衆院憲法審査会 前文を巡り議論
5月16日 17時4分
衆議院の憲法審査会で、与野党7党が憲法の「前文」を巡って意見を表明し、自民党や日本維新の会、みんなの党が、日本の歴史や文化などに関する記述を盛り込むべきだと主張したのに対し、民主党や公明党は慎重な議論が必要だという考えを示しました。
衆議院の憲法審査会では、16日、委員がいる与野党7党が意見を表明しました。
このうち▽自民党は「歴史・伝統・文化に根ざした日本固有の価値を定めるべきだ。特に問題なのは、『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』という部分で、ユートピア的発想による自衛権の放棄にほかならない」と述べました。
▽民主党は「憲法の精神や基本目標をどうするかという大局に立って検討すべきだ。歴史・伝統・文化などを盛り込むべきとの意見もあるが、国民全体が共有できるのか、特定の人々や集団の価値観を国民に押しつけることにならないかなど、慎重な議論が必要だ」と述べました。
▽日本維新の会は「憲法の3原則である、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の趣旨を明記する方向で検討を進めたい。また、天皇陛下を『元首』と明記するとともに、歴史と文化に誇りを抱き、自由と民主主義を尊重し、多様な価値観を認める体制を堅持することをうたいたい」と述べました。
▽公明党は「加えるべき項目があるとすれば、憲法の3原則の1つである基本的人権の尊重だ。『日本人としてのアイデンティティーを共有できる記述が必要だ』という声もあるが、人によって考え方は異なるので、日本人全体で共有できるかどうかに留意して議論すべきだ」と述べました。
▽みんなの党は「時代を超えた憲法の基本的な原則を盛り込むべきであり、憲法の3原則を明記すべきだ。今の前文には、日本独自の歴史・伝統・文化・価値観が書かれておらず、国民が誇りと愛着を感じるような内容に改めるべきだ」と述べました。
▽共産党は「今の前文には憲法が立脚する基本原理が書かれており、仮に侵略戦争への反省と不戦の誓いを削除することになれば、日本が戦後の出発点をみずから否定するだけでなく、アジアや世界で日本の孤立を招き、国際社会で生きていく道を失うことになりかねない」と述べました。
▽生活の党は「前文は国を形づくる理念を明らかにするのが望ましく、3原則に『国際協調』を加えた4つが基本原則だ。国際平和の重要性が増していくなかで、わが国が積極的に貢献していく観点を具体的に記すことを検討してもいいのではないか」と述べました。
衆議院の憲法審査会は、去年から今の憲法の章ごとに議論してきましたが、16日ですべての章の議論が一巡しました。
審査会では、来週、今の憲法で規定されていない緊急事態についての条文を盛り込むべきかどうかなどを議論することにしています。
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