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橋下徹共同代表 日本外国特派員協会会見〜旧遊郭街「飛田新地」の顧問弁護士だった経歴もやり玉に

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大阪旧遊郭街顧問弁護士の経歴もやり玉に 外国人記者らが橋下市長釈明を追及
J-CASTニュース2013/5/27 18:18
   日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は2013年5月27日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、自身のいわゆる従軍慰安婦をめぐる発言について釈明した。同協会としては異例の数の396人が集まり、一部記者からは「上祐(史浩・元オウム真理教広報部長)以来の盛り上がり」との声も出た。
   橋下市長は侵略と植民地支配については認め、慰安婦に対して謝罪すべきだとの立場を繰り返した。慰安婦動員の強制性を認めた1993年の河野談話については「修正」や「否定」ではなく「明確化」すべきだと主張。
   この主張に対して外国記者からは「矛盾している」「質問に答えていない」との声が相次いだほか、旧遊郭街の顧問弁護士を務めていたことについては「『料理組合』の顧問弁護士。料理組合自体は違法でもない」と主張。「詭弁(きべん)を弄して恥ずかしくないのか」という声も出た。
■「かつては顧問弁護士だったことは事実」
   橋下市長は会見冒頭、事前に発表された文章『私の認識と見解』を20分近くかけて朗読。外国人記者には、配布された英語版を読んだ上で質問することを求めた。文章には従軍慰安婦に謝罪すべきことや、米軍に風俗業の活用を勧めたことを撤回する考えなどが盛り込まれており、質問の大半は、この文章に書いてある範囲内のものだった。
   それ以外で特に厳しい質問が飛んだのが、弁護士としての顧問先についてだ。橋下市長は、大阪の旧遊郭街として知られる「飛田新地」の組合の顧問弁護士を務めていたが、市長という公的な役割との整合性を問う質問が出た。これに対して橋下市長は、
 「かつては顧問弁護士だったことは事実。それは、飛田の組合という『料理組合』の顧問弁護士。日本において違法なことがあれば、捜査機関が適正に処罰する。料理組合自体は違法でもない」
 と主張。記者席は失笑の声がもれた。この回答では到底理解を得られなかったようで、別の記者が、
 「名称は『料理組合』かも知れないが、飛田は、お店の2階に上がってお金を払えば買春できることは、大阪のちょっとませた中学生なら誰でも知っている。中学生が聞いて、『橋下さん、うそついてはるわ!』と思うような詭弁(きべん)を弄してひとりの政治家として恥ずかしくないのか」
 と追及。橋下市長が苦笑いしながら、
 「違法なことであれば、捜査機関が行って逮捕されます。以上です」
 と述べると、「なーにいってんだ」という声とともに、再び失笑が漏れた。
■争点を「国家の意思があったかどうか」に絞る考え?
 会見後、外国記者の周りには国内メディアのカメラが殺到した
   従軍慰安婦問題については、
 「慰安婦の方には、しっかりおわびを申し上げなければいけないことは間違いない」
 という言葉を繰り返しながら、「国家が組織的に意志を持って女性を拉致・人身売買したかどうか」という点のみを争う考えのようだ。この点について橋下市長は、
 「国家が組織的に、国家の意思として女性を拉致した、人身売買をしたという事実はないというのが、日本の多くの歴史学者の主張であり、河野談話の後に出た2007年の日本政府の閣議決定では、国家の意思としての拉致、国家の意思としての人身売買を裏付ける証拠はなかったという日本政府の見解がでている」
 と日本側の見解を述べた上で、事実関係について韓国と共通見解を持つべきだと主張した。
 「韓国の皆さんが最も関心を寄せているこの核心的論点について、河野談話は逃げている。これが日韓関係が改善しない最大の理由。河野談話を修正・否定するということではなく、明確化すべきだと言っている。韓国のほうもいろんな意見があるだろうから、ここは日韓の歴史家・歴史学者が共同で事実を明確化すべきだと思っている。韓国は、日本が国家の意思として組織的に女性を拉致・人身売買したという主張。日本は、そのような事実はなかったという主張。ここを明確化しなければならない」
■香港記者「『強制性ない』と思っているのに河野談話修正・否定しないのは矛盾」
   橋下市長は、2012年8月24日には「河野談話は見直すべきだ」と述べている。この発言との矛盾や、「強制性」に関する認識を問われたが、
 「これも核心的な論点。河野談話について、書かれている事実を変える必要はないと思っている。しかし、表現については、もっと付け足さないといけない。表現を付け足すことを『修正』というのか『明確化』というのか、これは言葉の問題。まさに『強制性』の言葉をもっと丁寧に記述すべきだと思う」
   と、慰安婦の動員に国家による「強制性」があったかどうかについてはコメントを避けた。
   この「強制性」に関する質問をした、香港のフェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長は、
