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13参院選 憲法改正 新たな国家像の議論を深めよ

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13参院選 憲法改正 新たな国家像の議論を深めよ
読売新聞 2013年07月14日01時56分
 ◆与野党の合意形成を図りたい
 国家の枠組みを定めた最高法規はどうあるべきだろうか――。
 参院選で憲法改正が主要な争点になっている。自民党と日本維新の会、みんなの党は改正に積極的で、公明党も改正を検討する。
 参院選の結果次第では、国会が憲法改正を発議できる政治状況が戦後初めて生まれよう。
 ◆ハードル高い発議要件
 参院選の論点の一つが、憲法改正手続きを定めた96条である。
 憲法改正は、衆参各院で「3分の2以上」の賛成により国会が発議し、その上で国民投票にかけられる。改正のハードルは海外と比べても極めて高いと言える。
 自民党は発議要件を「過半数」に緩和し、国民が国民投票を通じて「憲法判断に参加する機会」を得やすくすると主張している。
 維新の会は96条の「先行改正」を唱え、みんなの党も要件緩和に賛成だ。民主、公明両党は先行改正には反対だが、96条の改正自体を否定はしていない。
 安倍首相は、公明党の立場に配慮し、基本的人権や平和主義、国民主権に関わる条項を発議要件緩和の対象から除外する案に言及するなど、柔軟に対応する意向も示している。
 憲法改正を実現するには、他党との調整が欠かせない。自民党案を修正してでも合意形成を目指すのは、現実的である。
 共産、社民両党は、国家権力を縛り、国民を守るのが憲法の本質だとする「立憲主義」を掲げて96条改正などに反対している。
 首相は、この立憲主義の解釈について「専制主義的な政府に対する考え方だ」と反論し、憲法は権力を縛るとともに国の姿を示すものだ、と指摘している。
 憲法には権力の制限規範という側面もあるが、基本的な価値観や国家の役割も明示されている。
 国会の発議要件を緩和しても、国民投票で改正を決めることに変わりはない。それなのに、なぜ立憲主義と相いれないことになるのか。理解に苦しむ。
 96条改正が実現すると、時の権力者が憲法を一般の法律並みに改正できるかのような論法もある。短絡的に過ぎないか。
 ◆自衛隊の規定が必要だ
 9条も重要な論点だ。自民党の改正草案は、9条の平和主義は堅持しつつ、戦力不保持の2項を削り、「国防軍」設置や領土の保全義務を新たに規定するとした。
 首相が、「自衛隊は外国では軍隊と認識され、日本では軍隊ではないと言っている。大きな実力組織が憲法にないのはおかしい」と主張するのは至極当然である。
 9条の改正は、日米同盟を深化し、国連平和維持活動(PKO)など国際的な活動に積極的に参加するうえでも欠かせない。
 公明党が、憲法の内容は変えずに新たな理念・条文を加える「加憲」を主張し、その中に自衛隊の存在の明記も検討すると公約したのは大きな前進だ。
 維新の会は、「自衛権に基づく自立した安全保障体制確立」に憲法改正が必要と唱えている。
 生活の党は自衛隊がPKOに参加する根拠を定めるという。
 共産党や社民党は9条改正について「日本を戦争する国に作り替える」と反対している。
 現実を直視せず、極端なレッテル貼りで有権者の不安をあおるのは無責任である。
 憲法を巡っては、自民党の改正草案が、基本的人権の不可侵性をうたった97条を削除していることを、生活の党の小沢代表や共産党の志位委員長、社民党の福島党首がやり玉に挙げた。
 自民党案がいかにも基本的人権を軽視しているかのような印象を与えたかったのだろう。
 安倍首相は、基本原則は変えていないと強調し、同趣旨の条文がある11条に「吸収させた」と説明した。それならば、大きな問題ではないのではないか。
 ◆緊急事態への対処も
 憲法改正で統治機構の仕組みを抜本的に変えることを主張する維新の会やみんなの党は、いずれも首相公選制に言及している。
 だが、首相公選制は人気投票になりかねない。イスラエルでは導入後政治が混乱し、撤廃した。
 自民、みんな、生活の各党は、大規模な自然災害やテロといった緊急事態に関する条項を盛り込むことを提案している。首都直下地震や、南海トラフ巨大地震などへの法的な備えは怠れない。
 国家の危機的状況も想定した憲法でありたい。こうした観点からの議論も深めるべきだ。
