内閣法制局は“姥捨て山”? エリートに悲しい事情「秀才だが管理職には…」
zakzak 2013.08.22
内閣法制局は「法の番人」と呼ばれ、法案をチェックする重責を担う。法制局が「NO」と言えば法律を国会提出できないため、各省庁は頭が上がらず、法制局のご機嫌を取るための“接待マニュアル”まで存在する。過去に、担当者を怒鳴りつけ、飲食をたかることもあった法制局エリートだが、実は、彼らにも悲しい事情があった。
「彼はべらぼうに頭がいいし、何本もの法案審査を抱えても迅速に処理する体力もある。おまけに人柄もいい」
外務省幹部がこう評価する「彼」とは、法制局ナンバー2の横畠裕介法制次長のことだ。「第1部長→次長→長官」という順送り人事通りにいけば新長官になるはずだったが、安倍晋三首相が小松一郎前駐仏大使を長官に起用したことで、昇進は見送られた。
憲法や膨大な法律との矛盾点がないかをチェックし、「国家公務員試験と司法試験を両方パスするような秀才が各省庁から出向する」(厚労省中堅幹部)のが法制局だ。
だが、他省庁から一目置かれる横畠氏は例外的な存在と言える。
内閣官房の官僚は「法制局は『姥捨て山』と呼ばれている」といい、別の省庁の人事課勤務経験者も「秀才だが、管理職としては適性に問題がある人たち」という。どういうことか。
元農水官僚で作家の林雄介氏は「課長レベルになると、関係省庁との折衝や政治家への根回しが必要になる。それができない人が法制局に送り込まれる。基本的に事務次官にはなれない人たちだ」と指摘する。
各省庁担当者と直接やりとりする課長級の法制局参事官は、法案の条文を長時間“指導”することから「1条書くのに3時間(参事官)」といわれ、ワープロが普及する前はひたすら原稿用紙のマス目に条文を書き込むため「マス書き職人」とも揶揄された。
旧大蔵官僚として法制局に出向経験がある民主党の平岡秀夫前衆院議員も「政策の立案、決定過程にあまり関わることができないという点で若干物足りなさを感じる」と論文で告白している。
そんな彼らはどうやってプライドを守るのか。
官僚出身の自民党議員は「彼らは『アホな政治家や外務省、防衛省から戦後民主主義を守る』と考えている。だから、法律を超えた政策論にまで口を出す」と指摘する。
法制局は代々、憲法9条が認める自衛権行使は「必要最小限度の範囲にとどまるべき」として、集団的自衛権の行使を認めてこなかった。
これに対し、田久保忠衛杏林大名誉教授は「法制局が『必要最小限度』というのは、国際情勢の変化、科学技術の発展を踏まえた政策論に踏み込んでいる」と批判する。
法制局官僚がプライドを守るため、不自然な憲法解釈を固守してきたとすれば、法制局は国益を害する「有害官庁」と言われても仕方ない。
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