  「私は、国による強制性があったかどうかを聞きたかったが、それをはっきり言わなかった。橋下市長が言うように、これが核心的な問題なら、なぜはっきり言わないのか。安倍1次内閣の(07年の閣議決定の)ように『強制性はない』と橋下市長は思っているようだが、河野談話は修正・否定はしないと言っている。すごく矛盾している」
 と、煮え切らない態度に納得がいかない様子だった。
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【慰安婦問題】橋下氏「謝罪」と速報 AP、有力紙も掲載
産経新聞2013.5.27 18:52
 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が27日の日本外国特派員協会の記者会見で、米軍に風俗業活用を求めた発言を撤回し「おわびする」と述べたことについて、AP通信は東京発の至急電で「日本の市長が謝罪」と速報した。
 米国のワシントン・ポストやUSAトゥデーなどの有力紙、ABCなどテレビネットワークの電子版は、至急電に続くAPの配信記事を掲載。橋下氏の言動に対する関心の強さをうかがわせた。APの記事は橋下氏が風俗業活用発言を謝罪したと伝える一方、従軍慰安婦が必要だったとの発言については「文脈から切り離され」てメディアに引用されたと主張した、と報道した。さらに「戦場の性の問題」は旧日本軍だけでなく、他の主要国でも存在したとして「日本だけを非難することで終わってはならない」との橋下氏の見解を紹介した。(共同)
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橋下氏、慰安婦発言を釈明「容認していない」特派員協会
産経新聞2013.5.27 13:5
 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は27日午後、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。旧日本軍の従軍慰安婦をめぐる発言に関し「一貫して慰安婦を容認していない」との立場を説明。海外メディアに直接訴え、批判を沈静化する狙いがある。
 橋下氏は冒頭、「一つのワードを抜き取られて報じられたのが今回の騒動のきっかけ。そのことについて丁寧に説明する」と表明。事前に公表した見解文書を読み上げ「真意と正反対の報道が世界中を駆け巡ったことは極めて遺憾だ」と訴えた。「世界各国の軍が(慰安婦を)必要としていたと発言したが、誤報された」と主張、メディア報道を重ねて批判した。
 その上で「旧日本軍の慰安婦を正当化しようとは毛頭思っていない」。自身について「疑念の余地なく女性の尊厳を大切にしている」と力説。同時に「国家の意思として組織的に拉致、人身売買をしたことを裏付ける証拠はなく、この事実を認めていないのが日本の立場だ」と述べた。
 日本外国特派員協会(東京都内)で27日、記者会見した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は在日米軍に風俗業活用を求めた発言について米軍、米国民の侮辱につながる不適切な表現として撤回を表明し「おわびする」と述べた。「兵士をコントロールしてほしいとの思いを述べる際、売買春を勧めたとの誤報につながった」と報道批判を展開した。
 質疑応答に先立ち、日本維新の会は日本外国特派員協会に対し、旧日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」と翻訳することをやめるよう要求した。日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は同日、記者団に「橋下氏の思いとは違う形で発言内容が伝わっている。丁寧に誠意をもって説明すると思う。そうやっていけば、真意が伝わる」と述べた。
 橋下氏は13日、慰安婦について「銃弾が飛び交う中、精神的に高ぶっている(旧日本軍の)猛者集団に必要なのは誰だって分かる」と市役所で記者団に発言した。
 日本外国特派員協会(東京都内)で27日午後、記者会見した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は、旧日本軍の従軍慰安婦をめぐる発言に関し「一貫して慰安婦を容認していない」との立場を海外メディアに訴えたが、同時に「参院選の結果を受け、私が共同代表のままでいられるかどうか、日本維新内で議論が生じると思う」と述べ、選挙結果次第では辞任もあり得ることを示唆した。
 自身の発言に関し「政治家の責任は選挙で信を問うことだ。国民が『ノー』と言えば、参院選で維新の会は大きな敗北になる」とも述べた。
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漂白される社会 なぜ、女の子は飛田新地で働くのか? 元遊郭経営者が語る飛田の現在 2013-05-21 | 社会 
 対談 漂白される社会 なぜ、女の子は飛田新地で働くのか? 元遊郭経営者が語る飛田の現在 【スカウトマン・杉坂圭介×社会学者・開沼博】
 Diamond online 2013年5月20日
 売春島や歌舞伎町のように「見て見ぬふり」をされる現実に踏み込む、社会学者・開沼博。そして、大阪・飛田新地の元遊郭経営者であり、現在もスカウトマンとして活躍する杉坂圭介。『漂白される社会』(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、異色の2人が漂白されつつある飛田の現在・未来をひも解く。
