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STAP細胞報道、ブロガーに完敗したメディアは「取材を尽くした」と言えるのか 牧野洋の「メディア批評」

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STAP細胞報道、ブロガーに完敗したメディアは「取材を尽くした」と言えるのか
 現代ビジネス 牧野 洋の「メディア批評」2014年04月18日(金)
 万能細胞「STAP細胞」の論文をめぐり、筆頭筆者の小保方晴子氏を当初は徹底的に持ち上げ、データに問題があると分かると徹底的にたたく---。STAP細胞騒動ではこれが主要メディアの報道姿勢だった。
 「長い物には巻かれろ」「水に落ちた犬は打て」といったやり方では報道機関として何の公益性も発揮できない。どこにどんな問題があったのか。一部のメディアは自らの報道について検証している。
*「丁寧に取材する」では何の対応策も講じないのと同じ
 まずは3月15日付の朝日新聞朝刊。科学医療部長の桑山朗人氏が「取材重ね、検証していきます」と題して取材の経緯を振り返っている。
 〈 英科学誌ネイチャーは専門家による厳しい審査で知られ、掲載率は1割以下です。(中略)論文に名を連ねている研究者の過去の実績も踏まえ、この論文は信頼できると判断しました。 〉
 桑山氏の主張を要約すると、論文発表段階で問題点を見抜くのは容易ではなった、ということだ。ではこれからどうすればいいのか。同氏はこう書いている。
 〈 今回の件を教訓として受け止めなければならないと考えています。(中略)STAP細胞が本当に存在するかを見極めるためにも、私たちは再現実験の行方をしっかりとフォローしていきます。また、今回の経緯と問題点の詳細、さらに科学論文のチェック体制など、引き続き取材を重ね、検証していきます。 〉
 つまり「教訓として受け止める」「しっかりとフォローする」「取材を重ねて検証していく」がポイントだ。 これではあまりに当たり前で、何の対応策も講じないのと同じではないのか。
 共同通信も検証記事を配信している。たとえば4月2日付の西日本新聞朝刊を見ると、「報道の経緯 発表時 問題点見抜けず」という見出しで共同通信が取材の経緯をまとめている。この中で楢原晃科学部長はこう語っている。
 〈取材は尽くしたつもりですが、真偽を十分に見極めることに限界があったと認めざるを得ません。報道した研究の内容に重大な疑義が生じたという結果を重く受け止めています。今後もSTAP細胞の存在の有無を確かめる実験を丁寧に取材し、科学報道の在り方を考えていきます。〉
 朝日の桑山氏が「教訓として受け止める」「しっかりとフォローする」「取材を重ねて検証していく」と言い、共同通信の楢原氏は「結果を重く受け止める」「丁寧に取材する」「科学報道の在り方を考えていく」と言っている。使う言葉は違っても言っている内容は実質的に同じと言えよう。
*「取材は全然足りていなかった」というのが実態
 桑山氏と楢原氏の指摘する通り、論文発表時点で問題を見抜くのは至難の業だったのは理解できる。自らのSTAP細胞報道を検証していないメディアが大半のなかで、取材の経緯を振り返りながら自らの報道に問題があったことを認めた点も評価できる。それでも、「教訓として受け止める」「結果を重く受け止める」では抽象的過ぎる。「丁寧に取材する」などは取材の基本であり、新人記者でも知っていることだ。
*具体的にどうすればいいのか? ヒントはネット上にある。
 STAP細胞論文の問題点を指摘したブロガーとして最も有名なのは「11jigen」だ。専門的な知識を駆使して論文に不自然さや矛盾点がないか細かくチェックし、小保方氏が早稲田大学に2011年に提出した博士論文と比べて画像が酷似していることなどを暴いた。これを既存メディアが追いかけた。調査報道の役割をボランティアの専門家が担った格好になった。
 なぜ11jigenと同じことを従来のメディアができなかったのか。記者クラブ経由の「発表報道」に安住し、本来の調査報道を手掛けるような専門性の高い科学記者を育ててこなかったことが一因かもしれない。福島原発事故をめぐる報道が「発表報道のオンパレード」という批判を受けたのも、発表報道以上の報道を展開できるだけの専門性が記者側に欠けていたためだ。
 大手新聞社は優秀な記者については部長職など幹部へ昇進させ、ジャーナリストから経営者へ転身させてしまう。新卒一括採用を基本としているため、すでに実績を出している科学者を中途採用して記者として活用するといった柔軟性もない。社内の記者を留学させ、科学分野の博士号を取得させるなどの仕組みもない。これでは高度な専門性を備えた記者は現れない。
 専門知識を武器に公開情報を調べ上げるのは調査報道の王道だ。調査報道の伝統があるアメリカでは、政治家の出張費や交際費をチェックするのを日課にしている記者もいるし、裁判記録に一日中目を光らせている記者もいる。「外に出て取材しない記者」と思われるかもしれないが、「データ分析」のスキルがある記者は調査報道で重宝され、給与面でも厚遇してもらえる。
 小保方氏の記者会見には従来のメディアから大勢の記者が参加した。しかし実は記者会見はそれほど重要ではない。放っておいても誰かが取材し、会見内容を伝えてくれるからだ。記者会見に記者を派遣する余裕があるのならば、それを調査報道に振り向けることはできなかったのか。
