【電力危機は続く】細川&小泉両元首相の「脱原発タッグ」に九州の政財界から怒りの声 玄海町長「老兵は潔く去るべき」
産経ニュース2014.1.14 20:51
細川護煕、小泉純一郎の両元首相が「脱原発」でタッグを組んだ。九州から遙かに離れた東京都の知事選(23日告示、2月9日投開票)とはいえ、今後の原発再稼働に及ぼす影響は相当大きい。今夏まで原発ゼロが続けば、九州にはブラックアウト(大規模停電)の危険が迫り、電気料金再値上げも現実味を帯びる。アベノミクスによる景気回復も腰折れしかねない。両元首相による無責任な「原発ゼロ」発言に九州の政財界から怒りの声が噴き出した。(小路克明、田中一世)
「そもそも東京に原発はないでしょう。地方の原発が作った電力で繁栄を享受した東京でなぜ脱原発なんですか。原発再稼働は日本経済の再生には欠かせません。お二人とも首相経験者なのだから理解しているはずですが…。人気取りかも知れないが、非常に無責任ですよ。老兵は潔く去るべきです!」
佐賀県玄海町の岸本英雄町長はこう憤りをぶちまけた。
とはいえ、影響は早速広がり始めた。茂木敏充経産相は14日の記者会見で、1月下旬に予定されていたエネルギー基本計画の閣議決定について「プロセスが拙速にならないようにしたい」と先送りをほのめかした。
基本計画で「基盤となる重要なベース電源」と位置付けるかどうかにより、中長期的なエネルギー政策は大きく変わる。閣議決定が遅れたり、骨抜きになれば、原子力規制委員会の新しい規制基準による原発の安全審査も今以上に遅延する可能性が大きい。
安全審査が遅れ、九州電力の玄海、川内両原発が再稼働できなければ、九州では、夏場のブラックアウトが現実味を帯びる。炎天下で大規模停電が起きれば、死者が出かねない。せっかく回復基調に乗った九州の製造業は大きな打撃を受けるに違いない。
全国の原発が停止したことにより、25年度は、消費税1・5%に匹敵する3・8兆円が燃料費として海外に消える。財務省によると昨年11月の国際経常収支(速報値)は、昭和60年以降で最大となる5928億円の赤字を記録したが、これも燃料費が大きな要因となっている。
九電の長期借入金は昨年9月に1兆5237億円に達しており、原発が再稼働しなければ、再値上げも避けられない。4月に消費税が8%になることもあり、アベノミクスによる景気回復にも暗雲が広がる。
それだけに九州財界も都知事選の動向に神経をとがらせる。
九州経済同友会の石原進代表委員(JR九州会長)は「都知事選は教育、医療、高齢化、災害など都民に身近な政策を争点とすべきだ。原発は国のエネルギー政策に関わる問題であり、都知事選の政策課題に馴染まないのではないか」と疑問を呈した。
送電線建設・補修を手がける三桜電気工業(宮崎市)の大野拓朗社長も憤懣やるかたない。
「細川元首相は熊本県知事を経験した人じゃないですか。本当に九州経済をわかっていれば、脱原発という無責任な発言はできないはず。しかも賞味期限が切れた小泉元首相まで同調するとは…。郵政民営化のように世論を煽るつもりでしょうが、このままでは他の地方選の争点もすべて原発の是非になりかねない。安倍晋三首相はぜひ『原発政策は国の責任なんだから口を出すな』と毅然とはねつけてほしい」
この指摘の通り、東京都知事選が党派を超えて「脱原発vs原発推進」という構図になれば、他の首長選でも同じ構図が定着しかねない。これが原発再稼働に必要な「地元の同意」の大きな障壁となりかねない。
細川氏の地元・熊本選出の馬場成志参議院議員も「細川さんは文化人としては尊敬しておりますが、20年前に首相を投げ出した人ですよ。優しい言葉で無責任なことを言ってもらったら困る。都知事として責任ある仕事ができるのか、大いに疑問です」と語った。
川内原発を抱える鹿児島県では、原子力規制委の安全審査をクリアすれば、伊藤祐一郎知事が6月議会で再稼働への同意を判断する段取りだった。県原子力安全対策課の四反田昭二課長は「原発再稼働できずに病院や福祉施設への電気が止まったらどうするつもりなんですか。都知事候補は影響力が大きいだけに現実に立脚した責任ある発言が求められるのではないでしょうか」とこぼした。