対談第1回は、大阪都構想に揺れる飛田のいま、そして飛田に生きる人々の意外な真実に迫る。
■ベールに包まれた飛田新地の実態
開沼 『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(徳間書店)は本当に興味深く拝読しました。僕は社会学を専門としていますが、まさに社会学の研究のように、こういう仕組みで飛田は成り立っているんだ、という構造をわかりやすく丁寧に、かつ現地の生の声を通して分析されています。また、飛田の存続が脅かされる時代の流れ、まさに「漂白される社会」らしい動きがあることも読み取れました。今日はそれら2点をより詳しくうかがえればと思っています。まず、なぜこの本を書かれようと思ったのかを教えてください。
杉坂 この本を書くきっかけはいろいろありましたが、一番は人のご縁ですね。僕は今の仕事柄、飛田だけじゃなく信太山、松島、かんなみ等いろいろな新地で仕事をしてますから、どこもごく当たり前のように思いますが、東京、名古屋、北海道の人に聞くと、裏の世界だと言いながらも「ほかの新地は知らないけど飛田新地は知ってる」という人がほとんどです。にもかかわらず、それにまつわる話はほとんど出てきません。
 ただ、街は写真撮影禁止とされていますけど、デジカメで撮影したような写真や映像がかなり露出していますよね?YouTubeにも動画があります。それから、2ちゃんねるや「飛田新地掲示板」というサイトでは結構リアルなことも書かれていますね。
 最近では、井上理津子さんの『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)もありました。あの本は女の目から見ていますが、男の目から見た、飛田で実務をやった人間の意見が1つはあってもいんじゃないかということを思いましたね。
開沼 なるほど。やはり興味深く思うのは、まさに飛田新地のように、これまでは「あってはならぬもの」として多くの人が目を背け、直視せずに済ませてきたものが、現代において可視化されていく状況があるということです。「みんなその箱があることは知っているけど、箱の中身は知らなかった」という状況から、「箱の中身が見えちゃっている」状況になりつつあります。
 おっしゃる通り、情報化もそのプロセスを促していると思いますし、他方には、飛田新地というよりも、日本全体として繁華街等への取り締まりが強化されてきた結果、必ずしも「権力にとってもアンタッチャブルな場」ではなくなりつつあるという流れもあると思います。
 杉坂さんが最後に書かれているように、見たくないものをとりあえず消していく、「なんとなく、猥雑なものを潰しちゃってもいいよね」という正論で進んでしまうことに多くの人は疑問を呈さないし、疑問を呈しにくい状況ができているのかもしれません。これはまさに『漂白される社会』(ダイヤモンド社)で扱ったテーマとも深く結びついていると感じました。
杉坂 世の中にはいろいろな種類の風俗があるなかで、組合方式でやっているのは新地系しかないんですよね。歌舞伎町のすべての風俗店が加盟しなくてはいけない協会のようなものはないと思います。どちらかというと無秩序な世界です。
 ただ、飛田にせよ松島にせよ、新地系のように組合があることによって、守るべき秩序は守らせています。警察も許可を出していますから、何かがない限りは取り締まることもないと思うんですよ。
 常日頃、組合側が店の前を歩いたりして、「玄関の女の子の服装の乱れはないか」「違反行為をしていないか」をチェックしています。逆に言えば、それだけしっかりと秩序を守っている街なので、残しておこうと考えてくださっているのかもしれないなと。これは僕の勝手な想像ですけど。
■大阪都構想で存続の危機が高まる飛田
開沼 「飛田に組合がある」という話は一般にもある程度知られていますが、秩序維持機能を持ち、ある種の「自主規制団体」的な役割を果たしているというのは興味深いですね。ほかにも組合が担ってきた意外な役割はありますか?
杉坂 あとは国のためになること、福祉的な部分はみんなで積極的にやっていこうという動きがあります。月2回、各オーナーさんたちが集まって街の掃除をしています。それから催し物をしたり、地元の人に対して夏祭りの神輿をしたり、冬は餅つき大会。飛田という名前を持つ団体には組合以外にもいろいろあって、さまざまな活動をしています。
開沼 まるで良質な地域づくりNPOみたいです。そういう飛田の事業者や地域社会を行政との間に入って中間的に取りまとめる組合があるがゆえに、一見すると猥雑で無秩序そうなものもほどよく管理されているということですね。
 ただ、その一方で、地域と関わろうとするそうした活動は、飛田という、普段はその内実が外から見えにくい存在が可視化されるという機能も持つんじゃないでしょうか。そういう活動に対して、「目立つことをするな」と吊るし上げようという動きが出ているという側面もありますか?
杉坂 それはあると思います。
開沼 同じように、書籍として扱うとそういった動きを喚起してしまうため、書面に残すことを避けていた面、つまり「寝た子を起こすな」と内部の人が内実を語ることをしなかった傾向もあると思いますが、杉坂さんがあえてその内実を文章化し、書籍にしたことにはどんな想いがあったんですか?
