【島が危ない 第1部 再び対馬を行く(6)】 国境離島振興 高い運賃足かせ
産経ニュース 2014.1.26 11:36
昨年12月24日、政府は平成26年度の沖縄振興予算に3460億円を計上することを閣議決定し、安倍晋三首相は仲井真弘多知事に33年度まで各年度3千億円以上を計上することも約束した。国境を背負う長崎県対馬市の国境離島活性化対策特別委員会委員長、長信義市議(64)は、対馬の現状と重ね合わせてこう話した。
「政府は米軍基地を抱える沖縄に莫大(ばくだい)な予算をつぎ込みよるわけですよね。それが対馬に適用されないのはよく分かっている。われわれは、国防のためにも、対馬が無人島にならないように、油代を安くして漁民が漁に出られるようにしてください、国境離島振興法なるものを作ってください、といいよるんです」
*企業誘致進まず
対馬も、島の振興のために企業誘致に力を入れた時期があった。
長市議は「昭和50年代から60年代は、本土から進出した縫製工場がいくつもあった」と振り返る。固定資産税の減免措置をとっていたためだという。「減免率は場所によって違うが、期間は5年から10年。雇用を確保できるし、消費も増える利点があった」
ところが、減免措置の期限が切れると、少しずつ撤退していった。期限切れだけが理由ではなかったという。「本土より安い賃金でモノを作れる半面、材料や製品の輸送費がかさんだ。結局、本土で作っても変わらないということで撤退していった」
現在、誘致した企業で持ちこたえているのは、対馬グランドホテルと韓国資本の大亜高速海運だけだ。平成16年3月の6町合併で対馬市が誕生した後は、新規誘致は実現していないという。
それでも、経済再生への模索は続いている。長市議は例を挙げる。「対馬は歴史的に貴重な遺跡も多く、観光資源の宝庫だといわれる。こうしたものを生かして本土からの観光客を増やせないかとか、海洋大学を誘致できないだろうかとか、知恵を絞っている」
対馬観光物産協会会長の江口栄さん(59)も「コールセンターや介護施設を誘致できないかとか。刑務所の誘致を考えたこともある。考えられることは、みんな考えとっとですよ」と話した。
*経済対策が重要
ところが、こうした案も高い運賃などが足かせになって実現にはほど遠い。
対馬と本土とのアクセスは、福岡−対馬、長崎−対馬の空路と、博多−厳原などの海路がある。空路は福岡−対馬が片道1万4200円、長崎−対馬が片道1万5400円。海路の博多−厳原は、ジェットフォイルが6160円で、フェリーは3560円から5160円だ。
長市議は運賃値下げを訴えているが、壁は高いという。「福岡−対馬はわずか30分の飛行なのに、福岡から東京に行ける額なんです。安くならない理由は、海路も空路も、ほぼ1社の独占状態だから。運賃を下げてほしいと要望すると、『便数を減らします』と言われる。そうなると、引き下がらざるをえない」
長崎県の航路対策委員を務める対馬市商工会の浦田一朗会長(70)も「島民は、あと1社入れて競争させえというけど、来るところがないです」と嘆く。
浦田会長は、行政の補助金が実態を反映していないことにも不満を持っている。「県は、長崎−対馬が生活路線だと言って、補助金を出している。でも、島民の8割は福岡行きに乗っている。『ならば、それが生活路線でしょう』と言うが頑として聞かない。福岡−対馬の便は生活路線として認められていないから補助金を出さんて」
博多−厳原のジェットフォイルの運賃値上げの話も浮上しているという。「4月から2千円値上げするらしいが、べらぼうな話ですよ。1社が独占しているから、手の打ちようがない」と浦田会長。
対馬市と市議会は、政府に対し、国境離島特別措置法(仮称)の制定に向けた提言書を提出している。新航路導入方策や漁船の燃油に対する減免支援措置、磯焼け対策研究機関の設置、離島進出企業への特例措置などを盛り込んだ。
「(政府は)国境離島をどうするのか。国境離島振興を法律化してもらうほかない」。市議会の作元義文議長(64)は語気を強めた。
政府は、外国資本の不動産売買に規制をかける法整備を進めているが、対馬を歩いて、それだけで十分なのかという疑問を持った。人が住んでこその安全保障。経済振興の重要性を身をもって実感した。(宮本雅史)=第1部おわり
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◇ 対馬の森競売 国土保全の法整備を急げ / 対馬の森売却 「国境守る基金の創設を」 2013-09-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇【主張】対馬の森競売 国土保全の法整備を急げ
