良書悪書 戦争を考えるブックガイド
アゴラ 2013年12月29日14:53 池田 信夫
靖国参拝をめぐる議論をみていると、いまだに「右か左か」といった冷戦時代の図式で論争が行なわれている。戦争とか国家とかいわれても、平和ボケの日本人がピンと来ないのはしかたがないが、最近の社会科学はこの点で大きく進歩した。安倍首相を初めとする政治家のみなさんには、正月休みにここにあげた本のうち1冊ぐらい読んでほしい。特に1〜3は必読である。
1がのべるように、戦争の原因は暴力の非対称性であり、それをなくすことが国家の本質的な役割だ。近代最長の平和を実現したのは「平和主義」をとなえる左翼ではなく、核兵器の均衡だった。そして2も論じるように、戦争が「国のかたち」を決める。最終決定者のいない明治国家は、戦争にまったく向いていなかった。その結果が、3の指摘する失敗の連続だった。
「A級戦犯が加害者で、マスコミや一般国民は被害者だった」などというのは神話である。4や5に書かれているように、陸軍の主流は何とか戦争を避けようとしたが、政治家が三国同盟を結んで勝てない条件を作り出し、新聞が国民を煽動して軍の強硬派を勢いづかせた。6に書かれているように、マスコミも(主犯とはいわないまでも)戦争の共犯である。
軍の暴走をもたらしたのは、7が分析しているように「両論併記と非決定」を繰り返す御前会議だった。その結果、8のいう目的を見失って自転する組織が生まれた。決められない組織は、ぎりぎりまで追い詰められると極端なギャンブルに打って出る。その点で危険なのは東條英機よりも、10のような優柔不断なポピュリストである。安倍氏は近衛にますます似てきた。
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