杉坂 プラスに働くのか、それともマイナスに働くのかは、ある意味賭けでしょう。ただ、僕は飛田という街が残ってほしい、そのためにはもっと飛田を知ってもらいたいと思っています。これまで知らなかった人にも知ってもらいたいと思って書きましたね。
 まず、いまの飛田が直面している問題を知ってほしい。もしかしたら橋下市長の「大阪都構想」にも入っているかもしれませんが、飛田がいま存続の危機に直面していますよと訴えたかったところはあります。
開沼 橋下市長が顧問弁護士をしていたんですよね?記憶はありますか?
杉坂 あんまりないんですよね、というか正直街には来ません。テレビに出る前はちょっと来てましたけど、それこそ当時は若造ですよね。もともとスタッフが来られてましたし、もちろん、いまとなってはまったく来ないですよ。
開沼 なるほど。飛田や西成の方々の中には、いまも橋下市長に対する恩義を感じている人はいるんですか?
杉坂 そうですね。なんやかんや言いながら西成を守ってくれるんじゃないかと、僕らは信じています。
■「生活レベルを落としたくない」と働く女の子
開沼 スカウト以外で飛田で働いている方、「親方」(経営者・オーナー)も「おばちゃん」(店の受付・管理を担当)も「女の子」(店で働く女性)も、それぞれいろんな想いを持って集まって来ていると思いますが、他方で、こういった街がこれから衰退していく、あるいは取り潰されていく流れが強まる可能性もあります。
杉坂 存続のためにいま打てる策は、飛田をクリーンなイメージに持っていこうということですね。それも組合が行っています。
開沼 なるほど。
杉坂 2年ほど前、イメージ広告的なホームページを作ろうという動きもあったみたいですが、それがいいのかどうかという話になっていまは保留になったようです。だけど、組合のトップのほうはまだ諦めてないと違いますか。ホームページを作ることで、プラスになるのかマイナスになるかをずっと考えてると思います。
 この10年間に限っても、街路灯をきれいにしたり、狭い道ですけど歩道を作ったり、道路にオレンジのレンガを使って美しい街並みにする。店単位ではなく、組合に集まったお金で街並みを美化することで飛田を存続させようと努力しています。
開沼 もちろん、儲けたいと思ってやって来る人がいる反面で、他の仕事では儲けられない、いろいろな事情から借金を抱えているような人が集まっているというイメージもあります。だとすれば、飛田の街の機能として、そういった方たちをもう一度社会に包み込んでいく機能も持っていると思うんですが、いかがですか?
杉坂 借金抱えてやって来る人間はいますが、そういう人は逆に続かないんですよ。特に、娯楽によっておこした借金で来た女の子はまず続かないです。親の会社の負債や親が倒れて借金したという子は一所懸命なので、めちゃくちゃ真面目に働きますね。
 ただ、「借金抱えたから飛田に来る」というイメージがすごく大きいですけど、借金抱えて飛田に来るしかなくなった子は、僕の見た限りでは2割程度でしょうね。ほとんどの女の子は、生活費の足しにしたいという目的です。
 いままで25万稼いでいたOLさんが、残業がなくなって20万、15万の給料になってその差額を稼ぎたいと。夜の世界の女の子でも、いままで50万稼げていたキャバクラの女の子が、頑張っても30万くらいしか稼げないらしいんでね。その差を埋めたい、生活レベルを落としたくないという子が来ます。
開沼 なるほど。「真面目な人」じゃないと続かないというのは意外ですね。
杉坂 ただね、生活費を稼ぎにきた子は、ちょっと「稼げるな」と思うと、また金を借りる枠ができたなと思って借金を増やすんですよ。借金を作ってこっちに来て働いて、金を返し終わったら辞める。それで、また借金作ったら働く。辞めても借金の額はどんどん増えていくから、また来るんですよね。
 でも、女の子はだんだん年いってくるから上がら(指名され)なくなってきますよね。女の子にはそういうジレンマがあって、飛田で働いても返せないくらいの借金になると、飛びます。
開沼 彼女たちがはじめにソープやヘルスに行かずに、飛田という大阪の特殊な業態にやって来るのは、飛田という場所がその地域では悪くない場所として分析されているからなんでしょうね。その認識はいまでも変わりませんか?
