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退職勧奨を受けた経産省官僚 古賀茂明氏、海江田万里経産相と直接対決

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改革派官僚「退職勧奨」直接対決で問題先送りした海江田経産相。本当に辞めるべきは古賀茂明氏ではなく、松永事務次官だ
現代ビジネス2011年07月29日(金)長谷川幸洋
  改革派官僚として知られた経済産業省の古賀茂明大臣官房付審議官が28日、自分に対する退職勧奨問題をめぐって海江田万里経産相と「直接対決」した。
 結果はどうだったか。結論を先に言えば、なにも決まらなかった。
 古賀によれば、海江田は「最初からにこにこしていて、とても友好的な雰囲気だった」そうだ。そして「これからも何度か会おう」と言った。だが、古賀が求める「仕事」は与えなかった。
 古賀は会談をマスコミにフルオープンにするよう求めてきた。古賀の後には、テレビのカメラクルーをはじめ約30人の報道陣がついていた。
 ところが、経産省大臣室のドア前にはあらかじめ警備スタッフが2人陣取っていて、報道陣はそこでシャットアウトされた。1人で大臣室に入った古賀は冒頭、大臣に会談を公開するよう求めたが拒否され、結局、公開は実現しなかった。
 20分弱の会談はサシだった。終わった後、1階ロビーで開いた即席会見で古賀はずっと緊張が続いていたのか、少し疲れた青白い表情で語った。やせたような感じが気になる。
*「私に仕事をください」
「どうも大臣は最初から1回で結論を出すつもりがなかったようで『これからも何回か会おうよ』というお話をいただきました。そういう意味で、内容的には中途半端に終わってしまった」
 改革派官僚として知られた経済産業省の古賀茂明大臣官房付審議官が28日、自分に対する退職勧奨問題をめぐって海江田万里経産相と「直接対決」した。
「退職勧奨はお断りすると次官に伝えていると言ったら『それは分かった』と。じゃあ、大臣はどういうおつもりですかと聞くと『君は本も書いているし、外でいろいろ発信している。これから外で自由な立場でやっていくほうが、君にとってもいいんじゃないか』という話だった」
「大臣は私をクビにしたいんでしょ、とはっきり聞いたら、『君の言葉は強い』と。『辞める辞めないは君の自由だ』と言っていた」
「私はぜひ仕事を与えていただきたいとお願いしている、と繰り返し言った。電力改革とか経産省の予算を削る仕事とか。内閣官房に行って公務員制度改革をしてもいい。もちろん、それじゃなくちゃいやだという話ではなく、大臣がこれをやれと言えばなんでもやります、と」
「辞めないと言ったら仕事を与えてくれるのか。それとも辞めないなら仕事はないのか。選択肢は2つしかないでしょ、と言うと『そういうことじゃなくて何回か会って話そう』と言っていた」
「大臣からは『君と信頼関係を作りたいんだよ』というような印象を受けた。仲良くやろうみたいな(笑)。また退職勧奨を受けた、という感じはない」
 以上である。さて、この展開をどうみるか。
 古賀自身も海江田の真意がよく分からなかったようだ。続いて衆院議員会館で開かれた古賀を囲む超党派の勉強会兼記者会見では、こう語った。
「大臣は私をクビにするとは言っていない。何回か話せば分かりあえるのでは、分かりあえれば、私から辞めると言いだしてくれるかも、という感じ?(笑)。でも、そういう話は普通、退職勧奨をする前にするんじゃないの(笑)」
 私は海江田が「逃げた」とみる。
 なぜなら、古賀と会うまで考える時間はたっぷりあった。古賀を使う気があれば、ポストはいくらでもある。だが、具体的な仕事を与える言質は一切与えず、にこにこして「また会おう」とだけ言う。
 国家公務員である古賀を強制的にクビにできないのは、はっきりしている。一方、自分はといえば、国会でいずれ大臣を辞任する意向を語っている。同時に、ポスト菅の首相候補として手を挙げる意欲もある。
 そんな政治家として大事な局面で、対外的発信力がある古賀を敵に回してしまえば、自分自身に傷がついてしまう。といって事務方を敵に回して、いまさら処遇もできない。そこで結局、問題は先送り。自分が先に辞任する展開になれば、無傷で逃げ切れる。そういう判断ではないか。
 会談自身は海江田のほうから国会答弁で言い出した話だから、いまさら「会うのはやめた」というわけにもいかない。笑顔で「また会おう」という終わり方が、もっとも無難な選択だったのだ。
 だいたい辞任を口にしている大臣が古賀とまた会ったところで、どんな処遇ができるというのだろうか。事務方が猛烈に抵抗するのは目に見えている。
*「意見が対立するから使わない」は許されない
 さて、となると古賀はこれからどうなるのか。
 古賀は辞めるつもりがないし、大臣の海江田は事実上、逃げてしまった。しかも近い将来、辞任する。すると結局、ボールは松永和夫経産省事務次官に戻っていく。なぜなら、退職勧奨を拒否した部下をどう処遇するかは、いまや大臣に次ぐナンバー2の事務次官の職責になるからだ。
 辞める意思がない職員を使いこなせず無駄にするのは、事務次官の能力がない証拠である。松永が「意見が対立しているから使わない」というなら、ここではっきり指摘しておかねばならない。
 それは役人の分際を超えている。
 どんな政策を推進するかは本来、役人の仕事ではない。国会で議決権がある国会議員、すなわち政治家の仕事である。議院内閣制の下で、官僚は「政策の選択肢」を示す役割を与えられているにすぎない。それが政治主導の根本だ。
 役人同士で議論はおおいにすべきである。意見が異なる場合があるのは当たり前だ。そうでなければ、そもそも政策の選択肢が出てこない。
 だから古賀が辞めないと言うなら、意見の違いは違いとして、別の選択肢を大切にして仕事を与えるのが松永のもっとも重要な職責である。そうではないのか。
 それができないなら、辞めるべきは古賀ではなく松永である。
 古賀問題は新たな次元に突入した。(文中敬称略)
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