書を入手していた疑いが浮上したのだ。
事実、農水省の最高機密に当たる「機密性3」指定の文書4件が、李元書記官と関係の深い一般社団法人「農林水産物等中国輸出促進協議会」に渡っていた。
しかし、機密を漏らしたのが政務三役だった場合、国会議員は特別職の国家公務員であるため、国家公務員法(守秘義務)違反は適用されない上、「国務大臣、副大臣及(およ)び大臣政務官規範」(大臣規範)違反にはなるが、罰則がない。
「(警察庁の所管大臣である)国家公安委員長に、とんでもない人物を送り込んだり、警察に無理解な民主党とあえてケンカするのは得策じゃない。自主規制したんですよ」
警察関係者は捜査の裏側を、こう振り返る。
■お寒い防諜手段
「スパイ天国」とも揶揄(やゆ)される状況は、スパイ防止法がないことに起因することはよく知られる。警察幹部は「この法律がないのは、政府が戦後長い間、中国などとの軋轢(あつれき)を避け、優柔不断な弱腰外交を続けてきたからだ」と指摘する。
そもそもウィーン条約によって「不逮捕特権」が認められている外交官のスパイ活動は、日本の裁判にかけられない。
このため李元書記官が立件されたのは、外交官の身分を隠して外国人登録証を不正に更新した外国人登録法違反という「別件」。国内の防諜(カウンターインテリジェンス)を担う外事警察は「別件」という「お寒い手段」しか持っていない。今回の事件は、こうした日本の実態を浮き彫りにした。
◇
■「反TPP」利用日米分断
「外交政策に影響を与えたかといえば、0・1%も与えていない。単純に金もうけだけでしょ。スパイというほどじゃない。下っ端の下っ端」。玄葉光一郎前外相は自らの民主党政権下、農水省を舞台に起きた李春光・元在日中国大使館1等書記官の事件をこう評した。元書記官の存在すら知らなかったという。
正反対にこの事件に強い危機感を抱いていたのが、元外務省主任分析官、佐藤優氏である。
「ラストボロフ事件、レフチェンコ事件に匹敵する重大なスパイ事件だ」
引き合いに出した2つは旧ソ連の工作員が日本で繰り広げた広範な工作活動を自ら暴露した戦後最大級の事件。今回の事件はそれに肩を並べるとまで言う。
佐藤氏が李元書記官の存在を知ったのは平成22年秋。菅直人首相(当時)が同年10月「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を検討したい」と所信表明演説で唐突に表明、TPP参加をめぐる論議がわき始めたころだった。
TPP反対の急先鋒(せんぽう)だった農水省の高官や農水族の与野党の国会議員に次々と接触。中国人民解放軍にパイプがあると自らの存在感を誇示しながら、日本のTPP不参加の交換条件として、「レアアースを安定供給する」「中国の富裕層向けにコメ100万トンを輸入するシステムを作る」と持ちかけていたというのだ。
「1等書記官にしては威勢がよい」。佐藤氏は工作機関との関わりを疑った。
■コメ輸出材料に
日本語が達者な李元書記官は以前、東大や松下政経塾で研究員も務め、中国・洛陽市職員の肩書で、友好都市の福島県須賀川市に日中友好協会の国際交流員として来日。農水関係者を中心に人脈構築工作(ヒューミント)を展開していた。
安全保障や外交分野に比べれば農業分野は一見、格落ちに見える。しかし、佐藤氏は関係者の脇が甘い分野を突く巧妙さに感心するだけでなく、この分野だからこその深い理由が隠されているとみる。
「TPPは単なる経済協定ではない。アメリカの環太平洋の安全保障システムと裏表にある。コメをまき餌に日本を中国陣営に引き込み、日米同盟を弱体化させる意図が透けてみえる」。アメリカ主導のTPPから日本を引きはがし、中国主導の日中韓自由貿易協定(FTA)に引き込もうとしたというわけだ。
しかも、コメ農業は日本の政治の急所。李元書記官は農水関係者に「中国は必ず食糧不足になる。日本のコメがどうしても必要だ」とも働きかけていた。