杉坂 仕事としてはそうでしょうね。あらゆる風俗の子に聞くと、「飛田の仕事が一番ラク」だって言いますよ。ほかの風俗はワンクール60分が基本ですよね?飛田は15分が基本なので。正直、ほとんどの女の子が知らない客と長時間はいたくないんですよ。仕事内容が月とスッポンくらいラクだと言います。
容姿だけでは稼げない夜の世界
杉坂 うちらのデメリットは、写真で選んでもらうんじゃなくて、すべてが実物の女の子を見てからの指名なので、稼げる子と稼げない子の差が激しいことです。稼げない女の子が「飛田は稼げないよ」と結構言っているみたいでね、「飛田は稼げないって聞くんですけど」って聞いてくる女の子は多いですよ。
開沼 飛田のような「伝統産業」の対極には、「風俗全体のデリヘル化」があります。店舗型風俗の新規開業はもはや困難なため、風俗店を開業しようとする場合は業態としてデリヘルが選ばれる。店舗もなければ、店員とも電話で話しをするため、生身の人間と面と向かうこともありません。そこにあるのはWEBと電話番号だけです。
 また、WEBではPhotoshop(写真加工ソフト)でいろんな修正を加えて女のコを小ぎれいに見せてはいますが、バックヤードで行われているのは、客から注文が入ったら、女のコを乗せながら一日中都内をグルグル回るワゴン車が指定場所に向かうような仕事。一度ワゴン車に乗ると10時間以上働いて、疲れても休憩はワゴン車の中です。
 ネット上にはあらゆる情報が出ていて、価格競争も起こるためデフレ化も進んでいますし、労働条件は悪い。それを考えれば、たしかにおっしゃる通り、「伝統産業」たる飛田の労働環境は稼げる人にとっては相対的によいのかもしれません。もちろん、完全にラクな仕事ではないと思いますが。
杉坂 ほかの風俗では、フリーのお客さんが来た時に、女の子を選ぶ時にスタッフさんの力である女の子に誘導させることはできます。だから、ある程度の女の子は稼げるというのはありますけど、僕らはそれができません。入ってくるのはお客さんの自由なので。そういう面では本当に難しいところですよね。
 10人面接に来たら、残れるのは1人か2人ですよ。僕らから見ても「この子は絶対に上がるな」という子でも、店の前に座ったら笑えないんですよ。ムスッとしてしまう。緊張してるから怒ってるように見えてしまって、1日目も2日目も上がらない。それで「やっぱ稼げないんだ」って辞めてしまう。そこがいま、飛田の悪循環ですね。
開沼 考えてみると、大昔から存在した「街娼」は、客と面と向かってはじめて取引成立という話ですよね。ほかではもう、ほとんどそういうものはなくなってきているのに、飛田にはその形式が細々と現代にも残っている。
杉坂 そうですね。そういう意味では昔ながらの形で残っています。
■警察のガサ入れは年々減少
開沼 ここ20年ほど、風俗に関する法規制は大きく変化してきました。にもかかわらず、顔と顔を突き合わせるという形式以外でも、街の雰囲気や商売の方法も変わっていないというのは珍しい事例ですよね。ガラパゴス的です。
 さらに興味深いことに、その一方で、新しい試みとしてイベントを開催したり地域をきれいにしたり、「地域活性化」とも呼べる活動に長く取り組んでいたことは意外でした。最近の特徴的な取り組みはほかにありますか?
杉坂 SHINGO西成というラッパーがいますよね?一昨年、彼をトラックに乗っけて飛田をパレードをしようと計画しました。警察にも事前許可を取って、機材を全部詰めて、街の中をトラックで走ったんですよ。でも、3分で警察からストップがかかってしまいました。
開沼 そうなんですか。西成に根付いたラップを作るSHINGO西成は、ラップファンの間では全国的にも有名ですよね。おもしろい。
杉坂 結局、飛田の入り口の広場に移動しました。本来は、1周飛田を回ってからそこでライブをやろうという話だったんですけど。去年の正月には、街を回ることは諦めて、その広場でライブを開いています。3分で止められたときはSHINGO西成が1人で、2回目は10バンドくらいが出演しました。
 僕が飛田に関わる以前は、夏祭りのように夜店を出したこともあるみたいですね。ただ、そういうことをするたびに、警察から「目立つな」と言われていたみたいです。
開沼 それは、飛田が目立つことで、警察に「なんで取り締まらないんだ!」というクレームがくるからですか?
杉坂 そうだと思います。あと1つの意見として「街に女を呼ばないと」という話しもあります。そのために、女優さんを連れてきて、映画の『吉原炎上』でもあったような花魁道中(おいらんどうちゅう)をさせたらどうかという話もあったみたいですけどね。なかなか実現までは至っていないと。
開沼 それも面白そうですね。普段は飛田に関わりのない人たちにとっても、飛田に関わる機会になりそうです。その一番の障害となるものはなんですか?
杉坂 警察の許可が出るかでしょうね。結構厳しいですから。
開沼 警察の考えもなかなか簡単には変わりませんか?
杉坂 変わらないと思いますね。「目立ったことしたら、お前らしょっぴいてもいいんだぞ」という意識はあると思います。いろんな政治的な見解があるのかどうかは別として、10年ほど前までは毎年数件はガサが入っていました。でも、ここ数年間でガサが入ったのは3件くらいだったと思います。
開沼 ガサが減ったのは、目立たず大人しくしているからですか?
