国家危機を招く朝日新聞スクープと特定秘密保護法 ギブ・アンド・テイクの有効活用で、安全保障を一段と確かなものに
JBpress 2013.12.17(火) 森 清勇
特定秘密情報は国民の日常生活に直接かつ即時的に影響を及ぼすというよりも、国家の安全保障や名誉と信頼など、例えば米国は尖閣諸島で日本をどのように支援してくれるか、中国の対日戦力展開能力はどの程度か、日本は同盟国や友好国に信頼される行動を取っているかというような次元のものが多いであろう。
国際社会においては国益を求めて熾烈な情報戦が繰り広げられているが、日本に関わる情報の入手や保全においてやや無関心であった日本が、有り体に言えば「普通の国」への入り口に立ったということである。
平時からどの国もそうした情報の入手や保全には格段の努力をしているが、一国では限界があり、相互にギブ・アンド・テイクして信頼性を高めるようにしている。入手手段や取得情報の一部がウィキリークスやエドワード・スノーデン氏によって暴露され、国家間の軋みが生じている現実を見せつけられたばかりである。
こうした現実を直視することなく、特定秘密保護に反対したり難色を示したりするのは、例外中の例外国家・日本の平和ボケの所産でしかない。
*秘密は在って当たり前
大統領2期目にウォーターゲート事件で弾劾され辞職したリチャード・ニクソン大統領は『わが生涯の戦い』で、次のように書いている。
「私の政府は、国家的安全という理由から盗聴を行う場合、注意深く限定された完全に合法的なやり方をしていた。こういうやり方をしたことを私は全く後悔していない。アメリカはベトナム戦争のさなかだった。また、われわれはソ連および中国との間で微妙な秘密外交を幅広く展開しつつあったし、インドシナで名誉ある和平を達成するための秘密交渉にも携わっていた。同時にわが国は、極秘情報が新聞にぼろぼろ漏れるというひどい事態に見舞われていた」
米国ばかりでなく、また国家の大小などに関係なく、国益と名誉を保持するためには相手国の情報が不可欠である。人間二人寄れば競争し上下の差がつくように、国家間ではさらに熾烈な競争が行われている。
現にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉では格段に規模の大きな米国でありながら、小国の国益すらもぎ取ろうとする飽くなき貪欲を示している。正しくガリバーと小人の物語そのものである。
だから小国は小国なりにあらゆる手段で情報を取り、少しでも優位な立場に立とうとする。国家に秘密が存在するのは当然であり、それを保護する法律が必要になるのもまた然りである。
自由や民主主義を価値観とする日本は、そうした価値観を守るため、あらゆる角度から国会の場で審議し、国民の了解を得て法律に仕上げなければならない。国会中継を見聞していても、法律条項のまともな議論をしないで、「危険だ」「反対だ」と声高に叫ぶばかりでは国民の期待にそえない。
ともあれ、特定秘密保護法が成立した。今後は実際の運用に供する政令や施行規則などが定められることになる。情報の共有で日本の力を活用したい米国は、早速法案成立に祝意を伝えてきた。
イラク戦争時は今回成立したような法律が日本になかった関係で、然るべき情報が米国からもたらされず、首脳同士の友情で米国の攻撃を了とした。
同様のことがシリアの化学兵器にまつわることでも起きていた(「朝日新聞」2013.12.3朝刊)。米国は自国が進める攻撃に日本の支持を得るに必要な情報だけを与え、他方で米ロが進める攻撃回避交渉の情報は何一つ与えようとしなかった。
考えてみれば、国家の名誉と共に運命をも左右する事案に、情報なしで諾否を決めるほど危ういことはない。
国家(の運営)に秘密はつきものという前提こそが必要で、その秘密をいかに扱い、国益や国民の知る権利などとどのように整合させるかを真剣に議論することである。
*恣意的に映像を秘密扱いにした菅政権
民主党政権時代に秘密保護の必要性有無を議論するに適した題材が幾つも生起した。その1つは尖閣諸島沖での中国船の海保巡視船への追突ビデオ公開問題であった。