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関連; 【96条改正反対論のウソを見抜け】百地 章 2013-05-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 【正論】日本大学教授・百地章 96条改正反対論のウソを見抜け
 産経新聞2013.5.28 03:22
 憲法を主権者国民の手に取り戻そうというのが、憲法96条改正論である。ところが、護憲派の巻き返しにより、世論がやや反対の方向に傾き始めた。このまま行けば折角(せっかく)盛り上がってきた改憲論議そのものに水を差しかねない。
 ≪権力「縛る」だけが憲法か≫
 護憲派は「国民を縛るのが法律で、憲法は権力を縛るのもの」と喧伝している。しかし、法律の中にも、国会法などのように権力(国会)を縛るものがあるし、憲法の中にも、国民に対して教育や納税の義務を課し、国民を縛る規定が存在する。また、憲法順守の義務は、当然国民にもある(宮沢俊義『全訂日本国憲法』)。
 確かに、「立憲主義」の立場からすれば、憲法が国家権力の行使を制限するものであることは間違いない。その意味で、憲法は「制限規範」と呼ばれる。しかし、国(権力)が国民から税金を強制的に徴収できるのは、憲法によって政府(権力)に課税徴収権が授けられたからだ。この場合、憲法は「授権規範」である。
 さらに、憲法は「国のかたち」を示すものでもある。従って「憲法は権力を縛るもの」などといった独断は誤りであり、護憲派が自分たちに都合のいいように考え出したレトリックにすぎない。
 ≪発議要件緩和は国民のため≫
 次に、「憲法によって縛られている権力者が、勝手に憲法改正のルールを緩和してしまうのは、本末転倒であって許されない」(小林節慶応大学教授)という批判である。一面の真実を語っていることは間違いない。しかし、現実問題として考えた場合、憲法96条が、「憲法改正阻止条項」と化しているのは事実である(拙稿「憲法を主権者の手に取り戻せ」=4月11日付産経新聞本欄)。
 各種世論調査から窺(うかが)われるように、最近では国民の6割前後が憲法改正を支持しており、衆議院でも3分の2以上の国会議員が憲法改正に賛成している。にもかかわらず、参議院のわずか3分の1を超える議員が反対すれば、憲法改正の発議すらできない。
 つまり、主権者国民の多数が憲法改正を望んでも、たった81人の参議院議員が反対したら、一字一句たりとも憲法は変えられないわけである。これはどう考えても不合理である。
 このような異常事態から一日も早く脱却しようとするのが、96条改正の眼目である。こう考えれば、発議要件の緩和は権力者のためでなく、何よりも主権者国民自身のためであることが分かる。
 選挙権と異なり、国民が主権を直接行使できるのは、憲法改正の国民投票だけだ。だから、憲法96条によって、国民は主権行使の機会を奪われ続けていることになる。護憲派は国民主権の問題などどうでもよいというか。
 それに、そもそもこのような厳格すぎる改正条件を課したのは連合国軍総司令部(GHQ)であった(西修駒沢大学名誉教授)。それゆえ、発議要件の緩和は権力者のためではなく、日本人自身のためであり、憲法を日本人の手に取り戻す第一歩となる。
 すなわち「憲法は権力者を縛るものであり、権力者が勝手にルールを緩和してもよいのか」などといった単純な話ではないから、現実を無視した机上の空論に惑わされてはならない。
 ≪せめてフランス並みにせよ≫
 もう一つの有力な批判は、改正手続きを厳格にしておかないと政権が変わるたびに憲法が改正されかねない、というものである。
 確かに、その危険は皆無と言い切れないが、「国会が両院の総数の過半数で発議し、国民投票でも過半数の賛成が必要」というのは、決して簡単ではなく法律の改正より遥かに難しい。ちなみに、法律の制定や改正は、定足数(総数の3分の1)の過半数、つまり極端な場合、総数の6分の1を超える議員の賛成で可能となる。
 それに、容易なはずの法律でさえ、国民の中で意見が対立している場合には、簡単に制定できない。例えば、外国人参政権についていえば、国民の中に強い反対意見がある。そのため、衆議院で圧倒的多数を占め、再議決さえ可能だった民主党政権下でも、結局実現できなかったではないか。
 したがって、改正の発議を総数の過半数にしたからといって、憲法がコロコロ変わるなどということは、まず考えられない。
 厳格といわれるアメリカでは、両議院の3分の2以上の賛成で発議し、全州の4分の3の議会の承認が必要だが、発議は定足数(過半数)の3分の2で足りる。だから、総数の6分の2を超える賛成があれば、発議は可能である。また、ドイツでも両院の3分の2の賛成が必要だが、国民投票は不要だ。それゆえ、日本国憲法の改正は世界一難しいといってよい。