杉坂 この街で仕事をするならルールを守りなさいっていう暗黙の了解があったんじゃないですか。ただ、「違反したら処罰する、黙ってはおけないよ」ということで、道路に出っ張ってる看板の撤去、営業時間の厳守、女の子の年齢を守る、こうしたことを徹底してさえいれば何もしないということだったみたいです。
「漂白される社会」で生き残り続ける飛田新地。しかし、そんな飛田も、風俗業界を取り巻く価格競争の波や規制強化と無縁ではない。「あってはならぬもの」を「見て見ぬふり」はしきれない時代、飛田はいかなる内情を抱えているのか。次回更新は5月27日(月)を予定。
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*杉坂圭介(すぎさか・けいすけ)
大阪府出身。繊維製品卸問屋勤務を経て、飛田新地の料亭経営者へ。10年間店の経営に携わった後、名義を知人に譲り現在女の子のスカウトマンとして活躍している。著書に『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(徳間書店)がある。現在、次回作を執筆中。年内発売予定。
*開沼 博 (かいぬま・ひろし)
 社会学者、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポルタージュ・評論・書評などを執筆。読売新聞読書委員(2013年〜)。主な著書に、『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『フクシマの正義「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。
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【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
 大人気連載「闇の中の社会学」が大幅に加筆され、ついに単行本化!
『漂白される社会』(著 開沼博)
 売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスと貧困ビジネス…社会に蔑まれながら、多くの人々を魅了してもきた「あってはならぬもの」たち。彼らは今、かつての猥雑さを「漂白」され、その色を失いつつある。私たちの日常から見えなくなった、あるいは、見て見ぬふりをしている重い現実が突きつけられる。
*杉坂圭介氏の著書、『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(徳間書店)も好評発売中です。
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J CASTテレビウォッチ2013/5/23 18:30 元木昌彦の深読み週刊誌
 兵庫・福原の高級ソープ「弁護士だったころよく来られていました」
<「維新が支持を集めてきたのは、『橋下総理』というカードがあったから。橋下氏に期待感はあっても、維新の議員に支持があったわけではなかった。ところが、今回の一連の言動で、橋下氏が総理にはなれない人物であることがはっきりした。これまでは橋下氏の人気が、維新の『求心力』だった。だが、厳しい世論調査の結果を受けて、橋下離れをアピールしないといけないという『遠心力』が働きだした。六月の都議選で惨敗すれば、分裂の方向に進むのではないか」>
『週刊文春』5月30日号(2013年5月23日 発売)の巻頭特集「橋下徹の断末魔」の中で政治部デスクはこう語っている。橋下市長の慰安婦発言や沖縄視察の際、ジェームス・フリン司令官に対して「米軍よ、風俗へいけ」と発言したことが世界的な波紋を広げている。
『週刊ポスト』で小林よしのり氏が「戦時中に慰安所は必要だった」とする橋下の発言は間違っていないと慰安婦問題で持論を語っている。だが、慰安婦の有無ではなく、もしかしたら総理大臣になるかもしれない公人が、このようなセンシティブなことを、ぶら下がりの会見やアメリカ軍の司令官に言ってしまうというのは、政治家としての資質を疑われても仕方あるまい。
『週刊新潮』で櫻井よしこ氏もこう厳しく批判している。<「政治家としての発言のタイミングのはかり方、対象に向かってどのような状況で、どのような言葉で表現し、問題提起するのがよいのか、発言が大きな反響を呼ぶとして、それにどう対応するのかなど全く考えていなかったことは明らかだ。
下村博文文科大臣は橋下氏について『あえて発言をする意味があるのか。党を代表する人の発言ではない。その辺のおじさんではないのですから』とコメントしたが、まさにそれに尽きるだろう」>
週刊文春は橋下市長がかつて、大阪西成でいまも売春が行われているといわれる飛田新地の風俗店を束ねる「飛田新地料理組合」の顧問弁護士をやっていたことを暴露している。さらに、橋下が風俗好きで、よく通ったという兵庫県福原にある高級ソープランド店Xの従業員からこんな話を聞き出している。