 11jigenは空いた時間を使ってボランティアで検証していたようだが、新聞記者であれば給与をもらいながら日中から堂々と論文チェックができる。「教訓として受け止める」「結果を重く受け止める」のであれば、これからは11jigenのような人材をスカウトし、ネットに負けないような調査報道を実行するとの決意を表明してほしいものだ。
 楢原氏は「取材し尽くしたつもり」と語っている。だが、調査報道の観点から言えば「取材は全然足りていなかった」というのが実態ではないか。
 <筆者プロフィール>牧野 洋(まきの・よう)
 ジャーナリスト兼翻訳家。1983年慶応大学経済学部卒業、1988年米コロンビア大学ジャーナリズムスクール卒業(修士)。日本経済新聞社でニューヨーク特派員や編集委員を歴任、2007年に独立。2008年から2013年までカリフォルニアを拠点に米メディア業界を取材。現在は福岡在住で早稲田大学ジャーナリズムスクール非常勤講師。著書に『官報複合体』(講談社)、『米ハフィントン・ポストの衝撃』(アスキー新書)、『不思議の国のM&A』(日本経済新聞出版社)、『最強の投資家バフェット』(日経ビジネス文庫)、訳書に『ビジョナリー・カンパニー4』(日経BP社)、『ランド 世界を支配した研究所』(文藝春秋)など。http://www.yomakino.com/

 ◎上記事の著作権は[現代ビジネス]に帰属します
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小保方論文「コピペ疑惑」、ネットが暴いた 「11jigen」「世界変動展望」…謎のブロガーが次々告発
 J−CASTニュース 2014/3/18 18:00
   英科学誌「ネイチャー」に掲載されたSTAP細胞の論文に、不自然な画像が掲載されているとの指摘は「インターネット発」だったようだ。疑惑が膨らんだのを機に、理化学研究所が調査を余儀なくされたという。
   論文の筆頭著者、小保方晴子・研究ユニットリーダーが書いた博士論文に「コピペ疑惑」があると暴露したのもブロガーだ。
*米教授の投稿きっかけに「画像の切り張り」明るみに
   STAP細胞の論文がネイチャーに掲載されて以降、どのようにして問題点が浮き彫りになっていったかは、2014年3月16日付の読売新聞が詳しい経緯を示している。
   初めは、科学者たちがネット上で科学論文について議論し合う「PubPeer」というサイトに、米カリフォルニア大学デービス校のポール・ノフラー教授が投稿したのがきっかけだ。論文が発表された1月29日付の書き込みで、「別の研究者が(STAP細胞を)再現できるのか」など6項目の疑問をぶつけている。その後コメントが相次いだが、2月4日にはある投稿者から、「画像の切り張り」にかかわる疑いが書かれた。1枚の画像なのに、一部個所の背景の「暗さ」が他所と異なっており、おかしいというわけだ。さらに画像そのものも公開され、不自然さが一目瞭然となった。この画像は、3月14日に行われた理研の調査の中間報告会見で、小保方氏が実際に切り張りや加工を行っていたと認められた個所だ。
   また読売によると、論文に掲載されたマウスの胎盤の画像2枚が酷似している点も、ツイッター上での問題提起から疑いが広がったという。
   論文内容の厳しい「監視」の動きは、国内でも見られた。なかでも細かくチェックしているのは、「11jigen」と名乗るブロガーだ。詳細な横顔は不明で、ひとりか複数なのかも分からない。これまでも、2013年2月に退職した京都府立医科大学の元教授が書いた論文のうち14本に画像や実験データのねつ造、改ざんがあったと大学側が明らかにしたケースなど、2009年の段階から疑惑を追及し続けてきた人物だ。
   STAP細胞論文では、理研が調査している画像の使用について以前からブログで指摘していた。さらに小保方氏の博士論文で、一部テキストや画像に他の研究者の論文から盗用したと疑われる「酷似した内容」を見つけ出し、公表した。
*「研究不正の問題はたくさんある」
   「11jigen」氏の一連の説明によると、博士論文では複数の情報ソースから画像を抜き出してきて使っていることになる。ほかにも不適切なデータ使用の可能性をにおわし、「調査中」の項目には、解説が一切ついていない不自然な画像の存在も示した。同氏は読売新聞の取材に「放置したままでは真面目な研究者が被害を受ける。ボランティアでやっている」とメールで回答したという。
   「世界変動展望」というブログの運営者も、2月13日から論文の不適切さを主張してきたひとりだ。ツイッターでは、「近年はネットで研究不正を摘発し改善する動きが強くなってきました」とつぶやき、その原動力として「11jigen」氏の告発や「2ちゃんねる」で論文のねつ造や不正問題を取り扱うスレッドを挙げている。
   それにしてもこうした「告発人」は、正体は明かしていないが、英文で書かれた科学論文を読みこなし、使用された画像や実験データをどの文献やウェブサイトから複製してきたのか、さらにどのように改ざんされたのかを見極めるのだから、相当な専門知識を持っている人物ではないかと推測される。もともと今回の件に限らず、論文の不適切性が疑われる研究者を挙げ、問題を指摘してきた人たちだ。「研究不正の問題は小保方問題以外に解決しなければならない事件がたくさんあります」(「世界変動展望」運営者)という。
 ◎上記事の著作権は[J−CASTニュース]に帰属します
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