【ネットろんだん】暑すぎる高校野球 球児たちの「物語」に冷静な視線
産経新聞2013.7.19 11:12
「この猛暑に、なぜ試合を」−。甲子園を目指して各地で行われている全国高校野球選手権大会。炎天下で白球を追う球児の姿は夏の風物詩だが、記録的な猛暑で倒れるケースも相次ぎ、ネットでは大会運営への批判が目立っている。ネットの“外野”が白熱する背景には、高校球児の「さわやか・ひたむき物語」への冷めた視線が隠れているようだ。
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「死人が出るまで同じことが続きそう」。関東などで猛暑日が続いた今月上旬、高校野球大会で選手や応援の生徒らが熱中症で病院搬送されるニュースが続き、ネットでは大会への批判が巻き起こった。
なかでも11日の埼玉県大会で、監督や高野連幹部が「何をやっているのか」「体が慣れていないんじゃないかな」などと倒れた選手の体調管理を疑問視するかのような発言をしたとの報道を受け、批判はエスカレート。「虐待」「体罰」など過激な言葉も飛び出し、「開催時期をずらすべきだ」「ドームでやった方がいい」(ツイッター)といった改革を提案する声も相次いだ。
*封印されてきた本音
熱中症の危険がつきまとうのは野球だけではない。日本体育協会の指針では気温35度以上の場合に運動の原則中止を呼びかけており、「もう夏のスポーツをやめよう」(ツイッター)という割り切った意見も。それでも批判は野球に集中しがちだ。
スポーツジャーナリストの玉木正之さん(61)は本紙の取材に、「人気の裏返しでもあるのだろうが、長年マスコミが封印してきた高校野球への本音が、ネットでは言えるからだろう」と指摘する。
「プロは髪形自由でいいのに高校球児は丸刈りじゃないと駄目な風潮はなぜなのか」「一塁へのヘッドスライディングは危険で無意味」(匿名掲示板など)
実際に、こうした高校野球特有の“文化”への批判は、以前からネットで繰り返されている。
今春の選抜高校野球大会でも、準優勝した済美高校(愛媛)のエースが5試合で772球も投げたことをめぐり、球数制限導入などの改革論が沸騰。米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手は4月2日、自身のツイッターで球数制限や球場変更などを提案したが、「ただ壁は歴史」と改革の難しさを漏らした。
*成熟した目
ネットでは、ほかの高校スポーツより多くの時間や紙面を割いて高校野球を取り上げるマスコミにも批判の矛先が向く。
「高校野球ばかりが地域の代表的な扱いをされるけど、結局は(主催の)朝日新聞や、(長時間放送する)NHKがつくり上げたもの」「メディアも高野連も、高校野球は球児が酷使されるのをドラマとして崇(あが)め成り立ってる」(ツイッター)
前出の玉木さんは「マスコミが大会を主催することで競技を発展させた面はある」としつつ、「商売と切り離せなくなった結果、開催時期などの問題点を指摘できず、健全なジャーナリズムが機能しなくなっている。選手がアマチュアであることに甘えている」と苦言を呈する。
野球人気に往年の勢いはないが、世論調査機関「中央調査社」によると、昨年は好きなプロスポーツの1位に選ばれるなど根強い支持を保っている。高校野球をめぐる直言が目立つのは、“見る側”にメディアに頼らない成熟した目が育っていることの証左なのかもしれない。(三)
【用語解説】夏の高校野球
正式名称は全国高校野球選手権大会。地方大会が7月末までに行われ、全国大会が8月、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開かれている。全国大会の主催は日本高野連と朝日新聞社。少子化や学校統廃合の影響で出場校は10年ほど前から減少傾向にある。第95回記念大会の今年は全国で3957校が参加し、8月8〜22日に全国大会が開かれる。
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甲子園を目指して炎天下で白球を追う球児の姿は夏の風物詩だが
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