菅直人政権は海保が即日公開する予定の尖閣諸島沖中国船追突事案(2010.9.7)の映像の公開を差し止め、泥縄式にその映像を秘密に指定し、公表した海上保安官の一色正春氏を公務員の守秘義務違反とした。
安倍晋三政権は特定秘密には該当しないと見ている(「読売新聞」2013.12.8朝刊など)ことから、遡って菅内閣の秘密指定を勘ぐれば、内閣の失態を隠蔽して延命を図る恣意的処置という見方ができよう。
日本の国益や国民・漁民の安寧と生活に関わるこの事例は、今回の特定秘密保護法案について国民に分かりやすく議論を展開する素材となり得た。しかし、衆院でも参院でも具体的な例示としても取り上げられることはなく、国民が審議不足と断じるようにお粗末な状況で、実りある議論が行われなかった。
民主党や時の最高責任者であった菅直人氏はいたたまれないであろうが、国家の安全と国民の安心ためには針のむしろに座ってもらうのも致し方なかった。そもそも保身としか思えない権力の乱用で、国家の大事を捻じ曲げ、一色正春海保員の将来性をも奪った代償でもあろう。
これほど、秘密指定が恣意的に行われた好例はなかったが、参院国家安全保障特別委員会では、肝心の中身よりも委員会の運営方法などの悶着に終始した。
*朝日の尖閣国有化スクープが国益を毀損した
もう1つは尖閣諸島の国有化問題に関わる報道の問題である。野田佳彦首相の補佐官であった長島昭久衆院議員は、石原都知事の尖閣諸島購入計画発表(2012年4月16日)から1か月後の5月中旬、首相から「尖閣購入」の検討指示を受ける。
「その段階ではずっと水面下で東京都と交渉し、中国とも事前に情報交換をしたうえで、最も穏当なやり方で決定、公表するつもりだった」と言う。
ところが、「7月7日に報道されてしまった。舞台の準備をしている中に幕が開いた形で、非常に不本意だ。中国側の驚きも大きく、疑心暗鬼は強まったと思われる」と、国有化1年後(「日本経済新聞」2013年9月8日付)に語っている。
新聞のスクープ報道があって以降も中国側と話は続いており、「8月上旬ごろまでは『東京都が購入するよりも国が買うほうが現状維持に近い』ことについて、中国側の理解はかなり深まっていたと思う。(中略)9月11日に閣議決定することは、中国外交当局にきちんと伝えていた」とも言う。
ここで見落としてならないことは、朝日新聞(7月7日朝刊)のすっぱ抜きが問題をこじらせた可能性の指摘である。同紙は1面トップで「尖閣、国有化の方針」と白抜きゴシックで大きく打ち出している。
そして、従軍慰安婦や靖国参拝の報道同様に、「領有権を主張する中国や台湾が反発を強める可能性がある」と丁寧にもご進注に及んでいる。
同紙3面では、都が購入すれば弱腰批判を免れず、都知事に押される形で国有化に動き出したと報ずるが、ここでも「国有化は野田首相の強い意向だが、中国の反発も予想され、リスクを背負うことになる」と、ここでも中国に動いてくれと言わんばかりの記述である。
この報道を受けて、野田首相は、「尖閣諸島を平穏かつ安定的に管理する観点から、所有者と連絡をとりながら総合的に検討している」ことを同日午前中に正式に表明する。朝日を除く各紙は、夕刊で一斉に報道することになる。朝日の完全なスクープであるが、尖閣問題に都の交渉とは異なる新たな火をつけたわけである。
特定秘密保護法の必要性を考えるうえで、尖閣諸島に対する都や政府の動きは国益に関わることであり秘匿されなければならなかった事項ではないだろうか。これも、特定秘密保護法の審議にあたって、具体的に審議材料にできた案件であろう。
*95%は一般情報から得られる
筆者は防衛庁(当時)在職の半分以上を軍事技術情報分野で勤務した。その間、米軍との情報交換も盛んに行われたが、米軍は対象国の兵器を入手分析し、時には同性能の兵器を模造して部隊まで編制し運用したデーターを有する。
当方にはそうしたデーターが何一つなく、情報交換の原則とも言うべきギブ・アンド・テイクに窮しただけでなく、相手がくれる情報の信憑性や多少さえ判定し難いことが多かった。