 この点、フランスでは両院で過半数が賛成し(ただし総数の過半数といった縛りはない)、国民投票でも過半数の賛成が得られれば、それだけで憲法改正が実現する。これは96条改正案と変わらないが、それでも護憲派は緩やか過ぎるというのだろうか。(ももち あきら)
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関連; 小沢一郎氏「96条改正なら、政権ごとに憲法変わる」「96条改正はへんちくりん」 2013-03-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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   ; 石原慎太郎氏〜「野中広務は売国奴。福島瑞穂は『憲法を変えると戦争を始める』と言うバカみたいな女」 2013-06-25 | 石原慎太郎 
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    ; 「憲法9条」櫻井よしこ氏 福島瑞穂氏/核を巡る世界情勢が大きく変わっている中で日本だけは取り残され 2012-08-31 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 【金曜討論】「憲法9条」 櫻井よしこ氏、福島瑞穂氏
産経ニュース2012.8.31 07:40
 北方領土、尖閣諸島、そして竹島…。近隣諸国がわが物顔で日本固有の領土を侵食するなか、改めてクローズアップされているのが憲法9条の存在だ。“平和憲法”の名の下に、戦力の不保持を明記した条文を抱えたまま祖国を守れるのだろうか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏と、社民党党首の福島瑞穂氏に考えを聞いた。(内藤慎二)
                   ◇
 ≪櫻井よしこ氏≫
■改正せずは国民への背信
−−9条について
 「最も速やかに改正しなければならない。最大の理由は自衛権が明記されていないことだ。私の試案では『日本国は自らの独立と安全を守り、国民を守るため国防軍を持つ』と明記した」
○中韓露は公正なのか
−−9条の理念で他国から国土を守れるか
 「憲法の前文と9条は一体だ。前文には『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』とあるが、中国、韓国、ロシアの公正と信義は一体どこにあるのか。3国の動きを見る限り、前文と9条は国民に対する責任放棄で背信以外の何物でもない」
−−戦後、「9条を守れば外国から攻撃されない」と訴える政治家も少なくなかった
 「その種の意見を政治家が口にすれば国際社会の笑いものになる。政治家の責務は日本国民の命、領土・領海、いわゆる国益を守ることだ。相手が攻めてこないとの前提に立って、対策を講じないのは知的怠惰の極みだ」
−−尖閣はどう統治すべきか
 「警察官や研究者らを常駐させて目に見える実効支配を実現し、周辺の海の警備は海上保安庁が担うべきだ。自衛隊は少し離れた海上にいて、緊急事態のときに速やかに対応できるようにする」
−−9条が戦後の日本人に与えた影響は
 「自衛隊や軍備の話題になるだけでおどろおどろしい印象を抱く人が少なからず生まれてしまった。日本人の『責任ある人間として生きる道』が否定されて、本来とは異なる人種になってしまったような気がする」
−−国防は「米国頼み」の印象が強い
 「何か起きれば『自分が解決するにはどうすべきか』を論ずるより前に『日米安保条約は適用されるのか』と問う。一方、『オスプレイは嫌だ』『基地は無くせ』と主張する。卑劣で身勝手すぎるのが心配だ」
○核武装論議も避けるな
−−あるべき国防論議とは
 「今は反原発運動が盛んだが、核武装に至るまで議論は避けるべきではない。テロリスト勢力にも核兵器が渡る可能性がある時代に生きていることを、われわれは認識しなければならない。『究極の生き残り』のために国家はあらゆる手法を考えるべきだ」
−−日本人は自衛意識が低いとの声もある。韓国のように徴兵制を取り入れるべきか
 「憲法に『公に尽くす義務』を盛り込むべきだ。数年間他者のために、公のために、日本のために尽くすことを義務付ける。それは自衛隊、消防隊、海保、福祉の現場、なんでもいい」
                   ◇
 ≪福島瑞穂氏≫
■尖閣で自衛権行使は疑問
−−9条の意義とは