産経新聞2013.8.31 03:30
長崎県対馬市の広大な森林地が競売にかけられていた問題は、市が森林を購入することで債権者と合意し、競売の中止に至った。
絶滅危惧種の「ツシマヤマネコ」が唯一生息する森林として知られるが、深刻なのは国境近くの重要な離島において、大規模な土地が近隣諸国など外国勢力の手に渡りかねない懸念があったことである。
そうした事態を回避した市の対応は評価できる。この問題は離島や海岸、水源地、森林など、国土をいかに守っていくかという課題を政府に提起したといえる。
同様の事態は今後も各地で起こり得る。国土の保全に向け、法規制など抜本的な処方箋をまとめることが急務である。
私有財産である土地の取引は原則自由だが、国防や公益を阻害する恐れがある場合に歯止めをかけるのは当然、必要なことだ。
これまでにも、北海道の自衛隊施設近くの広い土地などを、外国資本が所有していた例が表面化した。水源地のある森林などが、外国資本に相次ぎ買収されたことも判明している。林野庁によると、平成23年末までに全国で49件、計760ヘクタールの森林が外資に買収された。転売の末、所有者不明の土地も多い。
国は昨年4月、森林所有者に届け出を義務づける森林法改正を行ったが、取引自体を止められるものではない。水源周辺を公有地化したり、独自の条例によって規制を強化したりする自治体の動きも広がっている。国と自治体との情報共有や連携が重要だ。
日本が米国などと異なるのは、世界貿易機関(WTO)に加盟するさい、土地取引に例外や条件を設けなかったことだ。このため、外資を対象とした規制はWTO規定に抵触しかねず、法規制を難しくしている面がある。
だが、国防に支障を来すような取引は、外資か否かを問わず認めない法規制なら整備できるだろう。生態系の保全など自然保護を理由とした土地の利用規制などは諸外国にもみられる。政府は検討を急いでほしい。
超党派議員らは「水循環基本法案」をまとめている。水資源を「国民共有の財産」として守る責務を国や自治体に求める内容だ。通常国会では廃案となったが、水源保全への第一歩として早期成立を図るべきだ。
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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【読者サービス室から】対馬の森売却 「国境守る基金の創設を」
産経新聞2013.9.6 13:29
長崎県対馬市の約260万平方メートルの森林地が競売入札に付され、韓国企業が関心を示していることを8月29日付の朝刊で報じると、「韓国人に島が乗っ取られないよう東京都の尖閣基金や新たな募金で対応できないか」(29日)▽「東京都の尖閣基金に寄付したが、この寄付金を入札に使ってほしい」(同)▽「国境の島々は国防の重要地域。都尖閣基金を充てられないか」(同)▽「全国に募金を呼びかけるしかない。年金生活だが協力する」(同)と懸念する声が相次ぎました。
反響の大きさもあり、金額などで折り合わなかった同市が購入を決めましたが、「今後も同様の事態に備えて、国民の支援で基金を作ったらどうか」(30日)▽「外国資本の買収に備えて沖縄を含む国境地域を守るための基金を作るべきだ」(同)という提案が寄せられました。(以下略)
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◇ 【島が危ない 第1部 再び対馬を行く(5)】韓国人客増加「漁師にマイナス」 漁民は安全保障の“目” 2014-01-26 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【島が危ない 第1部 再び対馬を行く(4)】温暖化、燃油高騰…苦しむ漁民 2014-01-22 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 【島が危ない 第1部・再び対馬を行く】日韓海底トンネル構想 進む土地買収 根を張る「韓国」 2014-01-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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