トヨタは国内生産を維持すべきか?
WSJ Japan Real Time 2011/7/22 19:24
史上最高水準の円高が続くなかで国内生産への強いこだわりを示すトヨタ。19日には、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方で新型小型ハイブリッド車(HV)を生産すると発表した。車種は公表しなかったが、複数の同社幹部が小型車「ヴィッツ(海外ではヤリス)」だと示唆しているそうだ。
裾野の広い自動車産業の雄が、被災地での生産に力を入れていくことを表明したことは、政治的混乱が続き、具体的な復興計画がみえない東北地方にとって久々の華々しいニュースであった。強烈な円高に加え、最近では電力不足によって苦境に陥っている日本で、豊田章男社長ほど国内生産への強いこだわりを示している経営者は少ない。
もちろん、トヨタとて、世界生産に占める国内比率はすでに5割を切っている。2011年3月期は43%だった。だが、ライバルの日産自動車、ホンダは、それぞれ25%、26%で、もう4分の1まで低下している。新興国を中心に自動車需要が大きく伸び、国内販売が減少トレンドをたどる中での国内生産の維持については、トヨタ社内でも、相当なせめぎ合いがあるに違いない。
そうした一端が、5月の決算会見にも表れていた。同社の財布を預かる小澤哲副社長兼最高財務責任者(CFO)はこのとき、「昨今の一段の円高、あるいは1ドル=80円という為替水準。正直言って、収益をあずかるCFOとして、日本でのものづくりを続けていく限界と感じている」と述べた。
その場に居合わせた記者によると、その場でも国内生産にこだわりを示した豊田社長に対して、企業の幹部としては信じられないぐらい率直な物言いだったという。
様々な要因が重なってトヨタは国内で3期連続営業赤字が続いた。今期は震災によるサプライチェーンの寸断によって大きな影響を受けている。だが、生産が復旧しても国内生産比率を維持する限り、収益的にはライバルに比べ厳しい状態が続く。言うまでもないが同社のライバルは世界中にいる。
同社の国内生産維持の姿勢は、国内経済にとってはありがたいことのように思えるが、長期的に見れば同社の体力を弱め、ひいては日本経済への寄与も危うくなってしまうかもしれない。
豊田社長は今月14日も、国内生産体制の効率化を進めるための再編を発表した際、「トヨタグループは日本で生まれ、育てられたグローバル企業だ。外部環境が厳しいからといって、簡単に日本でのものづくりをあきらめるわけにはいかない」と国内生産にかける強い思いを語った。 *強調(太字)は来栖
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◆トヨタ3社経営統合へ/関東自(横須賀市)・セントラル自(宮城 大衡村)・トヨタ自 東北(宮城 大和町)2011-07-14 | 社会(経済)
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