<「橋下さんが弁護士だったころ、よく来られていました。橋下さんが顧問をしているとかで、飛田新地の方が接待をしていたそうです。おそらく大阪で風俗に行くと目立ってしまうので、福原まで足を延ばされたんと違いますかね。サービスした女の子に聞くと『橋下さんとはベッドとマットで二回戦。プレーは普通やけど、凄く風俗が好きなんだろうなというのがわかった』と言うてましたわ(笑)」>
橋下市長の風俗好きは年季が入っていることがわかった。しかし、自分が好きだからといって、あんたたちも「風俗へ行け」といってしまったことで、米軍やアメリカ人たちは怒り心頭である。ケビン・メア元国務省日本部長が語る。
<「米軍人みんなが怒っています。私も腹が立っている。『そんな人が政治家になるのか』と。米軍の軍法では、女性の人権侵害になるため、軍人が売春婦を買うこと自体を禁じているのです。風俗施設でお金を払って、性的関係を持ってもいいという考え方はそもそも米軍にはない。私も沖縄に三年いましたが、米軍人の性犯罪は日本の法律のもとで厳しく対処すべきでしょう」>(週刊文春)
橋下の心ない発言が、女性や韓国だけでなく、アメリカまでを怒らせてしまったのだ。これ以上舌禍をしないためにも、政治という世界から身を引いたほうがいいのではないか。
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米軍が慰安婦を買い漁った過去 真実が露呈してしまったことが、橋下発言に米国が怒った真の理由ではないか 2013-05-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 専用「売春」施設も…米軍が慰安婦を買い漁った過去
女性自身 5月27日(月)0時0分配信
 橋下徹大阪市長の「慰安婦容認」発言が世界中で大騒動を巻き起こしている。韓国が「女性の権利に対する尊重と歴史的認識を著しく欠いている」と批判すれば、中国も「驚きと怒り」をいち早く表明。わが安倍首相までが「安倍内閣、自民党との立場とはまったく違う」と突き放した。そして異様なまでに激しく反応したのがアメリカだった。
 全方位から集中砲火を浴びている橋下氏。だが、「たしかに舌足らずの部分があるが、言わんとするところは大筋で正しい」と現代史家の秦郁彦氏(80)は擁護する。慰安婦問題の代表的な論客である秦氏が、特に大きく肯いたのは「日本軍だけじゃなくて、世界中のいろんな国の軍で慰安婦制度を活用していた」という橋下氏の主張だ。
「米軍も例外ではありません。日本では米兵によるレイプ事件が多発するのを心配して、米兵から『良家の子女を守るため』に、内務省の発案で有力業者に話をつけて『特殊慰安施設協会』(RAA)が組織された。終戦からわずか3日後の’45年8月18日のことでした。アメリカが設置を求めたという場所もあります」
 大蔵省の緊急融資を受けて東京大森に最初の施設が開設されたのが8月27日。朝日新聞などに出た「急告 特別女子従業員募集 衣食住支給、前借にも応ず」という募集広告に応じて、戦争未亡人など千数百人もの女性が集まった。当初、女性1人につき、1日15人から多いときで60人の米兵を相手にさせられたが、ピーク時には全国で7万人もの女性が集まり、ようやく人手不足は解消されたという。
 米軍は自ら慰安所を持たなかったが、その役割を日本に肩代わりさせていたのである。「戦場と性」は切っても切り離せない関係にあると秦氏は言う。
「第2次大戦中の日独は軍が管理する慰安所型、米英は民間経営の売春宿利用型、そしてソ連はレイプ黙認型でした。このなかで、日本の『従軍慰安婦』だけがいまも問題視されていますが、じつは日本軍の従軍慰安婦問題をもっとも激しく非難しつづける韓国にも、朝鮮戦争当時、慰安婦が存在したのです」
 韓国軍特殊慰安婦の存在は’02年2月、立命館大学の国際シンポジウムで韓国の女性問題研究者・金貴玉氏によって初めて明らかにされた。「特殊慰安隊」と呼ばれた韓国軍慰安所はは朝鮮戦争が膠着状態に入った’51年ごろに設置され、休戦に入った’54年3月に廃止。だが、その後も兵士相手の売春婦は存在しつづけた。そして、占領下の日本でそうだったように、韓国でも慰安婦の上客だったのが米兵だった。’09年1月7日付の『ニューヨークタイムズ』には、米兵相手の慰安婦だったという女性の次のような談話が掲載されている。
「韓国政府は米軍相手の大手売春あっせん業者でした。政府はGI相手にできるだけたくさん商売するよう熱心に奨励し、私たちを“ドルを稼ぐ愛国者”として賞賛したのです」
 当然ながら、米軍もまたほかの国の軍隊と同じように、戦場で他国の女性をレイプし、慰安婦や売春婦を買い漁ってきたのである。橋下発言をきっかけに、はからずも『戦場と性』に対する後ろ暗い真実が露呈してしまったことが、アメリカが怒った本当の理由ではないか。
(週刊FLASH 6月4日号)
最終更新:5月27日(月)0時0分
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「橋下発言の核心は誤っていない」慰安婦は連行せず広告で募集/朝鮮戦争でも韓国軍慰安所 秦郁彦 2013-05-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
 【正論】現代史家・秦郁彦 橋下発言の核心は誤っていない
 産経新聞2013.5.23 03:21
 ≪慰安婦は連行せず広告で募集≫