いまでは一般情報から原爆さえ作ることができると言われる。専門的な問題についても一般情報から95%は得られるという証左でもあろう。残りの5%のみが一般情報から得られない特殊情報、すなわち新しく成立した法律でいう特定秘密情報であり、国の安全保障や外交問題、更には国民生活にかかわる重要な情報などということになる。
このように、真に秘匿すべき情報は極度に限定されており、国民の通常生活に直接的に影響することなどは考えにくい。一部のマスコミが大々的に喧伝する様に「国民の知る権利が奪われる」などという大げさなことにはならない。首相も明言している通りであろう。
国民の大多数は秘密でしか得られない5%を知らされない以上に、一般に入手可能な95%の情報についてさえ、実際はその中の数%しか知らないで生活しているのが実体であるとも言われている。知る権利が奪われないどころか、ふんだんにある情報さえほとんど知ろうともしないで日々の生活をエンジョイしているのである。
声高に「知る権利が奪われる」などとか書き立てるのは牽強付会も甚だしい。なぜなら、日本の安全保障に関わる法体系も不十分な現状のうえに、特定秘密を保護できないばかりに大陸や半島に所在する国家による工作の情報などが同盟国や友好国から一切入手できなくなれば、知る権利どころか、その他のすべての自由も許されない国家になる危険がないとは言えない。
その凄惨さは最近の大陸や半島からもたらされる映像などで知られる通りである。
「そんな馬鹿な!」と思うだろうが、日本を無力化する底意を持った現憲法を一字一句変えられなかったことが何よりの証ではないだろうか。特定秘密の保護は、人間存在の権利としての自由を奪うものではなく、そうしたものを堅持するためにこそ必要なものであると理解することが大切である。
*おわりに
最近の数年を見ただけでも、日本国家の主権や名誉、日本国民の安全・安心を脅かす事案が内外で頻発している。そうした事案に対処するには同盟国間の情報のやり取りや友好国などからの情報入手などが必要不可欠である。
なお、情報は基本的にギブ・アンド・テイクの世界である。イラク戦争やシリアの化学兵器問題で米国の行動への賛意だけが求められたということは、日本から相手に与える有益な情報が皆無であったということでもあろう。
最後に強調したい点は、保全も然ることながら、日本自身が世界に眼を光らせて、日本の国益に資する質の高い(換言すれば秘密度の高い)情報を入手することである。
そして、同盟国や友好国と共有した方がよいという判断であれば進んで提供することによってギブ・アンド・テイクが有効に機能し、当方の1の情報に対しても相手から10でも100でも得ることができるということである。ゼロからは何も生まれない。
国家安全保障会議(NSC)の設立と特定秘密保護法の成立は、日本を「普通の国」の入り口に立たせたに過ぎない。今後は日本の安全と国民の安心のために、有効に活用する努力が必要となる。
◎上記事の著作権は[JBpress]に帰属します
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◇ 『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』 福山隆著 幻冬舎新書 2013年5月30日第1刷発行 2013-07-28 | 読書
第1章 知恵なき国は滅ぶ
P12〜
すべては情報が決する
「情報」を制する者は天下を制す
彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず------。
言わずと知れた、兵法書『孫子』の一節です。これが書かれたのは、中国の春秋時代(紀元前770〜403年)のこと。それまで、戦争の勝敗は運不運に左右されると考える人が大半でした。そういう時代に、戦争には人為的な「勝因」と「敗因」があると考え、それを理性的に分析したのが、『孫子』の画期的なところです。
