〈来栖の独白 2014/10/12 Sun. 〉
本日はイオンシネマへ『蜩ノ記』を観に行った。葉室麟さんのこの作品、祥伝社の単行本で読んで、大いに感動し、映画化されると知って楽しみに待っていた。
本を読んでの期待に違わず、大変愉しめた。とりわけ、最後のシーンでは涙が滲んだ。
涙したシーンとは、戸田秋谷が愈々切腹する日である。家譜編纂を成し遂げ、妻・息子・娘そして娘婿と別れの挨拶をし、家を後にするのである。前藩主との約束(家譜編纂)を成し遂げたこと、前藩主の「戸田秋谷よ、あの世で待っている」という言葉、そして遺される家族の安らかな将来が予測されることから、旅立つ秋谷の表情は清々しい。二人の官吏に付き添われて、処刑場へと家を後にする。私に涙が滲んだのは、その後ろ姿の故であった。白い着物に浅黄色の紋付裃を着けているが、足袋はなく草鞋ばきであった。裃は武士としての体面を保つに十分な死に装束であるが、素足に草鞋は「罪人」以外の何ものでもない。恐らくは、室内ではなく、庭での切腹であったろう。哀れが、私を泣かせた。そして、映画を観て良かったと思った。本には、その姿までは書かれていなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 元連合赤軍死刑囚坂口弘氏の歌 “後ろ手に手錠をされて執行をされる屈辱がたまらなく嫌だ” 2008-08-01 | 死刑/重刑/生命犯 問題
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 葉室麟著 『潮鳴り』 落ちた花は再び咲くことが・・・ 2014-02-25 | 本/演劇…など
..............................
↧
映画『蜩ノ記』 裃は武士としての体面を保つに十分な死に装束であるが、素足に草鞋は…
↧