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「シリア政府が1万1000人処刑」は氷山の一角 ヒューマン・ライツ・ウォッチのシリア提言に溜息 黒井文太郎

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和平会議直前のシリアに大量虐殺疑惑 "Industrial-Scale" Killing of Prisoners by Syria
 アサド政権への風当たりが弱まり和平会議が開催されようとする中で発覚したシリア政府当局による最悪の戦争犯罪疑惑
 NewsweekJapan2014年1月22日(水)16時20分 ジョシュア・キーティング
 内戦状態が続くシリアに再び平穏が訪れるのはいつになるのか。内戦終結を目指し、スイスのジュネーブでは22日から国際和平会議が開催される予定だが、スタート前からすでに大混乱の様相を呈している。
 まず問題となったのは、イランを会議に招待すると発表しておきながら、直前になって撤回したこと。さらに21日にはシリア政府代表団を乗せた飛行機が、経由地のギリシャ・アテネで給油を拒否されて足止めされるというトラブルに見舞われた。
 だが最も深刻な問題は、シリアのバシャル・アサド政権がこれまでに1万人以上の拘留者を拷問し、大規模な殺害を行ってきたとする報告書が発表されたことだ。
 写真を含む多くの証拠を報告書で公開したのは、シエラレオネやユーゴスラビアでの戦争犯罪を担当した経験を持つ3人の弁護士。報告書は「密かにシリア反体制派に通じ、後に政府から離反して国から脱出した憲兵」の証言に基づいている。彼は国を離れるとき、政府側が撮影した写真などの膨大な証拠を持ち出したという。
 報告書によれば、拘留者の遺体の写真は1万1000人分が存在するという。3人の弁護士は「シリア政府の関係者によって拘留者に対する組織的な拷問や殺害が行われた」と示す十分な証拠があると主張。シリア政府の戦争犯罪や人道に対する罪を十分に裏付けているとする。
 報告書は英ガーディアン紙や米CNNテレビによって報じられ、カタール政府も信憑性を認めている。ただ、たとえ報告書の内容が真実でも、シリア政府の当局者が国際刑事裁判所(ICC)によって戦争犯罪に問われる可能性は低い。シリアはICCに加盟していないからだ。非加盟国であっても国連安保理の権限によってICCで取り扱うことは可能だが、シリア寄りで安保理の拒否権を持つロシアがそれを許すとは考えにくい。
 とはいえ今回公表されたおぞましい証拠が、国際社会がシリアを見る目やジュネーブでの和平会議の議論に影響を及ぼすのは間違いない。
 現在、シリアに対する先進国の見方や、内戦終了後の最終的な国の形についての考え方は大きく変化しているように見える。化学兵器の放棄をめぐる問題がひと段落し、反政府勢力と国際的なテロ組織との結び付きが指摘されるようになると、先進国はシリア政府への態度を軟化し、アサドを権力の座に残す方向で解決策を探るようになった。
 だが今回の報告書の信憑性が裏付けられれば、先進国の代表者たちは嫌でも思い出さざるをえなくなるだろう。自分たちの譲歩がどれだけ重大な意味を持ち、テーブルの向こうにいるのがどんな連中なのかということを。© 2014, Slate
 ◎上記事の著作権は[NewsweekJapan]に帰属します 
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 ワールド&インテリジェンス ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ
ヒューマン・ライツ・ウォッチのシリア提言に溜息 2014/01/22(水) 15:33:40
 ヒューマンライツ・ウォッチがシリア問題国際会議に対するステートメントを発表しました。
▽シリア:持続的平和に 正義は不可欠
 さすが調査能力の高い国際人権団体大手であり、現状認識は完璧です。100点といっていいです。
 それに対する提言も完璧です。まさに仰るとおり。そう、そのとおりに出来れば・・・。
 しかし、この提言を読んで、嘆息を禁じ得ないわけです。いったいどの国のことを言っているのかな?と。
 絵に描いた餅というか、まるで妄想ですね。実現性は皆無といっていいでしょう。こうした理想を語ることにも、何か意義があるのかもしれませんが、私にはよくわかりません。
 正義を語るのもいいですが、日々殺害され続けている人々は、これを読んでどう思うでしょうか?
