【守れ!国境の島】土足で“裏庭”を荒らす中国船 「慣らされる」領海侵犯 (1)
zakzak2013.05.14
「これから尖閣で漁をするときは中国国旗を掲げないと、地元漁船の安全は保障されないかも」
石垣島の漁業者、名嘉全正さん(54)は、中国公船による「浸食」が続く尖閣諸島海域の現状をこう嘆く。日本の実効支配は大きく揺らいでいる。
自身が船長の「第11善幸丸」は今年2月18日、尖閣海域で、領海侵犯した中国の海洋監視船3隻と鉢合わせし、1時間半にわたって執拗(しつよう)に追跡された。尖閣領海で日本漁船を拿捕(だほ)して「領有権」を主張するのが中国の狙いだ。
海上保安庁の巡視船が割って入り、第11善幸丸をガードしたため、名嘉さんは何とか石垣島へたどり着いた。
しかし、「事件」はこれだけでは終わらない。4月23日には、民間団体の釣りツアーが地元漁船9隻に乗り組み、尖閣海域に向かったところ、中国の海洋監視船や漁業監視船10隻に待ち伏せされ、追跡と威嚇を受けた。海保の避難勧告でツアーは釣りを中止し、石垣島へ引き返した。尖閣海域で日本漁船が中国公船に追い払われたことになる。
実は、このツアーは当初は10隻で、エンジントラブルのため1隻が出港を見合わせた。中国当局は、あえてツアーの漁船と同数の公船を派遣し、漁を妨害させたのだ。
石垣島の漁業者は「中国公船が領海侵犯するのは、地元漁船を駆逐するためだ」と指摘している。報道されるのは氷山の一角だ。どうも中国当局は、尖閣に出航する地元漁船の動きを事前に察知しているらしいのだ。
2012年9月の尖閣国有化後、今月までの7カ月で、中国公船による領海侵犯は40回以上に及んでいる。領海侵犯には至らなくても、領海外側の接続水域には、ほぼ毎日、中国公船が姿を現し「パトロール」と称して存在を誇示している。
すでに尖閣海域では、漁業者が安心安全に操業できる環境は失われていると言っていい。
尖閣には「石垣市登野城(とのしろ)」という地名がついており、まぎれもなく石垣市の一部だ。中国の傲慢さに、多くの市民が、土足で裏庭を荒らされているような腹立たしさを感じている。
しかし、市民の思いとは裏腹に、全国紙や地元紙で領海侵犯のニュースは扱いが小さくなる一方だ。領海侵犯が日常化し、日本人がいわば「慣らされて」しまっているのだ。
国境の島が侵食されている現実に、日本人が無感覚になる。それこそ、連日、尖閣海域に出没する中国の思うつぼではないか。
*仲新城誠(なかあらしろ・まこと)
1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に石垣島を拠点する地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県の大手メディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に「国境の島の『反日』教科書キャンペーン」(産経新聞出版)など。
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【守れ!国境の島】土足で“裏庭”を荒らす中国船 「慣らされる」領海侵犯 (1)
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