中国がだぶつき気味の日本のコメを買ってくれるなら、中国主導のFTAに乗ろうという機運も生まれてくる。
日本の弱みを材料に、日米を分断させる巧妙な対日情報工作−。そんな側面が浮かび上がる。
■政策・世論ねじ曲げ
確かに工作は実を結びつつあった。
筒井信隆元農水副大臣が主導していた中国への農産物輸出事業に李元書記官が深く関与。その結果、23年12月に訪中した野田佳彦前首相の日程に、日本産の農産物を北京で展示する「日本産農水産物展示館」の視察がねじ込まれた。筒井氏は3日までの産経新聞の取材に応じていない。
そうこうするうち、TPP参加交渉は遅れる一方、日中韓サミットは24年5月に北京で開催され、同年11月には日中韓FTA交渉が開始された。
TPP交渉に前向きだった野田政権を牽制し、中国に有利な方向に誘導する工作が行われていたことは想像に難くない。
中国のインテリジェンスは、ロシアや欧米のように金銭や脅しで情報収集するのではなく、目的を悟らせずに緊密な人間関係を構築、知らず知らずに、日本の政策や世論を中国の国益に沿うようねじ曲げ、中国の政策の浸透を図るのが特徴とされる。
佐藤氏は「第2、第3の李春光はいる。中国の諜報活動への警戒が必要だ」と指摘している。
◇
【用語解説】李春光事件
在日中国大使館の李春光・元1等書記官側に農林水産省の機密文書4点が漏洩(ろうえい)したとされるスパイ疑惑。警視庁は昨年5月、外国人登録証を不正に更新したとする容疑で李元書記官を書類送検したが、直前に帰国しており、起訴猶予処分となった。
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◆ インテリジェンスレポート 内調・加賀美正人参事官が自殺 日本版CIA「内閣情報調査室」の闇 2013-04-15 | 社会
インテリジェンスレポート 大物メンバーが自殺 日本版CIA「内閣情報調査室」の闇
現代ビジネス「経済の死角」2013年04月15日(月)週刊現代
「自殺するような人ではなかった」—亡くなったキャリア官僚を知る人はみな、口をそろえてこう言った。謎の死の背景にあった国家間の情報戦。完全秘密主義の内閣情報調査室をレポートした。
*まるでミステリー小説
4月1日、午後3時7分。
険しい表情で首相官邸へと入っていく二人の男の姿があった。一人は北村滋・内閣情報官。内閣情報調査室のトップだ。
3時17分、同行していた防衛省の木野村謙一・情報本部長が先に官邸を出た。そこからさらに10分間、北村氏は安倍首相と「密談」を続けたのだった。
「会談内容は極秘扱いですが、もちろん、同日朝に自殺した内調大物メンバーの件に間違いありません。防衛省の情報本部長が同席したことからも、国家機密漏洩の可能性も含めて、緊急の会談が持たれたのでしょう」(官邸担当記者)
時計の針を7時間前に戻そう。
4月1日、午前8時前。東京都渋谷区恵比寿の閑静な住宅街に、消防車のサイレン音が鳴り響いた。
通報のあったマンションの一室に駆けつけた消防隊員は、内側から目張りしてあったドアを蹴破って、浴室へ入った。
浴室内は練炭のたかれた跡があり、床には内閣情報調査室・加賀美正人参事官(外務省から出向中・享年50)の遺体が横たわっていた。
通報をしたのは、加賀美氏が同居している母親の介護を務めるヘルパー。浴室のドアにあった「死んでいます。部屋に入らないでください」と書かれた奇妙な張り紙を見てのことだった。
この加賀美氏の死は官邸と外務省に大きな波紋を呼び、それがいま永田町にも広がりつつある。
「『介護疲れによる自殺のようだ』と外務省幹部はふれ回っていたが、どう考えても家庭の事情による突発的な自殺とは思えない。練炭という苦しみを伴う方法からみても、加賀美氏には何か、確実に死ななければならない理由があったのではないか。
さらに言えば、そもそも、加賀美氏の死は本当に自殺なのか……」(自民党議員)
