韓国留学熱、父親に重圧…孤独・仕送り・自殺も
読売新聞 11月20日(水)9時12分配信
教育熱が高いことで知られる韓国では、高校生以下の早期の英語留学が普及し、父親を残して母子が海外に出るケースが多い。
だが、一人で国に残る父親には、近年の景気悪化の影響もあり、重圧がのしかかっている。
妻子を米国に送り出していた一人暮らしの男性(53)が今月上旬、仁川のアパートで練炭自殺した。テーブルに残された遺書には「皆さんの荷物にならないために、この道を選ばざるを得ません」「父ちゃんは体と精神の健康をすべて失った」などと記されていた。
地元警察によると、2009年、男性の妻と当時高校生の2人の息子は渡米した。男性は電気工事技師だったが、肺炎を患い、1年前から失業と復職を繰り返した。1か月前にも職を失い、友人に電話で「死にたい」と漏らしていた。
男性は十分な仕送りをできず、妻が米国で働いて滞在費を捻出。男性は経済的事情から、家族に長く会えずにいたという。
韓国で家族を海外に送り出し、国に残る父親は「キロギ・アッパ」と呼ばれる。キロギは雁(がん)、アッパは父だ。国で働いて仕送りし、たまに渡り鳥のように家族に会いに行く姿を例えた。
韓国で12年の小中高生の海外留学者数は約1万4300人。約470人に1人の計算だ。08年のリーマン・ショックで景気が悪化する前と比べ、ほぼ半減したが、なお早期留学の人気は高い。母親が付き添うケースが多く、自殺した男性のような一人暮らしの父親は珍しくない。
しかも、経済的に無理をしてでも子どもを留学させる親が多い。「学歴社会」で知られる韓国では、高学歴に加え、英語力がないと、優良企業に就職しにくいためだ。韓国は国内総生産(GDP)の5割を輸出が占め、企業は、海外ビジネスに役立つ人材の採用を優先する。英語力を高め、将来の学位取得にもつながる早期留学は、大学新卒者の就職率が56%という韓国の厳しい就職戦線を勝ち抜く手段になっている。
だが、しわ寄せを受けるのが、父親たちだ。今年3月にも南東部の大邱(テグ)でキロギ・アッパの歯科医が練炭自殺するなど、悲劇は尽きない。
最終更新:11月20日(水)9時12分
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