改正自衛隊法が成立 在外邦人保護で陸上輸送可能に
産経ニュース2013.11.15 11:10
緊急時に在外邦人を救出するため自衛隊による陸上輸送を可能とする改正自衛隊法は15日午前の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で成立した。日本人10人が犠牲になった1月のアルジェリア人質事件を契機に、「輸送手段が空海路に限定されていては、安全確保の上で支障が出かねない」として邦人保護の在り方を見直した。
改正法は飛行機と船舶に限定していた輸送手段に車両を追加。当事者らに限っていた輸送対象者は、現地で面会する家族や企業関係者、医師などを念頭に「家族その他の関係者」に拡大した。
陸上輸送は飛行機や船舶での輸送に比べ、テロ攻撃の標的になりやすいとの懸念があるため、与野党協議の結果、輸送時の安全確保などを求める付帯決議も採択した。
政府は改正法の成立を受け、拳銃と小銃、機関銃に限定されている自衛隊員の携行武器を増強する方向で検討を始める。
改正法は4月19日に閣議決定され、通常国会に提出された。ただ、当時は参院で与党が少数で法案成立の見通しが立たなかったため、政府・与党は衆院で継続審議としていた。
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◇ 日本「金払うから…」でいいのか 邦人救出へ自衛隊法改正を急げ 2013-01-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
日本「金払うから…」でいいのか 邦人救出へ自衛隊法改正を急げ
産経新聞2013.1.30 03:19 [正論]帝京大学教授・志方俊之
アルジェリアの人質事件への対応は、007で有名な軍情報部第5班(旧称MI5)を持つ英国ですら手遅れだったのだから、わが国の国家的な情報、対応能力で何ができただろうか。アルジェリア政府が関係諸国と人質解放に関して何ら調整せず、直ちに武力制圧に踏み切ったことを平和な東京から非難しても始まらない。
≪邦人輸送に非現実的条件3つ≫
いまなすべきは、犠牲になった10人の日揮関係者が尊い命に代えてわれわれに残した教訓を分析して、国家と企業の国際的な危機管理能力を強化することだ。
今後、海外で邦人が危険に遭遇する機会はますます増える。危険地で個々に活動するジャーナリストやボランティアの場合も、多数の人々が働く進出企業の場合もある。ペルー大使館事件のように在外公館が襲撃されるケースや、地域全体が危険になり在外邦人全員を緊急に退避させなければならないケースなど多様である。
在外邦人の緊急退避で人数が少なければ、最寄りの在外公館や警察庁の「国際テロリズム緊急展開班(TRT−2)」が現地の救出活動に協力することもある。人数が多ければ、自衛隊を派遣して輸送(自衛隊法第84条3)させられることやその際の権限(同法第94条5)も規定されている。
だが、問題は現行法に大きな制約が課されていることだ。
第1に、外務大臣の依頼が必要であること、輸送の安全が確保されていること、自衛隊の受け入れに関わる当該国の同意を要すること、という3つの前提が満たされるときに限定されている。
外務大臣の依頼は当然だが、現地で輸送の安全が常に確保されているとは限らない。そもそも安全が確保されていないからこそ、邦人の緊急避難が必要になるのだ。当該国が混乱して自衛隊の受け入れに同意しない最悪の状況も考えておかなければならない。
「行動権限」も極めて非現実的な範囲に限られている。自衛隊の行動はあくまで「輸送」であって「救出」はできない。使用する輸送手段も輸送機(今回は政府専用機)、船などに限定され、陸上輸送は想定外となっている。
≪ついでに助けての小切手外交≫
輸送の安全が確保されているのは、緊急避難が極めて早期に発令されてまだ現地が安全な場合か、現地に危険があっても、当該国や他国の部隊が在外邦人を安全な空港や港湾まで輸送してくれる今回のような場合か、である。
邦人が輸送されて安全な空港や港湾に集まっているのなら、自衛隊の航空機や艦船が迎えに行くまでもなく、民間航空機か、チャーター機が迎えに行けばよい。今回は、迅速性を重視した政府の特別判断で政府専用機(航空自衛隊が管理・運航)が使われた。