冒頭に掲げた言葉は、その「謀攻篇」(実際の戦闘によらずに勝利を収める方法)に書かれたものでした。敵と味方の情勢を知り、その優劣や長所・短所を把握していれば、たとえ百回戦ったとしても敗れることはない。これは、戦争における「情報=インテリジェンス」の重要性を指摘した言葉にほかなりません。
ちなみに、「謀攻篇」には、「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という言葉もあります。戦火を交えることなく敵を屈服させるのが最善だという意味ですから、もし情報戦で勝利を収めることができたとすれば、それにまさるものはないといえるでしょう。
p22〜
敗戦と同時に「厚いコート」を脱いだ日本
このように、アメリカは第2次大戦、9.11という大きな情勢変化が起こるたびに、情報機関という「防寒着」を厚めのものに着替えてきました。
もちろん、これはアメリカだけの特徴ではありません。国家と情報機関の関係を如実に示す1例として今はアメリカのケースを挙げましたが、どの国においても、これが基本的なあり方だと考えるべきでしょう。
p23〜
どんなに武力を整えても、それを効果的に使いこなす「知恵」のない国は滅びます。そして国家の「知恵」は情報機関の質と量に大きく左右されるのです。
p27〜
軍事インテリジェンスはアメリカ頼み
GHQによる占領統治が始まって以来、今日にいたるまで、外務省のインテリジェンスは専らアメリカのほうを向いていたといっていいでしょう。それも無理はありません。日米安保条約で日本はアメリカの同盟国となり、そのアメリカはCIAの設立などによって「情報超大国」としての地位を固めてきました。
p28〜
しかも国内には米軍基地が置かれ、憲法9条によって戦力を放棄したため、日本の安全保障はアメリカ頼みです。自衛隊の前身である警察予備隊が組織されるまでは、国防を専門に担当する官庁も存在しませんでした。
そのためわが国では、日米安保条約とそれに付随する日米地位協定を主管する外務省が、実質的な「国防省」の役割を担うことになったのです。
外交を担当する外務省が、安全保障政策の最前線に立つ―今までこのような論説が指摘されたことはありませんが、これは国際的に見てかなり異例な体制といえるでしょう。日本では、国を防衛するための最大のツールを、外務省が持っている。その後、自衛隊を主管する防衛庁が設立され、第1次安倍政権下の2007年には防衛省に格上げされましたが、在日米軍と日本政府の第1の接点は相変わらず外務省です。
そうなると、少なくとも安全保障に係るインテリジェンスについては、アメリカに頼っていれば問題ありません。アメリカの動向を把握しつつ、必要なことはアメリカに教えてもらえば事足りる。いわば外務省は、アメリカという分厚い防寒着の下に着る薄手のセーター程度のインテリジェンス機能を持てば十分だったのです。
p31〜
アメリカの戦略で動いた日本の「戦後レジーム」
それも含めて、戦後日本のインテリジェンスは、基本的に超大国アメリカが打ち出す戦略の枠内に収まっていました。これは、いわゆる「戦後レジーム」がもたらした弊害の1つといえるでしょう。
東京裁判や現行憲法の話を持ち出すまでもなく、日本の戦後体制がアメリカ主導で構築されたことは明らかです。これがさまざまな点で日本社会のあり方を歪めたからこそ、かつての第1次安倍政権も、「戦後レジームからの脱却」を掲げました。
p32〜
しかしその自衛隊も、実質的には米軍の世界戦略にはめ込まれた1つのピースにすぎません。もちろん形式上は組織として独立していますが、米軍と無関係に独自のオペレーションを実行することはほとんどできないのです。(略)
そんな次第ですから、自衛隊のインテリジェンス機能もまた、基本的には日米同盟を前提としたものになっているのです。
p33〜
それだけではありません。より広い意味の「情報」について考えた場合も、戦後の日本人はアメリカの影響を強く受けてきました。国民に正確な情報を伝えるべきマスメディアが、アメリカの情報戦略に巻き込まれてきたからです。