ある福岡財界の有力者は「せっかく東京五輪も決まり、日本再生が見えてきたのに小泉氏らの動きは迷惑千万。聞こえのよいだけの政策は民主党政権でもう懲りたはず。また同じ過ちを繰り返すのか」と語った。
細川氏は14日の小泉氏との会談後、記者団に「特に原発の問題は国の存亡に関わる問題だ」と語った。日本を存亡の危機に追い込んでいるのは一体誰なのか。
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◇ 細川護煕氏のスケープゴート 2014-01-15 | 政治
池田信夫blog 2014年01月15日00:33
細川護煕氏のスケープゴート
細川元首相の出馬会見は、合理的に理解しようとすると頭が混乱する。彼の主張は「脱原発」ではなく、すべての原発を再稼動しないで廃炉にすることだ。その目的が不合理な上に、それを実現するために都知事選に出馬するという手段が不合理だから、常識で理解することは不可能だ。
昨夜の言論アリーナでも議論したのだが、「発送電分離」を急ぐ国のエネルギー政策も不合理な点では同じだ。。いまエネルギー政策で緊急に必要なのは、原発を運転して燃料費の浪費を止めることだが、経産省は電力会社を標的にして自分を「善玉」の側に置こうとしている。これは東電を盾にして「支援機構」をつくったときから一貫する霞ヶ関の戦術だ。
これらを合理的に理解しようとすると、共通点は原発=電力会社というスケープゴートを仕立てて「正義」を演じようという欲望だろう。これは心理的メカニズムとしてはよくわかっていて、人種差別や反ユダヤ主義などのスケープゴーティングは、集団内の紛争を解決する手段である。この感情は、共通の敵に対して団結する集団淘汰によって(少なくとも部分的には)遺伝的にそなわったものと思われる。
エネルギー問題に関心も知識もない一般大衆を論理で説得することは困難だが、こういう勧善懲悪の感情は誰もがもっているので、それを刺激するのが効果的だ。これはヒトラーから大江健三郎氏に至るまで、ありふれた政治的レトリックである。ヒトラーはユダヤ人をスケープゴートにしたが、反原発運動はそれを「原子力村」や「御用学者」に入れ替えただけだ。
これはカルトによくある手法で、結論は最初から決まっているので、論理は必要ない。スケープゴートは再帰的な記号なので誰でもよいが、それに使いやすい特性がある。
1.外見で他から区別できる
2.誰の目にも悪そうに見える
3.攻撃されても抵抗できない
4.遺伝的・民族的な特性をもつ
5.金持ちで恵まれている
これがすべて備わっているとは限らず、ユダヤ人や在日は1を必ずしも満たさないし、黒人は多くの場合、5を満たさない。東電の場合は、不幸なことに4を除いてすべて満たしている。これはユダヤ人や華僑に対する差別とほとんど同じ心理的メカニズムで、ここには「あいつが金持ちなのは悪いことをしてもうけたからだ」という嫉妬がからむので、黒人や在日より激しく執拗に攻撃が行なわれる。
泡沫候補の細川氏がこれほど注目されるのは、小泉元首相のダミーとみられているからだろう。小泉氏の「最終処理場が見つからないから原発ゼロ」などという話はすべて単純な錯覚で、論理的には成り立たない。今回の「東京が原発なしでやるという姿を見せれば、必ず日本を変えることができる」という彼の話は、もはや論理ではない。
こんな無意味な論議をしている間に、貿易赤字は史上最大になった。その3割以上は原発を止めたことが原因だ。そして株価は、年明けから下がり始めた。ここで暴落でもすれば、愚かな政治家も目が覚めるのだろうか。
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◇ 30分でできる「3兆円の緊急経済対策」貿易赤字の短期的最大要因は原発停止による化石燃料の輸入増 2014-01-14 | 政治(経済/社会保障/TPP)
30分でできる「3兆円の緊急経済対策」
NEWSWEEKJAPAN エコノMIX正論異論 池田信夫 2014年01月14日(火)15時48分