多くの邦人が危難に直面する場合、邦人だけが大挙して緊急避難することはほとんどなく。多国籍の避難者多数がその場にいることが多い。そうした状況下では、避難者の多い関係国が、協働・調整・協力して救出活動や輸送活動をするのが国際常識である。
緊急避難すべき外国人の中で在外邦人がかなり多いと、現地の日本大使や領事、防衛駐在官は関係国の担当者と会談して、次のような交渉をすることになる。
「日本の国内法で、自衛隊は安全が確保された地域での海空の輸送に限った任務しかなく、救出に当たれない。申し訳ないが、貴国の避難者を救出するついでに日本人も救出して安全な所(空港や港湾)まで運んでいただきたい。経費と礼金は必ず支払う。そこから先の輸送は自衛隊が行う」。まるで「小切手外交」である。
≪国際非常識の武器使用権限≫
わが国特有の制約はもう一つある。現場での自衛隊の武器使用権限を極端に制限していることだ。輸送の安全が確保された場所で航空機や船舶を守るため、保護下に入った邦人などを航空機や船舶まで誘導する経路で襲撃された場合に限り、正当防衛・緊急避難としての武器使用が許される。
テロ集団と銃火を交え、自国民だけでなく日本人も救い出し安全な場所まで警護してくれた諸外国の避難者が、空港などの別の地点で襲撃されているのを見ても、自衛隊は自国の避難者と保護下に入った者を経路上で守るためにしか武器を使用できない。恩ある国の避難者を見殺しにして国際的な顰蹙(ひんしゅく)を買っても、である。
根底には、集団的自衛権の行使に関わる問題や憲法上の自衛隊の位置づけに関わる問題もあって、憲法改正には時間を要するが、第二、第三の人質事件はそれを待ってくれない可能性がある。
輸送の安全の確保を避難措置の要件としないこと、外国領内での陸上輸送も含めること、避難を妨害する行為の排除に必要な武器の使用を認めることである。そのための自衛隊法の一部改正は喫緊の課題だ。今回の人質事件は、それを悲痛な形で教えてくれた。
参院選などが理由となって、自衛隊法の改正が遅れることがあってはならない。国民の生命を守れない政治は政治ではない。(しかた としゆき)
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〈来栖の独白 2013/01/30 Wed. 〉
正論である。同様のテーマを扱った中日新聞のコラムは的外れであり、まったく意味をなさない。
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◆ アルジェリア人質事件と自衛隊法改正 中日新聞 【核心】 2013-01-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◇ 『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行 2012-11-28 | 読書
p78〜
2 日本のソフト・パワーの欠陥
○ハード・パワーは欠かせない
「日本が対外政策として唱えるソフト・パワーというのは、オキシモーランです」
ワシントンで、こんな指摘を聞き、ぎくりとした。
英語のオキシモーラン(Oxymoron)という言葉は「矛盾語法」という意味である。たとえば、「晴天の雨の日」とか「悲嘆の楽天主義者」というような撞着の表現を指す。つじつまの合わない、相反する言葉づかいだと思えばよい。(略)
p79〜
日本のソフト・パワーとは、国際社会での安全保障や平和のためには、軍事や政治そのものというハードな方法ではなく、経済援助とか対話とか文化というソフトな方法でのぞむという概念である。その極端なところは、おそらく鳩山元首相の「友愛」だろう。とくに日本では「世界の平和を日本のソフト・パワーで守る」という趣旨のスローガンに人気がある。
ところが、クリングナー氏はパワーというのはそもそもソフトではなく、堅固で強固な実際の力のことだと指摘するのだ。つまり、パワーはハードなのだという。そのパワーにソフトという形容をつけて並列におくことは語法として矛盾、つまりオキシモーランだというのである。
クリングナー氏が語る。
「日本の識者たちは、このソフト・パワーなるものによる目に見えない影響力によって、アジアでの尊敬を勝ち得ているとよく主張します。しかし、はたからみれば、安全保障や軍事の責任を逃れる口実として映ります。平和を守り、戦争やテロを防ぐには、安全保障の実効のある措置が不可欠です」
p80〜