たとえば、日本最大の発行部数を誇る讀賣新聞。その「中興の祖」とも呼ばれる正力松太郎氏は、もともと警察官僚でした。いわゆる特高警察に所属し、一説には関東大震災の際に朝鮮人暴動のデマを組織的に流布したともいわれています。戦後は東京裁判のA級戦犯に指名され、公職追放となったものの、不起訴処分で釈放。アメリカの公文書には、正力氏がその後CIAの非公然工作に長く協力していたことが記載されているといいます。釈放と引き替えに協力したと思われても仕方ありません。
CIAのコードネームも持っていたといわれるほどの人物がトップに君臨していたのですから、その新聞や系列テレビ局が流す情報がどのような操作を受けるかは、想像がつきます。それが、アメリカの国益に反するものになるとは考えにくい。そして、これは「大正力」が実権を握っていた時代だけの「昔話」ではないと私は思っています。
p34〜
アメリカは日本が再び「強い国」になるのを恐れている
一方、その讀賣新聞とはライバル関係にある朝日新聞にも、アメリカの息はかかっています。
私はかつてハーバード大学のアジアセンターで客員研究員を務めていたのですが、そのとき、「ニーマンフェロー」の存在を知りました。ユダヤ系の大富豪ニーマンの寄付金で設立された「ニーマンジャーナリズム財団」が、ジャーナリズム界のリーダーを育成するために、世界各国から新聞記者を集めて1年間無償で研修を受けさせるのです。
ニーマンフェローは毎年24名で、12名はアメリカ国内のメディア、残り12名が外国のメディアから呼ばれます。その中の「日本枠」は、常に朝日新聞の指定席。たとえば、かつてテレビの討論番組にもよく顔を出していた「朝日ジャーナル」元編集長の下村満子氏も、このニーマンフェローでした。ここでアメリカナイズされた優秀な記者たちが、やがて朝日新聞の幹部になるのですから、その論調が親米的なものになるのは自然な成り行きでしょう。
p35〜
朝日新聞といえば「左寄り」で、旧ソ連や中国と結託して戦前の日本を断罪するという印象がありますから、「親米」と聞くと意外に思う人もいるかもしれません。たしかに、憲法9条を擁護して日本の「軍国主義化」を警戒したり、首相の靖国神社参拝を批判したりするのは、---ソ連や中国---の国益にかなっています。
しかし実は、それがアメリカの国益にもかなっていることを忘れてはいけません。(略)
インテリジェンスに必要な機能は、情報の「収集」だけではありません。情報を「操作」することで、自分たちに有利な状況を作り出すことも重要な機能の1つです。
p36〜
そして日本の「戦後レジーム---アメリカの従属国」は、アメリカの巧妙な情報操作によって、より強固なものになりました。アメリカに飼いならされたのは、ジャーナリストだけではありません。日本からは、多くの言論人や学者たちが若い時期に留学生としてアメリカでの生活を経験しています。そこでアメリカに洗脳された人々が帰国し、オピニオンリーダーとして活躍する。その影響を受けて、日本の世論全体がアメリカナイズされてきたのです。
p44〜
軍事と外交の担うインテリジェンスの違い
憲法9条と安保条約という二本の手綱
さて、現在の日本が抱えるインテリジェンスの問題は、おおむね「戦後レジーム」の中で生じたものだと考えていいでしょう。それ以前から対外インテリジェンスをあまり重視しない傾向はありましたし、それについても後述するつもりですが、やはり敗戦とそれに続くアメリカの占領統治は実に大きな転換点でした。
その転換をもたらした最大の要因は、1946年に公布されて翌年に施行された日本国憲法の第9条です。戦力の放棄を定めたこの条文によって、日本は軍隊をもたない国となりました。
しかし、軍隊をもたずに国家を維持することはできません。かつて日本社会党が唱えた「非武装中立」などというものは、単なる絵に描いた餅です。安全保障のためには、当然、何か別の手立てが必要になる。そこで登場したのが、日米安全保障条約です。