なぜ一人の外務省キャリアの死が、ミステリー小説のような憶測を生むことになるのか。
謎解きを始めるにはまず、内閣情報調査室(内調)という耳慣れない組織の実体を知らなければならない。
内調の役割について、元内調幹部は言う。
「内外の情報を収集、分析し、それを首相官邸に上げる、内閣総理大臣直轄の諜報機関で、いわば日本版CIA。組織のトップは内閣情報官で、その下に約200名の人員がいる。メインの諜報部門は国内部門、国際部門、経済部門の三つ。それぞれ約50名の調査員を抱えているが、各自がどんな調査をしているか、席が隣の人間にもわからない。国内外の膨大な秘密情報が集約される、日本で唯一の諜報機関だ。めいめいが独自の人脈で情報収集をしており、諸外国の中枢まで食い込んで情報をとってくる者もいるが、逆に相手国に取り込まれて『二重スパイ』に堕してしまう危険性も常にはらんでいる」
慶応大学を卒業し、'86年に外務省に入省。対ロシア外交のエキスパートだった加賀美氏は、今月末に予定されている安倍首相の訪ロにも深く関わっていたと言われている。
その矢先の自殺だけに、ますます疑念は渦巻く。
「そもそも外務省から'11年に内調に出向したのは、高齢の母親の介護のためや、出世コースから外されたためなどと噂されているが、それは『隠れ蓑』のようです。加賀美氏は父親が国連大使まで務めた外務省エリートで、いわばサラブレッド。『鈴木宗男殴打事件(後述)』の当事者でもあり、外務省としてはゆめゆめ粗末には扱えない人材です。
実際、加賀美氏は同い年の世耕(弘成・官房副長官)さんと非常に近く、訪ロにも同行する世耕さんが、加賀美氏に密命を与えていたのではないか、とも言われています。世耕さんとすれば、外務省本省にいるよりむしろ、官邸直轄の内調にいてくれるほうが、仕事が頼みやすいという事情もあったのでしょう。
加賀美氏は内調で冷や飯を食っていたというより、本省よりも自由に動ける上に、内調に集まる情報も活用できる『別働隊』として、安倍政権の対ロ政策に関わっていた可能性が高い」(外務省職員)
*死ぬはずのない人が死んだ
この言葉を裏付けるように、加賀美氏が母親と同居していたマンションの住民はこう語る。
「加賀美さん本人を何度か見かけたことはありますが、こちらから挨拶をしても返さないような人で、あまり家にも帰っていないようでした。挨拶をしないのは無愛想というより、あまり近所の人とかかわりを持ちたくないような、そんな避け方でした。お母さんは車イス生活で、介護が必要なんですが、ヘルパーさんに任せきりで手伝っている様子もありませんでした」
そして、死の2日後に都内のカトリック教会で行われた、加賀美氏の通夜に参列した慶応大学の同級生もこう語る。
「私は大学時代のゼミも一緒で、彼の結婚式の司会も務めた仲ですが、自殺したと聞いてとても驚いています。彼は身体も大きく、おっとりしていて、あまり思い悩むようなタイプではなかった。悩みを持っていたとしても、それは一般の社会人が共通して持つようなものだったと思います」
さらに、同じく通夜に参列していた、息子が加賀美氏の親友だという70代の知人女性の話。
「私は正人君が小さい頃から知っています。いつも明るくて元気な子でした。最後に会ったのは昨年の12月。一緒にお酒を飲んだけれど、その時もいつもと変わらない明るさでした。だから介護疲れのノイローゼで正人君が自殺をするなんて、信じられません」
加賀美氏の省内での立場やこうした近しい人々の証言からは、自殺の原因が介護疲れといった、個人的かつ精神的なものでないことが浮かび上がってくる。
加賀美氏とロシアの関係を語る上で、避けて通ることができないのが、前述した「宗男殴打事件」である。
'02年にいわゆる宗男バッシングが起きた際、「かつて鈴木宗男に殴られた」と名乗り出たのが、この加賀美氏だった。