 「9条がなければ戦争ができる国になっていた。韓国の若者がベトナムに従軍したように日本も戦地に若者を送ったはずだ。韓国軍はベトナムで憎まれている。戦後の日本が戦争で人を殺さなかったことは誇ってよい。日本が今後、米国の利害に引っ張られて戦争への加担を強いられたときに、『NO』と断れるのが9条の効用だ」
●9条守れば攻撃されず
−−他国からの攻撃にはどう対応するか
 「9条で『世界を侵略しない』と表明している国を攻撃する国があるとは思えない。攻撃する国があれば世界中から非難される」
−−中国政府に尖閣諸島を侵略される可能性はないか
 「尖閣は民間人の所有だ。侵略は所有権侵害にあたり、領土侵犯に当たる。今(7月27日現在)のように経済的に両国の関係が密接ななか、中国政府は戦争という手段が取れるだろうか」
−−尖閣に自衛隊を常駐させる案が浮上している
 「問題をこれ以上緊迫させるべきではない。尖閣は日本の領土であることは間違いない。日本には海上保安庁もある。自衛隊を置く必要はない」
●海外派遣は違憲状態
−−尖閣が攻められたとき、自衛隊を派遣することは自衛権の行使に当たるか
 「刑法で正当防衛を認めているように日本にも個別的自衛権はある。四国や九州が攻撃されれば反撃は許される。しかし尖閣は人が住んでいない。個別的自衛権や9条の問題というより領土をめぐる問題として冷静に対処すべきだ」
−−具体的には
 「国際的な交渉の舞台で解決を図るべきだ。侵略を未然に防ぐ外交努力も必要だ」
−−閣僚時代に自衛隊の憲法上の位置付けについて「合憲」との認識を国会答弁で示した
 「社民党は自衛隊の存在について合憲か違憲か答えていない。外国にまで派遣できる状況は『違憲状態』と考えている。組織改編や規模の見直しは必要だ。ソ連崩壊後の北海道に今ほどの数の戦車を置く必要はあるのか。任務も災害救助などに比重を移すべきだ」
−−村山富市政権時に党は「合憲」と打ち出していた
 「自衛隊、安全保障に関する党の見解は平成18年にまとめた社会民主党宣言で整理した。今もその見解が維持されている」
−−平和への思いを
 「父は特攻隊の生き残りだった。子供の頃、終戦記念日に涙する父の姿を見た。戦争で傷つくのは父のような庶民だ。戦争に負けて手にした平和憲法や、戦争はしないという誓いは大切にしなければならない」
                   ◇
【プロフィル】櫻井よしこ
 さくらい・よしこ 昭和20年、ベトナム生まれ。66歳。ハワイ大歴史学部卒。ジャーナリスト。国家基本問題研究所理事長。憲法改正を目指す「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(民間憲法臨調)代表。著書に「気高く、強く、美しくあれ−日本の復活は憲法改正からはじまる」など。
                   ◇
【プロフィル】福島瑞穂
 ふくしま・みずほ 昭和30年、宮崎県生まれ。56歳。東京大法学部卒。弁護士、参院議員(当選3回)。社民党幹事長を経て平成15年から党首。消費者・少子化担当相(鳩山由紀夫内閣)などを歴任し、現在は参院憲法審査会委員。対談集「憲法を手に格差と戦争をくいとめよう」など。
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〈来栖の独白 2012/8/31 Fri. 〉
>「9条で『世界を侵略しない』と表明している国を攻撃する国があるとは思えない。攻撃する国があれば世界中から非難される」
 なんという自分勝手な錯覚、無責任であることだろう。正気とは思えない。こんな人に政治は預けられない。石原慎太郎氏は次のように言う。
“尖閣諸島への中国の侵犯に見られる露骨な覇権主義が、チベットやモンゴルと同様、まぎれもなく、この国に及ぼうとしているのに最低限必要な措置としての自衛隊の現地駐留も行わずに”
 同様に藤原正彦氏は言う。
“「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と美しく飾ってみても、残念なことに「国益のみを愛する諸国民の権謀術数と卑劣に警戒して」が、現実なのです。”
 憲法前文・9条が日本を守ってくれるなどと根拠のない楽観を決め込みたい人びとは、中国によるチベット侵略を思うとよい。チベットが果たして好戦的な国であったか。武器を蓄え、先制に出る国であったか。
 日高義樹氏はその著『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』のなかで、日本人特有の主観・思い込みについて、次のように言っている。
