【主張】「地球の裏側」論 本質をそらす言葉遊びだ
産経新聞2013.9.22 03:15
不毛な言葉遊びにエネルギーを費やしていては困る。
集団的自衛権の行使容認問題で、自衛隊が「地球の裏側」まで行くか否かという、表現をめぐる論争が政府自民党などで起きている。
自民党の高村正彦副総裁らは「地球の裏側に行くようなことは許されない」と主張している。これに対し、高見沢将林(のぶしげ)官房副長官補が自民党の会合で、地球の裏側に行くことも必ずしも否定されないとの見解を示した。
高村、高見沢両氏は、集団的自衛権の行使が日本の国益や安全を守るために必要であることを前提に発言している。
「地球の裏側」とは、日本の国益などに無関係の地域にまで自衛隊を送り、武力行使を行うものではないという、あくまでもたとえと考えるべきだろう。高見沢氏は「関係もないのに米国が行くからついて行くものではない」とも説明している。
一方、行使容認に反対する側は「地球の裏側まで行って、日本は米軍に追従して世界で戦争するのか」などと懸念を提起している。避けなければならないのは、行使容認を否定、阻止するための宣伝にこの論争が使われ、問題の本質がすり替えられることだ。
核・弾道ミサイル開発を強行する北朝鮮や、軍拡を進める中国の台頭によって、日本周辺の安全保障環境は急速に悪化している。集団的自衛権の行使容認は、日米同盟を強化し、抑止力を高めるために不可欠なものだ。
だが、経済的な相互依存関係の深化や科学技術の発展で世界はますます狭くなっている。遠く離れた地域の出来事が、日本に大きな影響を与えることを考えておくのは当然だろう。
政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」でも、中東などからのエネルギーの安定供給をにらみ、シーレーン(海上交通路)の安全確保が論じられている。日本から約1万2千キロのソマリア沖アデン湾での自衛隊による海賊対処活動は、国益を守るために必要だからこそ続けられている。
国民の理解を得るため、集団的自衛権の行使の条件、手続きなどをあらかじめ考えるのは当然だ。行使容認に慎重な側も、言葉遊びに熱中するのではなく、事の本質を論じてほしい。
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集団的自衛権の行使容認問題 「地球の裏側」論 本質をそらす言葉遊びだ
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