外務省側が主張する概要はこうだ。'96年、北方領土とのビザなし交流が始まって5周年の記念で、日本の桜を植える計画を鈴木宗男氏が中心となって立てた。北方領土に向かう船上で、ロシアが求めている検疫証明書を外務省としては出せないと宗男氏に伝えると、逆上した宗男氏が加賀美氏を殴った。加賀美氏は全治1週間の傷を負った—。
*北方領土をめぐる利権争い
「亡くなった加賀美さんの冥福を祈りたい」と前置きしながら、宗男氏本人は本誌にこう語る。
「身体が大きくて、相撲取りみたいな見た目でした。外務省の中には彼を『関取』と呼んでいる人もいましたね。でも、別に威圧感があるわけではなく、ちょっとボーッとした感じの人でしたよ。
不思議でならないのは、私に殴られたというのならば、すぐに傷害罪で訴えればいいわけですね。ところが5年も6年も経ってから持ち出してきた。組織として、私に対して何かの時に、この話を使おうと考えておったんでしょうな。
私としては、あの嘘話はなんだったのかと言いたいですね。『診断書がある』と言ったって、(北方領土への)船の中にだってお医者さんはいたし、根室で船を下りてから病院に行ったっていいじゃないですか。それをわざわざ東京に帰って、しかも知り合いの診察所に行ったわけですから、そんなのなんとでも(診断書を)書いてくれますよね。
あれは組織ぐるみの陰謀だったと思います。外務省はそういうことをよくやるんですよ。亡くなったいまとなっては無理ですが、私はやはり、加賀美さんの口から真実を聞いて、事実関係を明らかにしたかったという思いがあります」
この事件の背景を、外務省に詳しいジャーナリストはこう解説する。
「実は加賀美さんは、モスクワ大使館に赴任していた時代にトラブルがあり、KGBに弱味を握られていたと言われています。それもあって、外務省と宗男さんが対立した時に、先頭に立って宗男バッシングをすることで省内での地位を保とうとした。
以来、加賀美さんのロシア人脈にはどこか危うさがつきまとうと言われるようになった。たとえば2月28日に、プーチン大統領に近いイシャエフ極東発展相が来日したが、加賀美さんは事前に世耕さんに『安倍総理が会う必要はない』と進言している。
ところが直前になって森(喜朗・元総理)さんと宗男さんが動き、急遽、安倍総理との会談が組まれた。加賀美さんがイシャエフを安倍総理に会わせないようにしたことにも、何か裏があるとしか思えません」
結果的に、安倍総理とイシャエフの会談は「4月の訪ロのよい先鞭となった」と言われているが、「そんな単純な話ではない」と語るのは前出の外務省職員だ。
「森さんも宗男さんも2島返還論者として知られていますが、外務省の中にもクレムリンにも、それを面白くないと思う勢力がいるわけです。北方領土には様々な利権が絡んでいる。加賀美さんが過去の弱味も含め、KGBから揺さぶりをかけられていた可能性も十分にあるでしょう」
最後に宗男氏が、国家の情報管理の観点からこう苦言を呈する。
「内調の参事官であれば国家機密も扱っている。自殺と聞いて、私は真っ先に『情報漏洩は大丈夫か』と心配しました。官邸、内調、外務省はその点についてしっかり調査すべきです」
機密情報が漏れていたとしたら、内調の責任は重大である。
「週刊現代」2013年4月20日号より
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◆ 内閣情報調査室内閣参事官のA氏が練炭自殺 インテリジェンス業務には、激しいストレスがかかる 2013-04-05 | 社会
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秘密保全法 重大な漏洩には厳罰化を / 【新帝国時代】第2部 インテリジェンス(諜報)なき国
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