年明けから株式市場が変調だ。14日の日経平均株価は終値で490円下がり、昨年末の高値から900円以上も下がった。1990年の年明けから始まったバブル崩壊を思わせる不気味な展開だ。
警戒が必要なのは、アメリカの雇用統計や金融緩和などの一時的要因ではなく、きょう発表された貿易統計だ。昨年11月の経常収支(貿易収支+所得収支)は5928億円の赤字になり、これは2ヶ月連続で過去最大である。貿易収支は1兆2929億円の赤字で、すでに17ヶ月連続の赤字だ。
甘利経済再生相は「貿易立国の原点がゆらいでいる」とコメントしたが、日本はすでに貿易立国ではない。このままでは貿易赤字はさらに拡大し、経常収支の赤字も続くおそれが強い。経常収支が赤字になること自体はいいことでも悪いことでもないが、このままでは財政赤字が維持できなくなるおそれが強い。
もう一つの問題は、今まで国内の需要不足を補っていた外需(輸出)がマイナスになると、成長率がさらに下がることだ。輸出企業の収益はドル高で嵩上げされているが、輸出数量は減っている。電機製品は輸入超過になってしまった。これ以上ドルが上がることは、原料やエネルギーのコストが上がって国内産業の収益を悪化させる。
貿易赤字の根本原因は日本企業の国際競争力の低下だが、短期的に最大の要因は原発停止による化石燃料の輸入増である。経済産業省によれば、2013年度に電力9社が払う燃料費は、10年度と比べて3兆6000億円増える見通しだ。これは税金と同じで、その負担は消費税の1.5%に相当し、GDP(国内総生産)を0.5%以上さげる。
この問題を解決する簡単な方法がある。原発を再稼動するのだ。といっても、法律も閣議決定も必要ない。安倍首相が記者会見して「定期検査の終わった原発は法令に従って運転してください」といえばいい。2011年5月に菅首相(当時)が記者会見で原発を違法に止めたのと逆のことをするだけだ。違法行為を撤回するのに法律は必要ない。
首相は「安全審査が終わってから再稼動を検討する」と慎重だが、安全審査と再稼動は無関係だ。原子力規制委員会は新たに設置される設備を審査しているだけで、運転の認可をするわけではない。審査対象はフィルター付ベントなどの周辺部分なので、審査は運転と並行して行えばいいのだ。
逆にいうと、安全審査で運転が認可されるわけではない。規制委の田中委員長は「原発の運転を許可するのは政府の判断だ」と言っている。フィルター付ベントは事故後に排気を濾過する設備なので、事故を防ぐことはできない。福島第一原発事故で問題になった津波対策や電源喪失などの対策はすでに終わっており、ほとんどの原発は「ストレステスト」にも合格している。
要するに、安全審査が終わっても実質的な安全性は変わらないのだ。安全審査は「政府も努力している」というアリバイづくりなので、今できないことは審査後もできないし、審査後にできることは今でもできる。「安全審査に合格しないと運転できない」という前例をつくると、これから安全基準を変更するたびに全国の原発を止めなければならない。
原子力のリスクはゼロではないし、ゼロにする必要もない。中国のPM2.5汚染をみてもわかるように、石炭の大気汚染や採掘事故で死んでいる人は、全世界で年間1万人以上いると推定される。地球温暖化も考えると、原発のリスクは火力より小さいというのが、IEA(国際エネルギー機関)やOECD(経済協力開発機構)などの見解である。
安全審査には9ヶ月ぐらいかかるといわれているので、今のままでは再稼動は早くても4月だろう。それも四国電力や九州電力で、最大の焦点である東電の柏崎刈羽原発は夏までに運転できるかどうか不透明だ。新潟県の泉田知事が法的根拠のない「地元の同意」を条件にしているので、政府が決断しないと再稼動はずるずると遅れるおそれが強い。
安倍首相はリスクのともなう政治判断を先送りしてきたが、再稼動の政治的リスクは先送りしても同じだ。再稼動は首相の記者会見だけでいいので、30分もあればできる。これで年間3兆円の負担がなくなり、日本経済が再生する。それがコストゼロで即効性のある「緊急経済対策」だ。
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