確かにこの当時、激しく展開されていたアフガニスタンでのテロ勢力との戦いでも、まず必要とされるのは軍事面での封じ込め作業であり、抑止だった。日本はこのハードな領域には加わらず、経済援助とかタリバンから帰順した元戦士たちの社会復帰支援というソフトな活動だけに留まっていた。(略)
クリングナー氏の主張は、つまりは、日本は危険なハード作業はせず、カネだけですむ安全でソフトな作業ばかりをしてきた、というわけだ。最小限の貢献に対し最大限の受益を得ているのが、日本だというのである。
「安全保障の実現にはまずハード・パワーが必要であり、ソフト・パワーはそれを側面から補強はするでしょう。しかし、ハード・パワーを代替することは絶対にできません」
p81〜
となると、日本が他の諸国とともに安全保障の難題に直面し、自国はソフト・パワーとしてしか機能しないと宣言すれば、ハードな作業は他の国々に押しつけることを意味してしまう。クリングナー氏は、そうした日本の特異な態度を批判しているのだった。(略)
p82〜
しかし、日本が国際安全保障ではソフトな活動しかできない、あるいは、しようとしないという特殊体質の歴史をさかのぼっていくと、どうしても憲法にぶつかる。
憲法9条が戦争を禁じ、戦力の保持を禁じ、日本領土以外での軍事力の行使はすべて禁止しているからだ。現行の解釈は各国と共同での国際平和維持活動の際に必要な集団的自衛権さえも禁じている。前項で述べた「8月の平和論」も、たぶんに憲法の影響が大きいといえよう。
日本の憲法がアメリカ側によって起草された経緯を考えれば、戦後の日本が対外的にソフトな活動しか取れないのは、そもそもアメリカのせいなのだ、という反論もできるだろう。アメリカは日本の憲法を単に起草しただけではなく、戦後の長い年月、日本にとっての防衛面での自縄自縛の第9条を支持さえしてきた。日本の憲法改正には反対、というアメリカ側の識者も多かった。
ところがその点でのアメリカ側の意向も、最近はすっかり変わってきたようなのだ。共和党のブッシュ政権時代には、政府高官までが、日米同盟をより効果的に機能させるには日本が集団的自衛権を行使できるようになるべきだ、と語っていた。
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◆ 日本は、専門家でさえも他人事のように自国の主権・領土に関わる問題を語る/地球市民を気取っている 2012-10-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
【産経抄】10月14日
産経ニュース2012.10.14 03:03
チベット文化研究所名誉所長のペマ・ギャルポ氏が月刊誌『教育再生』に巻頭言を寄せている。「中国の侵略主義に対抗する政策」という、領土問題での日本人へのアドバイスである。中でも興味深いのは、領土や主権に対する日本人と中国人の意識の違いだ。▼中国では徹底した領土拡張主義の教育が浸透し、自信を持って自国の理屈を唱える。これに対し日本は、専門家でさえも他人事のように自国の主権に関わる問題を語る。しかも「恥ずかしくなるくらいに地球市民を気取っているのが情けない」と述べる。▼見事なご指摘と感心ばかりしてはおれない。専門家どころか、外相経験者の前原誠司国家戦略担当相までが領土問題を「他人事」と見ているようだからだ。民放の番組収録で、石原慎太郎東京都知事の尖閣購入計画を批判したという発言からそう思えた。▼前原氏は「石原氏が(購入を)言い出さなかったら問題は起きていない」と述べた。中国の反日はそのせいだというのだ。だが中国はそれ以前から尖閣への攻勢を強めていた。これに対する政府の無策を見かねて購入計画を打ちだしたのだ。▼前原氏は、石原氏と野田佳彦首相の会談で石原氏が「戦争も辞せず」みたいな話をしたことを明かしたそうだ。だがそれを批判するなら戦争の代わりにどうやって尖閣を守るかを語るべきだ。そうしないなら「他人事」であることを露呈したにすぎない。▼日露戦争前夜、黒岩涙香は主宰する新聞で、けんかの最中に賊に入られた夫婦が力を合わせて退ける話を例に存亡の機の不毛な論争を戒めた。領土が脅かされているとき、政府要人が相手国ではなく国内に批判の矛先を向ける。中国の思うツボである。
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