“核分裂は、フランスやイギリス、ドイツ、アメリカ、ソビエトでは普通に得られる情報になっていたため、そこから原子爆弾の製造という構想が出てくるのは当然だった。日本では、核分裂や放射能についての関心はあったものの、爆弾をつくる計画には至らなかった。したがってルーズベルト大統領が日本に対して原子爆弾を使ったとしても、報復爆撃を受ける懸念はなかった。
 1930年代の日本は、満州で戦いを続ける一方で、1941年12月8日、真珠湾を攻撃して乾坤一擲の勝負をアメリカに挑んだが、このころアメリカでルーズベルト大統領をはじめ専門家たちが原爆をつくるために全力を挙げていることには、考えも及ばなかった。日本が現在に至るも世界の動向には疎く、日本の外で起きていることに注意しないまま、自分勝手な行動を取ることが多いが、こうした国民性は第2次大戦以前から変わっていない。 ”
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石原慎太郎著『新・堕落論』新潮選書2011/7/20発行
p81〜
 尖閣諸島への中国の侵犯に見られる露骨な覇権主義が、チベットやモンゴルと同様、まぎれもなく、この国に及ぼうとしているのに最低限必要な措置としての自衛隊の現地駐留も行わずに、ただアメリカ高官の「尖閣は守ってやる」という言葉だけを信じて無為のままにいるこんな国に、実は日米安保条約は適応されえないということは、安保条約の第5条を読めばわかることなのに。後述するが、アメリカが日米安保にのっとって日本を守る義務は、日本の行政権が及ぶ所に軍事紛争が起こった時に限られているのです。
 つまりあそこでいくら保安庁の船に中国の漁船と称してはいるが、あの衝突の(略)アメリカはそれを軍事衝突とはみないでしょう。ましてその後ろにいるのが中国としたら、アメリカの今後の利害得失を踏まえて本気のコミットメントは控えるに決まっている。
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『日本人の誇り』藤原正彦著(文春新書)
p58〜
 「明治・大正・昭和戦前は、帝国主義、軍国主義、植民地主義をひた走り、アジア各国を侵略した恥ずべき国。江戸時代は士農工商の身分制度、男尊女卑、自由も平等も民主主義もなく、庶民が虐げられていた恥ずかしい国。その前はもっと恥ずかしい国、その前はもっともっと・・・」
 占領後、アメリカは米軍による日本国憲法制定を手始めに、言論統制、「罪意識扶植計画」等により、日本をアメリカに都合の好い属国に造り替えてゆく。
p63〜
 GHQすなわちアメリカはまず新憲法を作り上げました。GHQ民生局が集まり1週間の突貫工事で作ったのです。憲法の専門家はいませんでした。まず前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書きました。アメリカは他国の憲法を自分達が勝手に作るというハーグ条約違反、そしてそれ以上に恐るべき不遜、をひた隠しにしましたが、この文章を見ただけで英語からの翻訳であることは明らかです。「決意した」などという言葉が我が国の条文の末尾に来ることはまずありえないし、「われら」などという言葉が混入することもないからです。いかにも日本国民の自発的意志により作られたかのように見せるため、姑息な姑息な偽装を施したのですが、文体を見れば誰の文章かは明らかです。そのうえ、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と美しく飾ってみても、残念なことに「国益のみを愛する諸国民の権謀術数と卑劣に警戒して」が、現実なのです。
 ともあれこの前文により、日本国の生存は他国に委ねられたのです。
 第9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は前文の具体的内容です。自国を自分で守らないのですから、どこかの国に安全保障を依頼する以外に国家が生き延びる術はありません。そして安全保障を依頼できる国としてアメリカ以外にないことは自明でした。すなわち、日本はこの前文と第9条の作られたこの時点でアメリカの属国となることがほぼ決定されたのです。この憲法が存在する限り真の独立国家ではありません。中国に「アメリカの妾国」と馬鹿にされても仕方ないのです。
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行
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