(p45〜)日本の戦後を考える上で、憲法9条と日米安保条約はワンセットでかんがえるべきでしょう。
そしてこれは、アメリカが日本という「馬」をコントロールするために用意した2本の手綱のようなものでした。憲法9条によって日本を弱体化させ、さらに安保条約によって米軍基地を日本国内に駐留させる。これによってサンフランシスコ講和条約の発効で日本が独立を回復して以降も、ある種の「占領状態」を続けることができたわけです。
さらに、日米安保条約は、米軍基地内においては米軍が第1次裁判権を持つことを定めた日米地位協定とワンセットになっています。その安保条約と地位協定の両方を主管するのが、外務省にほかなりません。
ちなみに、この2つを実際に担当する北米局日米安全保障条約課は、外務省の中でももっとも優秀なエリートが登用されるセクションです。いずれ事務次官やアメリカ大使になるような人材が、ここに配属される。安全保障は国家の最重要課題ですから、それも当然でしょう。しかし、ここでアメリカの「伝声管」を務めたエリートたちが省内で出世するとなれば、外務省全体がアメリカの言いなりになりやすくなるのもたしかです。
p46〜
ともあれ、戦後の日本では、本来は外交を担当する官庁―外務省―が、日米間の条約や協定をコントロールするという名目の下に、実質的な「安全保障庁」として機能してきました。
p49〜
軍事インテリジェンスの分野で誰もが名前を見聞きしたことのある人物といえば、リヒャルト・ゾルゲでしょう。1933年(昭和8年)、ソ連軍のスパイだったゾルゲは、ドイツの「フランクフルター・ツァイトゥング」紙の東京特派員と身分を偽って、日本に入国しました。それ以降、1941年に朝日新聞記者だった尾崎秀美らと共に逮捕されるまで、日本とドイツの動きを探るための諜報活動を行ったのです。
彼に課せられた最大の使命は、日本の対ソ参戦の可能性を探ることでした。言い換えれば、日本軍が「北進(対ソ戦争)」するのか「南進(対米英戦争)」するのかということです。日本が同盟国ドイツの求める対ソ参戦のために北進するのであれば、当然ながらソ連はそれに備えなければなりません。逆に日本がインドネシアやフィリピンなどを目指して南進するのであれば、ソ連は極東アジアを気にせずヨーロッパ方面に極東配備の戦力を転用できます。ソ連にとって、これはまさに国家の命運を左右する重大なインテリジェンスだといえるでしょう。
結果的に、日本軍が選んだのは「南進」でした。南方資源の獲得が必要だった上に、1941年4月には日ソ中立条約が締結されたこともあって、対ソ参戦には消極的だったのです。
最終的に「南進」が決まったのは、1941年9月の御前会議でした。そこで決定した「帝国国策遂行要綱」の情報を入手したのは、近衛内閣のブレーンとして政権中枢に情報網を持っていた尾崎です。尾崎から知らされたその情報を、ゾルゲはソ連本国へ打電。これによってソ連は満州との国境に配備した精鋭部隊をヨーロッパに移動させることが可能になり、ドイツとの戦争に勝利することができました。ゾルゲのもたらした情報は、これ以上ないほど価値のある軍事インテリジェンスだったといえます。
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◇ ついに本性をさらけ出した人民不在の中国帝国 牙をむく偽善・独善の偽国家にどう対峙すべきか 2012-10-15 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ ファッションで行動する非核平和宣言 日本/ 米国から核恫喝を受けた中国と、中東で核恫喝を学んだ北朝鮮 2012-04-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
今後10年以内に存亡の淵に立たされる日本 米国から核恫喝を受けた中国と、中東で核恫喝を学んだ北朝鮮
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