 私にはこんな声ばかり聞こえてきます。
「とにかく僕らに武器をくれよ!」
 平和を語るのは容易ですが、それだけでいいのでしょうか? こんなことを書くと、また“平和主義陣営”からは「戦争を煽っている!」とか曲解されてヒステリックをな批判を浴びるのでしょうが・・・(溜息)
 愛は世界を救う? うーん、救って無い気がしますね。
(※当エントリーは、「あくまで話し合いで解決を!」と考える良識ある方々に対して問いかけています。「アサドは必要」「悪いのは反体制派」「アメリカは手を引け」と主張する一部の方々は、根本からシリアの現状が見えていないので、もうどうでもいいです)
 ◎上記事の著作権は[ワールド&インテリジェンス]に帰属します 
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ワールド&インテリジェンス ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ
「シリア政府が1万1000人処刑」は氷山の一角 2014/01/21(火) 17:21:06
▽シリア政権、1万人以上殺害か=証拠写真持ち出される−米英メディア(時事)
 こんな数字は氷山の一角でしょう。アサド派民兵による私刑を含めれば、数字は何倍にもなるはずです。
 アサド政権が「抵抗する者は容赦なく徹底的に殺害する」こと、「抵抗する者を殺害するためなら一般国民の犠牲を屁とも思わない」こと、「人々が抵抗しないように徹底的な恐怖支配を貫く」こと等々は、シリア国民なら皆、最初から知っていたことです。叛乱軍の主力は、それゆえに自己防衛としてあくまで抵抗を続けてきたわけです。
 反体制派は「国際社会の介入」と「政府軍の分裂」を期待して抵抗運動を続けてきたわけですが、「政府軍の内部統制が強固だった」ことと「国際社会が無介入だった」ことで、革命は頓挫しました。昨年夏頃からはISISの乱入でとくに北部・東部で自由シリア軍が後退を余儀なくされ、戦線が政府軍優位で推移。政府軍による非支配地域への樽型爆弾の無差別爆撃、あるいはライフライン封鎖による兵糧攻めなどで、ますます悲惨な状況になっています。
 事態がここに至れば、現在進行中の無差別殺戮を緩和・停止するためのアサド容認も選択肢かもしれませんが、その後にはポト派級の大量処刑が待っています。
 国際会議に関しては、シリア国民連合とイランの出席をめぐって駆け引きが続いていますが、アサド政権はあくまでアサド存続前提で、抵抗運動根絶を主張するだけですから、反体制派の実質的な全面降伏しか妥協点はありません。それに、国民連合は反体制派をまとめていないので、同会議が仮に開催されたとしても、実質的な前進はないでしょう。
「いったん妥協し、後から選挙」とか「とりあえず停戦し、現在の支配地域で勢力を分ける」などというのは、絵に描いた餅です。アサド政権はそれほど甘くないし、それを反体制派も国民も知っています。
 現在、軍事的にアサド政権が打倒される要素が消えた状態なので、今後の見通しとしては「アサド独裁存続で大弾圧・大量処刑」か「政府軍による無差別殺戮継続」かしかないようです。
 一方、今や抵抗運動最大のガンとなっているISISですが、情勢がどちらに向かうにせよ、中長期的にはいずれ勢力は減退に向かうでしょう。しかし、その過程で多くの犠牲者が出ることは避けられません。
 いずれにせよ、今年も「希望」はまったく見えません。
 ◎上記事の著作権は[ワールド&インテリジェンス]に帰属します 
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【 もう誰も関心を示さなくなったシリア 】 黒井文太郎 2013-10-15 | 国際 
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シリアに行ったことがない方へ 黒井文太郎 2013-09-20 | 国際 
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「どこの国でもいいから助けてくれ!」 シリア国民の悲痛な叫びを聞いてほしい 黒井 文太郎 2013-09-10 | 国際
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「シリア空爆のシナリオ アサド政権の化学兵器使用と恐怖政治」 黒井文太郎 2013-09-04 | 国際
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