 橋下徹大阪市長が5月13日、大阪市役所で記者団に語った慰安婦をめぐる発言は、内外に波紋を巻き起こし、その要旨はテレビや新聞などで大々的に報じられた。改めて発言の核心と思われる3カ所を、入手した速記録から抜いてみよう。草稿なしのアドリブ発言なので、こなれの悪い口語体になっているが、あえて「整形」せずに引用し、歴史家の観点から解説を加えてみたい。  
 (1)「軍自体が、日本政府自体が暴行・脅迫をして…女性を拉致をしたというそういう事実は今のところ証拠で裏付けられていない」
 (2)「当時慰安婦制度は世界各国の軍は持ってたんですよ」
 (3)「なぜ日本のいわゆる従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか」  
 1990年前後の発端から関わり、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、99年)という研究書を刊行した筆者として、(1)〜(3)の捉え方は引用部分に限れば、大筋は正しいと思う。
 ただし、歴史家は過去の史実を正確に復元するだけですむが、政治家はそれを踏まえたうえでの具体的提言や主張を求められるし、予期される内外の反響に対する戦略的、戦術的配慮も必要とすることは言うまでもない。 (1)は、女性たちを強制連行したか否かという争点で、橋下氏は安倍晋三内閣と同様に、今のところ強制連行の証拠は見当たらないと控えめだが、筆者は次のような理由から強制連行はなかったと断定したい。
 第1に、この20年以上にわたり数多く紹介され裁判所でも陳述された彼女たちの「身の上話」で、家族、隣人、友人など第三者の目撃証言が登場した例は皆無である。たとえ、こそ泥レベルの微罪でも「被害者」の申し立てだけで有罪と判定する例はないはずだ。
 次に戦中のソウルの新聞に「慰安婦至急大募集。月収300円以上、本人来談」のような業者の募集広告が、いくつも発見されている事実を指摘したい。日本兵の月給が10円前後の当時、この高給なら応募者は少なくなかったろうから強制連行する必要はなかった。
 ≪朝鮮戦争でも韓国軍慰安所≫
 朝鮮人捕虜が「そんなことをやれば、朝鮮人の男たちが反乱を起こすだろう」と、米軍の尋問に答えた記録も残っているぐらいで、事は朝鮮人男性のプライドに関わってくる。しかも、警察官の7割以上を朝鮮人が占めていた朝鮮総督府が、植民地統治の崩壊を招きかねないリスクを許容したとは思えない。
 橋下氏の論点の(2)と(3)については、第二次大戦中ばかりではなく朝鮮戦争やベトナム戦争中も、参戦諸国が慰安所ないし類似の施設を運営したのは、紛れもない事実だが、ここでは、最近になって明るみに出た朝鮮戦争期(50〜53年)における韓国軍の慰安婦事情を紹介しよう。
 調査したのは、宋連玉編『軍隊と性暴力』(現代史料出版、2010年)の第7章を執筆した金貴玉氏(漢城大学教授)で、韓国陸軍本部で1956年に刊行された『後方戦史(人事篇)』の記述から、軍慰安所の存在を知ったという。それによると、陸軍本部が施設を設置した理由は、軍人の士気昂揚(こうよう)、性欲抑制から来る欲求不満の解消、性病対策からだったとされる。
 書類上は「第5種補給品」と呼ばれた4カ所、89人の慰安婦に対し、52年だけで延べ20万4560回(1日当たり6・5回、時には20〜30回)の性サービスが「強要」されたことを示す実績統計表も付されている。
 ≪歴史問われるべきは韓国も≫
 しかし、陸軍本部が関連史料の閲覧を禁じ、ようやく見つけた2人の元慰安婦も「証言を拒み、涙と沈黙で答えるのみ」なので、金貴玉氏の調査は難航を極めたらしい。メディアも沈黙し、進歩的男性たちからさえ「身内の恥をさらし、日本の極右の弁明材料にされる」と警告されながらも、彼女はひるまなかった。
 ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に挙行される慰安婦デモに同行した学生たちは、「日本を批判すると同時に、韓国人も歴史認識について反省しなければ」と発言するようになり、「韓国軍性奴隷の問題を隠し続け、今でも反省の色を見せていない」韓国の国家権力を批判する。
 「なぜ日本だけが…」と憤慨する橋下発言の(3)と通じ合う「総ざんげ」の志向と見ることもできるが、残念ながら、当分はマイノリティーの域にとどまるだろう。
 韓国の挺対協などの支援組織、反日の韓国系米国人ロビイストたち、それと連帯して、「身内の恥」(慰安婦問題)を小学校教科書に載せるべきだと主張する日本の自虐派、「極右」の弁明かと誤認されるのを恐れて沈黙する政治家たちという裏返しの構図は、今後もマジョリティーとして変わらず、橋下バッシングに励みそうな気がする。(はた いくひこ)
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“ケンカ上手”橋下市長の「慰安婦制度は必要」発言はわざとなのか? 窪田順生 2013-05-21政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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